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【語源で覚える】fertility|ローファットミルクの fat、まさか肥沃とつながってる?

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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牛乳売り場で「ローファット」の文字を見ない日はないと思います。low-fat milk、低脂肪乳。この fat、脂肪分のことですよね。

一方で、今日の主役 fertility は「肥沃さ」「繁殖力」。土がよく肥えていて、作物がどんどん実る・・・そんな状態を指す言葉です。

肥えた土、脂肪分。なんだか似た匂いがしませんか。

結論から言うと、この2語に血のつながりはありません。でも、ここで引き返すのはもったいない。英語の fat には、14世紀の終わりから「豊かな・恵まれた」という意味がちゃんとあるんです。偶然の空似かと思いきや、英語の中では昔から同じ方向を向いていた・・・そういう不思議な関係です。

※ この記事は、公開済みの infer(推論する)と対になっています。infer が「運ぶ」の抽象側(情報を運んで結論を導く)の話なら、こちらは「運ぶ」が実らせる・産むという生命の側に転がった話です。

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fertility を分解してイメージで覚える|意味の中心は「もたらす」

fertility をパーツで見ると、こうなります。

fert(ferre=運ぶ・もたらす)+ ile(〜できる)+ ity(〜という性質)

ラテン語の ferre は「運ぶ・もたらす」。そこに「〜できる」の -ile がついて fertile(もたらすことができる=よく実る)。さらに「〜という性質」の -ity がついて fertility(よく実る性質=肥沃さ・繁殖力)。

土が作物をもたらす。木が実をもたらす。生き物が子をもたらす。運び出す力、生み出す力。これが fertility の意味の中心です。

覚え方のヒントとして、冒頭の fat を使ってください。ローファットミルクの fat、つまり「たっぷり・豊か」。肥えた土、たっぷりの実り。fat から fertility へ、イメージはまっすぐつながります。

※ 正確には、fertility はラテン語 ferre の系統、fat は古英語 fætt のゲルマン系で、語源は別ルートです。ただし偶然とも言い切れない面白さがあって、それは記事の後半でお話しします。

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fertility の基本の意味と使い方

fertility は「肥沃さ」「繁殖力」「(アイデアなどの)豊かさ」を表す名詞です。形容詞は fertile。

  • the fertility of the soil(土壌の肥沃さ)
  • soil fertility(土壌肥沃度)
  • fertility rate(出生率)
  • a fertile imagination(豊かな想像力)

土や農業の話で使うのが基本ですが、人や頭の中にも使えます。a fertile mind と言えば「アイデアがどんどん湧いてくる頭」。何かを生み出す力がある、という褒め言葉です。

逆に、否定の in- がつくと infertile(やせた・実らない)、infertility(不妊・不毛)。こちらは医療や統計の文脈でよく見かけます。

米英で発音が変わる単語です

fertile は、アメリカ英語とイギリス英語で発音が割れます。

  • アメリカ:ファータル /ˈfɜːrtl/(最後が軽い)
  • イギリス:ファータイル /ˈfɜːtaɪl/(最後が「タイル」)

missile や hostile も同じパターンで、アメリカは語尾を飲み込み、イギリスは /aɪl/ とはっきり読みます。リスニングで「あれ、知らない単語だ」と感じたら、この -ile を疑ってみてください。名詞の fertility は、どちらもファティリティ /fərˈtɪləti/ で揃います。

fer(運ぶ・もたらす)でつながる単語ネットワーク

ferre は、英語にとてつもない数の子孫を残しました。「運ぶ」という動作が、方向を変えるたびに別の意味になります。

単語意味組み立て
transfer移す、転勤trans〈越えて〉+fer=向こうへ運ぶ
refer参照する、言及するre〈後ろへ〉+fer=元へ運び戻す
confer授与する、協議するcon〈ともに〉+fer=持ち寄る
prefer好むpre〈前に〉+fer=前に運び出す
offer申し出るof(ob)〈向かって〉+fer=差し出す
suffer苦しむ、被るsuf(sub)〈下で〉+fer=下で支え持つ
differ異なるdis〈離れて〉+fer=別々の方へ運ぶ
circumference円周circum〈周りを〉+fer=ぐるりと運ぶ線
conifer針葉樹cone〈球果〉+fer=松ぼっくりを持つ木

この一族は数が多く、別記事で詳しく扱っています(記事末の関連記事へ)。fertility は、この「運ぶ」が「実らせる・産む」の方向に伸びた枝だと押さえてください。

bear(運ぶ・産む)でつながる単語ネットワーク|こちらが本題

ここからが、fertility のいちばん面白いところです。

ferre のさらに先祖をたどると、印欧祖語の *bher-「運ぶ、そして子を産む」に行き着きます。この祖先からは、ラテン語経由の難しい単語だけでなく、英語がもともと持っていた素朴な単語も生まれています。

単語意味つながり
bear運ぶ、耐える、(子を)産む*bher- の英語本来語そのもの
birth誕生bear の名詞形。運び出されること
burden重荷、負担運ぶもの=担ぐもの
bring持ってくる運んでくる
bier棺台運ぶための台
barrow手押し車荷を運ぶ道具(wheelbarrow の barrow)

注目してほしいのは bear。中学で「クマ」と習い、そのあと「耐える」で出てきて、さらに「(子を)産む」でも出てくる、あの厄介な単語です。

この bear の「運ぶ・耐える・産む」は、fertile とまったく同じ祖先から来ています。bear a child(子を産む)と fertile(よく実る)が親戚。そう聞くと、bear のバラバラに見えた意味が一本の線でつながりませんか。

そして、動物のクマの bear だけは別語源です。こちらは「明るい・茶色」を意味する別の *bher- から来ていて、brown(茶色)や beaver(ビーバー)、berserk(狂戦士の)と同じ家族。同じ綴りで別ルート、という英語によくあるパターンです。

fat は本当に無関係?|語源は別、でも発想は同じ

ここで、冒頭の fat に戻ります。

fat の祖先は印欧祖語の *peie-「太る・膨らむ」。fertility の *bher- とは完全に別系統です。血縁はありません。

ところが、この *peie- の子孫を並べると、こうなります。

  • ギリシャ語 pion「脂ののった、そして裕福な」
  • ラテン語 pinguis「脂っこい、そして心地よい・恵まれた」
  • 英語 fat「脂肪の多い、そして豊かな」(この語義は14世紀後半から記録あり)

つまり、「脂がのっている=豊かだ」という発想は、英語だけの思いつきではなく、はるか昔から複数の言語で独立に育っていたということです。

英語の中にも、その名残が成句として残っています。

  • fat years と lean years・・・豊かな年と乏しい年。旧約聖書・創世記41章の、ファラオの夢に出てくる7頭の肥えた牛と7頭のやせた牛(7年の豊作と7年の飢饉)が元になった言い回しです。
  • a fat profit・・・たっぷりの利益
  • fat cat(1928年〜)・・・金回りのいい有力者

おまけをひとつ。アイルランドの正式名称 Eire は、「肥沃な、文字どおりには fat(脂ののった)」を意味する語から来ているという説があります(ただし辞書も「おそらく」と留保をつけているので、豆知識として受け取ってください)。緑の島の名前が「よく肥えた土地」だった・・・だとしたら、なんとも腑に落ちる話です。

語源としては無関係。でも、人が「実り」を思い浮かべるときの発想は同じ。fat を入り口に fertility を覚えるのは、学問的には遠回りでも、感覚としてはまっすぐなんです。

派生語|fertility まわり

単語品詞意味発音
fertility名詞肥沃さ、繁殖力、豊かさファティリティ /fərˈtɪləti/
fertile形容詞肥沃な、豊かな米ファータル /ˈfɜːrtl/・英ファータイル /ˈfɜːtaɪl/
infertile形容詞やせた、不毛のインファータル /ɪnˈfɜːrtl/
infertility名詞不毛、不妊インファティリティ
fertilize動詞肥料を与える、受精させるファータライズ
fertilizer名詞肥料ファータライザー
fertilization名詞施肥、受精ファータリゼーション
fertility rate名詞句出生率―

TOEIC・英検での出題傾向

正直に言うと、fertility は TOEIC では出番が少ない単語です。ビジネス文書で肥沃さの話はあまり出てきません。

本領を発揮するのはアカデミックな読解のほうです。環境問題、農業、人口統計といった長文で、soil fertility(土壌肥沃度)、fertilizer(肥料)、fertility rate(出生率)の形で登場します。英検なら準1級以上、大学入試の環境・食糧テーマの長文では定番です。

TOEIC 対策として優先度が高いのは、むしろ同じ ferre 一族の transfer・refer・offer・prefer のほう。fertility は「読めればいい語」として、一族の中に位置づけて覚えておくのが効率的です。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. Soil fertility improves slowly, but it does improve.
  2. The farmer checks the fertility of his land every spring.
  3. The fertility of your ideas surprises everyone in the room.
  4. This valley has been famous for its fertility for centuries.
  5. Rain and sunlight restored the fertility of the field.
  6. Fertility rates differ widely from country to country.
  7. Small daily habits build the fertility of your mind.
  8. The fertility of the soil depends on what you give back to it.
  9. Scientists study soil fertility to grow more food with less land.
  10. Patience is what gives a garden its fertility.

語源メモ|ferre と *bher-、そして fat の正体

fertility は中英語 fertilite として15世紀半ばに登場しました。古フランス語 fertilité を経由した、ラテン語 fertilitatem(主格 fertilitas「実り豊かさ」)が元です。さらにさかのぼると形容詞 fertilis「よく実る、生産力のある」、その動詞 ferre「運ぶ・もたらす」にたどり着きます。

ferre の先祖は印欧祖語 *bher-「運ぶ、子を産む」。この根は英語語彙の中でも屈指の多産ぶりで、ラテン語経由の transfer・refer・confer・prefer・suffer・differ・circumference、ギリシャ語経由の metaphor(メタファー)・euphoria・periphery、そして英語本来語の bear・birth・burden・bring・bier・barrow を同時に生み出しています。なお bear(クマ)は別語源で、「明るい・茶色」を表す *bher-(2)(brown・beaver・berserk と同族)のほうです。

一方の fat は古英語 fætt。もともとは動詞 fættian「詰め込む・太らせる」の過去分詞が、そのまま形容詞として固まったものです(動詞のほうは消えて、過去分詞だけが生き残った形)。ゲルマン祖語 *faitida を経て、印欧祖語 *poid-「水分・乳・脂がたっぷりある」、さらに根の *peie-「太る・膨らむ」へ。ギリシャ語 pion「脂ののった・裕福な」、ラテン語 pinguis「脂っこい」、リトアニア語 pienas「ミルク」が同族です。

ferre 系と fat 系は、印欧祖語のレベルまでさかのぼっても交わりません。この記事で fat を入り口に使っているのは、あくまで「豊かさ」というイメージの橋渡しとしてです。ただし、fat 自身が14世紀後半から「豊かな・恵まれた」の意味を持ち、同族のギリシャ語 pion も「裕福な」を兼ねていることを考えると、この橋はかなり頑丈だと言えます。

最後にひとつ。Fertile Crescent(肥沃な三日月地帯) という呼び名は、1914年にアメリカの考古学者ジェームズ・ブレステッドが著書の中で作った、意外に新しい言葉です。農業が始まったあの土地に、「実りをもたらす」という意味の語がつけられた・・・言葉の巡り合わせとして、よくできた話だと思います。

まとめ

fertility は、fert(ferre=運ぶ・もたらす)+ile+ity で「実りをもたらす力」=肥沃さ・繁殖力。

  • 意味の中心・・・ferre「運ぶ・もたらす」。transfer/refer/offer/suffer と同じ一族
  • 本当の親戚・・・bear(運ぶ・産む)/birth/burden/bring。印欧祖語 *bher- でつながる
  • 覚え方のヒント・・・ローファットミルクの fat(たっぷり・豊か)。語源は別系統だが、英語の fat にも「豊かな」の意味がある

土が実りをもたらし、木が実をもたらす。fertility は、何かを生み出す力そのものを指す言葉です。アイデアにも、人にも使えます。

fertility の語源ワードマップ。中心は fertility(=実りをもたらす力)で、fert(ferre=運ぶ・もたらす)+ile+ity に分解。fer(運ぶ)系(transfer / refer / confer / prefer / offer / suffer / differ / circumference)、bear(産む・運ぶ)系(bear / birth / burden / bring / bier / barrow)、覚え方のヒント(ローファットミルクの fat=たっぷり・豊か。語源は別系統)の4クラスタに整理した図。
  • 語源・中心:fert(ferre=運ぶ・もたらす)+ile+ity =「実りをもたらす力」
  • 覚え方のヒント:ローファットミルクの fat → たっぷり・豊か(語源は別系統)
  • fer(運ぶ)一族:transfer/refer/confer/prefer/offer/suffer/differ/circumference
  • bear(本来語)一族:bear/birth/burden/bring/bier/barrow

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英単語を最小限の労力でマスターする「語源+パーツ分解」の全リスト。学術的に正確な語源データと、タイパ(時短)を追求した記憶フックを完全分離して掲載。芋づる式に派生語を暗記し、実務やニュースで使える英語力を最速で身につけましょう。

翻訳練習の解答

  1. 土の肥沃さはゆっくりとしか良くならない。でも、ちゃんと良くなっていく。
  2. その農家は、毎年春に自分の土地の肥沃さを確かめる。
  3. あなたのアイデアの豊かさには、その場にいる全員が驚かされる。
  4. この谷は、何世紀ものあいだ土の豊かさで知られてきた。
  5. 雨と日差しが、畑の肥沃さを取り戻してくれた。
  6. 出生率は、国によって大きく違う。
  7. 毎日の小さな習慣が、あなたの頭の豊かさを育てていく。
  8. 土の肥沃さは、そこに何を返したかで決まる。
  9. 科学者たちは、より少ない土地でより多くの食料を育てるために土壌肥沃度を研究している。
  10. 庭を豊かにするのは、辛抱強さだ。

NAWL(New Academic Word List)集録語

この単語は New Academic Word List(NAWL) に集録されています。NAWLは大規模な学術コーパスから抽出された960語のリストで、これらを覚えるだけで学術英語の約92%をカバーできます。論文や英字ニュースを読むとき、必ず出会う一語です。出典:New General Service List Project