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【語源で覚える】report|「ラポール」も「サポート」も、同じ「運ぶ」から出ている

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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カウンセリングや教育の研修に出ると、ほぼ必ず出てくる言葉があります。

「まずはラポールを築きましょう」

ラポール。英語で書くと rapport です。

並べてみてください。

report
rapport

母音が一つ違うだけで、あとは同じ形をしています。

これは偶然ではありません。report も rapport も、ラテン語の portare(運ぶ)から出た、同じ家の言葉です。さらに言えば、support(支える)も、import(輸入する)も、passport(パスポート)も、全部この家の住人です。

そして今回おもしろいのは、その「運ぶ」という一つの動作から、報告・信頼関係・支援という、職場や教室で毎日使っている三つの概念が、きれいに枝分かれしている点です。

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report の分解:re(戻して)+ port(運ぶ)

report は、ラテン語 reportare にさかのぼります。

re(戻して)+ portare(運ぶ)=「運んで戻す」

どこかへ行って、見たこと・聞いたことを、持ち主のところまで運んで戻す。それが report の原義です。

ここで、英語に入った当時の意味を見ると、少し意外なことがわかります。

report が英語に入ったのは14世紀末。そのときの名詞 report の意味は、「ある人から別の人へ運ばれてきた話」、そして「うわさ、ゴシップ」でした。

つまり最初の report は、書類ではなかったのです。人の口から口へ運ばれていく話のことでした。

「調査の結果をまとめた正式な文書」という、私たちがいちばん先に思い浮かべる意味が記録に現れるのは1660年代。原義から250年以上あとの、比較的新しい層です。

意味の層を時代順に並べると、こうなります。

時期report の意味
14世紀末運ばれてきた話、うわさ
15世紀初め(上の立場の人へ)提出する
1610年代法廷での審理の記録
1660年代調査結果をまとめた正式文書
1873年教師による生徒の学習・行動の公式評価
1885年(人の非行などを)告げ口する、通報する

15世紀初めの「上の立場の人へ提出する」という層に注目してください。ここが、のちのビジネス英語の report to(〜の直属である)につながっていきます。この点は後半でもう一度扱います。

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rapport:もう一度、相手のところへ運んでいく

次が rapport です。

rapport はフランス語から英語に入った言葉で、分解するとこうなります。

re(再び)+ apporter(持ってくる)=「また持ってくる」

そして apporter の中身は、ad(〜のほうへ)+ portare(運ぶ)です。

つまり rapport を最後まで分解すると、

re + ad + portare =「また、相手のほうへ、運んでいく」

report が「運んで戻す」なのに対して、rapport は「相手のほうへ、くりかえし運んでいく」。

この差が、そのまま意味の差になっています。report は一方向です。情報を上へ、あるいは依頼主へ運び戻して、そこで完結する。rapport は往復です。運んでいって、また運んでいって、それをくりかえすうちに、両者のあいだに通路のようなものができる。

英語に入ったのは1660年代。そのときの意味は「関係、つながり」という、かなり素朴なものでした。

心理学の世界で、セラピストと患者のあいだの深い信頼関係を指して rapport が使われるようになったのは1894年。それより前、1845年にはメスメリズム(当時の催眠術・動物磁気説)の文脈で使われた例があり、エドガー・アラン・ポーもこの語を使っています。

日本の対人援助職が「ラポール形成」と言うとき、そこで鳴っている音は、150年近く前の臨床現場から運ばれてきたものだ、ということになります。

なお、英語では rapport は build / establish とセットで使うのがふつうです。

build rapport with a student(生徒と信頼関係を築く)
establish rapport before giving feedback(フィードバックの前に信頼関係をつくる)

support:下から運び上げる

三つ目が support です。これは日本語の「サポート」として完全に定着していますが、中身を見たことのある人は多くありません。

sub(下から上へ)+ portare(運ぶ)=「下から運び上げる」

sub は「下」と覚えている人が多いと思いますが、support の sub は、ただ下にあるのではなく、「下から上へ」という方向を持っています。重さを下から受けて、持ち上げている。

だから support には、最初から次の三つの顔がありました。

・重さを支える(物理)
・人を助ける、味方して発言する(支援)
・耐える、持ちこたえる(我慢)

三つ目の「耐える」は、日本語の「サポート」には残っていない顔です。フランス語の supporter が今でも「耐える」の意味で使われるのは、この層が生きているからです。

support の意味も、年代で層になっています。

時期support の意味
14世紀末支える、助ける、耐える
15世紀初め生活費を出す、扶養する
1560年支えとなるもの(名詞・支柱)
1709年(演劇で)役を演じる
1889年主役の相手役を務める
1952年スポーツチームのファンである
1953年tech support(技術サポート)

15世紀初めの「扶養する」が、今の support a family(家族を養う)です。英語の support は、日本語の「サポート」よりずっと重いものを背負っています。だれかを support するというのは、気持ちの応援ではなく、生活を下から持ち上げるということです。

そして1952年の層が、サッカーの「サポーター」です。応援する人、ではなく、下から支え続ける人。スタジアムで声を出し続けるあの人たちの呼び名としては、ずいぶん正確な言葉だと思います。

ちなみに、ひざに巻くほうの「サポーター」も、下から支えるという意味では同じ語です。日本語でこの二つが同じカタカナになっているのは、偶然ではありません。

教育・支援の現場で使う port 一族

report・rapport・support は、対人援助や教育の文脈でまとまって出てきます。表で整理します。

語分解中心の意味
reportre(戻して)+ portare運んで戻す → 報告する
rapportre + ad(〜へ)+ portareくりかえし相手へ運ぶ → 信頼関係
supportsub(下から上へ)+ portare下から運び上げる → 支える
supportersupport + -er支持者、味方(15世紀初め)
supportivesupport + -ive支えになる、理解のある(1590年代)
reporterreport + -er報告する人(14世紀末ごろ)
reportedlyreported + -ly報道によれば

reporter について、一つ補足を。reporter が英語に現れたのは14世紀末ごろで、当時は「他人の言動を伝える人」という一般的な意味でした。しかも16〜17世紀には、しばしば悪い意味で使われています。つまり「告げ口する人」です。

新聞記者という意味で使われるようになったのは1798年から。そして、フランス語の reporter(記者)は、19世紀に英語から借りた言葉です。英語がフランス語から report をもらい、数百年後に、記者という意味をフランス語へ返した形になります。

中級者向け:report to と report card

ここからは、知っているつもりの report でつまずきやすいところを二つ。

一つ目は report to です。

She reports to the CFO.

これを「彼女はCFOに報告する」と訳すと、半分しか伝わりません。この report to は「〜の直属である」という、組織上の所属関係を表す言い方です。だれの下にいるか、だれが自分の評価をするかを示しています。

英語圏の求人票には、ほぼ必ず Reports to: という欄があります。ここに書かれているのが、採用された人の直属の上司です。

さらに、名詞としての報告先ではなく、報告する側の人を指す使い方もあります。

I have five direct reports.

これは「私には5人の直属の部下がいます」。報告書が5冊あるわけではありません。マネジメントの文脈でよく出てくる言い方です。

もう一つ、report for duty / report to work もあります。これは「出勤する、持ち場につく」。報告するのではなく、自分の体をそこへ運んでいく、という使い方です。原義の「運ぶ」が、ここでは比喩を通らずそのまま出ています。

二つ目は report card です。

教師が生徒の学習と行動について出す公式の評価、という意味の report が記録に現れるのは1873年。report card という形になるのは1913年のアメリカ英語です。

日本の「通知表」にあたるものですが、英語の report card はもっと広く使われます。

The city’s report card on air quality came out yesterday.

このように、組織や政策の成績表という比喩でも使われます。ニュース英語でよく見る用法です。

方向で読む port 一族

port 一族は、前についた接頭辞がそのまま「運ぶ方向」になります。ここを押さえると、一気に整理されます。

語接頭辞の意味運ぶ方向
importim(in)=中へ中へ運び込む
exportex =外へ外へ運び出す
transporttrans =横切って向こうへ運ぶ
reportre =戻して運んで戻す
supportsub =下から上へ下から運び上げる
deportde =離れて国外へ運び出す(国外追放する)
comportcom =ともに身を運ぶ → ふるまう
purportpur(pro)=前へ前へ運び出す → 趣旨、〜と称する
portable+able運べる
porter+er運ぶ人
portfoliofolio =紙紙を運ぶもの → 書類入れ、作品集
passportpass =通る港を通る許可証

purport については、少し寄り道の価値があります。

purportedly という副詞があり、意味は「〜とされている、伝えられるところでは」。これは reportedly とほとんど同じ意味です。

reportedly は re + portare、purportedly は pro + portare。

接頭辞が違うだけで、両方とも「運ぶ」の家から出て、ほぼ同じ場所に着地しています。ちなみに purportedly が記録に現れるのは1949年で、1812年の reported より新しい言葉です。

ニュース英語では、reportedly が「報道によれば」、purportedly が「そう主張されているが真偽は不明」というニュアンスで使い分けられることが多くあります。

英語本来語のほうの兄弟たち

ここからが、この語根のいちばん遠いところです。

portare のさらに奥には、印欧祖語の *per-(導く、通り越す)という語根があると考えられています。ラテン語側が portare(運ぶ)になった一方で、ゲルマン語側はまったく違う形になりました。

古英語の faran(行く、旅する)です。

ここから出た言葉を並べると、こうなります。

語意味つながり
fare運賃もとは「旅する」
farewellさようならfare well =「よい旅を」
welfare福祉wel + faran =「うまくやっていること」
wayfarer旅人道を行く人
thoroughfare大通り通り抜けていくところ
ferryフェリー運ぶ(とくに水の上を)
ford浅瀬、渡れるところ渡る場所
fjordフィヨルド「渡るところ」が語源と考えられる

ここに welfare が入っているのは、対人援助の仕事をしている人には少しおもしろいところだと思います。

福祉を意味する welfare は、「うまく旅をしている状態」です。well(よく)+ fare(旅する、やっていく)。

How are you faring? という古風な言い回しが今も残っていますが、これは「どんな旅をしていますか」と聞いています。だれかの welfare を考えるというのは、語源をたどれば、その人がちゃんと旅を続けられているかを気にかける、ということになります。

report・rapport・support と welfare が、はるか上流で同じ水源につながっている。これは、たまたまそうなったというだけの話ですが、言葉の並びとしては記憶に残ります。

注意点:同じ綴りでも別の家

いくつか、まぎらわしいものを整理しておきます。

porter には二つあります。荷物を運ぶ人の porter は portare(運ぶ)から。ホテルや建物の門番の porter は porta(門)から。どちらも同じ印欧祖語の語根につながるとされますが、直接の親は別です。

port(ポートワイン)は、ポルトガルの都市ポルト(Porto)に由来する名前で、港の port とつながりはありますが、運ぶ・報告するとは別の話です。

report と似て見える repose、repost、reportage のうち、reportage(ルポルタージュ)だけは report の一族です。1877年にフランス語から英語に入りました。日本語の「ルポ」はこの語の短縮です。

語源メモ

・portare(運ぶ)は、印欧祖語 *per-(2)「導く、通り越す」から出たとされます。ただし etymonline もこの語根について「might form all or part of(一部または全部を形成している可能性がある)」という書き方をしており、一族の範囲には推定が含まれます。ferry や fjord との血縁も、確定事項ではなく有力な再構として扱うのが正確です。

・ユーフラテス川(Euphrates)がこの語根につながるという説があります。古代ペルシャ語 Ufratu、さらにアヴェスター語 huperethuua「渡りやすい」から、という流れです。ただし etymonline は perhaps(おそらく)を付けており、断定はされていません。

・rapport の心理学用法について、1894年という年代は、セラピストと患者のあいだの強い調和という意味での使用が記録された年です。それ以前、1845年にメスメリズムの文脈で使われた例があり、この語が臨床の現場に入ってきた経路は一本道ではありません。

・report が「告げ口する、通報する」の意味を持つのは1885年から。I’m going to report you. は、ふざけて言う場面もありますが、本来はかなり強い言い方です。

・direct report(直属の部下)という名詞用法の定着時期は、辞書類に明確な記載が見当たりません。1970年代の人事管理の文献に例があり、1980年代に一般のビジネス記事に出てくる、という程度までは確認できますが、初出年として示せる確かな資料はありませんでした。

翻訳練習

次の10問を日本語に訳してみてください。答え合わせは記事の最後にあります。

  1. The committee will report its findings to the board next month.
  2. She reports directly to the chief financial officer.
  3. You do not have to carry this alone, and your team is here to support you.
  4. Building rapport with a new client takes more time than most people expect.
  5. Please attach all supporting documents to your application.
  6. The delay was reportedly caused by a small error in the schedule.
  7. A good teacher supports a student without taking over the work.
  8. You will be asked to report for duty at eight in the morning.
  9. A report card tells you very little about who a child really is.
  10. Rapport is not built in a day, and you carry it back, little by little.

TOEIC での出方

report と support は、TOEIC では次の形で頻繁に出ます。

report to + 人(〜の直属である)
report to + 場所(〜へ出向く、出頭する)
submit a report(報告書を提出する)
supporting documents(添付書類、裏づけ書類)
in support of(〜を支持して)
technical support(技術サポート)
as reported(報告のとおり)

Part 5 では、report to の後ろに人が来るか場所が来るかで意味が変わる点が問われることがあります。Part 7 では、求人票の Reports to: の欄を読ませて、組織図の上下関係を問う設問が出ます。

supporting documents は、添付の案内メールで定番の言い回しです。「サポートする書類」ではなく「主張を裏づける書類」と理解しておくと、設問で迷いません。

まとめ

report の中心は、re(戻して)+ portare(運ぶ)。見てきたこと、聞いたことを、相手のところへ運んで戻す。それが report です。

そこから少し向きを変えると、相手のほうへくりかえし運んでいく rapport になり、下から運び上げる support になります。

報告も、信頼関係も、支援も、やっていることは同じです。何かを、だれかのところへ運んでいる。

report の語源ワードマップ。中心はラテン語 portare(運ぶ)。report の枝に reporter・reportedly・reportage・report card、支える枝に support・supporter・supportive、関係の枝に rapport・rapporteur、方向の枝に import・export・transport・deport・purport、英語本来語の枝に fare・farewell・welfare・ferry・ford を配置した図。

・語源・中心:portare(運ぶ)、印欧祖語 *per-(導く、通り越す)
・report の枝:report / reporter / reportedly / reportage / report card
・支える枝:support / supporter / supportive / self-supporting
・関係の枝:rapport / rapporteur
・方向の枝:import / export / transport / deport / comport / purport
・英語本来語の枝:fare / farewell / welfare / ferry / ford / fjord

語彙リストの収録状況

report は NGSL(一般英語の基礎語彙リスト)に収録されています(166位・頻度67.56)。派生語の reportedly は BSL(ビジネス基礎語彙リスト)に収録されています。

rapport はいずれの基礎語彙リストにも収録されていませんが、日本語では「ラポール」として対人援助の現場に定着しており、report の理解を助ける入り口として本記事で扱いました。

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・infer の語源(ferre「運ぶ」系・report とは別の「運ぶ」)https://isseisuzuki.org/infer/
・sustainable の語源(sub + tenere「下から支えて保つ」)https://isseisuzuki.org/sustainable/
・👇 語源パーツの全リスト https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/

【タイパ最強】英単語の語源・パーツ分解全リスト|語源×記憶フックで芋づる式に覚える
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翻訳練習の解答

  1. 委員会は来月、調査結果を役員会に報告する予定です。
  2. 彼女は最高財務責任者の直属です。
  3. これを一人で抱える必要はありません。チームはあなたを支えるためにいます。
  4. 新しいクライアントと信頼関係を築くには、たいていの人が思っているより時間がかかります。
  5. 申請書には、裏づけとなる書類をすべて添付してください。
  6. 報道によれば、その遅れはスケジュール上の小さな誤りが原因でした。
  7. よい教師は、生徒の作業を取り上げてしまうことなく、生徒を支えます。
  8. あなたは朝8時に持ち場につくよう求められます。
  9. 通知表は、その子が本当はどんな人間なのかを、ほとんど教えてくれません。
  10. 信頼関係は一日では築けません。少しずつ運び戻していくものです。