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【語源で覚える】buffer|バッファの “buff”、batter(打つ)の仲間?

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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「バッファを持たせる」「バッファゾーン」「動画のバッファリング」・・・カタカナの「バッファ」は、すっかり日常語になりました。意味もだいたい伝わります。衝撃や負荷を受け止めて、和らげるもの。

ではこの buffer、綴りをじっと見てください。頭に buff がいます。野球の batter(打者)、bat(バット)。どれも「打つ」のイメージで、字面もどこか似ています。「打撃を受け止めるから buffer、やっぱり打つ系の親戚か」・・・そう思えてきませんか。

結論から言うと、ここは別ルートです。でも、つながっていないと分かったあとに残る正体のほうが、ずっと記憶に残ります。buffer の正体は、音でした。

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buffer を分解してイメージで覚える|中心は「ボフッ」という鈍い音

まず、記憶の入り口として bat・batter(打つ)を使います。「打撃 → 受け止める → buffer」。この流れでイメージを作ってしまってかまいません。意味の方向は合っています。

※ ただし正確には、buffer の buff と、bat・batter は語源が別ルートです。似ているのは字面と意味の雰囲気だけ。この記事の後半で、両者をきちんと分けて整理します。

そのうえで、buffer の意味の中心に進みます。

buff(打たれて鈍い音を立てる)+ -er(〜するもの)

ポイントは、この buff が「強く打つ」ではないことです。16世紀半ばの英語に、buff「打たれたときに鈍い音を立てる」という動詞がありました(今は使われません)。さらにさかのぼると古フランス語の bufe「殴打・平手打ち/風のひと吹き」で、これは柔らかいものが打たれる音をまねた擬音語だろうとされています。

つまり、カーン!でもバシッ!でもなく、ボフッ。

クッションを叩いたときの、あの吸い込まれるような音です。鋭い衝撃が、柔らかいものに当たって鈍い音に変わる。その音そのものが言葉になり、「ボフッと受け止めるもの」= buffer になりました。

意味と語源が、音のレベルでぴたりと重なっています。buffer の正体は「打つ道具」ではなく、「ボフッという音を出すもの」だったわけです。

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buffer の基本の意味と使い方

buffer は「緩衝するもの」が中心の意味で、物理的なものにも、抽象的なものにも使えます。

  • a buffer zone(緩衝地帯)
  • a buffer against inflation(インフレへの備え)
  • buffer stock(安全在庫)
  • The trees act as a buffer.(木々が風よけになっている)

動詞としても使えます(1886年から)。

  • Savings buffer you from sudden expenses.(貯金が急な出費から守ってくれる)

IT分野の「バッファ」は、データを一時的にためておく領域のこと。これも「処理の速さの差をボフッと吸収する場所」と考えると、同じイメージの延長線上です。動画の「バッファリング」も、読み込みの遅れを吸収している時間ですね。

日本語の「バッファを持たせる」(余裕をとっておく)という使い方は、英語でも leave a buffer / build in a buffer の形で通じます。

buffer と bat・batter|似ているけれど別の家系

ここで種明かしです。「打つ」を表す英単語には、大きく2つの流れがあります。

buff 系bat / batter 系
さかのぼると古フランス語 bufe(殴打・ひと吹き)ラテン語 battuere(打つ)/古英語 batt(こん棒)
性質擬音語(音をまねた言葉)ケルト系の「棒」の語+ラテン語の「打つ」
音のイメージボフッ(鈍い・柔らかい)バシッ(鋭い・固い)
代表語buffer, rebuff, buffoonbat, batter, battle, battery, debate

おもしろいのは、音のイメージがそのまま意味の方向を決めていることです。

  • 鈍い音の buff 系 → 受け止める、はねつける、和らげる
  • 鋭い音の bat 系 → 打つ、戦う、争う

buffer(緩衝材)と battery(暴行・電池)が、まったく違う顔をしているのは偶然ではなかった、というわけです。

bufe(ボフッ)でつながる単語ネットワーク

buffer の家系は小さいのですが、顔ぶれが意外です。

単語意味イメージ
buffer緩衝材、バッファボフッと受け止めるもの
buffet(動詞)(風・波が)打ちつける平手打ちする → 打ちつける
rebuffはねつける、きっぱり断るre(戻す)+ buff(ふっと吹く)=押し返す
buffoon道化師、おどけ者ほおをプッとふくらませる仕草から
blindman’s buff目隠し鬼(遊び)buff=軽い打撃。鬼を押しやって遊ぶ

rebuff(はねつける)は、buffer と同じ「ボフッ」の仲間。押してきたものを、ボフッと押し返すイメージです。buffer が「受け止める」なら、rebuff は「押し返す」。同じ音から、守りと拒絶の両方が生まれました。

buffoon(道化師)がここに入るのは意外ですが、イタリア語の buffare「ほおをプッとふくらませる」から来ています。これも「ふくらませて、ふっと吹く」音の言葉です。

注意|ビュッフェ(buffet)は別の単語

ここは混ざりやすいので、はっきり分けておきます。

  • buffet /ˈbʌfɪt/(バフィット)=打ちつける ・・・ bufe 系
  • buffet /bəˈfeɪ/(バフェイ・ビュッフェ)=立食形式の食事 ・・・ 無関係

食事の buffet は1718年に「食器棚・サイドボード」の意味でフランス語から入った別の語で、語源もよく分かっていません。綴りが同じでも、発音も家系も違います。

battuere(打つ)でつながる単語ネットワーク

比較のために、bat・batter 側も見ておきます。こちらは大家族です。

単語意味語源
batバット、こん棒古英語 batt〈こん棒〉+ラテン系 battre の影響
batter打者/激しく打つ/衣のバッター液battuere〈打つ〉=「打ち混ぜたもの」
battery電池、バッテリー/暴行battuere〈打つ〉=「打つこと」
battle戦いbattualia〈戦闘訓練〉← battuere
battalion大隊battalia〈戦闘〉の拡大形
combat戦闘、立ち向かうcom〈互いに〉+ battuere
debate討論、議論de〈完全に〉+ battuere=打ち合う
abate和らぐ、減少するad〈〜へ〉+ battuere=打ち下ろす

ここで目を引くのが abate(和らぐ)です。意味は buffer にとても近いのに、家系は正反対の「打つ」側。英語には、「衝撃を和らげる」という一つの発想にたどり着くルートが、少なくとも2本あったことになります。

debate(討論)も効きます。議論は、言葉で打ち合うこと。日本語の「論戦」とまったく同じ発想ですね。

buff にはもう一つの家系がある|バッファロー由来の buff

さらに紛らわしいのですが、英語の buff にはまったく別語源のもう一つの buff があります。

こちらは buffalo(水牛)由来です。1570年代の buffe leather「水牛の革」が縮まって buff となり、そこから意味が枝分かれしました。

単語・表現意味由来
buff(名詞)バフ革、淡黄褐色水牛の革の色
buff(動詞)磨く、つやを出すバフ布で金属などを磨く(1849年)
buff(形容詞)筋肉質の、引き締まった「磨いて魅力的にする」から(1980年代)
in the buff素肌で、裸で「革・皮膚」の連想から(1600年頃)
a movie buff映画マニア、愛好家ニューヨークの消防団員の淡黄褐色の制服から(1903年)

そして buffer にも、この系統から来た別の意味があります。1854年に記録された buffer は「磨く人・磨く道具」。緩衝材の buffer とは、綴りが同じだけの他人です。

日本語の「バッファ」はすべて緩衝の意味なので、実用上は迷いませんが、辞書で buff を引いたときに意味がバラバラに見えるのは、こういう事情があるからです。

派生語|buffer まわり

単語品詞意味発音
buffer名詞緩衝材、緩衝装置、バッファバファー /ˈbʌfər/
buffer動詞衝撃を和らげるバファー /ˈbʌfər/
buffered形容詞緩衝されたバファード /ˈbʌfərd/
buffering名詞バッファリング、緩衝作用バファリング /ˈbʌfərɪŋ/
buffer zone名詞句緩衝地帯―
rebuff動詞・名詞はねつける/拒絶リバフ /rɪˈbʌf/

TOEIC・英検での出題傾向

正直に言うと、buffer は TOEIC の超頻出語ではありません。ただ、出るとしたら Part 7 の記事やレポート、Part 4 の説明文で、buffer stock(安全在庫)、buffer zone(緩衝地帯)、a buffer against ~(〜への備え)といった形です。ビジネス実務では、スケジュールや在庫の話で日常的に使われます。

英検では準1級以上の読解で見かけるレベル。優先して暗記する語というより、出会ったときに意味が取れればいい語です。

むしろこの記事の実利は、buffer そのものより、ここから広がる battuere 一族(battle・debate・combat・abate)のほうにあります。こちらは TOEIC・英検ともに頻出です。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. A buffer protects what matters most.
  2. You need a buffer between work and rest.
  3. Leave a small buffer in your schedule today.
  4. The line of trees acts as a buffer against the wind.
  5. Her quiet words were a buffer for his nerves.
  6. A good habit can buffer you from daily stress.
  7. The park is a green buffer around the busy city.
  8. Save a little money as a buffer for the future.
  9. Time is the gentlest buffer for a tired heart.
  10. You don’t have to be stronger; you can build a buffer.

語源メモ|「ボフッ」が言葉になるまで

buffer(緩衝するもの)は1835年の記録が最初です。すでに使われなくなっていた動詞 buff「打たれて鈍い音を立てる」(16世紀半ば)に、「〜するもの」を表す -er が付いた形。

その buff は、古フランス語の bufe「殴打、平手打ち、風のひと吹き」から来ています。bufe の由来については、柔らかいものが打たれる音をまねた擬音語だろう、というのが辞書の見方です。語源をたどった先に、別の意味の単語ではなく「音」があるタイプの語ですね。

1858年には「対立する力の衝撃を中和するもの」という比喩的な意味に広がり、1886年には動詞としても使われ始めました。鉄道車両の緩衝器、化学の緩衝液、コンピュータのバッファと、新しい技術が出てくるたびに、この語が呼び出されてきたことになります。

一方、冒頭で入り口に使った bat(こん棒)は、古英語の batt にさかのぼります。もとはイングランド西部の言葉で、おそらくウェールズ語などケルト系の借用(アイルランド語・ゲール語の bat, bata「棒、こん棒」と比較)。後に古フランス語 batte、後期ラテン語 battre「打つ」の影響を受けて定着しました。batter(打つ)はラテン語 battuere「打つ」から古フランス語経由で14世紀初頭に入った語で、battle・battery・combat・debate・abate もすべてこちらの系統です。

bufe と battuere・batt は、辞書上つながりが確認できません。どちらも「打つ」を表し、どちらも由来がやや不確かという共通点はありますが、同じ語源とは言えない・・・というのが現時点の正確な言い方です。この記事で bat・batter を入り口に使ったのは、あくまで覚えるための手がかりとしてです。

なお、buffalo 由来の buff(磨く・淡黄褐色・〜マニア)は、ここまでの話とはまったく別の語。buffer に「磨く道具」の意味(1854年)があるのは、そちらの系統からの派生です。

まとめ

buffer は、buff(打たれて鈍い音を立てる)+ -er で「ボフッと受け止めるもの」=緩衝材・バッファ。

  • 意味の中心・・・鋭い衝撃を、鈍い音に変えて吸収する
  • 語源・・・古フランス語 bufe(殴打・ひと吹き)。柔らかいものが打たれる音の擬音語
  • bufe 一族・・・rebuff(はねつける)/buffoon(道化師)
  • 別系統・・・bat・batter・battle・battery・debate・abate は battuere(打つ)系。buffer とは別ルート
  • もう一つの別系統・・・buffalo 由来の buff(磨く・淡黄褐色・〜マニア)

バッシュ!ではなく、ボフッ。この音の違いが、そのまま意味の違いになっています。衝撃を受け止めるものは、固くなくていい。柔らかいほうが、よく効くわけです。

buffer の語源ワードマップ。中心は buffer(=ボフッと受け止めるもの)で、buff(打たれて鈍い音を立てる)+-er に分解。意味の中心(打たれて鈍い音を立てる+〜するもの)、bufe(ボフッ)系の仲間(buffer / buffet動詞 / rebuff / buffoon)、battuere(打つ)系の仲間(bat / batter / battle / battery / combat / debate / abate)、覚え方のヒント(bat・batterの字面から入るが実際は別語源)の4クラスタに整理した図。
  • 語源・中心:buff(ボフッと鈍い音を立てる)+ -er =「衝撃を吸収するもの」
  • 覚え方のヒント:bat・batter(打つ)の字面から入る(※実際は別ルート)
  • bufe(ボフッ)一族:buffer/buffet(動詞)/rebuff/buffoon
  • battuere(打つ)一族:bat/batter/battle/battery/combat/debate/abate
  • buffalo 由来の別 buff:buff(磨く)/in the buff/movie buff

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翻訳練習の解答

  1. 緩衝材は、いちばん大切なものを守ってくれる。
  2. 仕事と休息のあいだには、緩衝が必要だ。
  3. 今日は、予定に少しだけ余裕を残しておこう。
  4. その並木が、風よけの役割を果たしている。
  5. 彼女の静かな言葉が、彼の緊張をやわらげた。
  6. よい習慣は、日々のストレスからあなたを守ってくれる。
  7. その公園は、にぎやかな街を囲む緑の緩衝地帯だ。
  8. 将来への備えとして、少しお金を蓄えておこう。
  9. 時間は、疲れた心にいちばんやさしい緩衝材だ。
  10. もっと強くなる必要はない。緩衝を作ればいいだけだ。

BSL(Business Service List)集録語

この単語は Business Service List(BSL) に集録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project