まず、結論から
お子さんの受験勉強のために、親にできる一番大切なことは・・・実は「勉強をせかすこと」ではありません。
長く大学で学生を迎える側にいて、そしてわたし自身も一人の親として子どもの受験を見てきて思うのは、伸びていくお子さんの家庭がしていたのは、次の3つだったということです。
①お子さんの「今いる場所」を正しく知ること
②その子に合った環境を選ぶこと
そして③手を出しすぎずに、待つこと。
英語力そのものより、この「方向を間違えない環境づくり」のほうが、最後にものを言います。
焦る必要はありません。むしろ、いったん立ち止まって読んでいただけたら・・・そんな気持ちで、この記事を書いています。
中学・高校教諭を経て大学で英語を教えるようになり26年。こんなことを感じています 👇
| つい、やってしまいがちなこと | 伸びた家庭がしていたこと |
|---|---|
| 問題集や参考書を買い足す | 今つまずいている場所を理解してから、必要なものに絞る |
| 「単語くらい覚えなさい」と言う | 英語の音に慣れさせ英語力の基礎を付けさせる |
| 資格をたくさん取らせようとする | 受験で本当に効くものだけに絞る |
| 進み具合を管理して口を出す | 伴走役は第三者に任せ、親は待つ |
この表の右側が、これからお話しする内容です。難しいことは一つもありません。順にお話ししていきます。
大学受験の英語は「量」より「向き」で決まる
お子さんが机に向かっている姿を見ると、つい「もっと勉強しなさい」と言いたくなります。その気持ち、よく分かります。でも、長く受験生を見てきて感じるのは、結果を分けるのは勉強の「量」ではなく「向き」だということです。
「向き」というのは、二つあります。
一つは、ゴールの定め方です。
志望校を一つに決め打ちする必要はありません。むしろ、行きたい高校や大学を数校ゆるやかに絞って、その範囲の出題傾向をつかむ。そこから逆算して「じゃあ今、何を優先するか」を決める。
この順番だと、同じ勉強時間でも中身がまるで変わってきます。傾向を知らないまま量だけ増やすのは、地図を持たずに長い距離を歩くようなもの・・・どれだけ歩いても、目的地に近づいているかどうか分からないんです。
もう一つは、学習の順序です。
つまずいたポイントをそのままにして先へ進み、量でカバーしようとすると、どうしても無駄が増えます。その典型が、単語力と音読。
この二つを確実に身につけるだけで、その後の伸び方がはっきり変わります。逆にここが抜けたまま、周りと同じ勉強を「なんとなく」続けたり、大人数のクラスで一律の授業を受け続けたりすると、
その子に本当に必要な基礎が置き去りになってしまう。量をこなしているのに伸びない、という状態は、たいていここから来ています。
※語彙と速音読の具体的なやり方は、別記事で詳しくお話ししています。ここでは「この二つが土台になる」とだけ、覚えていただければ十分です。
英検3級に落ち学生が、この音読の取り組みで海外のニュース番組に取り組めるようになりました。
👉 〔関連記事〕【英語速音読の手順】1万人指導の成果データと福士蒼汰・山下智久の音読勉強法
英語は語源とイメージですぐ覚え、関連する単語も芋づる式に覚えられます。
まず立ち止まって、見極めたいこと
ここは、気持ちが焦っている親御さんにこそ、いったん立ち止まって読んでいただきたいところです。
お子さんの成績が思うように伸びないと、「どこかいい塾はないか」「今すぐ何かさせなければ」と気持ちが急いてしまう。親であれば当然の反応だと思います。わたしも同じ、子を持つ親ですから、その焦りはよく分かります。
ただ、先にお話しした通り、大事なのは「向き」と「順序」でした。だとすれば、まず見極めたいのは・・・
お子さんの今の弱点はどこにあって、それをきちんと見つけて、正しい順序で組み立て直してくれる場所はどこか、
ということになります。「有名だから」「みんなが行っているから」ではなく、その子の今の状態を見てくれるかどうか。これは英語に限らず、どの教科にも言えることです。
勉強につまづいている生徒・学生がよく言うのは
「どこがわからないか、わからない」「何を質問すればよいかわからない」
なんです。勉強を進める上で、自分の立ち位置がわからない。これが一番つらく、やる気がなくなる理由でもあります。
塾やコーチングが必要かどうかは、その次の話です。必要かどうかは、お子さんの状態で決まります。だからこそ、まずは焦って動く前に、「今、何が足りていないのか」「どこでつまづいているのか」を一度落ち着いて見てあげてほしいのです。その見極めについては、この記事の最後で、もう一度触れます。
英検・資格は受験で有利になる|ただし「たくさん」より「効くものを絞る」
ここは、保護者の方が具体的に知りたいところだと思います。

まず知っておいていただきたいのは、英検などの資格は、高校受験でも大学受験でも、有利に働くことがあるということです。ある級を持っていると出願の条件を満たせたり、点数として加算されたり、試験そのものが免除されたり・・・実際に、そうした優遇の仕組みを設けている学校や大学があります。ですから「持っていて損はない」という方向性は、たしかにあります。
ただし、ここで一つ大事な注意があります。その扱いは、学校・自治体・大学によって本当にばらばらなんです。同じ級でも、大きく評価するところもあれば、まったく関係ないところもある。だからこそ・・・
まじめなご家庭ほど、「あれも」「これも」と資格を積み増していきがちです。気持ちはよく分かります。
何か持たせておけば安心だ、という親心ですよね。でも、大学で学生を迎える側にいた実感として言うと、受験で効くのは「数」ではなく「効くものを絞れているか」でした。
手を広げるほど一つひとつが浅くなり、かえってお子さんが疲れてしまう。
ですから、「とりあえず取らせる」のではなく、お子さんの志望先が実際にどう扱っているかを確かめてから決める。これが遠回りに見えて、一番の近道です。
※どの県・どの大学が、どの資格をどう優遇するのか・・・具体的な一覧は、数が多く、年度によっても変わりやすいので、別記事にまとめています。志望先を絞る際の材料に、あわせてご覧ください。
👉 〔関連記事〕高校・大学受験で有利になる資格一覧(近日中に公開予定)
👉 〔関連記事〕英検優遇の地域別・大学別まとめ(近日中に公開予定)
難関校を目指すご家庭ほど、「早めの設計」が効く
もし、お子さんが難関校を目指しているなら・・・ここは、少しだけ踏み込んでお話ししておきたいところです。少子化の影響で、進学はしやすくなったと言われます。しかし、これは難関校には当てはまりません。難関校はすぐれた受験生だけを入学させたい買い手市場であるとも言えます。
難関校の英語は、基礎点だけでは差がつきません。そのレベルを受ける子は、基本的なところはみんな取ってきます。
最後に合否を分けるのは、語彙力の広さと深さ、長文を速く正確に処理する力、記述で崩れない対応力・・・いわば「差がつくひと押し」の部分です。
だからこそ、早い段階で「今どこまで来ていて、あと何が足りないのか」を正確に測っておくことの値打ちが、一般的な受験よりずっと大きくなります。
ここで一つ、誤解を解いておきたいことがあります。「早く始める」とは、詰め込みを早く始めることではありません。むしろ逆です。早めに設計しておくほど、直前期に慌てて量で埋める必要がなくなる・・・つまり、早さは「余白」を生むためのものなんです。
じつは、わが家でもこんなことがありました。息子が共通テストの1週間前、机に向かうどころかゲームばかりしていて、さすがに一度たしなめたんです。
ところが後で分かったのですが、模試ではとっくに基準をクリアしていて、本人には余裕があった。慌てていたのは、親のわたしのほうだったわけです。今になって思えば、あのとき直前で落ち着いていられたからこそ、当日も力が出せたのでしょう。
直前に冷静でいられる子ほど、本番でパフォーマンスが出やすい・・・これは、多くの受験生を見てきた実感とも重なります。
そしてもう一つ、大学で教える側に立って感じることをお話しします。わたしは東京の某難関大学でも教えてきましたが、受験期に「自分なりの勉強法」をしっかり考え抜いた子は、大学に入ってからの伸びが違います。
学びへの前向きさが、はっきりと表れる。一方で、詰め込みだけで押し切って入ってきた学生は、入学した時点ですでに燃え尽きていることが少なくない。
せっかく難関を突破したのに、大学の学びにうまく適応できない・・・そういう姿を、何度も見てきました。受験期の「どう学ぶか」は、合否のためだけのものではなく、その先の何年もに効いてくるのだと思います。
最後にもう一点。レベルが上がるほど、我流や身内の指導では手が届かなくなるのも早い。基礎のうちは家庭でも支えられますが、難関の「差がつくひと押し」は、現状を客観的に測って設計してくれる第三者がいるかどうかで、大きく変わってきます。
難関を目指すご家庭ほど、早い段階で一度、専門家の目を入れておく・・・その一手が、あとになって効いてきます。
親がやりがちで、逆効果になること
ここは、親だった頃の自分を振り返りながら、正直にお話しします。
親が逆効果なことをしてしまうのは・・・たいてい、不安が先に立つからです。とくに、自分自身が受験でうまくいかなかった経験のある親ほど、その傾向は強いように思います。
「同じ思いをさせたくない」という愛情が、いつのまにか焦りに変わって、お子さんに向いてしまう。親御さんがそうなってしまうのは、本当に自然なことだと思います。
そのうえで、少しだけ、わたし自身のことをお話しさせてください。
わたしは、息子に「勉強しなさい」と言ったことが、ただの一度もありませんでした。えらかったからではありません。仕事柄、子どもの学びというものをある程度見てきたぶん、そこまで大きな不安を抱かずにいられた・・・ただ、それだけのことなんです。
でも今になって振り返ると、あのとき不安をぶつけずにいられた、その距離感が、かえってよかったのだと思っています。
なぜ「勉強しなさい!」が逆効果なのかは、もう多くの方がご存じだと思います。ではどう声をかければいいのか。おすすめしたいのは、問い詰めるのではなく、そばにいる人の言葉です。
「どこまで進んだ?」「調子はどう?」「何か要るものある? 参考書とか」
同じ気にかけるのでも、これなら圧になりません。見張られている、ではなく、気にかけてもらえている・・・お子さんが受け取るものが、まるで変わります。ただ、これもスランプの時には逆効果になる場合もありますから注意が必要です。
スランプについて。伸び悩む時期は、誰にでも必ず来ます。そして、そのとき一番焦っているのは、ほかでもないお子さん本人なんです。難関校を目指すお子さんほど、スランプに陥った時のストレスは強いものです。
その姿を見て親のほうが不安になり、つい「ちゃんとやってるの?」と言ってしまう・・・これは、火に油を注ぐようなものです。
「これはスランプかな」と感じたときは、いっそ思い切って、気分転換にどこかへ連れ出すくらいの余裕があっていい。遠回りのようでいて、そのほうが立ち直りは早かったりします。
大学でも三者面談などがある時代です。希望者だけですが。その場で私がよく申し上げるのは、
親は揺れてもいい。でもぶれないでいただきたい。
信頼して、余計なプレッシャーはかけない。でも、ちゃんと見ているよ・・・。その距離感が、お子さんにとっては一番安心できるのだと思います。親が肩の力を抜くことが、めぐりめぐってお子さんの英語にも効いてくる。不思議ですが、本当にそうなんです。
まとめ|親の役割は「伴走者を選ぶこと」と「待つこと」
最後に、親にとって一番の鬼門を、お話しさせてください。
親だった時期を振り返って、しみじみ思うのは・・・
身内は、家族の勉強を教えられない
ということです。
教えないほうがいい、と言ってもいいくらいです。近すぎるんですね。うまくいかないと過剰に期待し、つまずくと必要以上にがっかりしてしまう。
その焦りや失望感は、教える相手が我が子であるかぎり、どうしても避けられません。そして、焦りは、親が思う以上にお子さんに伝わります。
だからこそ、勉強そのものは第三者に委ねて、親は少し離れた場所から見守る。これが、遠回りのようでいて、一番いい距離感なのだと思います。
塾やコーチングのありがたいところは、指導の経過を折々に報告してくれることです。その報告を受けながら、親はお子さんの状態を、感情に飲まれずに冷静に把握できる。近くにいすぎないからこそ、かえってよく見える・・・そういうことが、あるんです。
もし今、「うちの子、何が足りないんだろう」と迷っておられるなら、まずは第三者に、お子さんの現状を客観的に見てもらう・・・というのも一つの手だと思います。
焦って何かを決める必要はありません。ただ、今いる場所を知ることは、次の一歩の向きを、そっと定めてくれます。そのためには、少しだけ早く相談先の情報を探しておくことが必要です。
その具体的な選び方については、次の記事で詳しくお話ししています。
👉 〔関連記事〕塾・コーチングは必要?|効くお子さん・効かないお子さんの見分け方(近日中に公開)
よくある質問
Q. 英語が苦手なまま高校生になりました。今からでも間に合いますか?
A. 間に合います。ただし、苦手なところを飛ばして量を増やすのではなく、どこでつまずいているかを見つけて、そこから順序立てて組み直すことが前提です。「向き」と「順序」さえ整えば、残りの時間は十分に生きてきます。
今は英語の勉強ができなくても大学に入れる時代になりました。それでも手順をしっかり踏めば、海外のニュース番組にも取り組めるくらいになります。
Q. 親は英語の勉強を教えるべきでしょうか?
A. 無理に教える必要はありません。むしろ、身内が教えると感情の距離が近すぎて、お互いにしんどくなりがちです。勉強は第三者に任せ、親はお子さんの体調や気持ちを気にかける・・・その役割分担のほうが、うまくいくことが多いです。
筆者:鈴木一世|大学教員・心理カウンセラー。中学・高校教員を経て、長く教育と相談の現場で、学生とその保護者に向き合ってきました。
英語リスキリングとキャリアの再構築|1万人のデータが証明する『やり直し』学習法|鈴木一世


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