PR

就職氷河期世代の未来|2040年問題 生き抜くための希望のシナリオ

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

▶︎ 詳しいプロフィールはこちら

就職氷河期世代が、いよいよ年金世代へと突入する時代が見えてきました。

「このままじゃ老後が怖い」「働き続けるしかないの?」——そんな不安を抱える人は少なくありません。

この記事では、2040年前後に待ち受ける現実をデータとともに見つめ、厳しい現実と向き合いながらも未来を切り開くためのヒントを探ります。

以下記事の公開予定です。

「就職氷河期世代の未来を考えるシリーズ」

暗い未来予想で終わらせず、「どう生きるか」の道筋を一緒に考えていきましょう。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

就職氷河期世代は2040年に何歳になり、何が起きる?:直面する現実と「2040年問題」

【2040年問題】就職氷河期世代の未来|年金・雇用・老後をどう生き抜くか

就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の1993年~2004年頃の超就職難に卒業期が重なった世代(概ね1970~1984年生まれ)です。

当時、新卒採用を大幅抑制した企業方針により、この世代の大学卒業者の就職率は平均69.7%まで落ち込み、それ以前以降の平均(80.1%)を10ポイント以上下回りました。

この「失われた世代」はキャリア初期の躓きが長期に及び、非正規雇用の増加や低所得、未婚率上昇といった形で今なお影響が続いています。

親に依存するまま中高年に達し「8050問題」(80代親と50代無職子)を引き起こし、さらに2040年前後に自らが高齢化する際には日本の社会保障を揺るがす時限爆弾になるとも言われます。

政府もこの深刻な課題に対し支援策を講じていますが、問題の根深さに対して介入が遅く、支援の認知度も低いなど課題が残ります。

現在の就職氷河期世代が抱える課題とは?

まず、この世代の規模感と現状を押さえましょう。

日本総研の推計では、1970~1982年生まれの就職氷河期世代は約2,300万人おり、そのうち約55万人が無職、約70万人が望まない非正規に甘んじているとされています。

正規雇用に就けず不安定な立場が長引いた結果、低収入・低貯蓄の状態で中年期を迎えた人が多いのが特徴です。

この世代は就職難という構造的要因の被害者であり、企業の採用抑制という決定が若年世代に集中した「傷痕効果」によって本人の努力では覆せない不利益を被りました。

その影響は個人の経済基盤だけでなく、家族形成や人間関係の構築にも及び、生涯未婚や孤立者が増えています。

現時点でも中高年の引きこもりは推計61.3万人に上り(40~64歳、2018年度調査)、若年層(15~39歳の54.1万人)を上回る深刻な状況です。

こうした社会からの孤立層は将来の生活困窮リスクも高く、課題は個人に留まらず社会全体に波及しています。

バブル崩壊後の超就職難を生き抜いた就職氷河期世代。しかし中年期に至る現在も、不本意な非正規や失業に苦しむ人が多い

2025年問題の次に訪れる、就職氷河期世代による2040年問題とは?
居場所はどこ、中高年のひきこもり61万人 交流の仕組みづくりに光

2040年問題、高齢期に突入する就職氷河期世代:十分な公的支援は受けることができるのか?

【2040年問題】就職氷河期世代の未来|年金・雇用・老後をどう生き抜くか

やがてこの就職氷河期世代が年金受給開始年齢(65歳前後)に達する2040年前後が近づいています。

その頃、日本の総人口は約1億1,000万人まで減少し、生産年齢人口1.5人で高齢者1人を支える超高齢社会になる見通しです。

2040年には、彼ら就職氷河期世代(団塊ジュニア世代にほぼ重なる)が58~70歳となり、ちょうど支える側と支えられる側の双方に当たる微妙な年齢層となります。

問題は、この世代の多くが不安定なキャリアゆえ経済基盤が脆弱で、高齢者を支える担い手としても頼りなく、自身が高齢者となる側に回っても非常に不安定だという点です。

まさに日本社会が直面する「2040年問題」とは、戦後ベビーブーム世代の子である団塊ジュニア世代=就職氷河期世代が一斉に高齢化し、社会保障制度に複合的な危機をもたらす可能性を指します。

2040年前後には65歳以上人口が全体の35%前後に達し、人口ピラミッドは上が膨らんだ「棺桶型」になると予測されています。

就職氷河期世代の中核(1971~74年生まれ)はちょうど66~69歳となり、団塊ジュニア世代として日本の高齢者人口を押し上げる存在です。

その結果、行政サービスの需要(介護・医療等)は急増する一方、支える現役世代は急減し、地方行政も人手不足で供給が追いつかない事態が懸念されています。

また認知症高齢者の数も増え、2025年に約472万人だったのが2040年には約584万人に達する推計もあります(高齢者の約15%、6.7人に1人)。

氷河期世代にもこの認知症予備軍が含まれる上、独り暮らし高齢者も多くなるため、認知症や要介護状態でも身寄りのない高齢者が増え行政のサポートにも限界が生じかねません。

これらが「2040年問題」として目前に迫っており、今のままでは需給バランスの崩壊による公共サービス維持の危機すら指摘されています。

Tamesy|転職エージェントの初回面談参加  

雇用の未来:定年延長と再就職の行方はどうなる?

【2040年問題】就職氷河期世代の未来|年金・雇用・老後をどう生き抜くか

就職氷河期世代が高齢期を迎える頃、雇用環境も大きく変わっています。少子化による人手不足から定年延長や継続雇用の拡大が進み、希望すれば70歳まで働ける制度設計も現実味を帯びています。

実際、企業の定年を65歳以上に引き上げたり、定年制そのものを廃止する動きも出始めました。

これは氷河期世代にとって収入を得るチャンスが長くなる一方、高齢になっても働かざるを得ない現実を意味します。

正規雇用から漏れた人々にとって、シニアになってからの再就職は依然厳しく、多くが非正規雇用に留まると予想されています。

実際2040年前後には、収入や年金が十分でないため働き続けるシニアが増え、低賃金のまま高齢労働を強いられるケースも懸念されます。

ただし、人手不足に悩む産業ではシルバー人材の活用も進みます。

特に介護や清掃、警備などの分野では、氷河期世代が定年後に就ける雇用機会が増えるかもしれません。

政府もこの世代向けに国家公務員の中途採用試験を特別枠で実施し、2020年代前半には各府省で合格者を採用しました。

民間企業でも「氷河期世代採用」を掲げる求人が一時期ありました。

しかし人数は限定的で、全体としては職を得られないまま高齢者になる人が相当数存在する見込みです。

その結果、生活保護や地域の扶助に頼る高齢者が増え、高齢者世帯の生活保護率は現在の約3%から2040年には10%超と4倍以上になるとの試算もあります。

働けるうちは細々とでも働き続け、そうでなくなれば公的扶助を受ける——そんな老後が「当たり前」になりかねないのです。

新NISAよりもiDeCoよりも効果的…氷河期世代の「国民年金しかもらえない問題」に備えられる有望な制度

年金受給と老後の収入:減る年金と増す負担の中、生活をどう維持する?

年金給付水準は2040年にどうなる?
 → 50%前後に低下する見込み

【2040年問題】就職氷河期世代の未来|年金・雇用・老後をどう生き抜くか

公的年金だけでは暮らせない——この懸念は全世代に共通ですが、就職氷河期世代には特に深刻です。

そもそも非正規が多かったため厚生年金への加入期間が短く、生涯賃金も低いため、将来受け取る年金額が著しく少なくなることが確実視されています。

国民年金(基礎年金)のみの人も多く、その満額支給額は月約6.9万円(2025年度)に過ぎません。

この金額だけで安心して暮らすのは厳しく、実際には未納や未加入期間があればさらに減額されます。

氷河期世代では経済的理由で年金保険料を納めていない無年金者も多く見られ、たとえ加入していても低賃金ゆえ受給額はごく低額となる可能性が高いのです。

さらに制度面でも、少子高齢化に伴い年金給付水準の引き下げ圧力が強まります。

政府の財政検証では2040年代には基礎年金の給付水準が最大30%下がる可能性が指摘されています。

こうした中、2024年には与野党で「基礎年金の底上げ策」が大筋合意されました。

これは将来、基礎年金の水準が一定以下に低下した場合に国費などで自動補填する仕組みを導入しようという試みです。

財源には厚生年金の積立金流用や増税も検討され論議を呼んでいますが、厚生年金の恩恵を受けにくい氷河期世代にとっては最低限の年金を底上げしてもらえる期待がかかります。

もっとも、この改革が実現しても生活を支える水準になるかは不透明で、「期待しすぎず備えはしっかり」という声もあります。

老後の収入源は年金だけではありません。

就労を続ける人は給与収入がありますし、貯蓄や資産があれば取り崩して暮らすことになります。

しかし氷河期世代は低所得ゆえ十分な貯蓄を蓄えることが難しかったのが実情で、多くは退職金も期待できません。

親の資産に頼れる人も一部でしょう。むしろ親世代の介護費や看取りによる費用負担がのしかかり、貯蓄を取り崩したり借金に陥る恐れも指摘されています。

このため「老後破産」状態に陥る人が続出し、それが社会問題化する可能性があります。

年金・貯蓄が乏しい人々が頼れる最後の砦は生活保護ですが、氷河期世代が高齢化する2040~50年頃には生活保護受給者がさらに増加すると予想されています。

ある試算では、この世代から将来的に77万人超の生活保護受給者が発生し、累計17~19兆円もの追加財政負担を生むともされています。

公的年金で支えきれず生活保護が「セーフティネット」になるケースが増えるのです。

基礎年金の底上げとは?就職氷河期世代と若年層が知っておきたい最新動向

【2040年問題】就職氷河期世代の未来|年金・雇用・老後をどう生き抜くか

就職氷河期世代の未来|2040年の年金・雇用予測

医療・介護ニーズの増加にともない どのような課題が予想されるか?

高齢者が増え平均寿命が伸びれば、医療費・介護費の膨張は避けられません。

就職氷河期世代が高齢化する2040年前後、日本の医療・介護提供体制には大きな負荷がかかります。

特にこの世代は単身世帯で老後を迎える割合が高いと予想されます。

正規就職できず結婚に至らなかった人も多いため、配偶者や子供による支えを得られず、困窮しても助けてくれる家族がいないケースが増えるのです。

そうなると、公的介護サービスや地域の見守りに頼るほかなくなります。

しかし現在ですら介護人材の不足や地域ケアの限界が指摘されています。

2025年には団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となり介護費が急増するとされますが、2040年にはそれを上回る超高齢化が進行します。

高齢世代自体も高齢化し、85歳以上人口が高齢者の3割近くになる見込みです。

要介護度の高い高齢者が激増し、介護施設や医療機関への需要が跳ね上がるでしょう。

就職氷河期世代が70代に入る2040年代後半には、彼ら自身が介護サービスの主要な利用者となります。

問題は、その費用負担やケアの担い手です。

氷河期世代は蓄えが少なく介護保険の自己負担もままならない人が多い可能性があります。

所得に応じて1割〜3割負担とはいえ、低年金では入所費用や在宅介護サービス料を捻出できず必要な介護を受けられない「介護難民」になる懸念もあります。

また独り身なら介護手続きや入退院のサポートをする家族もおらず、認知症になっても周囲が気づかず放置されるリスクがあります。

独居高齢者の孤独死が社会問題化する可能性も高く、行政が定期的に見回りをするなど新たな仕組みづくりが急務とされます。

【2040年問題】就職氷河期世代の未来|年金・雇用・老後をどう生き抜くか
アマゾン:欲しい物なら何でもそろう!

住まいと住宅問題:老後の安心な住まいはあるか?

住宅はどう確保すればいい?
→ 公営住宅、シェアハウス、空き家活用策を解説。

就職氷河期世代の多くは持ち家を持たないまま高齢期を迎えると見られます。

政府の分析によれば、この世代の単身世帯の持ち家率は他世代に比べて低く、公的賃貸住宅などのサポートが必要になる可能性があります。

長年不安定な雇用で収入が伸びず、住宅ローンを組む余裕がなかったり、独身で家を買う決断ができなかった人も多いためです。

親と同居してきた人は親名義の家に住み続けるケースもありますが、親が亡くなれば相続費用や維持費の負担がのしかかります。

貯蓄がなければ固定資産税すら払えず、実家を手放す事態も考えられます。

一方で親元を離れて賃貸暮らしを続けてきた場合、老後に家賃を払い続けるハードルが問題になります。

低年金では家賃負担が重く、貯金が尽きれば退去せざるを得ません。

高齢になると新たな賃貸契約も断られがちで、住む場所を失う高齢者ホームレスやネットカフェ難民のような事態も起こりかねません。

そうした人々の受け皿としては、自治体の公営住宅やNPO等が運営する高齢者向けシェアハウス、福祉施設などが考えられます。

現在でも生活保護受給者向けのアパート(いわゆる「無料低額宿泊所」)が不足気味で、2040年に向け需要増が予想されます。

また、都市部と地方で事情は異なります。

都市部では単身高齢貧困者の集中が予想され、公営住宅の応募倍率が一段と高まるでしょう。

地方では一方で空き家が増える中、それを活用した低所得高齢者向け住宅の整備が鍵となります。

いずれにせよ、氷河期世代が安心して老後を暮らせる住まいを確保するには、公的支援と地域の取り組みが不可欠です。

政府もこの点を踏まえ、資産形成や住宅確保の支援を新たに打ち出しています。

具体的には、この世代向けに住宅ローン減税や家賃補助の拡充などが検討されており、今後の制度改正に注目です。

就職氷河期世代の高齢期を支援 資産形成、住宅など軸に〈政府〉

社会的孤立を防ぐには? 地域コミュニティの役割

孤立を防ぐには?
 → コミュニティ参加や相談窓口など「今できる一歩」を具体的に説明します。

孤立のまま高齢期を迎える人をいかに減らすかも大きな課題です。

就職氷河期世代は未婚率が高く、家族以外の社会関係資本も乏しい傾向にあります。

このままだと、2040年前後に身寄りも交流もない独居老人が数多く生まれ、孤独死やセルフネグレクト(自 neglect)の増加が懸念されます。

特に中高年の引きこもり状態の人々は、この先も社会と交わらずに高齢になり、周囲から見えない存在になりがちです。

親が亡くなった後に引きこもり中年が孤立死して発見されるといった痛ましい例も既に報告されています。

地域コミュニティや民間の支援団体は、この孤立問題への対策として重要な役割を果たします。

各地で中高年ひきこもりの相談窓口が設置され、訪問支援や居場所づくりの取り組みが始まっています。

例えば石川県輪島市では、障害者や高齢者、引きこもり経験者らが集える「共生拠点」を設け、多世代交流の中で孤立を防ぐ社会実験が注目されています。

また、自治体によっては見守りサービス生活支援コーディネーターを配置し、独居の高齢者宅を定期訪問する仕組みも広がりつつあります。

こうした地域の取り組みは、氷河期世代が高齢者となったときに孤立しないよう、今のうちから社会との繋がりを作る狙いがあります。

企業側でも、社員の高齢家族を地域ネットワークで支える「企業版地域包括ケア」的な動きが出ています。

ボランティア団体やNPOは、居場所づくりサロンオンラインコミュニティを通じて中高年同士が支え合う仕組みを模索しています。

重要なのは、本人たちが孤立を恥じて隠れるのではなく、一歩でも地域社会に関与できるような受け皿を用意することです。

それが結果的に将来の孤独死や生活困窮を防ぎ、コミュニティの力で支える持続可能な社会につながります。

政策の展望:政府・自治体の支援策と制度改革はどうなっていくのか?

日本政府も就職氷河期世代の問題を放置できないと認識し、近年対策を強化しています。

2019年には3年間の集中支援プログラムを策定し、ハローワークなどを通じて30万人を正規雇用に、という数値目標を掲げました。

結果として5年間で約31万人が正規就労に移行し、望まない非正規は11万人減少したと報告されています。

一定の成果はあったものの、未だ無業者は3万人増えており、氷河期世代支援は「道半ば」と言えます。

2023年には政府が新たに「就職氷河期世代支援に関する新行動計画2023」を策定し、伴走型の就職支援やリスキリング支援を柱に掲げました。

特筆すべきは「高齢期を見据えた支援」という観点が加わったことです。

具体的には、就労機会を整えるだけでなく、資産形成や住宅確保を軸とした支援策を講じるとしています。

前述のようにこの世代は金融資産や持ち家率が低いため、老後に向けて貯蓄や住まいを確保できるよう支援する狙いです。

また、社会参加に向けた段階的支援として、引きこもり状態の人への就労準備や社会交流の場提供にも力を入れる方針です。

政府・与党だけでなく野党からも同様の提言がなされ、支援ニーズに応じた実効性ある政策を進める方向で基本合意ができています。

自治体レベルでも特徴的な取り組みがあります。

各都道府県で氷河期世代枠の公務員採用を行ったり、地域企業と連携した職業訓練プログラムを実施したりしています。

例えば内閣府は令和3~6年度にかけ、各府省で毎年若干名の氷河期世代中途採用を目指すと発表しています。

地方自治体でも臨時職員や嘱託職員として氷河期世代を雇用する動きがあり、就業経験を積ませる場を提供しています。

さらに地域の子ども・若者総合相談センターでは中高年も含めた相談支援を開始し、孤立防止や就労・生活支援を行っています。

政府は2023年、「社会参加・活躍支援等孤独・孤立対策推進交付金」を創設し、自治体と協働して中高年の社会参加やリスキリングを支援する方針も打ち出しました。

制度改革の予測としては、今後ますます議論が必要です。

年金制度の持続可能性を高めるため、年金受給開始年齢を68~70歳に引き上げる可能性も指摘されています。医療・介護制度についても給付と負担の見直しや財源確保策が不可避であり、国民的対話を通じた痛みを伴う改革が求められるでしょう。

氷河期世代の問題は一世代だけの問題に留まらず、日本全体の社会保障システムの「見えざる負債」となっています。

その解決には世代間の富の再分配や構造的な制度変更が必要であり、早期に2040年問題を可視化して議論を始めるべきだとの提言もあります。

就職氷河期世代の方々への支援のご案内
就職氷河期世代支援の心得 -生活支援はその場しのぎの選挙対策にあらず-
中途採用者選考試験(就職氷河期世代)
就職氷河期世代支援に関する施策の実施状況

海外や他世代との比較:日本の生活保障は世界水準になりうるのか?

就職氷河期世代の苦境を理解するため、海外や他の世代と比較してみましょう。

まず日本の高齢者貧困率は他の先進国に比べて高く、65歳以上の相対的貧困率は19.6%とOECD平均(12.5%)を大きく上回っています。

日本の高齢世代、とりわけ就職氷河期世代が高齢化した場合の貧困リスクは、欧州諸国より深刻化する恐れがあります。

一方で欧州には最低生活保障付きの雇用支援制度を導入している国もあります。

例えばフランスのRSA(積極的連帯収入)は、低所得者に月約10万円の給付をしつつ一定額までの就労収入を認め、受給者に職業訓練やボランティア等の活動を課す制度です。

この制度によってフランスでは受給者の42%が就労復帰したとの報告もあり、「保障を受けながら働ける」循環型のセーフティネットとして機能しています。

日本でも同様の制度を導入できれば、非正規やフリーランスとして働き続ける氷河期世代の老後不安を和らげ、生活保護に陥る前に支える方策となり得るでしょう。

他世代との比較では、団塊世代(1947~49年生まれ)やバブル世代(1980年代後半卒)との違いが際立ちます。

団塊世代は高度成長期に職を得て年功賃金や企業年金にも恵まれ、持ち家率も高く、夫婦で支え合う老後が一般的でした。

それに対し就職氷河期世代は、前述のように就職段階での機会損失が大きく、その後の所得も伸び悩みました。

その結果、同じ高齢期でも団塊世代は金融資産や年金にゆとりがありますが、氷河期世代は最低限の年金とわずかな貯蓄しかなく老後の脆弱性が高いのです。

また団塊ジュニア世代でもある氷河期世代は親世代(団塊世代)の扶養と自身の老後準備の二重負担に苦しむケースもあります。

一方、若い世代(ミレニアル世代やZ世代)はどうでしょうか。この世代は就職環境には恵まれ、例えば2024年卒の大学生就職率は98.1%と調査開始以来最高水準でした。

企業の人手不足もあり、2025年卒も98.0%と2年連続で98%台を記録しています。

氷河期世代の平均69.7%から比べると驚異的な高率で、「超売り手市場」の恩恵を受けています。

もっとも、若年層は非正規やギグワークへの抵抗感が薄く、副業やフリーランスも当たり前になりつつあります。

彼らは雇用の安定より柔軟性を重視する傾向もあり、一概に恵まれているとも言えません。

ただ少なくとも新卒時の氷河期のような大量不採用という悲劇は繰り返されていない点で、若い世代はキャリア初期の機会損失は免れています。

海外に目を向けると、韓国でも就職氷河期に相当する世代があります。

1997年の通貨危機後に就職難に陥った世代(日本の氷河期と同時期)がおり、韓国でも中高年の高失業や不安定就業が問題となっています。

しかし韓国は国民年金の支給水準が低く、親と同居する文化もあって高齢世代の貧困率は日本以上に深刻です。

欧米では日本ほど長期にわたる新卒至上主義はないものの、2008年金融危機で欧米の若者も就職難を経験しました。

南欧諸国(スペイン・ギリシャ等)では高失業の「ロストジェネレーション」が社会問題化し、その世代の社会的排除が懸念されています。

各国それぞれ事情は異なりますが、日本の就職氷河期世代ほど長期に構造的に不遇を被った例は稀であり、まさに日本固有の雇用システムの歪みが生んだ課題と言えます。

Ageing and Employment Policies Working Better with Age:Japan
今春の大卒就職率98.0% 売り手市場で学生と企業の相互不理解も

絶望から希望へ:未来に立ち向かう道はあるのか?

就職氷河期世代の将来像には確かに暗い影が付きまといます。

低年金・低貯蓄、高齢期の貧困、孤独死の増加、社会保障財政への深刻な負担…。

これらは最悪のシナリオとして現実味を帯びています。しかし、そうした絶望的な未来に黙って飲み込まれる必要はありません。

それに立ち向かい希望を見出す道もまた示されています。

一つは再就職支援や学び直しによる自助努力です。政府の支援策を積極的に活用し、職業訓練や資格取得に取り組むことで、40代・50代からでも安定した職に就けた事例は少なくありません。

実際、5年間で31万人もの氷河期世代が正社員化に成功したことは希望の持てる数字です。

IT技術や介護スキルなど人手不足分野のスキルを身につければ、年齢に関係なく必要とされる人材になれます。企業側も多様な人材活用を進めており、中高年の採用や登用に前向きな動きが増えてきました。

「もう手遅れ」と決めつけず、生涯現役のつもりで能力開発に挑戦することが、将来の自分を助ける投資になります。

次に社会との繋がりを維持・構築することです。

コミュニティや仲間との関係は、精神的な支えになるだけでなく実利的にも役立ちます。

情報交換や助け合いにより、生活上の困りごとを互いに補完できます。

ボランティア活動や地域のサークルに参加すれば、生きがいを見出すと同時に、いざというとき支えてくれるネットワークができます。

孤立せず誰かと関わり続けることが、老後の孤独や不安を和らげ、結果的に長生きにもつながると指摘されています。

政府も社会参加の段階的支援を掲げていますが、まずは自ら一歩踏み出して地域社会に関与してみることが大切です。

社会全体としては、制度や意識の改革が必要です。

前述したフランスRSAのような「働きながら保障を受けられる制度」は、日本でも検討に値するでしょう。

生活保護に陥る前に、低所得高齢者に給付を行いつつ就労を促す仕組みがあれば、本人の尊厳を守りつつ財政負担も軽減できます。

企業にも、かつて就職の機会を奪われた世代を積極的に再雇用することで「失われた人材」を活用できるメリットがあります。

実際、この世代は就職難に遭っただけで有能な人も多く、適切な場があれば大いに力を発揮します。

「もったいない世代」を埋もれさせず、見過ごされた人材プールの活用という企業戦略も求められています。

最後に本人たちへのメッセージとして、希望を捨てないことが何より重要です。

就職氷河期世代の問題は「半世紀にわたる因果の連鎖の帰結」であり、個人の責任ではなく社会構造が生み出した悲劇です。

だからこそ、個々人が自分を過度に責める必要はありません。遅すぎることは何もなく、学び直しも、キャリア転換も、コミュニティ参加も、思い立ったときが最適なタイミングです。

社会もこの問題を過去のものではなく未来への警鐘として真剣に受け止め始めています。

就職氷河期世代は決して一人ではありません。

共感し合える仲間と支え合い、声を上げ、政策を動かしながら、自らの未来を切り開いていきましょう。

それが「終わらぬ冬」を乗り越え、明るい春を迎えるための第一歩となるはずです。

(キャリアセッション|伴走型キャリア支援サービスの体験面談申込  )

関連記事

ブログトップ