「実行する」と「道具」、なぜ同じ単語? implement という語を見るたびに首をかしげた経験はないでしょうか。
じつはこの二つ、語源からたどると同じ一枚の絵になります。im(中へ)+ple(満たす)。「中を満たすもの」が道具で、「中を満たす行為」が実行。ここがわかると、TOEIC頻出の implementation もひとまとめに記憶できます。
今回の主役は真ん中の ple(plere=満たす)。でも「plere」と言われてもピンとこない。だからまず、知っている単語から入ります。
「ple=満たす」は、plenty からイメージする
plenty という単語を知っていますか?
「たくさんの」「十分な」という意味です。
plenty of time で「時間がたっぷりある」。この「たっぷり」というのは、言い換えれば「中身が満ちている」ということです。
この「満たす・満ちている」が、ple のイメージです。
ple を見たら「満たす・満ちている」。
これが今回の出発点です。
このイメージを先に持っておくと、見慣れた単語がつながって見えてきます。
- complete → すべて満たす → 完成させる
- plenty → たっぷり満ちている → 豊富な
- replenish → 再び満たす → 補充する
- implement → 中を満たす → 実行する・道具
implement を分解してイメージで覚える
implement をパーツで見るとこうなります。
im(in=中へ)+ ple(plere=満たす)+ ment(こと・もの)
「計画」は、立てただけでは中身が空気だけの空っぽの器です。そこに行動やシステムという実体を注ぎ込んで、中身をいっぱいにする(plere)。それが implement(実行する・実装する)の本質です。道具(implement)も同じ発想で「手の足りない部分を埋めてくれるもの」。
- 「中を満たすもの」 → 道具(名詞)
- 「中を満たす行為」 → 実行する(動詞)
ITエンジニアが「この機能をインプリする(実装する)」と言うときの「インプリ」は、この implement の略です。感覚的につかめていると、現場の英語が一段と読みやすくなります。
※ ここでの「im=中へ、ple=満たす、ment=もの・行為」という分解は学習用のイメージです。英語史では名詞の「道具・備品」として先に定着し、その後「義務や計画の中身を満たして成し遂げる」という動詞の用法が加わりました。中世ラテン語の implementum(満たすもの・設備)が出発点で、約300年かけて動詞として使われ始めた単語です。
implement の基本の意味と使い方
implement は動詞と名詞の二役をこなします。
動詞(実行する・実施する・実装する)
- implement a plan(計画を実行する)
- implement a new policy(新しい方針を施行する)
- implement a system(システムを導入する)
名詞(道具・器具・手段)
- farming implements(農機具)
- writing implements(筆記用具)
日常で目にするのは動詞がほとんどです。特に IT やビジネス文書では「導入する・実装する」の意味で頻繁に使われ、TOEIC Part 7 の議事録・報告書にも定番で登場します。
“ple(plere=満たす)” でつながる単語ネットワーク
implement の核 ple(plere)を知っておくと、普段から使っている単語が一気に仲間に見えてきます。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| complete | 完成した、完成させる | com(すっかり)+ple=すべてを満たす |
| plenty | たくさん、豊富 | plenus(満ちた)から。満ちている状態 |
| supply | 供給する | sub(下から)+ple=下から満たして届ける |
| replenish | 補充する | re(再び)+ple=もう一度満たす |
| complement | 補完する | com+ple=足りないところを満たす |
| deplete | 枯渇させる | de(取り除く)+ple=満ちていたものを減らす |
| surplus | 余剰、余分 | sur(超えて)+plus(満ちて多い)=器から溢れ出た分 |
surplus の plus はラテン語の「より多い」を表す比較級形で、ple と同じ印欧祖語の根っこを持っています。中世ラテン語 superplus(余り)を経て「満ちて器から溢れ出した分」がそのまま「余剰」になりました。
「ple/plu が入っていたら、たぶん”満たす・多い”話」と見えてくると、初見の単語でも意味が推測できます。
“im(in=中へ)” でつながる単語ネットワーク
頭の im(in)の方向から見ても、動きのイメージが広がります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| import | 輸入する | im+port(運ぶ)=中へ運んでくる |
| include | 含む | in+clude(閉じる)=中に閉じ込める |
| invest | 投資する | in+vest(着る)=中に着込む → 資金を入れる |
| install | 設置する | in+stall(置く)=中に据え付ける |
| inspire | 鼓舞する | in+spire(息)=中に息を吹き込む |
implement は「ple(満たす)」と「im(中へ)」、二方向に仲間が広がる単語です。
派生語|implement まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音記号 | カタカナ目安 |
|---|---|---|---|---|
| implement | 動詞 | 実行する、実施する、実装する | /ˈɪmplɪment/ | インプリメント(語尾をはっきり) |
| implement | 名詞 | 道具、器具 | /ˈɪmplɪmənt/ | インプリマント(語尾が曖昧) |
| implementation | 名詞 | 実行、実施、実装 | /ˌɪmplɪmenˈteɪʃən/ | インプリメンテーション |
動詞と名詞で末尾の母音がわずかに変わります。動詞は /ment/(メント・語尾をはっきり)、名詞は /mənt/(マント・曖昧音)。発音が気になる方は意識してみてください。
TOEIC・英検での出題傾向
implement は TOEIC では主に動詞として出ます。Part 5 では「他動詞なので直後に目的語が来る」点が問われやすく、Part 7 では議事録・ビジネスレポートで the implementation of the new system(新システムの導入)のような名詞形が出ます。
英検では2級〜準1級レベル。ビジネス文書の読解で登場します。IT・経営・法務のどの文脈でも使われるので、一語知っておくと応用範囲が広いです。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- The team will implement the new system next month.
- Good tools are the implements of good work.
- She worked hard to implement the plan on time.
- The implementation took longer than expected.
- You can implement small changes every day.
- We need to implement a fair policy for everyone.
- The farming implements were stored in the barn.
- Once you implement it, you will see the difference.
- The company successfully implemented the new guidelines.
- Every idea stays empty until you implement it.
語源メモ|plere と in が出会う言葉
implement はラテン語 implementum(満たすもの・設備・備品)に由来します。動詞 implere(中を満たす)から来ており、さらに分けると in(中へ)+ plere(満たす)。
「道具・家財道具」という名詞の意味で中世ラテン語から英語に入り、16〜17世紀のスコットランド法などで「義務・約束の中身を満たして成し遂げる」という動詞として使われ始めました。「計画という空の器に実体を注ぎ込む」という歴史的なメタファーが、そのまま現代の「実行する・実装する」につながっています。
ple(plere)は complete・plenty・supply・replenish・complement・deplete・surplus と広い一族を形成しています。im(in)の方も import・include・invest・install など多くの単語につながっています。
まとめ
implement は、im(in=中へ)+ ple(plere=満たす)で「中を満たすもの=道具」「中を満たす行為=実行」。
- ple(plere)・・・満たす。plenty/complete/supply/replenish/complement/deplete の一族へ
- im(in)・・・中へ。import/include/invest/install の一族へ
- implement は、その2つが交わる入り口
「ple を見たら満たす」。この感覚が身につくと、単語が芋づる式につながりはじめます。

- 語源・中心:im(in=中へ)+ ple(plere=満たす)=「中を満たすもの・行為」
- 覚え方のヒント:plenty(たっぷり満ちている)→ ple=満たす、を先につかむ
- ple(満たす)一族:plenty/complete/supply/replenish/complement/deplete/surplus
- im(中へ)一族:import/include/invest/install/inspire
関連記事(内部リンク)
- complete の語源(すっかり満たす)→ (近日中に公開)
- supply と replenish の語源比較 → (近日中に公開)
- 英単語の語源・パーツ分解 全リスト

翻訳練習の解答例
- そのチームは来月、新しいシステムを導入する予定だ。
- 良い道具は、良い仕事の手段になる。
- 彼女は計画を期限通りに実行しようと懸命に取り組んだ。
- 実施には予想より時間がかかった。
- 小さな変化なら、毎日実行できる。
- 全員に公平な方針を導入する必要がある。
- 農機具は納屋に保管されていた。
- 一度実行してみれば、違いがわかる。
- その会社は新しいガイドラインを無事に施行した。
- どんなアイデアも、実行するまでは中身が空っぽのままだ。




