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【語源で覚える】divert|「そらす」が「気晴らし」になる理由

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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「ディスる」という言葉、ふだん何気なく使っていませんか。あれは英語のスラング dis(disrespect などを縮めた言葉)から来ています。実はその dis、今日の単語 divert の頭にもひっそり入っています。

divert は「そらす」「迂回させる」という意味の動詞。そして名詞の diversion には、なぜか「気晴らし」という意味もあります。「そらす」がどうして「気晴らし」になるのか・・・このギャップが、語源を知るとすっとつながります。

※ この記事は、姉妹編の diverse(多様な)と対になっています。diverse が「いろんな方向を向いている”状態”」なら、divert は「わきへ向きを変える”動作”」の話です。同じ親から生まれた兄弟の単語なので、あわせて読むと vers/vert 一族がぐっと立体的になります。

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divert を分解してイメージで覚える|わきへ、くるりと向きを変える

divert をパーツで見ると、こうなります。

di(dis=わきへ・離れて)+ vert(回す・向きを変える)

まっすぐ進んでいた流れを、くるりとわきへ向け直す。それが divert のイメージです。

  • 川の流れをわきへ向ける → 水路を変える
  • 車の流れをわきへ向ける → 迂回させる
  • お金の流れをわきへ向ける → 別の目的に回す
  • 注意をわきへ向ける → 気をそらす

どれも「本筋から、わきへ向きを変える」の一枚の絵で説明できます。

頭の di は、「ディスる」の dis と同じ接頭辞です。「respect(敬意)から離れる」のが disrespect なら、「本筋から離れた方へ向ける」のが divert。どちらも「離れる」でつながっています。

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divert の基本の意味と使い方

divert は動詞で、主に次のように使います。

  • divert traffic(交通を迂回させる)
  • The flight was diverted to Osaka.(その便は大阪に目的地を変更した)
  • divert attention from ~(~から注意をそらす)
  • divert funds(資金を別の用途に回す)

ニュースや空港のアナウンスでよく聞くのは、「迂回」「目的地変更」の使い方です。人の気持ちに使うと「気をそらす」「気分を変える」になります。

diversion が「気晴らし」になる理由

名詞の diversion は「わきへそらすこと」。迂回路・流用・陽動といった意味に加えて、「気晴らし」「娯楽」の意味も持っています。

心配ごとや忙しい毎日から、心をちょっとわきへ向ける。それが気晴らしです。「そらす」と「気晴らし」は、じつは同じ動きを別の角度から見ているだけなんです。

フランス語でも、同じ語源の divertissement が「娯楽」「楽しみ」を表します。心をわきへ向けることを「楽しみ」と捉える感覚は、ヨーロッパの言葉に広く根づいているようです。

divert・avert・distract の使い分け

「そらす」系の単語は似ていて迷いやすいので、並べておきます。

単語意味イメージ
divert(流れ・注意を)別の方へ向けるわきへ向け直す。向け先がある
avert(目を)そらす、(危険を)避ける正面から離れる方へ向ける
distract気を散らす注意をばらばらに引き離す

divert は「別の方向へ向け直す」ので、向かう先があるのがポイントです。distract は「気が散って集中できない」状態、avert は「見ないように・当たらないように」する動きです。

“vert/vers(回る・向きを変える)” でつながる単語ネットワーク

divert の vert を知っておくと、たくさんの単語がつながります。

単語意味イメージ
diverse多様なdi(別々に)+vers=いろんな方向を向く(divert の兄弟)
avertそらす、避けるa(ab=離れて)+vert=離れる方へ向ける
convert変換するcon(すっかり)+vert=すっかり向きを変える
revert元に戻るre(元へ)+vert=元の向きへ戻る
invert逆さにするin+vert=くるりとひっくり返す
reverse逆にするre(後ろへ)+vers=向きを後ろに回す
version版、バージョン向きを変えて作った別の形
controversy論争contro(反対に)+vers=意見が逆を向く
universe宇宙uni(1つ)+vers=すべてが1つに回りまとまる

「vert/vers が入っていたら、たぶん”向きを変える”話」・・・そう見えるようになると、初めて見る単語でも意味の見当がつきます。

“dis(離れて・わきへ)” でつながる単語ネットワーク

頭の di(dis)をたどると、「離れる」仲間が見えてきます。

単語意味語源
disrespect失礼な態度(「ディスる」の元)dis(反対に)+respect(敬意)
distract気を散らすdis(ばらばらに)+tract(引く)
disregard無視するdis(否定)+regard(気にかける)
distance距離dis(離れて)+stare(立つ)
dismiss退ける、解散させるdis(離れて)+mittere(送る)
different違うdif(dis)+ferre(運ぶ)=離れた所へ運ぶ

dis は、後ろの音によって形を変えます。v の前では di(divert・diverse)、f の前では dif(different)。形は違っても、中身は同じ「離れて」です。

派生語|divert まわり

単語品詞意味発音
divert動詞そらす、迂回させる、転用するダイバート /daɪˈvɜːrt/(ディバート /dɪˈvɜːrt/ とも)
diversion名詞迂回、流用、気晴らしダイバージョン /daɪˈvɜːrʒən/
diversionary形容詞注意をそらすための、陽動のダイバージョネリー /daɪˈvɜːrʒəneri/
diverting形容詞楽しい、気晴らしになるダイバーティング /daɪˈvɜːrtɪŋ/

TOEIC・英検での出題傾向

TOEIC では、交通案内や空港のアナウンスで「Traffic will be diverted(迂回運用になります)」「The flight has been diverted(目的地が変更になりました)」の形で出てきます。ビジネス文書では divert resources(資源を別に回す)もよく見かけます。英検では、上位級の長文で見かけるタイプの語です。日常会話で頻繁に使う語ではありませんが、リスニングの案内文で聞き取れると強い一語です。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. The road was closed, so traffic was diverted.
  2. Our flight was diverted to Osaka because of the storm.
  3. The river was diverted to water the fields.
  4. She told a joke to divert the conversation.
  5. The city diverted part of the budget to schools.
  6. Music can divert your mind from your worries.
  7. He diverted his disappointment into hard work.
  8. Try to divert your attention to something you enjoy.
  9. When you feel stuck, divert your energy into one small step.
  10. You can always divert your path toward what you truly love.

語源メモ|divertere から生まれた兄弟たち

divert は、古フランス語 divertir を経て、ラテン語 divertere にさかのぼります。分けると dis-(わきへ・別々に)+ vertere(回す・向きを変える)。「わきへ向きを変える」がそのまま今の意味の中心です。

dis- の s は、v の前では発音しにくいので落ちて di- になりました。divert も diverse も同じ理由で di- の形です。英語にはギリシャ語由来の di-(2つ/dialogue・dioxide など)もありますが、divert の di- はそれとは別物で、ラテン語の dis- です。

diverse は、同じ divertere の過去分詞 diversus(別々の方へ向いた)から来ています。つまり divert と diverse は親子ではなく、同じ親から生まれた兄弟の関係です。

「ディスる」の元になった英語のスラング dis は、disrespect(や disparage)などを縮めた言葉とされています。いずれにしても、その dis は divert の di と同じ接頭辞 dis- にさかのぼります。

まとめ

divert は、di(dis=わきへ)+ vert(向きを変える)で「本筋からわきへ向け直す」=そらす・迂回させる。

  • di(dis)・・・離れて・わきへ。「ディスる」の dis、distract・distance・different の仲間
  • vert(vertere)・・・向きを変える。diverse・avert・convert・reverse などの仲間
  • diversion・・・心をわきへ向けるから「気晴らし」にもなる

行き詰まったときは、少しだけ向きを変えてみる。divert は、そんな小さな方向転換を表す単語です。

divert の語源ワードマップ。中心は divert(=わきへ向きを変える)で、di(dis=わきへ・離れて)+vert(向きを変える)に分解。語源・中心、vert・vers(向きを変える)系(diverse / avert / convert / revert / reverse / version)、dis(離れて)系(disrespect / distract / disregard / distance / different)、覚え方のヒント(「ディスる」の dis と同じ仲間、diversion=気晴らし)の4クラスタに整理した図。

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翻訳練習の解答

  1. 道路が通行止めになり、車は迂回路へ回された。
  2. 嵐のため、私たちの便は大阪へ行き先を変更した。
  3. 畑に水を引くため、川の流れが変えられた。
  4. 彼女は冗談を言って、話題をそらした。
  5. 市は予算の一部を学校に回した。
  6. 音楽は、心配ごとから心をそらしてくれる。
  7. 彼は悔しさを、努力する力に変えた。
  8. 好きなことに、意識を向けてみよう。
  9. 行き詰まったら、そのエネルギーを小さな一歩に向けてみよう。
  10. 本当に好きなものへ、道の向きはいつでも変えられる。

BSL(Business Service List)収録語

この単語は Business Service List(BSL) に収録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project