「ディスる」という言葉、ふだん何気なく使っていませんか。あれは英語のスラング dis(disrespect などを縮めた言葉)から来ています。実はその dis、今日の単語 divert の頭にもひっそり入っています。
divert は「そらす」「迂回させる」という意味の動詞。そして名詞の diversion には、なぜか「気晴らし」という意味もあります。「そらす」がどうして「気晴らし」になるのか・・・このギャップが、語源を知るとすっとつながります。
※ この記事は、姉妹編の diverse(多様な)と対になっています。diverse が「いろんな方向を向いている”状態”」なら、divert は「わきへ向きを変える”動作”」の話です。同じ親から生まれた兄弟の単語なので、あわせて読むと vers/vert 一族がぐっと立体的になります。
divert を分解してイメージで覚える|わきへ、くるりと向きを変える
divert をパーツで見ると、こうなります。
di(dis=わきへ・離れて)+ vert(回す・向きを変える)
まっすぐ進んでいた流れを、くるりとわきへ向け直す。それが divert のイメージです。
- 川の流れをわきへ向ける → 水路を変える
- 車の流れをわきへ向ける → 迂回させる
- お金の流れをわきへ向ける → 別の目的に回す
- 注意をわきへ向ける → 気をそらす
どれも「本筋から、わきへ向きを変える」の一枚の絵で説明できます。
頭の di は、「ディスる」の dis と同じ接頭辞です。「respect(敬意)から離れる」のが disrespect なら、「本筋から離れた方へ向ける」のが divert。どちらも「離れる」でつながっています。
divert の基本の意味と使い方
divert は動詞で、主に次のように使います。
- divert traffic(交通を迂回させる)
- The flight was diverted to Osaka.(その便は大阪に目的地を変更した)
- divert attention from ~(~から注意をそらす)
- divert funds(資金を別の用途に回す)
ニュースや空港のアナウンスでよく聞くのは、「迂回」「目的地変更」の使い方です。人の気持ちに使うと「気をそらす」「気分を変える」になります。
diversion が「気晴らし」になる理由
名詞の diversion は「わきへそらすこと」。迂回路・流用・陽動といった意味に加えて、「気晴らし」「娯楽」の意味も持っています。
心配ごとや忙しい毎日から、心をちょっとわきへ向ける。それが気晴らしです。「そらす」と「気晴らし」は、じつは同じ動きを別の角度から見ているだけなんです。
フランス語でも、同じ語源の divertissement が「娯楽」「楽しみ」を表します。心をわきへ向けることを「楽しみ」と捉える感覚は、ヨーロッパの言葉に広く根づいているようです。
divert・avert・distract の使い分け
「そらす」系の単語は似ていて迷いやすいので、並べておきます。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| divert | (流れ・注意を)別の方へ向ける | わきへ向け直す。向け先がある |
| avert | (目を)そらす、(危険を)避ける | 正面から離れる方へ向ける |
| distract | 気を散らす | 注意をばらばらに引き離す |
divert は「別の方向へ向け直す」ので、向かう先があるのがポイントです。distract は「気が散って集中できない」状態、avert は「見ないように・当たらないように」する動きです。
“vert/vers(回る・向きを変える)” でつながる単語ネットワーク
divert の vert を知っておくと、たくさんの単語がつながります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| diverse | 多様な | di(別々に)+vers=いろんな方向を向く(divert の兄弟) |
| avert | そらす、避ける | a(ab=離れて)+vert=離れる方へ向ける |
| convert | 変換する | con(すっかり)+vert=すっかり向きを変える |
| revert | 元に戻る | re(元へ)+vert=元の向きへ戻る |
| invert | 逆さにする | in+vert=くるりとひっくり返す |
| reverse | 逆にする | re(後ろへ)+vers=向きを後ろに回す |
| version | 版、バージョン | 向きを変えて作った別の形 |
| controversy | 論争 | contro(反対に)+vers=意見が逆を向く |
| universe | 宇宙 | uni(1つ)+vers=すべてが1つに回りまとまる |
「vert/vers が入っていたら、たぶん”向きを変える”話」・・・そう見えるようになると、初めて見る単語でも意味の見当がつきます。
“dis(離れて・わきへ)” でつながる単語ネットワーク
頭の di(dis)をたどると、「離れる」仲間が見えてきます。
| 単語 | 意味 | 語源 |
|---|---|---|
| disrespect | 失礼な態度(「ディスる」の元) | dis(反対に)+respect(敬意) |
| distract | 気を散らす | dis(ばらばらに)+tract(引く) |
| disregard | 無視する | dis(否定)+regard(気にかける) |
| distance | 距離 | dis(離れて)+stare(立つ) |
| dismiss | 退ける、解散させる | dis(離れて)+mittere(送る) |
| different | 違う | dif(dis)+ferre(運ぶ)=離れた所へ運ぶ |
dis は、後ろの音によって形を変えます。v の前では di(divert・diverse)、f の前では dif(different)。形は違っても、中身は同じ「離れて」です。
派生語|divert まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| divert | 動詞 | そらす、迂回させる、転用する | ダイバート /daɪˈvɜːrt/(ディバート /dɪˈvɜːrt/ とも) |
| diversion | 名詞 | 迂回、流用、気晴らし | ダイバージョン /daɪˈvɜːrʒən/ |
| diversionary | 形容詞 | 注意をそらすための、陽動の | ダイバージョネリー /daɪˈvɜːrʒəneri/ |
| diverting | 形容詞 | 楽しい、気晴らしになる | ダイバーティング /daɪˈvɜːrtɪŋ/ |
TOEIC・英検での出題傾向
TOEIC では、交通案内や空港のアナウンスで「Traffic will be diverted(迂回運用になります)」「The flight has been diverted(目的地が変更になりました)」の形で出てきます。ビジネス文書では divert resources(資源を別に回す)もよく見かけます。英検では、上位級の長文で見かけるタイプの語です。日常会話で頻繁に使う語ではありませんが、リスニングの案内文で聞き取れると強い一語です。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- The road was closed, so traffic was diverted.
- Our flight was diverted to Osaka because of the storm.
- The river was diverted to water the fields.
- She told a joke to divert the conversation.
- The city diverted part of the budget to schools.
- Music can divert your mind from your worries.
- He diverted his disappointment into hard work.
- Try to divert your attention to something you enjoy.
- When you feel stuck, divert your energy into one small step.
- You can always divert your path toward what you truly love.
語源メモ|divertere から生まれた兄弟たち
divert は、古フランス語 divertir を経て、ラテン語 divertere にさかのぼります。分けると dis-(わきへ・別々に)+ vertere(回す・向きを変える)。「わきへ向きを変える」がそのまま今の意味の中心です。
dis- の s は、v の前では発音しにくいので落ちて di- になりました。divert も diverse も同じ理由で di- の形です。英語にはギリシャ語由来の di-(2つ/dialogue・dioxide など)もありますが、divert の di- はそれとは別物で、ラテン語の dis- です。
diverse は、同じ divertere の過去分詞 diversus(別々の方へ向いた)から来ています。つまり divert と diverse は親子ではなく、同じ親から生まれた兄弟の関係です。
「ディスる」の元になった英語のスラング dis は、disrespect(や disparage)などを縮めた言葉とされています。いずれにしても、その dis は divert の di と同じ接頭辞 dis- にさかのぼります。
まとめ
divert は、di(dis=わきへ)+ vert(向きを変える)で「本筋からわきへ向け直す」=そらす・迂回させる。
- di(dis)・・・離れて・わきへ。「ディスる」の dis、distract・distance・different の仲間
- vert(vertere)・・・向きを変える。diverse・avert・convert・reverse などの仲間
- diversion・・・心をわきへ向けるから「気晴らし」にもなる
行き詰まったときは、少しだけ向きを変えてみる。divert は、そんな小さな方向転換を表す単語です。

関連記事(内部リンク)
- diverse の語源(多様な)|divert の兄弟語 → https://isseisuzuki.org/diverse/
- distract の語源(「ディスる」の dis +トラクター) → https://isseisuzuki.org/distract/
- disregard の語源(dis + guard の gard) → https://isseisuzuki.org/disregard/
- anniversary と -vers でつながる adverse・diverse の記憶術 → https://isseisuzuki.org/etymology-anniversary-vers/
- convert の語源 → [URLを挿入]
- 【タイパ最強】英単語の語源・パーツ分解全リスト|語源×記憶術で芋づる式に覚える →
https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/👇

翻訳練習の解答
- 道路が通行止めになり、車は迂回路へ回された。
- 嵐のため、私たちの便は大阪へ行き先を変更した。
- 畑に水を引くため、川の流れが変えられた。
- 彼女は冗談を言って、話題をそらした。
- 市は予算の一部を学校に回した。
- 音楽は、心配ごとから心をそらしてくれる。
- 彼は悔しさを、努力する力に変えた。
- 好きなことに、意識を向けてみよう。
- 行き詰まったら、そのエネルギーを小さな一歩に向けてみよう。
- 本当に好きなものへ、道の向きはいつでも変えられる。
BSL(Business Service List)収録語
この単語は Business Service List(BSL) に収録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project

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