PR

【語源で覚える】factual|actual をまねて作られた、fact の形容詞

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

▶︎ 詳しいプロフィールはこちら

「ファクトチェック」「ファクトベースで」・・・fact はもう、日本語として通じる言葉になりました。そこに -ual が付くと factual(事実に基づく)。素直すぎて、語源の話なんて要らない気もします。

でも、この -ual には小さな由来があります。factual という語、英語の歴史のなかではかなり新しい。1830年代になって、actual(実際の)の形をまねて作られた言葉なんです。

fact + -ual が自然に生まれたのではなく、先にあった actual を型にして「じゃあ fact もこうしよう」と後から作られた・・・そう聞くと、見慣れた一語が少し違って見えてきます。

そしてもうひとつ。fact の中心にある facere(作る・する)は、このシリーズでもう3回、別の顔で登場しています。factory が丸ごと見えた satisfactory、-fect で終わる defect、fashion と双子だった faction。今日はその本家が、看板をそのまま出して登場した形です。

関連記事は終わりの方にあります。関心のある方はご覧ください。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

factual を分解してイメージで覚える

パーツで見ると、こうなります。

fact(なされたこと:事実)+ -ual(〜に関する)

fact はラテン語 factum、「なされたこと」。動詞 facere(作る・する)の過去分詞から生まれた名詞です。つまり fact とは、もともと「意見」でも「真理」でもなく、実際に起きて、済んでしまったことを指す言葉でした。

ここに -ual が付いて「なされたことに関する」→「事実に基づく」。意味のズレがほとんどない、まっすぐな一語です。

おもしろいのは、その -ual のほう。英語には actual(実際の)という語が先にありました。act(行い)+ -ual。factual は、この actual の形をそのままお手本にして、1830年代に作られています。actual と factual が双子のように似ているのは、偶然ではなく、意図的な真似だったということです。

スポンサーリンク

factual の基本の意味と使い方

factual は「事実に基づく」「事実に関する」を表す形容詞です。意見・解釈・感想と対比して使うのがポイントです。

  • a factual report(事実に基づいた報告)
  • factual accuracy(事実の正確さ)
  • factual error(事実誤認)
  • Keep it factual.(事実ベースでいこう)

日本語の「ファクト」とほぼ同じ感覚で使えますが、英語の factual には「余計な解釈を足していない」という静かな含みがあります。感情を抜いた、という冷たさではなく、足し算をしていないというニュアンスです。

factual と actual の使い分け

形が似ている分、混同されやすい2語です。並べて整理しておきます。

語中心の意味対比される語
factual事実に基づく(解釈ではない)opinion(意見)、fictional(架空の)
actual実際の(想定ではない)potential(潜在的な)、theoretical(理論上の)

the actual cost は「実際にかかった費用」。a factual account は「事実に即した説明」。actual は理想や予定とのズレを、factual は意見や創作とのズレを意識した語です。

fact の芯 facere(作る・する)でつながる単語ネットワーク

fact の中心にあるラテン語 facere は、英語のなかで最も子だくさんな語根のひとつです。形を変えながら、いろんなところに潜んでいます。

そのまま fact-/fac- が見える組

単語意味成り立ち
fact事実factum〈なされたこと〉
factor要因、因子「なす者」=結果を作り出すもの
factory工場factor〈作る人〉がいる場所
faction派閥factio〈なすこと〉=徒党を組んで動く集団
facsimile / fax複製/ファックスfac simile〈似せて作れ〉
facile安易な、たやすいfacilis〈しやすい〉
facility施設、容易さfacilis から
faculty学部、能力「なしうる力」
difficult難しいdis〈〜でない〉+facilis=easy でない

中で母音が変わって -fect/-fic になる組

単語意味成り立ち
affect影響するad〈〜へ〉+fect=働きかける
effect結果、効果ex〈外へ〉+fect=外に出てきたもの
perfect完全なper〈最後まで〉+fect=やり切った
defect欠陥de〈離れて〉+fect=作りから外れた
infect感染させるin〈中へ〉+fect=中に入り込んで作用する
efficient効率的なex+fic=ちゃんと結果を出す
sufficient十分なsub+fic=下から足りるだけ作る
proficient熟達したpro〈前へ〉+fic=前に進める
benefit利益、恩恵bene〈よく〉+facere=よいことをする
profit利益pro〈前へ〉+ficere=前進させる

フランス語を通って化けた組

ここが一番おもしろいところです。同じ facere でも、ラテン語から直接来たものと、フランス語 faire を経由したものとで、姿がまるで変わります。

単語意味成り立ち
feat偉業、功績fact と同じ factum から。フランス語経由の双子
feature特徴factura〈作られた形〉
defeat打ち負かすdes〈逆に〉+faire=作られたものを崩す
counterfeit偽造のcontre〈逆らって〉+faire=本物に似せて作る
forfeit没収される、失うforis〈外へ〉+faire=度を越したことをする
affair事柄、問題à faire〈するべきこと〉

fact と feat が同じ語から分かれた双子・・・これは覚えておくと得です。「ラテン語直輸入は fact、フランス語経由は feat」。綴りの差は、入ってきたルートの差なんです。

さらに遠く|英語の do・deed も同じ家族

ここからが、この単語のいちばん広い眺めです。

facere をさらに遡ると、インド・ヨーロッパ祖語の *dhe-(置く・据える) という語根に行き着きます。そしてこの *dhe- からは、ラテン語の facere だけでなく、**ゲルマン語側の英語 do(する)と deed(行い)**も出ています。

  • do ← 古英語 dōn(する・置く)
  • deed ← 古英語 dæd(なされたこと)
  • indeed ← in deed(事実として)

つまり、fact と do は、ラテン語とゲルマン語に分かれた遠い親戚。**fact=「done こと」**という直感は、語源的にそのまま正しかったわけです。indeed が「実際には」を意味するのも、in fact とまったく同じ発想だったことになります。

さらにギリシャ語側では、同じ *dhe- が tithenai(置く)になり、そこから thesis(論題)・theme(テーマ)・hypothesis(仮説)・synthesis(統合)が生まれています。「置かれたもの」が、英語では deed、ラテン語では fact、ギリシャ語では thesis。同じ発想が三方向に伸びているのが見えます。

注意|fact と fiction は、対義語なのに親戚ではない

fact or fiction(事実か作り話か)。セットで覚えている人も多い対比ですが、語源はまったく別です。

fiction はラテン語 fingere(こねて形づくる・装う)から来ていて、こちらは別の語根に遡ります。「土をこねて形を作る」が元のイメージで、figure(形)や feign(装う)が同じ家族です。

facere は「する・作る(行為として)」、fingere は「こねて形にする(造形として)」。意味は近いのに、別ルート。並べて使われるうちにペアに見えてきただけで、血縁はありません。ここは混ぜないでおくと、あとで迷いません。

派生語|factual まわり

単語品詞意味発音
factual形容詞事実に基づくファクチュアル /ˈfæktʃuəl/
factually副詞事実として、事実の上ではファクチュアリー /ˈfæktʃuəli/
factuality名詞事実性ファクチュアリティ /ˌfæktʃuˈæləti/
counterfactual形容詞事実に反する(〜だったら、の仮定)カウンターファクチュアル /ˌkaʊntərˈfæktʃuəl/
matter-of-fact形容詞淡々とした、事務的なマターオブファクト /ˌmætərəvˈfækt/

TOEIC・英検での出題傾向

factual は TOEIC の語彙リストに入っている実用語です。報告書・記事・社内文書を扱う文脈で、factual information(事実情報)、factual error(事実誤認)、factual accuracy(事実の正確さ)の形でよく出ます。

Part 7 の読解では、「この文書に書かれている factual な情報はどれか」という形で、意見と事実を区別させる設問の指示文に紛れていることもあります。意味は難しくないので、opinion との対比で押さえておけば十分です。英検では準1級あたりから、長文の中で見かけるようになります。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. This report is short, clear, and factual.
  2. You have a gift for factual writing.
  3. Keep your notes factual, and the truth will show itself.
  4. The article was praised for its factual accuracy.
  5. A factual answer is often the kindest one.
  6. She checked every factual detail before the meeting.
  7. Your advice was factual, not harsh.
  8. Factual information builds trust slowly, but it lasts.
  9. Start with what is factual, then add your own view.
  10. Being factual does not mean being cold.

語源メモ|fact は「なされたこと」、factual は19世紀生まれ

fact は1530年代の英語に入った語で、ラテン語 factum(出来事・行い・なされたこと)から来ています。factum は動詞 facere(作る・する)の過去分詞 factus の中性形で、文字どおり「なされたもの」。

おもしろいのは、英語に入った当初の fact が、今の「事実」ではなく「行い・所業」を意味していたことです。16〜17世紀にはむしろ「悪事・犯罪」の意味でよく使われていました。法律表現の after the fact(事後に/犯行の後に)に、その古い意味が化石のように残っています。

今の「検証できる本当のこと」という意味が定着したのは1630年代ごろ。statement(言明)や belief(信念)と区別するための語として使われ始めました。in fact(実際には)は1707年の記録があります。

そして factual。これは1834年、fact に -ual を付け、actual の形にならって作られた語です(OEDはもう少し早く1820年代の用例を挙げています)。英語の語彙としてはかなり新しい部類で、300年近く先に存在していた fact に、後から形容詞が用意された形になります。

なお、face(顔)・facade(正面)・facet(面)の facies は、「ものに与えられた形」という意味で facere と関連する可能性が指摘されています。ただし断定はされていないので、ここでは「かもしれない」に留めておきます。

まとめ

factual は、fact(なされたこと)+ -ual で「事実に基づく」。actual の形をまねて、19世紀に作られた比較的新しい形容詞です。

  • fact(factum)・・・なされたこと。動詞 facere(作る・する)から
  • -ual・・・actual をお手本にした形容詞語尾
  • facere 一族・・・factory/affect/effect/perfect/benefit/profit/feature/counterfeit/affair まで
  • さらに遠く・・・英語の do・deed、ギリシャ語の thesis・theme も同じ *dhe-(置く)から

「事実」とは、誰かが作った意見ではなく、すでになされてしまったこと。fact という語自体が、その定義をそのまま抱えています。

factual の語源ワードマップ。中心は factual(=事実に基づく)で、fact(なされたこと)+-ual に分解。語源・中心(fact=factum←facere、-ualはactualのまね)、fac/fact系(factor/factory/faction/facsimile/difficult)、-fect/-fic系(affect/effect/perfect/defect/benefit/profit)、覚え方のヒント(actualとの関係、feat・do・deedとのつながり)の4クラスターに整理した図。
  • 語源・中心:fact(factum=なされたこと)+ -ual =「事実に基づく」
  • 覚え方のヒント:-ual は actual のまね。actual と双子の形
  • fact/fac 一族:factor/factory/faction/facsimile/facility/difficult
  • -fect/-fic 一族:affect/effect/perfect/defect/efficient/benefit/profit
  • 遠い親戚:do/deed/indeed/thesis/theme

関連記事(内部リンク)

翻訳練習の解答

  1. この報告書は短く、わかりやすく、事実に基づいている。
  2. あなたには、事実を書く才能がある。
  3. メモは事実だけにしておこう。そうすれば、真実のほうから見えてくる。
  4. その記事は、事実の正確さを高く評価された。
  5. 事実に即した答えが、いちばん優しい答えであることも多い。
  6. 彼女は会議の前に、事実関係をひとつずつ確かめた。
  7. あなたの助言は、厳しかったのではなく、事実だっただけだ。
  8. 事実に基づく情報は、ゆっくりとしか信頼を築かない。でも、その信頼は長く続く。
  9. まず事実から始めよう。自分の意見は、そのあとでいい。
  10. 事実に徹することは、冷たくなることではない。

TSL(TOEIC Service List)集録語

この単語は TOEIC Service List(TSL) に収録されています。TSLはTOEICの出題語彙を分析して作られた1,200語のリストで、これらを押さえればテストに出る語彙の約99%をカバーできます。スコアアップに直結する一語です。
出典:New General Service List Project