TOEICの長文問題が、苦行にしか感じられない。
意気込んで買った洋書は、最初の1ページで本棚の飾りになった。
そんな経験はないでしょうか。
先にお伝えします。あなたに読む力がないのではありません。続かないのは、「読まされる読書」をしているからです。
私は教職歴46年、のべ1万人の生徒・学生と英語を勉強してきました。その経験と研究から言えるのは、多読が続かない理由ははっきり特定できる3つだということです。
この記事では、3つの理由と、「読みたくて読む」リーディング習慣の作り方を解説します。
※この記事は「英語4技能ロードマップ」のリーディング編です。4技能全体の学ぶ順番はこちらの設計図をご覧ください。
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【内部リンク:英語4技能はどの順番で学ぶ?挫折しない学習ロードマップ完全ガイド】
先に結論です。英語の多読が続かない理由は3つ。
- 知らない単語が多すぎる本を選んでいる──読書が単語調べ作業になっている
- 「読まされる読書」になっている──試験と義務感が読書を我慢に変えている
- 成果の物差しが試験の点しかない──読了の手応えを記録していない
対策は、発音がわからない単語がほとんどない素材 × 自分で選ぶ × 辞書はまとめて引く × 読了を量で記録する。順に説明します。
英語の多読が続かない3つの理由
理由① 知らない単語が多すぎる本を選んでいる
洋書で挫折した方の本を見せてもらうと、ほぼ例外なく、その方には難しすぎる本です。
1ページに知らない単語が10も20もある。これでは読書ではなく、単語調べ作業です。
なぜ難しい本を選んでしまうのか。多くの方が、リーディングの目的を無意識に「語彙力を付けること」だと勘違いしているからです。
「知らない単語が多い=勉強になる」という発想で本を選ぶと、多読は必ず挫折します。
多読の目的は語彙を増やすことではなく、英語を英語のまま速く処理する力を育てることです。そのために必要な素材の条件は、後ほど数字でお示しします。
理由② 「読まされる読書」になっている
私たちの英語読書歴は、教科書の課題文と試験の長文でできています。
読む素材は与えられ、読んだ後には設問が待っている。「英語を読む=試される」という条件づけが、何年もかけて刷り込まれているのです。
その状態で「多読がいいらしい」と義務感で洋書を開いても、脳は身構えたままです。読まされる読書は、内容が頭に入らないうえに、疲れます。
理由③ 成果の物差しが試験の点しかない
多読の効果は、返り読みの減少や処理速度の向上という形でじわじわ現れますが、TOEICの点数にすぐ反映されるとは限りません。
試験の点だけを物差しにしていると、「読んでいるのに伸びない」と感じてやめてしまいます。読了した本の数、読んでいて楽しかったという手応え──試験以外の物差しを持つことが、継続の条件になります。
多読と精読は目的が違う──日本人に足りないのは多読です
ここで、多くの方が混同している区別をはっきりさせておきます。
精読は、一文を深く読み取り、文法的な判断を正確に行うための読み方です。
学校英語と受験勉強は、ほぼこの精読でできています。だから日本の学習者は、精読はすでに相当訓練されています。
不足しているのは多読、つまりたくさんの英文に触れて速く読む力を育てる読み方のほうです。
実際、TOEICの上級者たちは、例外なく徹底した多読に取り組んでいます。あの分量の長文を時間内に処理する力は、精読の延長では身につかないからです。
速く読めるようになると、良い循環が始まります。
速く読める
→触れられる英語と情報の量が増える
→背景知識が増える
→知っている話題は予測しながら読めるので、さらに速く読める。
多読はこの好循環に入るための投資なのです。
「読まされる」から「読みたくて読む」へ
では、どうすれば刷り込みを解けるのか。鍵は、動機づけの研究(自己決定理論)が示す自律性──自分で決めているという感覚です。
同じ英文でも、課題として与えられた文章と、自分で選んだ文章は、動機づけの上ではまったく別の活動です。
欧米の英語教育にはreading for pleasure(楽しみのための読書)という言葉があります。何を読むかを自分で選び、楽しみのために読む。それ自体が継続の燃料になります。
長年教室で見てきましたが、課題文には反応しない学生が、自分の興味で選んだ素材なら夢中で読む、という場面には数えきれないほど出会ってきました。読む力の問題ではないのです。誰が選んだかの問題なのです。
だからこの記事の方法は、「何を読むか」の決定権をあなたに返すところから始まります。
ファッション雑誌、音楽雑誌、映画関連の雑誌。自分の趣味に応じた教材を選びましょう。
大人の多読の始め方──4ステップ
ステップ1:「発音がわからない単語がほとんどない」素材を選ぶ
素材選びの基準を、数字でお伝えします。
私の研究成果によれば、100語の英文のうち、発音がわからない単語が4個ある英文は、多読に向きません。発音がわからない単語が4つあるとき、意味がわからない単語は2つ以上含まれるからです。
そして海外の研究でも、文章中の知らない単語が2%を超えると、文脈からの推測が働きにくくなることが示されています(Hu & Nation の研究では、辞書なしで物語を十分に理解するには本文の98%の単語を知っている必要があるとされます)。
逆説的ですが、知らない単語が少ない英文ほど、たまに現れる未知の単語にフォーカスしやすく、前後関係から意味を推測できます。
この推測能力こそ、リーディングの核心です。ただし、文章のキーワードになる単語が未知語の場合は推測が崩れるので、致命的です。
だから基準はこうなります。ページを開いて、発音がわからない単語がほとんどない。「やさしすぎるのでは」と感じるくらいが、多読の適正レベルです。
【関連記事】リーディングと単語力の関係 自分に合った英文の選び方

ステップ2:graded readersを、興味で片っ端から読む
そのレベルの本を探すのに最適なのが、graded readers(段階別読み物)です。
使われる単語のレベルで難易度が分けられた洋書のシリーズで、入門レベルなら中学英語の語彙で名作や伝記、ノンフィクションが読めます。
選び方はシンプルです。単語レベルの低いものの中から、興味のあるものを片っ端から読む。
ジャンルの好き嫌いは大いに結構。自分で選ぶこと自体が、前の章で述べた自律性の実践になります。
ステップ3:辞書は「まとめて引く」
多読の流儀には「辞書を一切引かない」というものもありますが、私がおすすめするのはある程度の分量を読んだら、まとめて引く方法です。
読んでいる途中で辞書を引くと、読書のリズムが止まり、推測の練習にもなりません。
まず段落1つを辞書なしで読み切る。慣れてきたら複数の段落を読み切る。そのあとで、気になった単語をまとめて引きます。
この方式には、もうひとつ利点があります。辞書を引いたあとに同じ箇所を読み直すと、繰り返し読みになることです。
繰り返し読みの効果は多くの研究で認められており、2度目に意味を確認しながら読むことで、その効果を最大限引き出せます。
なお、多読が目的なら、初級学習者向けの英英辞典を使うのも良い方法です。定義文そのものが、やさしい英語のインプットになります。
ステップ4:読了を記録する
読み終えた本のタイトルと、5段階の「楽しかった度」だけをメモしてください。語数のノルマは要りません。
読了リストが伸びていくこと自体が、試験の点に代わる成果の物差しになります。
「英語の本を10冊読み終えた自分」は、数ヶ月前には想像もできなかった自分のはずです。しかもこの段階に入ると、読むことが習慣となり、「読まないとなんか変な気分になる」という状態になります。
音読がリーディングを速くする──キーワードを拾う読み方
意外に思われるかもしれませんが、リーディングの速度を上げる練習として、音読が効きます。

モデル音声と同じように読もうとすると、どの単語にアクセントが置かれているかに注意が向きます。
英語で強く、長く読まれる単語は、その文の中で重要な意味を持つ単語です。
この識別能力が高まると、初めて読む英文でもキーワードが拾いやすくなります。
全部を均等に読むのではなく、キーワードを拾っていけば全体の意味がつかめる──そういう読み方ができるようになるのです。
お気づきでしょうか。これは、リスニング編でお伝えした「強く発音された単語だけを拾って再構成する聞き方」と同じ原理です。音読という1つの練習が、読む力と聞く力の両方を支えています。
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【内部リンク:【英語速音読の手順】1万人指導の成果データと福士蒼汰・山下智久の音読勉強法】
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続けるための仕組み──3つだけ
- 次に読む本を自分で選ぶ──本選びも読書の楽しみのうち。誰にも決めさせないでください
- 読了リストを育てる──タイトルと楽しかった度の1行。リストの長さがあなたの自信になります
- 記録を誰かと共有する──読書記録のSNS投稿や学習仲間への報告。見てくれる人の存在が、次の1冊への後押しになります
途切れても大丈夫です。1段落からでも、戻ってこられれば続いていることになります。
よくある質問
Q1. 多読では辞書を引かないのが正しいのでは?
「一切引かない」流儀も有名ですが、私は「まとめて引く」ことをおすすめしています。
読んでいる最中に引かなければ、読書のリズムと推測の練習は守られます。
そのうえで読了後に引けば語彙の確認ができ、読み直せば繰り返し読みの効果も得られます。引くか引かないかではなく、引くタイミングの問題です。
Q2. どのくらい読めば効果が出ますか?
語数のノルマより大切なのは、レベルの合った本を読み切る経験を重ねることです。
適正レベルの本なら、1冊目から「英語の本を読み切れた」という確かな成果が出ます。
読む速度は、読んだ量と背景知識に比例して上がっていきます。焦らず、リストを1冊ずつ伸ばしてください。
Q3. 最初の1冊は何を選べばいいですか?
graded readersの、いちばんやさしいレベルから選んでください。
「自分にはやさしすぎる」と感じるレベルで正解です。ジャンルは完全に好みで構いません。
好きな映画の原作の簡約版、興味のある人物の伝記、子どもの頃好きだった物語の英語版などは、背景知識が推測を助けてくれるぶん、特に読みやすいはずです。
まとめ:読む力ではなく、「誰が選んだか」の問題
- 続かない理由は3つ:知らない単語が多すぎる本・読まされる読書・試験だけの物差し
- 日本人に足りないのは精読ではなく多読による速読力。TOEIC上級者は徹底した多読をしている
- 素材の基準は「発音がわからない単語がほとんどない」こと。知らない単語が2%を超えると推測が働かない
- 進め方は、graded readersを興味で選ぶ → 辞書はまとめて引く → 読了を記録する
- 音読でアクセントの識別力を鍛えると、キーワードを拾う速い読み方が身につく
4技能全体をどの順番で学ぶかは、ロードマップ記事で解説しています。
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【内部リンク:英語4技能はどの順番で学ぶ?挫折しない学習ロードマップ完全ガイド】
次回はライティング編。書くことで学びの意味を確かめる、4技能の仕上げについて解説します。

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