チャリティーコンサート、チャリティーバザー、チャリティーマッチ。「チャリティー」はもう、日本語として完全に定着しています。意味を聞かれたら「慈善」とすぐ出てくる方がほとんどでしょう。
ただ、ここで止まってしまうのがもったいないところで・・・charity の中心にあるのは、実は「慈善」ではありません。ラテン語の carus(いとしい、大切な)。誰かを「大事だ」と思う、あの気持ちです。
そしてこの carus は、charity だけで終わりません。cherish(大切にする・慈しむ)も、caress(そっと触れる)も、同じ家から出ています。知っているカタカナ語ひとつから、中級以上の単語へ道が通る・・・この記事は、その一本道をたどります。
charity を分解してイメージで覚える
パーツで見ると、こうなります。
char(carus=いとしい・大切な)+ ity(〜であること)
つまり charity は、もともと「誰かを大切に思っている状態」。
そこから「困っている人を思いやる気持ち」になり、さらに「その気持ちを形にした行い」=慈善へ広がりました。日本語の「いとおしい」が「いとおしむ」になる流れと、ほとんど同じ道筋です。
おもしろいのは、ラテン語 caritas が「愛情・尊敬」と同時に「値段が高いこと」も意味していた点です。大切なものは、手放しがたい。手放しがたいものは、高い。この二つは、ラテン語の中では地続きでした。
同じ発想は英語にも残っています。dear は「親愛なる」であり、イギリス英語では「高い(値段が張る)」でもあります。大切さと値打ちが一本の線でつながっている・・・carus はまさにこの感覚の単語です。
charity の基本の意味と使い方
charity は名詞で、大きく3つの顔を持ちます。
- 慈善・慈善行為:give to charity(慈善に寄付する)
- 慈善団体そのもの:She works for a charity.(彼女は慈善団体で働いている)
- 寛容さ・好意的に見る心:judge others with charity(人を寛大に見る)
日本語の「チャリティー」は、どちらかというと催しもの寄りです。英語では a charity と数えられる形で組織そのものを指せるところが、大きな違いになります。イギリスの街角にある charity shop(慈善団体が運営する中古品店)も、この用法です。
- The charity supports families after a disaster.(その団体は被災した家族を支援している)
- All profits go to charity.(収益はすべて慈善に寄付される)
- Thank you for your charity.(お心づかいに感謝します)
使い分け|charity・donation・philanthropy と、言葉の温度
意味が近い3語は、守備範囲が違います。
| 語 | 守備範囲 | 感じ |
|---|---|---|
| charity | 慈善の心・行い・団体 | 気持ちと活動の両方を含む広い語 |
| donation | 一回ごとの寄付そのもの | 行為・金額に焦点 |
| philanthropy | 組織的・大規模な社会貢献 | 財団や富裕層の活動を指すことが多い |
もう一つ、実際に使うときに知っておきたいことがあります。charity には「施される側」の立場がにじむ場合がある、という点です。
I don’t want your charity.(情けはいらない)
この一文が成立するように、相手に向けて使うと「あなたは助けられる側だ」という含みが出ることがあります。相手の仕事や作品を支援するときは、support や donation のほうが角が立ちません。語源が「大切に思う気持ち」であるぶん、受け取る側の自尊心に触れやすい言葉でもあるわけです。
carus(いとしい)でつながる単語ネットワーク
ここからが、この記事の本題です。carus を知っていると、見た目のまったく違う単語がつながります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| cherish | 大切にする、慈しむ | carus=いとしい。心の中で大事に抱えておく |
| charitable | 慈善の、寛大な | charity の形容詞。人を好意的に見る |
| uncharitable | 手厳しい、思いやりのない | un(〜でない)+charitable |
| caress | そっと触れる、愛撫 | イタリア語 carezza(いとおしさの表現)から |
| caritas | 隣人愛(神学用語) | ラテン語がそのまま英語に入った形 |
cherish は、結婚の誓いの言葉で耳にしたことがあるかもしれません。「to love and to cherish(愛し、慈しむ)」・・・1549年の英国国教会の祈祷書に載って以来、英語圏の結婚式で読み継がれてきた一節です。cherish は「愛する」より一段静かで、壊れないようにそっと持っている感じの語。cherish a memory(思い出を大切にする)のように、物でなくても使えます。
caress は、手のひらの動きそのものです。carus(いとしい)が動きになると、強く握るのではなく、そっと触れる形になる・・・語源を知ると、この単語の力加減が腑に落ちます。
さらに外へ出ると、イタリア語・スペイン語・ポルトガル語の caro(いとしい/高価な)、フランス語の chéri(e)(いとしい人)も同じ carus。古アイルランド語では cara が「友」を意味しました。ヨーロッパの広い範囲に、この一語が散らばっています。
似ているのに、別の家の単語たち
char- で始まる単語が全部仲間かというと、そうではありません。ここを整理しておくと、混同を防げます。
| 単語 | 本当の出どころ | ひとこと |
|---|---|---|
| charisma / charismatic | ギリシャ語 kharis(恵み・美しさ) | 「好ましく思う」意味は近いが、家系は別 |
| Eucharist | eu(よく)+ kharis | 聖餐。charisma の親戚 |
| charge / car / cargo / chariot | ラテン語 carrus(二輪の荷車) | もとはケルト語 karros。積む・運ぶの家 |
| care | 古英語 caru(嘆き・心配) | ゲルマン語系。carus とは無関係 |
| cherry | ギリシャ語 kerasos(桜桃の木) | 綴りが近いだけの他人 |
とくに charisma は紛らわしい一語です。「人を惹きつける」という意味で charity と近いところにいるのに、出どころはギリシャ語 kharis。語源学者が立てている印欧祖語の語根も、carus 側が「好む・欲する」、kharis 側も「好む・欲する」・・・意味はほとんど同じなのに、別の根として再構されています。似た気持ちを表す言葉が、まったく違う系統から二つ生まれた、ということです。
ついでに cherry にも一言。これはもともと cherise という形で英語に入ったのですが、語尾の s が複数形だと勘違いされて削られ、cherry になりました(pea〈豆〉もまったく同じ経緯です)。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 | 語彙リスト |
|---|---|---|---|---|
| charity | 名詞 | 慈善、慈善団体、寛容さ | チャリティ /ˈtʃærəti/ | NGSL |
| charitable | 形容詞 | 慈善の、寛大な | チャリタブル /ˈtʃærətəbl/ | TSL・BSL |
| charitably | 副詞 | 寛大に | チャリタブリー | ― |
| uncharitable | 形容詞 | 思いやりのない、手厳しい | アンチャリタブル | ― |
| cherish | 動詞 | 大切にする、慈しむ | チェリッシュ /ˈtʃerɪʃ/ | ― |
| cherished | 形容詞 | 大切にされている | チェリッシュト | ― |
| caress | 名詞・動詞 | そっと触れる、愛撫 | カレス /kəˈres/ | ― |
TOEIC・英検での出題傾向
charity 本体より、charitable のほうが試験では目立ちます(TSL・BSL の両方に収録されている語です)。
TOEIC では、社内メールや社告の形で charity event、charitable donation、charitable organization、charitable contributions といった組み合わせが出ます。Part 7 では「この催しの収益はどこへ行くか」を問う設問の答えが charity になる、という形がよくあるパターンです。
英検では準2級〜2級あたりで出会います。正直なところ、単語単体を問われるというより、長文の中で意味が取れれば十分な語です。むしろ cherish のほうが、2級〜準1級の読解で「知らないと止まる」場面が出てきます。charity を入り口に、cherish まで一緒に入れておくのが得策です。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- Small acts of charity can change someone’s whole day.
- She works for a charity that helps children learn to read.
- Your charity does not always have to be money.
- The charity concert raised more than anyone expected.
- He is charitable even when no one is watching.
- People remember your charity long after they forget your words.
- A charitable word costs nothing, and it can carry someone for years.
- They still cherish the charity that once helped their family.
- Try to be charitable when you judge yourself, too.
- Charity begins at home, but it does not have to end there.
語源メモ
charity は、古英語の終わりごろに「貧しい人への慈悲」「キリスト教的な愛の最も高い形」として現れます。古フランス語 charité(12世紀)を経由し、さかのぼるとラテン語 caritatem(主格 caritas)「高価であること、尊敬、愛情」、その元が carus(いとしい、価値がある)です。
印欧祖語の語根としては *ka-「好む・欲する」が立てられていますが、etymonline も「この語根から出たかもしれない」という推定の書き方をしています。再構された形である点は、押さえておいてください。
なぜ「愛」が「慈善」になったのか。鍵は聖書の翻訳にあります。ラテン語訳聖書(ヴルガータ)が、ギリシャ語の agape(神の愛・隣人愛)を caritas と訳しました。ラテン語 amor だと男女の愛の含みが出てしまうから、というのが etymonline の見立てです。
英語の欽定訳(1611年)も、パウロ書簡を中心とした26か所ほどで charity を使いました。コリント人への手紙一13章の「信仰、希望、そして charity。この中で最も大いなるものは charity」という一節が、その代表です。ただし1881年の改訂訳では、これらがすべて love に置き換えられました(OED)。現代の英語聖書で charity を見かけないのは、このためです。
意味の層を年代順に並べると、こうなります。
- 古英語後期・・・貧しい人への慈悲/キリスト教的な愛
- 1300年ごろ・・・人が互いに抱くべき愛情/親切な行い・施し
- 15世紀後半・・・人の行いを好意的に判断すること
- 1690年代・・・慈善団体・慈善財団
形容詞 charitable は1200年ごろ、まずキリスト教の徳として登場し、「貧しい人に寛大な」が1400年ごろ、「他人の動機を善意に受け取る」が1620年代です。be charitable to someone’s motives(相手の動機を好意的に解釈する)という現代の用法は、この最後の層にあたります。
cherish は14世紀初めに「いとしいものとして扱う」として英語に入りました。古フランス語 chierir(現代フランス語 chérir)、その元が chier「いとしい」、さらに carus です。「心の中で育てる・抱き続ける」の意味は14世紀後半から。結婚の誓いの「to love and to cherish」は、1549年の祈祷書(トマス・クランマー編、中世のソールズベリー儀式書がもと)に収められた表現です。
caress は17世紀に入ってきた新参で、名詞「愛情の表現」が1640年代、「優しくなでること」が1650年代。イタリア語 carezza(いとおしさの表現)、その元が caro です。
charisma は別の家です。1875年に「神から授けられた賜物」としてギリシャ語 kharisma から入り、「指導者としての資質」の意味は1930年ごろ、社会学者マックス・ウェーバーのドイツ語の用法(1922年『経済と社会』)を経由して広まりました。「個人的な魅力」という今いちばん身近な意味は、1959年とかなり新しい層です。Eucharist(聖餐)も eu(よく)+ kharis で、こちら側の家族になります。
最後にことわざを一つ。Charity begins at home.(慈愛はまず家庭から)が今の形で印刷物に現れたのは、1642年、医師トマス・ブラウンの『医師の信仰(Religio Medici)』です。考え方自体はもっと古く、14世紀末のウィクリフにさかのぼるとされます。なお、ブラウンの原文は続きがあり、「とはいえ人は自分自身の最大の敵である」と、むしろ皮肉として書かれていました。今の使われ方とは、少し温度が違います。
ちなみに英語圏の女性名 Charity は、Faith(信仰)・Hope(希望)と並ぶ名前で、ピューリタンが使い始めたとされます。カトリック系の国際援助団体 Caritas も、ラテン語がそのまま名前になった例です。
まとめ
charity は、char(carus=いとしい・大切な)+ ity で「誰かを大切に思う気持ち」。そこから慈善、慈善団体、寛容さへと意味が広がりました。
- carus(いとしい)・・・意味の中心。大切に思う、値打ちがある
- cherish・・・静かに大事に持ち続ける。思い出にも使える
- caress・・・いとおしさが手の動きになったもの
- charisma は別の家・・・ギリシャ語 kharis。意味は近いが血縁はない
「チャリティー」を知っているなら、あなたはもう cherish と caress の入り口に立っています。あと一歩です。

- 語源・中心:char(carus=いとしい・大切な)+ ity =「誰かを大切に思う気持ち」
- 覚え方のヒント:大切に思う → 手放しがたい → 値打ちがある(dear と同じ発想)
- carus 一族:cherish/charitable/uncharitable/caress/caritas/caro・chéri
- 似て非なる家:charisma・Eucharist(kharis)/charge・car・cargo(carrus)/care/cherry
NGSL(New General Service List)収録語
この単語は New General Service List(NGSL) に収録されています。NGSL は、大規模な英語コーパスから選ばれた約2,800語の基礎語彙リストで、これらを覚えるだけで一般的な英文の約92%をカバーできます。日常でも英文読解でも、何度も出会う基本の一語です。
出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答
- 小さな思いやりが、誰かの一日をまるごと変えることがある。
- 彼女は、子どもたちが文字を読めるよう支援する慈善団体で働いている。
- あなたの思いやりは、いつもお金である必要はない。
- そのチャリティーコンサートは、誰もが思っていた以上の資金を集めた。
- 彼は、誰も見ていないときでも人に寛大だ。
- 人はあなたの言葉を忘れたあとも、あなたの思いやりを覚えている。
- 思いやりのある一言はお金がかからない。それでいて、何年も誰かを支えることがある。
- 彼らは、かつて家族を助けてくれたあの支援を、今も大切に思っている。
- 自分を裁くときも、どうか寛大でいてほしい。
- 慈愛はまず家庭から。でも、そこで終わる必要はない。


