「それ、よくあることだよ」の「起こる」を英語で言うとき、happen のほかにもう一つ、必ず出てくる単語があります。occur。
TOEIC の案内文、ニュース、理科系の説明文・・・あらゆる場所で顔を出すのに、なぜか意味がぼんやりしたまま通り過ぎてしまう。そんな単語ではないでしょうか。
つづりを見てください。oc-cur。真ん中で割ると、後ろに cur がいます。パソコンの「カーソル(cursor)」と同じ、「走る」の cur です。
【語源で覚える】cursor|パソコン画面を走るあの印、正体は「走る人」

そして頭の oc は、もとは ob(〜に向かって)。つまり occur は「こちらに向かって走ってくる」。出来事は、自分が起こすのではなく、向こうから走ってきて目の前にぶつかる・・・そう捉えると、occur の使い方のクセまで、まるごと腑に落ちます。
occur を分解してイメージで覚える|二重の c に隠れた「走る」
occur をパーツで見ると、こうなります。
oc(ob=〜に向かって)+ cur(走る)
合わせて「向かって走る」。目の前に走ってきて、出くわす。それが occur の意味の中心です。
だから occur は、もともと「出会う」でした。道の向こうから誰かが走ってくる。思いがけず、ばったり会う。その「思いがけなさ」が残ったまま、「現れる」→「起こる」へと意味が育っていきました。
手がかりをひとつ。c が2つ並んでいるのは、ob の b が c に飲み込まれた跡です。ob + currere が言いにくいので、b が c に寄せられて occurrere になった。つづりの cc は、その化石だと思ってください。覚えにくい二重字が、意味のヒントに変わります。
「oc/ob が付いていたら、たぶん”〜に向かって”の話」・・・そう見えるようになると、初めて出会う単語でも見当がつくようになります。
occur の基本の意味と使い方
occur は「起こる」「生じる」「(考えが)浮かぶ」を表す自動詞です。
- The accident occurred at night.(その事故は夜に起きた)
- Changes occur slowly.(変化はゆっくり起こる)
- It occurred to me that she was right.(彼女が正しいと、ふと思い当たった)
ここで一番大事なのが、occur は目的語を取らないという点。「〜を起こす」とは言えません。
- ✕ He occurred a problem.
- ✕ The accident was occurred.(受け身にしない)
- ○ A problem occurred.
理由は語源そのものです。occur は「向こうから走ってくる」。主語は走ってくる側であって、誰かが走らせるわけではない。だから他動詞にも受け身にもならない・・・この一本道を押さえておけば、文法問題でも迷いません。
もう一つ、It occurs to 人 that 〜 の形(〜という考えが人の頭に浮かぶ)。これも「考えが向こうから走ってきて、自分にぶつかる」と考えると自然です。アイデアは、ひねり出すより、向こうからやってくる。そんな実感に近い表現です。
使い分け|occur / happen / take place
| 語 | ニュアンス | 例 |
|---|---|---|
| occur | ややかたい。書き言葉・ニュース・説明文向き。予期しない出来事にも使う | Errors rarely occur. |
| happen | いちばん日常的。会話の標準 | What happened? |
| take place | 予定されていたことが「行われる」 | The ceremony will take place at ten. |
ざっくり言えば、occur は happen のフォーマル版。そして take place は「予定通り開催される」ニュアンスなので、事故や問題には使いません。TOEIC の Part 5 では、この3つの入れ替えがそのまま問われます。
ob(〜に向かって)でつながる単語ネットワーク
occur の頭にいる ob(〜に向かって・〜に対して)を知っておくと、見た目がバラバラな単語が一気に整理できます。occur ならではの広がりは、こちら側です。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| object | 物体、対象、反対する | ob(向かって)+ject(投げる)=目の前に投げ出されたもの |
| obvious | 明らかな | ob(向かって)+via(道)=道の真ん中にある=見逃しようがない |
| obstacle | 障害物 | ob(向かって)+sta(立つ)=行く手に立ちはだかるもの |
| oppose | 反対する | ob(向かって)+pose(置く)=向かい合わせに置く |
| offer | 差し出す、申し出る | ob(向かって)+fer(運ぶ)=相手の方へ運んでいく |
| occupy | 占める、占領する | ob(向かって)+cup(つかむ)=つかみ取る |
| obstruct | ふさぐ、妨害する | ob(向かって)+struct(積む)=前に積み上げる |
気づきましたか。ob は、後ろに来る音に合わせて姿を変えます。c の前では oc(occur, occupy)、f の前では of(offer)、p の前では op(oppose)。見た目が違っても、全部同じ ob です。これが見えると、つづりの「なぜ二重字?」がいちいち納得に変わります。
そして「向かって」は、文脈によって2方向に伸びます。好意的に向かえば offer(差し出す)、敵対的に向かえば oppose(反対する)・obstacle(立ちはだかる)。occur は、そのどちらでもない「ただ、やってくる」。出来事は善意でも悪意でもなく、向こうからやってくるだけ・・・そんな中立さが occur にはあります。
cur(走る)でつながる単語ネットワーク
もう一方の家族、**cur(走る/ラテン語 currere)**も押さえておきましょう。occur の後半はこちらです。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| current | 流れ、電流、現在の | 走って流れているもの・今まさに進んでいること |
| course | 進路、講座 | 走っていく道筋 |
| recur | 再発する、繰り返す | re(再び)+走る=もう一度走ってくる |
| concur | 同意する、同時に起こる | con(ともに)+走る=一緒に走って同じ所に着く |
| incur | (損失などを)招く | in(中へ)+走る=自分から走り込んで引き受ける |
| excursion | 遠足、小旅行 | ex(外へ)+走る=外へ繰り出す |
| precursor | 先駆者、前兆 | pre(前に)+走る人=先に走る者 |
とくに recur(もう一度走ってくる) と concur(一緒に走る) は、occur と並べると方向の違いがくっきりします。occur は「こちらへ」、recur は「また」、concur は「ともに」、incur は「中へ」。前の部品が変わるだけで、走る向きが変わる・・・ラテン語の組み立て方が、いちばん見やすいのがこの一族です。
※ cur(走る)一族のくわしい広がりと、car(車)との意外な親戚関係は、cursor の記事でまとめています。
※ もう一つ注意点。accuracy・cure の cur は、こちらとは別語源(ラテン語 cura=手をかける)です。つづりが同じでも家系が違うので、混ぜないようにしておくと安心です。
派生語|occur まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| occur | 動詞 | 起こる、生じる、思い浮かぶ | アカー /əˈkɜːr/ |
| occurrence | 名詞 | 出来事、発生、起こること | アカーレンス /əˈkɜːrəns/ |
| occurred | 動詞(過去・過去分詞) | 起こった | アカード /əˈkɜːrd/ |
| occurring | 動詞(ing形) | 起こっている | アカーリング /əˈkɜːrɪŋ/ |
| recur | 動詞 | 再発する、繰り返される | リカー /rɪˈkɜːr/ |
| recurrence | 名詞 | 再発、再来 | リカーレンス /rɪˈkɜːrəns/ |
綴りの注意:occur は r を2つ重ねて occurred / occurring / occurrence となります(アクセントが後ろにあるため)。英語ネイティブでもよく間違えるのが occurance。正しくは occurrence・・・r が2つ、最後は -ence です。ここだけ目に焼き付けておくと、ライティングで損をしません。
TOEIC・英検での出題傾向
occur は、TOEIC・英検ともに押さえておきたい頻出語です。
TOEIC では、Part 5 の品詞・語法問題で happen / take place / occur の使い分けがそのまま問われます。とくに「occur を受け身にできるか」は定番の引っかけ。Part 7 では、故障・遅延・エラーの案内文に if a problem occurs、errors may occur の形で頻出します。occurrence も a rare occurrence(まれな出来事)の形で見かけます。
英検では準2級〜2級あたりから登場し、準1級以上では長文の説明文でごく普通に出てきます。理科系・社会系の読解文と相性がよい単語です。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- Good ideas often occur when you stop trying so hard.
- The next meeting will occur online on Friday.
- It never occurred to me that you felt the same way.
- Change occurs slowly, but it does occur.
- If a problem occurs, tell someone early.
- A chance may occur when you least expect it.
- Did it ever occur to you that you are already doing fine?
- Small wins occur more often than we notice.
- Mistakes occur, and then we learn something new.
- Whatever occurs today, you can begin again tomorrow.
語源メモ|occurrere(向かって走る)から生まれた言葉
occur は、ラテン語 occurrere(出迎えに走る、ぶつかる、降りかかる、姿を現す) に由来します。構成は ob(〜に向かって・〜に対して)+ currere(走る)。さらに currere をさかのぼると、インド・ヨーロッパ祖語の *kers-〈走る〉 に行き着きます。
英語に入ったのは1520年代。最初の意味は「出会う」「議論でぶつかる」でした。そこから「姿を現す」→「出来事として現れる」→「起こる」へ。「人の頭に浮かぶ」の意味が加わったのは1620年代です。「向こうから走ってくる」という原義が、人にも出来事にも考えにも応用されていったわけですね。
名詞の occurrence は1530年代、中世ラテン語 occurrentia 経由で英語へ。「予定も期待もしていなかったのに起きたこと」という成り立ちで、occur の「思いがけなさ」をそのまま受け継いでいます。
つづりの cc について補足しておきます。ラテン語の接頭辞 ob- は、直後の子音に引きずられて形を変える性質があります(同化)。c の前では oc-、f の前では of-、p の前では op-。だから ob+currere は occurrere、ob+ferre は offerre、ob+ponere は opponere。英語の occur・offer・oppose の二重字は、すべてこの名残です。
なお、accuracy や cure の cur は別系統(ラテン語 cura=手をかける・世話をする)。つづりが重なっていても語源は無関係なので、そこだけ分けて覚えておくと、人に説明するときに迷いません。
まとめ
occur は、oc(ob=〜に向かって)+ cur(走る)で「こちらに向かって走ってくる」=起こる、生じる。
- ob(〜に向かって)・・・object/obvious/obstacle/oppose/offer/occupy などの一族へ
- cur(currere=走る)・・・current/course/recur/concur/incur/precursor などの一族へ
- occur は、その2つが出会う場所に立つ単語
- 「向こうから走ってくる」ので、受け身にしない・目的語を取らない
出来事は、自分で起こすものばかりではありません。向こうから走ってきて、ふいにぶつかる。occur という単語は、そのことを形のまま教えてくれます。そして It occurred to me ・・・いい考えもまた、力づくでひねり出すより、ふっと向こうからやってくるものなのかもしれません。

- 語源・中心:oc(ob=〜に向かって)+ cur(走る)=「向かって走ってくる」=起こる
- 覚え方のヒント:二重の c は ob の b が溶けた跡/出来事は向こうから走ってくる=受け身にしない
- ob(〜に向かって)一族:object/obvious/obstacle/oppose/offer/occupy/obstruct
- cur(走る)一族:current/course/recur/concur/incur/excursion/precursor
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- 【タイパ最強】英単語の語源・パーツ分解 全リスト|語源×記憶術で芋づる式に覚える
- 【語源で覚える】cursor|パソコン画面を走るあの印、正体は「走る人」
- 【語源で覚える】currently|”cur” は car の親戚。「走る・流れる」で覚える「今」
- 【語源で覚える】accuracy|隠れた cure(キュア)は「手をかける」
- object の語源(ob+ject=向かって投げる)→ (近日中に公開)
- obvious の語源(ob+via=道の上にある)→ (近日中に公開)
翻訳練習の解答
- いいアイデアは、力を抜いたときにこそ浮かぶことが多い。
- 次の会議は、金曜日にオンラインで行われます。
- あなたが同じ気持ちだったなんて、思いもしませんでした。
- 変化はゆっくり起こる。けれど、ちゃんと起こっている。
- 問題が起きたら、早めに誰かに伝えよう。
- チャンスは、思ってもみないときにやってくるものだ。
- あなたはもう十分やれている・・・そう考えてみたことはありますか。
- 小さな成功は、気づいているより頻繁に起きている。
- 失敗は起こる。そのたびに、何か新しいことを学んでいく。
- 今日何が起きたとしても、明日また始めればいい。
集録語彙リスト
派生語のoccurenceは NAWL(学術)・TSL(TOEIC)・BSL(ビジネス)のすべて に集録されています。学術・試験・実務のどの場面でも使われる、最優先で覚えたい一語です。
NAWL(New Academic Word List)集録語
この単語は New Academic Word List(NAWL) に集録されています。NAWLは大規模な学術コーパスから抽出された960語のリストで、これらを覚えるだけで学術英語の約92%をカバーできます。論文や英字ニュースを読むとき、必ず出会う一語です。出典:New General Service List Project
TSL(TOEIC Service List)集録語
この単語は TOEIC Service List(TSL) に収録されています。TSLはTOEICの出題語彙を分析して作られた1,200語のリストで、これらを押さえればテストに出る語彙の約99%をカバーできます。スコアアップに直結する一語です。
出典:New General Service List Project
BSL(Business Service List)集録語
この単語は Business Service List(BSL) に集録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project

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