「〇〇レジデンス」というマンション名、街で何度も見かけますよね。響きがよくて、なんとなく高級そうで・・・たいていの人はそこで止まります。
でも、この residence を分解すると、まったく予想しない単語と手をつなぎます。
re(あとに・元のところへ)+ sid(座る)
「あとに座ったまま動かない」。日本語でいう「居座る」に近いイメージです。そして、ここから先が本題です。「あとに座ったまま残ったもの」を名詞にすると・・・residue(残りかす・残留物)。そう、残留農薬の「残留」です。
高級マンションの「レジデンス」と、鍋の底に残ったカスの「レジデュー」。この2つは比喩でも偶然でもなく、同じ一語から枝分かれした正真正銘の親戚です。
residence を分解してイメージで覚える
パーツで見ると、こうなります。
re(あとに・元のところへ)+ sid(sedere=座る)+ ence(〜すること・したもの)
ポイントは頭の re です。re を見ると「もう一度」と訳したくなりますが、ここは違います。この re は「後ろに・元のところに」。動いていかずに、その場に残る方向を指します。
そこに「座る」が付くので、residere は「座ったまま、あとに残る」。人が主語なら「住む・とどまる」、物が主語なら「残る」。この一語が、人の側に転んだのが residence(住まい)で、物の側に転んだのが residue(残りかす)です。
覚え方は、日本語の「居座る」をそのまま当ててください。
- 人が居座る → residence(住まい)、resident(住民)
- 物が居座る → residue(残留物)、residual(残りの)
ひとつの動詞が、人と物で真っ二つに分かれた・・・そう捉えると、どちらも一発で入ります。
residence の基本の意味と使い方
residence は「住居」、そして「そこに住んでいるという事実・状態」を表す名詞です。house や home より少し硬く、書類や公的な場面で使われます。
- place of residence(居住地・住所)
- take up residence in Kyoto(京都に住まいを構える)
- a residence permit(在留許可)
- proof of residence(居住を証明する書類)
- the official residence of the Prime Minister(首相官邸)
ここで、カタカナの知識を一度置いていきましょう。日本語の「レジデンス」はマンション名の定番ですが、英語の residence に「分譲マンション」という意味はありません。
英語で集合住宅を指すなら apartment、分譲なら condominium(condo)です。residence はあくまで「住まい」「居住していること」、そして文脈によっては「邸宅・公邸」です。
ついでにもうひとつ。英語の mansion は「大邸宅」で、日本語のマンションとは別物です。この2つはセットで直しておくと、英作文での取り違えが消えます。
使い分け|residence / resident / residential / residency
形が似ていて、TOEICでも狙われる4語です。
| 語 | 品詞 | 中心の意味 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| residence | 名詞 | 住居、居住していること | place of residence, take up residence |
| resident | 名詞・形容詞 | 居住者、住民/居住している | local residents, resident population |
| residential | 形容詞 | 住宅の、居住用の | residential area, residential building |
| residency | 名詞 | 居住(権)、研修医の研修期間 | permanent residency, surgical residency |
迷ったときの目印は、後ろに名詞が続くかどうかです。a residential area のように名詞を修飾するなら residential、文の中で「住所」そのものを指すなら residence になります。
なお resident には、もうひとつ日本でも使われている顔があります。病院の「レジデント(研修医)」です。これは1892年のアメリカで生まれた用法で、理由はいたってシンプル・・・当時の若い医師は、病院に住み込んで勤務していたからです。
まさに「居座っている人」。研修期間そのものを指す residency は、少し遅れて1924年ごろから使われるようになりました。
関連語ネットワーク|re+sid の直系
まずは、residence とまったく同じ切れ目を持つグループです。「あとに残る」の物の側が、ここに集まります。
| 単語 | 意味 | 成り立ち |
|---|---|---|
| residue | 残り、残留物、残りかす | あとに座って残ったもの |
| residual | 残りの、残存の | residue の形容詞。residual value=残存価値 |
| residuary | 残余の(法律用語) | residuary estate=債務を払った後に残る遺産 |
| reside | 住む、とどまる、(性質が)存在する | 動詞の本体 |
| resident | 居住者、研修医 | とどまっている人 |
ひとつ、知っておくと面白い順番があります。英語に先に入ったのは、動詞の reside(15世紀末)ではなく、名詞の residence(14世紀末)のほうです。しかも residue も同じ14世紀半ば。つまり「住まい」と「残りかす」は、ほぼ同時期に英語へ到着した双子のような関係なんです。
関連語ネットワーク|ラテン語 sedere(座る)一族
sid/sid-/sess の形が見えたら、たいてい「座る」です。接頭辞の向きを変えるだけで、これだけ広がります。
| 単語 | 意味 | 成り立ち |
|---|---|---|
| preside / president | 議長を務める/大統領・社長 | prae(前に)+sidere=前に座る |
| session | 会議、(録音などの)セッション | sessio=座ること。音楽の「セッション」は1927年から |
| sedentary | 座りがちな、運動不足の | 座ったままの |
| sediment | 沈殿物、堆積物 | 沈んで座ったもの |
| subside | 静まる、おさまる、沈下する | sub(下に)+sidere=下に座る |
| subsidy | 補助金、助成金 | subsidium=後ろに控える予備部隊 |
| supersede | 取って代わる | super(上に)+sedere=上に座る |
| dissident | 反体制派の(人) | dis(離れて)+sidere=離れて座る |
| insidious | 油断ならない、じわじわ進行する | insidiae(待ち伏せ)=中に座って待つ |
| assess | 査定する、評価する | ad(そばに)+sidere=判事の横に座る |
| assiduous | 勤勉な、根気強い | そばに座り続ける |
| possess | 所有する | potis(力のある)+sedere=力をもって座る |
| sedate / sedative | 落ち着いた/鎮静剤 | 座らせる=静める |
ここで一度、residence と並べてみてください。同じ「座る」でも、
- 前に座れば president(統べる人)
- 離れて座れば dissident(異を唱える人)
- 中で待ち伏せれば insidious(じわじわ来るもの)
- あとに残って座れば residence(住まい)
接頭辞ひとつで、人間関係の縮図のように意味が散っていきます。
関連語ネットワーク|綴りから見えない親戚
ここからが、語源を知っている人だけが見える景色です。
| 単語 | 意味 | つながり |
|---|---|---|
| size | 大きさ、サイズ | assize(法廷が定めた量)の頭が落ちた語。「判事の横に座って量を決める」が出発点 |
| siege | 包囲、攻囲 | 元の意味は「座席・玉座」。軍が町の前に座り込むことから「包囲」へ |
| chair | 椅子 | ラテン語 cathedra ←ギリシャ語 kathedra(kata「下へ」+hedra「座」) |
| cathedral | 大聖堂 | 司教の座(cathedra)が置かれた教会 |
| chaise longue | 寝椅子(シェーズロング) | フランス語で「長い椅子」。chair と同じ語の別形 |
| nest | 巣 | 「下に(ni)+座る(sed)」=鳥が下りて座る場所 |
| soot | すす | 「(舞い落ちて)座ったもの」 |
| sit / seat / set / settle / saddle | 座る/座席/置く/落ち着く/鞍 | 英語本来語の側に残った同じ語根 |
Sサイズ・Mサイズの size が「座る」から来ている・・・これは言われないと気づきません。もともとは assize、つまり裁判官の傍らに座った者が、税や分量を「こう決める」と定めること。その「定められた分量」が、やがて「大きさ」になりました。
siege(包囲)も鮮やかです。アーサー王の円卓にある空席を Siege Perilous(危険な席)と呼ぶのですが、この siege がまさに「席」の意味。軍隊が城の前にどっかり座り込んで動かない・・・それが「包囲」です。ここでも「居座る」が効いています。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 | 収録リスト |
|---|---|---|---|---|
| residence | 名詞 | 住居、居住 | レジデンス /ˈrezɪdəns/ | TSL・BSL |
| residential | 形容詞 | 住宅の、居住用の | レジデンシャル /ˌrezɪˈdenʃl/ | TSL・BSL |
| reside | 動詞 | 住む、とどまる | リザイド /rɪˈzaɪd/ | ― |
| resident | 名詞・形容詞 | 居住者、研修医/居住している | レジデント /ˈrezɪdənt/ | ― |
| residency | 名詞 | 居住権、研修期間 | レジデンシー /ˈrezɪdənsi/ | ― |
| residue | 名詞 | 残り、残留物 | レジデュー /ˈrezɪduː/ | ― |
| residual | 形容詞 | 残りの、残存の | リジデュアル /rɪˈzɪdʒuəl/ | ― |
| non-resident | 名詞・形容詞 | 非居住者(の) | ノンレジデント | ― |
※ 収録リストの欄は、NAWL・TSL・BSL の管理リストで確認できたものだけを記載しています。「―」は未確認という意味で、「収録されていない」という意味ではありません。
TOEIC・英検での傾向
residence と residential は、TSL(TOEIC)・BSL(ビジネス)の両方に入っている実用語です。TOEICでは、まず品詞の識別で狙われます。
- a (residence / residential) area → 名詞 area を修飾するので residential
- your current place of (residence / residential) → of の後は名詞なので residence
- local (residence / residents) were invited → 人なので residents
よく出る形も押さえておきましょう。residential area(住宅地)、residential building(住宅用の建物)、residential customers(個人のお客様。business customers と対になります)、place of residence(居住地)、residence permit(在留許可)。不動産・公共料金・引っ越し案内といった Part 7 の文書で、ごく普通に顔を出します。
ついでにもうひとつ、地味に差がつく知識を。supersede(取って代わる)は、英語で -sede で終わる唯一の一般的な単語です。precede・recede・concede は -cede、proceed・succeed・exceed は -ceed。supercede と書いてしまう人が非常に多いので、「これだけは sedere(座る)の仲間だから -sede」と覚えておくと、ライティングで一歩抜けます。
英検では準2級〜2級で residence・resident が登場します。residual は少し硬めで、英字ニュースや契約書で出会う語です。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- Please write your place of residence on this form.
- She took up residence in a quiet town by the sea.
- The area around the station is mostly residential.
- You do not need a grand residence to feel at home.
- Every resident of the building was invited to the meeting.
- He is a writer in residence at a small college.
- Kindness can take up residence in a small daily habit.
- Your strength does not reside in being perfect.
- A house becomes a residence only when someone decides to stay.
- Wherever you make your residence, you can start again there.
語源メモ
residence はラテン語 residere(座り込む、あとに残る、とどまる)に由来します。分けると re-(後ろへ・元のところへ)+ sedere(座る)。中世ラテン語 residentia から古フランス語を経て、14世紀末の英語に「ある場所に住んでいること」「住まい」として入りました。動詞の reside が英語に現れるのは、それより遅い15世紀末です。
同じ residere から、中性形容詞の residuum(残っているもの)を経て生まれたのが residue(14世紀半ば)。法律の世界では早くも15世紀初めに「債務などを支払った後に残る財産」の意味で使われています。residual はさらに後の1560年代で、最初は数学用語でした。
おもしろいのは、residence の「職務のためにその土地にとどまること」という語義です。これは14世紀末から使われていて、もともとは聖職者が自分の教区に住んでいるかどうかを指す教会用語でした。それが19世紀に大学教授・芸術家・詩人へと広がり、やがて「____-in-residence」という言い方が1954年までに定着します。日本の美術館や自治体でおなじみの「アーティスト・イン・レジデンス」は、この系譜の直系です。「滞在制作」と訳されますが、語源までたどると「そこに居座って務めを果たす人」という教会語が出発点だったわけです。
sedere の奥には、印欧祖語の語根 *sed-(座る)があると考えられています。これはサンスクリット語の sidati(座る)、ギリシャ語の hedra(座・面)、古英語の sittan(座る)などを突き合わせて再構された形で、実在の文献に残っているわけではありません。この語根を立てることで、ラテン語経由の residence・session と、英語本来語の sit・seat・settle・saddle、そしてギリシャ語経由の chair・cathedral が、ひとつの家系に収まります。多面体を表す polyhedron・tetrahedron の -hedron も、この hedra(面=立体が座る面)です。
いくつか、断定を避けておきたい点があります。
- nest(巣)は「下に(*ni)+座る(*sed-)」と説明されますが、辞書も「おそらく」と留保を付けています。
- possess(所有する)は potis(力のある)+sedere と見るのが有力ですが、これも推定です。意味としては「力をもってその場に座っている」で、residence と並べるとよく分かります。
- sedan(セダン型の乗用車)は、語源が確定していません。イタリア語 sede(椅子)系の方言から来たとする説が有力で、これならラテン語 sedes・sedere と同じ家系に入ります。一方で「フランスの都市スダン(Sedan)に由来する」という説も広く流布していますが、歴史的な裏づけを欠くとして辞書は否定的です。17世紀のイギリスでは「一人用の担ぎ椅子」を指し、自動車の車体形式として使われるのは1911年のアメリカからです。
- soot(すす)は「落ち着いたもの・座ったもの」という原義で、ゲルマン語側から *sed- につながるとされています。
最後に、綴りで混同しやすい一族を切り分けておきます。precede・recede・proceed・access・excessive などの ced / cess は、ラテン語 cedere(行く・退く)であって、sedere(座る)ではありません。「行く」と「座る」では正反対です。supersede だけが -sede で終わるのは、この語が本当に「座る」側の出身だからです。
まとめ
residence は、re(あとに)+ sid(sedere=座る)+ ence で「その場に座ったまま残ること」=住まい・居住。
- 語源・中心・・・re(あとに)+sid(座る)=「居座る」
- 人の側に転ぶと・・・residence/resident/residential/residency
- 物の側に転ぶと・・・residue(残留物)/residual(残存の)
- sedere 一族・・・president/session/subsidy/supersede/dissident/possess/assess
- 綴りから見えない親戚・・・size/siege/chair/cathedral/nest/soot/sit/seat
高級マンションの「レジデンス」も、鍋底の「残りかす」も、根っこは同じ・・・その場に居座って動かないこと。そう考えると、residence という堅い単語が、急に手触りのあるものになりませんか。

- 語源・中心:re(あとに)+ sid(sedere=座る)=「座ったまま残る=居座る」
- 覚え方のヒント:人が居座れば residence、物が居座れば residue
- re+sid 直系:residue/residual/residuary/reside/resident/residential
- sedere(座る)一族:president/session/sedentary/subsidy/supersede/dissident/insidious/possess
- 綴りから見えない親戚:size/siege/chair/cathedral/nest/soot
TSL(TOEIC Service List)・BSL(Business Service List)収録語
この単語は TSL(TOEIC) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。ビジネスでもTOEICでも頻出する、汎用性の高い一語です。
出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答例
- この用紙に、あなたの居住地を書いてください。
- 彼女は海辺の静かな町に、住まいを構えた。
- 駅の周りは、ほとんどが住宅地だ。
- 立派な住まいがなくても、心から落ち着ける場所は持てる。
- その建物の住民は全員、集まりに招かれた。
- 彼は小さな大学で、滞在作家として迎えられている。
- やさしさは、日々の小さな習慣の中に住みつくことがある。
- あなたの強さは、完璧であることの中にあるのではない。
- 家が住まいになるのは、誰かがそこにとどまると決めたときだ。
- どこに住まいを定めても、あなたはそこからまた始められる。


