シェアハウスやマンションのパンフレットで、「コモンスペース」 という言葉を見たことはありませんか。住人がみんなで使える共用のラウンジやキッチンのことです。
この「コモン」が common。意味はそのまま「共有の」です。
そして、ここからが面白いところ。コモンスペースに人が集まって、顔なじみになって、ゆるい関係ができていく・・・その集まりを英語で何と呼ぶか。community(コミュニティ) です。
common と community。カタカナで並べると別物に見えますが、実は community は common に接尾辞がついただけの、まっすぐな親子関係にあります。
common を分解してイメージで覚える
common の語源は、ラテン語 communis。分けるとこうなります。
com(共に)+ munis(務めを分け持つ)= みんなで共有している
そして community は、この communis に「〜である状態」を表す接尾辞 -itas(英語の -ity) がついた形です。
communis(共通の)+ -ity(〜である状態)= 共通であることの状態 = 共同体
覚え方の手がかりは、真ん中に置かれた「共有のもの」が common、それを囲んでいる人たちが community、という一枚の絵です。
コモンスペースという共有の場(common)があるから、そこに集う人の輪(community)が生まれる。この順番で覚えると、両方の意味が同時に入ってきます。
ちなみに綴りは common と community で o と u が一文字違いますが、これはラテン語の communis(u)が英語に入る途中で o に変わったためです。意味のつながりは、綴りのズレよりずっと強く残っています。
common の基本の意味と使い方
common には、大きく2つの顔があります。
①「共有の、共通の」
- We have a lot in common.(私たちには共通点が多い)
- common ground(共通の土台、共通認識)
- common room(共用室、談話室)
②「ありふれた、よくある」
- a common mistake(よくある間違い)
- the common cold(普通の風邪)
- It’s common to feel nervous.(緊張するのはよくあることだ)
この2つは別の意味に見えますが、根は同じです。「みんなが共有している」→「どこにでもある」→「ありふれている」。共有されていればいるほど、珍しくなくなる、ということです。
なお②の方向に進みすぎると「平凡な、品がない」という少し下げたニュアンスにもなります。英語の common には、この微妙な下向きの含みがあることを知っておくと、人や物を褒めるときに使わずに済みます。
“communis(共有する)” でつながる単語ネットワーク
common の中心にある communis を知っておくと、一見バラバラな単語が一本の線でつながります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| community | 共同体、地域社会 | communis+-ity=「共通である状態」 |
| communicate | 伝える、共有する | 「共通のものにする」が原義 |
| communication | 伝達、コミュニケーション | communicate の名詞形 |
| communal | 共同の、共用の | 共同体のもの |
| commune | 共同生活体、コミューン | 共に分け持つ場 |
| communion | 親交、聖餐 | 分かち合うこと |
| communism | 共産主義 | 共有を土台にする考え方 |
| commonwealth | 連邦、共和国 | common(共通の)+wealth(富・幸福) |
| commoner | 庶民、平民 | 「common な人々」の側 |
| commonplace | ありふれた、決まり文句 | どこにでもある場所・言葉 |
「commun- または common- が見えたら、たぶん”みんなで分け持つ”話」・・・そう見えるようになると、初見の単語でも意味が推測できます。
意外な親戚|mean と mutual
ここからが、この単語のいちばん面白いところです。
形容詞の mean(意地悪な、卑しい)。まったく関係なさそうに見えますが、実は common と双子です。
mean は古英語 gemǣne「共通の、みんなの」に由来します。これは印欧祖語 *ko-moin-i-「共に持たれた」 から生まれたゲルマン語系の形で、ラテン語の communis とまったく同じ出発点を持っています。
- ラテン語ルートを通って英語に入ったのが common
- ゲルマン語ルート(英語の本来語)として残ったのが mean
同じ祖先から、フランス語経由の借用語と、英語生え抜きの単語が別々に生まれたわけです。
さらに面白いのは、意味の変化まで並行していること。
- gemǣne「みんなの」→「ありふれた」→「身分が低い」→「卑しい、意地悪な」
- communis「みんなの」→ common「ありふれた」→「平凡な、品がない」
どちらも「みんなのもの」から出発して、同じ方向に意味が下がっていきました。「共有されているものは、ありがたみが薄れる」という人間の見方が、2つの言語で同じように働いたということです。
もう一語、mutual(相互の)も遠い親戚です。ラテン語 mutuus「交換でなされる」由来で、communis と同じ印欧祖語の語根 *mei-「交換する」にさかのぼります。「お互いに交換し合う」と「みんなで共有する」は、もともと一つのイメージから枝分かれしたものでした。
munus(義務)側への広がり
communis の後半部分(munis)は、「公の務めを果たす」という意味のラテン語グループにもつながっています。こちらは別記事で詳しく扱っているので、表で全体像だけ押さえておいてください。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| municipal | 市の、地方自治の | 公の務めを引き受ける |
| municipality | 地方自治体 | 務めを共に引き受ける仕組み |
| immune | 免疫の、免除された | im(否定)=務めを免れる |
| immunity | 免疫、免責 | 負担から守られること |
| remunerate | 報酬を与える | 務めへの返礼 |
common が「みんなで分け持つ」側、municipality が「公の務めを引き受ける」側。同じ根から、共有と義務という2つの方向に広がっているのが見えてきます。
派生語|Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| common | 形容詞・名詞 | 共通の、ありふれた/共有地 | コモン /ˈkɑːmən/ |
| commonly | 副詞 | 一般に、たいてい | コモンリー /ˈkɑːmənli/ |
| commonness | 名詞 | ありふれていること | コモンネス /ˈkɑːmənnəs/ |
| community | 名詞 | 共同体、地域社会 | コミュニティ /kəˈmjuːnəti/ |
| commoner | 名詞 | 庶民、平民 | コモナー /ˈkɑːmənər/ |
| commonplace | 形容詞・名詞 | ありふれた/決まり文句 | コモンプレイス /ˈkɑːmənpleɪs/ |
| commonwealth | 名詞 | 連邦、共和国 | コモンウェルス /ˈkɑːmənwelθ/ |
実用では副詞の commonly の出番が多めです。commonly used(一般に使われている)、commonly known as(一般に〜として知られる)の形で、説明文やニュースに頻繁に登場します。
TOEIC・英検での出題傾向
common は TOEIC の全パートに出てくる基本語です。特に Part 5 の品詞問題で、common(形容詞)と commonly(副詞)の使い分けが問われます。空所の後ろが名詞なら common、動詞や形容詞を修飾するなら commonly・・・この判別ができれば確実に取れる一問です。
熟語では have … in common(共通点がある)、common ground(共通認識)、common practice(通例)あたりがビジネス文書で頻出します。英検では3級〜準2級レベルから登場する、早い段階で押さえておきたい一語です。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。解答は記事の最後にまとめてあります。
- We have a lot in common.
- Your common sense will guide you well.
- This flower is common in the spring.
- The common room is open to every student.
- Finding common ground takes patience.
- It is common to feel nervous before a big day.
- They share a common goal and help each other.
- Common words are often the most useful ones.
- You and I have more in common than you think.
- A common effort can build something no one could build alone.
語源メモ|communis と、英語に残ったもう一つの枝
common は、13〜14世紀に古フランス語 comun を経て英語に入りました。元はラテン語 communis「共有された、みんなのもの、ありふれた、気取らない」です。
さらにさかのぼると、再構された印欧祖語の複合語 *ko-moin-i-「共に持たれた」 にたどり着きます。*ko-「共に」+ *moi-n-(語根 *mei-「変える、交換する」の派生形)という構造で、直訳すれば「みんなで分け合っている」。この後半部分は、ラテン語 munia「公の務め」の源でもあります。
community は14世紀後半、古フランス語 comunité を経て、ラテン語 communitas(communis + -itas)から。OED によれば、ラテン語の communitas はもともと性質を表す名詞で、「仲間であること、関係や感情を共有している状態」を指しました。「人の集まり・地域社会」という具体的な意味は、英語に入ってから前面に出たものです。
※ よく見かける「community = common + unity(統一)」という説明は誤りです。unity の語源はラテン語 unus(1つ)で、まったく別の語根です。正しくは common(communis)+ 接尾辞 -ity で、「共通であることの状態」という構造になります。
もう一つ押さえておきたいのが、同じ *ko-moin-i- から生まれたゲルマン語系の枝です。古英語 gemǣne「共通の、公の」がそれで、これが縮まって中英語 mēne、現代の mean になりました。ドイツ語の gemein(共通の/卑しい)も同じ仲間です。
古英語には「共同体」を表す gemǣnscipe という語もありました。gemǣne に -scipe(現代の -ship)がついた形で、意味も構造も community とそっくりです。ラテン語由来の community が入ってきたことで、英語本来のこの語は姿を消しました。同じ発想の言葉が、2つの言語で別々に作られていたわけです。
common room(大学の談話室)は1660年代、common sense はラテン語 sensus communis の訳で14世紀後半、commonwealth は common + wealth で15世紀半ばの登場です。
まとめ
common は、ラテン語 communis(com=共に+munis=務めを分け持つ)で「みんなで共有している」。そこから「ありふれた」まで意味が広がりました。
- common・・・共有の、共通の。そこから「ありふれた」へ
- community・・・common + -ity=「共通であることの状態」=共同体
- communis 一族・・・communicate/communal/commune/communism/commonwealth
- 双子の mean・・・同じ印欧祖語 *ko-moin-i- から、ゲルマン語ルートで生まれたもう一つの枝
- 覚え方の手がかり:コモンスペース(common)があるから、コミュニティ(community)が生まれる
共有している「もの」が common、それを囲む「人の輪」が community。この一枚の絵を持っておけば、どちらの単語も迷わなくなります。

- 語源・中心:com(共に)+ munis(務めを分け持つ)=「みんなで共有している」
- 覚え方の手がかり:コモンスペース(共有の場)→ コミュニティ(人の輪)
- communis 一族:community/communicate/communal/commune/communism/commonwealth/commonplace
- munus(務め)側:municipal/municipality/immune/immunity/remunerate
- 意外な親戚:mean(意地悪な)/mutual(相互の)
関連記事(内部リンク)
- 【語源で覚える】municipality|”muni-” の正体は、あのコミュニティと同じ語根?
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翻訳練習の解答
- 私たちには共通点がたくさんある。
- あなたの常識が、きっとうまく導いてくれる。
- この花は、春にはよく見かける。
- その共用室は、すべての学生に開かれている。
- 共通の土台を見つけるには、根気がいる。
- 大事な日の前に緊張するのは、よくあることだ。
- 彼らは共通の目標を持ち、互いに助け合っている。
- ありふれた単語こそ、いちばん役に立つことが多い。
- あなたと私には、思っているより多くの共通点がある。
- みんなの力なら、一人では作れないものが作れる。
NAWL・TSL・BSL 集録語|3つのリストすべてに入る一語
common(および副詞形 commonly)は、New Academic Word List(NAWL)・TOEIC Service List(TSL)・Business Service List(BSL) の3つすべてに集録されています。
- NAWL(学術)・・・学術論文・教科書・講義のコーパスから抽出された約960語。基本語リストのNGSLと合わせて学ぶと、学術的な文章の約92%をカバーします。
- TSL(TOEIC)・・・TOEICの問題・対策教材のコーパスから抽出された約1,200語。NGSLと合わせると、TOEICに出てくる語彙の約99%をカバーします。
- BSL(ビジネス)・・・ビジネス文書・新聞・業界誌などのコーパスから抽出された約1,700語。ビジネス英語の語彙の約97%をカバーします。
性格の違う3つのリストに同時に入る語は、全体から見ればごく一部です。論文を読むときも、TOEICを解くときも、仕事のメールを書くときも出てくる・・・つまり、どこを目指していても避けて通れない一語ということになります。覚える優先順位は、かなり高めに置いて構いません。


