「dichotomy(二分法)」は、正直、パッと見はとっつきにくい単語です。でも語源で2つに割ると、急に手なずけられます。しかも割った先に、意外な有名単語が待っています。
頭の di は「2」。後半の tom は「切る」。それだけで「2つに切り分ける」・・・つまり二分法。ここまでは素直です。
面白いのはこの後半の tom。実はこれ、atom(原子) や anatomy(解剖) と同じ「切る」なんです。難単語だと思っていた dichotomy が、知っている単語と地下でつながっている。そこが見えると、丸暗記がバカらしくなります。
di は「2」|まず身近な di から入る
dichotomy の di に入る前に、「di=2」を知ってる単語で温めておきます。
- dioxide(二酸化物)・・・carbon dioxide は二酸化炭素。di(2)+ oxide(酸化物)。
- dilemma(ジレンマ)・・・di(2)+ lemma(前提)。2つの前提のあいだで板挟み。
- dual(二重の)/ duo(2人組)・・・こちらはラテン語 duo(2)の系統。
「di・du が頭にいたら、たぶん2の話」・・・この感覚を持ったまま dichotomy を見ると、頭の di がもう「2」に見えてきます。
(※ 2をあらわす di・du の仲間はこちらでまとめています → [2(two)で学ぶ英単語 du/di のURL])
dichotomy を分解してイメージで覚える
パーツで見ると、こうなります。
di(2つに)+ tom(切る)+ y
「2つに(di)」「切る(tom)」で、そのまま「2つに切り分けること」。善と悪、光と闇、心と身体・・・世界をスパッと2つに割って考える、それが二分法です。
正確には、頭は dicho-(ギリシャ語で「2つに、離して」の意味)で、これが dis(twice)や「2」と同じ仲間です。「di=2」で入って、まったく問題ありません。
dichotomy の基本の意味と使い方
dichotomy は「二分法」「(2つの)対立・食い違い」を表す名詞です。ものごとを、対立する2つのグループにきっぱり分ける・・・そのイメージです。
- the dichotomy between work and rest(仕事と休みの対立)
- a false dichotomy(偽の二分法=本当は2択じゃないのに2択に見せること)
- the old dichotomy of good and evil(善と悪という古くからの二分法)
特に覚えておくと得なのが false dichotomy(偽の二分法)。「敵か味方か」「勝ちか負けか」のように、本当は中間があるのに2択に押し込む・・・議論でよく出てくる考え方で、これを知っていると英語の評論がぐっと読みやすくなります。
“tom(切る)” でつながる単語ネットワーク
ここが今回の目玉です。dichotomy の後半 tom(切る/ギリシャ語 temnein)を知ると、まったく別ジャンルの単語が一気につながります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| anatomy | 解剖(学) | ana(すっかり)+tom=すっかり切り開く |
| atom | 原子 | a(否定)+tom=もう切れないもの |
| appendectomy など -ectomy | (外科的)切除 | ec(外へ)+tom=切り取る |
| lobotomy | ロボトミー | 脳の一部を切る手術 |
| epitome | 縮図、典型 | epi(上に)+tom=切り出した要点 |
| tome | (分厚い)一巻、大著 | 全体から切り分けた一巻 |
とくに atom。ギリシャの人たちは「もうこれ以上”切れない”最小のつぶ」を a(否定)+ tom(切る)で atom と呼びました。物質を割って割って、もう割れなくなったところ・・・それが原子です。dichotomy と atom が同じ「切る」でつながっている、と気づくと、ちょっと自慢したくなります。
di(2)でつながる単語ネットワーク
もう一方の柱、頭の di(2)をたどると、「2」に関する単語がまとまって見えます。
| 単語 | 意味 | 語源 |
|---|---|---|
| dioxide | 二酸化物 | di〈2〉+oxide |
| dilemma | ジレンマ、板挟み | di〈2〉+lemma〈前提〉 |
| dual | 二重の | ラテン語 duo〈2〉 |
| duo / duet | 2人組/二重奏 | duo〈2〉 |
| double | 2倍の | duo〈2〉系 |
dichotomy は、「切る(tom)」と「2(di)」という2つの家族が出会う場所に立っている単語・・・そう捉えると、一語から二方向に世界が広がります。
派生語|dichotomy まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| dichotomy | 名詞 | 二分法、(2つの)対立 | ダイコトミー /daɪˈkɒtəmi/ |
| dichotomous | 形容詞 | 二分された、二分法的な | ダイコトマス /daɪˈkɒtəməs/ |
| dichotomize | 動詞 | 二分する | ダイコトマイズ |
| dichotomization | 名詞 | 二分化 | ダイコトマイゼイション |
TOEIC・英検での出題傾向
正直に言うと、dichotomy は TOEIC ではあまり出ません。ビジネス文書より、評論・学術寄りの語だからです。見かけるのは英検準1級〜1級、TOEFL、大学入試の長文評論あたり。「知的な議論の単語」というポジションなので、覚えておくと読解で効きますし、英語好きのあいだでは”分かってる感”の出る一語でもあります。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- Life is not always a simple dichotomy.
- You don’t have to accept a false dichotomy.
- The dichotomy between work and rest is not so clear.
- Many problems get smaller when we drop the dichotomy.
- There is a dichotomy between what we say and what we feel.
- You can live beyond the dichotomy of win or lose.
- The old dichotomy of right and wrong hides the gray in between.
- She gently questioned the dichotomy of strong and weak.
- Between the two sides of any dichotomy, there is room to grow.
- Let go of the dichotomy, and you may find a third way.
語源メモ|「2つに」+「切る」が出会う言葉
dichotomy は、ギリシャ語 dikhotomia(2つに切ること)に由来します。分けると dikho-(2つに、離して=dis「twice」や「2」の仲間)と、temnein(切る)。合わさって「2つに切り分ける」となり、ラテン語を経て英語に入りました(初出は1600年ごろ)。
覚えておくと得なのが後半の tom/tomy。これは anatomy・atom・epitome・-ectomy・lobotomy など、たくさんの単語に共通する「切る」の核です。dichotomy を入り口に、この一族へ広げていけます。
なお、音が似ているので混同されがちですが、terminate や terminal(終着駅)は tom とは無関係です。あちらはラテン語 terminus(境界・果て)が語源で、ルートが別。ここは押さえておくと、鋭い人に聞かれても迷いません。
まとめ
dichotomy は、di(2つに)+ tom(切る)+ y で「2つに切り分けること」=二分法。
- di(2)・・・dioxide/dilemma/dual/duo などの一族へ
- tom(切る)・・・anatomy/atom/epitome/lobotomy などの一族へ
- dichotomy は、その2つが交わる入り口
難しそうな一語も、2つに割ってしまえば怖くない。しかも割った先で、原子や解剖と握手できます。

- 語源・中心:di(2つに)+ tom(切る)=「2つに切り分ける」
- 覚え方のヒント:di → 2(dioxide・dilemma の di)/tom → 切る(解剖の tom)
- tom(切る)一族:anatomy/atom/-ectomy/lobotomy/epitome/tome
- di(2)一族:dioxide/dilemma/dual/duo/double
関連記事(内部リンク)
- 2(two)で学ぶ英単語 du/di
- anatomy・atom と “tom(切る)” でつながる記憶術 → (近日中に公開)
- 英単語の語源・パーツ分解 全リスト 👇

翻訳練習の解答例
- 人生は、いつも単純な二択とはかぎらない。
- あなたは、偽の二分法を受け入れなくていい。
- 仕事と休みの境目は、そんなにはっきりしていない。
- 二分法を手放すと、多くの問題は小さくなる。
- 口に出すことと、心で感じることのあいだには、ずれがある。
- あなたは、勝ち負けという二分法の外側で生きていける。
- 善か悪かという古い二分法は、その間にあるグレーを隠してしまう。
- 彼女は、強い弱いという分け方に、そっと疑問を投げかけた。
- どんな二分法でも、その2つのあいだには、伸びしろがある。
- 二分法を手放せば、第3の道が見つかるかもしれない。

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