TOEIC の長文を読んでいて、prevent と prevail が一瞬わからなくなったこと、ありませんか。
prevent(防ぐ)と prevail(勝る・広まる)。頭の pre- が同じで、次が v で始まる。急いで読んでいると、目がすべります。しかも意味は「止める」と「勝つ」で、ほとんど正反対です。
でも、この2語はうしろのパーツを見れば、もう二度と混ざりません。prevail のうしろにいるのは val・・・「強い」です。
そう、バレンタイン(Valentine)や valid(有効な)の、あの val。「先に(pre)強い(val)」から「勝る」になった、とても素直な一語です。
※ この記事は、公開済みの evaluation・valuation と同じ val 一族の記事ですが、担当範囲が違います。あちらは val の「価値」側(value・valid・equivalent)。こちらは val の 「強さ」側を正面から扱います。
prevail を分解してイメージで覚える|意味の中心は val(強い)
prevail をパーツで見ると、こうなります。
pre(前に・先に)+ vail(val=強い)
イメージはシンプルです。相手より先に、強いほうに出る。だから「勝る」「打ち勝つ」。
そして、勝ったものはどうなるか。その場を占めて、あたりまえになっていきます。だから prevail には、もうひとつ「広く行き渡る」「広まっている」という意味がある・・・ここが、この単語の面白いところです。
- 競り合って勝つ → prevail over ~
- 勝った結果、その場を占める → 広まる、行き渡る
「勝つ」と「広まる」。辞書で2つ並んでいると別物に見えますが、語源でつなぐと一本の線です。
prevail の基本の意味と使い方
prevail は動詞で、主に3つの顔を持ちます。
- 勝る、打ち勝つ:Common sense prevailed.(良識が勝った)
- 広く行き渡っている:This custom still prevails.(この習慣は今も残っている)
- prevail upon +人:説得して〜させる
3つめの prevail upon は、少し古風で丁寧な響きがあります。「相手の気持ちに勝つ」から「説き伏せる」になった形で、記録は1570年代まで遡ります。手紙やフォーマルな文章で見かけたら、「なんとか頼み込んで〜してもらった」くらいの温度です。
- They prevailed upon him to stay.(彼らは頼み込んで、彼に残ってもらった)
混同しやすい prevail と prevent
冒頭の話に戻ります。この2語は、うしろのパーツがまったく違います。
| prevail | prevent | |
|---|---|---|
| 分解 | pre(先に)+ val(強い) | pre(先に)+ vent(来る) |
| ラテン語 | praevalere | praevenire |
| 中心の意味 | 強さで勝る | 先に来る |
| 今の意味 | 勝る、広まる | 防ぐ、妨げる |
val は「強い」、vent は「来る」。これだけ押さえれば、もう迷いません。
しかも prevent のほうにも、ちょっとした裏話があります。この語が英語に入った15世紀初めの意味は「先回りする・先に来る」で、今の「防ぐ」ではありませんでした。「防ぐ」の意味が定着するのは1540年代以降です。先に着いてしまえば、相手は入れない・・・そこから「阻止する」に傾いていったわけです。
ちなみに vent(来る)のほうは、event(出来事)・invent(発明する)・adventure(冒険)・avenue(通り)と同じ仲間です。prevent を見たら「来る」側、と覚えておくと、こちらの一族もまとめて拾えます。
val(強い)でつながる単語ネットワーク
prevail の意味の中心 val(ラテン語 valere=力を持つ・強い)。evaluation・valuation の記事では「価値」側を扱いましたが、ここでは 元の意味である「強さ」側を集めます。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| prevail | 勝る、広まる | pre(先に)+val=先に強い |
| prevalent | 広く行き渡った、流行している | 強く広まっている状態 |
| valiant | 勇敢な | 強さ(val)にあふれた |
| valor | 勇気、武勇 | 強さ(val)そのもの |
| convalesce | 回復する | con(すっかり)+val=強さを取り戻す |
| invalid | 無効な/病弱な | in(否定)+val=強さがない |
| countervail | 相殺する、対抗する | counter(逆に)+val=逆向きの力で打ち消す |
| avail | 役に立つ | 力(val)になる |
valere のもともとの意味は「強い・達者である」。そこから「価値がある」へ広がりました。だから val 一族には、「強さ」の顔と「価値」の顔の2つがあります。prevail は、前者のまっただ中にいる単語です。
※ value・valuable・valid・equivalent など「価値」側の一族は、evaluation の記事で詳しく扱っています。available・avail の実務での使い方は valid の記事へどうぞ。
名前にひそむ “強い”|Ronald・Harold・Donald と wield
ここからは、少し遠くまで行きます。
ラテン語 valere のさらに上流にあるとされる印欧祖語の語根 *wal-(強い)。この語根から、ラテン語の外側にも枝が伸びている、と考えられています。たとえば、こんな名前です。
| 名前・語 | 由来 | 意味 |
|---|---|---|
| Ronald | 古ノルド語 Rögnvaldr | 神々の力を持つ者 |
| Harold | ゲルマン系 *hariwald | 軍を率いる者 |
| Gerald | 古高ドイツ語 Gerwald | 槍をふるう者 |
| Oswald | 古英語 Osweald | 神の力を持つ者 |
| Donald | ケルト祖語 *Dubno-valos | 世界を治める者 |
| Vladimir | 古代教会スラヴ語 Vladimiru | 平和を治める者 |
| wield | 古英語 wealdan | (力を)ふるう、使いこなす |
英語の wield(ふるう・行使する)が、この一族の「英語ネイティブ側の代表」です。もともとは「統治する」という重い意味で、今の「剣をふるう」「権力をふるう」に残っています。
Ronald も Donald も Harold も、要するに**「強い人」「治める人」**。prevail(強さで勝る)と、根っこで握手している可能性がある・・・そう思うと、ニュースで見る名前の景色が少し変わります。
※ ただし、ここは語源学でも推定の領域です。etymonline も「この語根から来ているかもしれない語」という留保つきの書き方をしています。断定せず、「そう考えられている」という温度で受け取っておくのが安全です。ラテン語 valere から prevail までの道筋は確実ですが、そのさらに先は推定、という線引きです。
派生語|prevail まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| prevail | 動詞 | 勝る、広まる、説得する | プリヴェイル /prɪˈveɪl/ |
| prevailing | 形容詞 | 広く行き渡った、支配的な | プリヴェイリング /prɪˈveɪlɪŋ/ |
| prevalent | 形容詞 | 広く見られる、流行している | プレヴァレント /ˈprevələnt/ |
| prevalence | 名詞 | 普及、有病率 | プレヴァレンス /ˈprevələns/ |
※ 発音の注意点がひとつ。prevail・prevailing はうしろの -vail にアクセントが来ますが、prevalent・prevalence は頭の pre- にアクセントが移ります。同じ一族でも、音の形が変わるタイプです。声に出して確かめておくと、リスニングで取りこぼしません。
TOEIC・英検での出題傾向
prevail とその派生語は、ビジネス文書で静かに頻出します。とくに prevailing は、覚えておくと得をする形です。
- prevailing wage(所定労働賃金・標準賃金)・・・建設契約や入札の文書で定番。その地域・職種で最も多く支払われている賃金水準を指します。
- prevailing market conditions(現在の市況)・・・業績報告やニュースリリースで頻出。
- prevailing wind(卓越風・恒常風)・・・地理や気象の文章で。「その土地でふだん吹いている風」です。
- prevailing party(勝訴当事者)・・・契約書の弁護士費用条項でよく出ます。「勝ったほう」です。
TOEIC Part 7 の契約書・社内通達・市場レポートで、この4つはどれも出番があります。英検では準1級以上の論説文で、prevalent(広く見られる)とセットで押さえておくといいでしょう。
「prevailing = いま広く行き渡っている」。この一語で読めてしまう文が、意外に多いです。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- In the end, common sense prevailed.
- Kindness often prevails over anger.
- If you keep going, you will prevail.
- The old custom still prevails in this town.
- A quiet voice can prevail in a noisy room.
- She prevailed upon her friend to join the team.
- Truth tends to prevail, though it takes time.
- Let patience prevail when things get hard.
- The prevailing mood in the office was hopeful.
- Your small efforts will prevail in the end.
語源メモ|praevalere と、つづりに入り込んだ avail
prevail は1400年頃、prevailen の形で英語に現れます。意味は「成功する・効き目がある」。古フランス語 prevaleir(現代フランス語 prévaloir)と、ラテン語 praevalere「より強い・より大きな力を持つ」から直接入りました。
分けると prae(前に)+ valere(力を持つ・強い)。valere のさらに上流は、印欧祖語の語根 *wal-(強い)とされています。
ここで、つづりについて一言。prevail の -vail という形は、ラテン語の valere からそのまま来たというより、英語の avail(役に立つ)の影響を受けた可能性がある、とされています(etymonline も “perhaps” と留保)。語源が同じ一族の2語が、英語の中で互いのつづりを引っぱり合った・・・ありそうな話です。
意味の広がりも整理しておきます。
- 1400年頃・・・「成功する・効き目がある」
- 15世紀半ば・・・「優位な影響力を持つ」=勝る
- 1570年代・・・prevail upon「説得して〜させる」
- 1776年・・・「広く行き渡っている」
- 1680年代・・・prevailing が「広く受け入れられた・現行の」の形容詞に
最初は「勝つ」、あとから「広まる」。順番で見ると、意味のつながりがよく見えます。
そして冒頭の prevent。こちらは praevenire(prae+venire=来る)で、別の家です。同じ pre- を頭に載せているだけの、他人同士。この整理をしておけば、長文を速く読んでも取り違えません。
まとめ
prevail は、pre(先に)+ val(強い)で「相手より先に強い」=勝る・打ち勝つ。そこから「広く行き渡る」まで広がった一語です。
- val(強い)・・・prevalent/valiant/valor/convalesce/countervail/avail
- val(価値)・・・value/valid/equivalent は evaluation・valuation の記事へ
- prevent とは別物・・・prevail は「強い」、prevent は「来る」
- 実務で効く形・・・prevailing wage/prevailing market conditions/prevailing party
先に強いほうが、その場を占める。そして占めたものが、あたりまえになる。prevail という一語には、その流れがまるごと入っています。

- 語源・中心:pre(先に)+ val(valere=強い)=「先に強い → 勝る → 広まる」
- 覚え方のヒント:prevail は「強い(val)」、prevent は「来る(vent)」
- val(強さ)一族:prevalent/valiant/valor/convalesce/countervail/avail
- 遠い親戚(推定):Ronald/Harold/Donald/Vladimir/wield
関連記事(内部リンク)
- evaluation の語源(評価・査定)→ https://isseisuzuki.org/evaluation/
- valuation の語源(価値の見積り・企業価値)→ https://isseisuzuki.org/valuation/
- valid の語源(有効な・妥当な/available・avail の実務用法)→ https://isseisuzuki.org/valid/
- 【ピラー】英単語の語源・パーツ分解 全リスト
👇 → https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/

翻訳練習の解答
- 最後には、良識が勝った。
- やさしさは、しばしば怒りに勝つ。
- 歩き続けていれば、あなたは勝てる。
- その古い習慣は、この町に今も生きている。
- 騒がしい部屋でも、静かな声が通ることはある。
- 彼女は友人を説き伏せて、チームに入ってもらった。
- 真実は、時間はかかっても、やがて通るものだ。
- つらいときこそ、忍耐を前に出そう。
- オフィスに広がっていた空気は、明るいものだった。
- あなたの小さな積み重ねは、最後に効いてくる。
BSL(Business Service List)集録語
この単語は Business Service List(BSL) に集録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project


