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【語源で覚える】prevail|prevent と混同しやすい一語、意味の中心は “val(強い)”

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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TOEIC の長文を読んでいて、prevent と prevail が一瞬わからなくなったこと、ありませんか。

prevent(防ぐ)と prevail(勝る・広まる)。頭の pre- が同じで、次が v で始まる。急いで読んでいると、目がすべります。しかも意味は「止める」と「勝つ」で、ほとんど正反対です。

でも、この2語はうしろのパーツを見れば、もう二度と混ざりません。prevail のうしろにいるのは val・・・「強い」です。

そう、バレンタイン(Valentine)や valid(有効な)の、あの val。「先に(pre)強い(val)」から「勝る」になった、とても素直な一語です。

※ この記事は、公開済みの evaluation・valuation と同じ val 一族の記事ですが、担当範囲が違います。あちらは val の「価値」側(value・valid・equivalent)。こちらは val の 「強さ」側を正面から扱います。

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prevail を分解してイメージで覚える|意味の中心は val(強い)

prevail をパーツで見ると、こうなります。

pre(前に・先に)+ vail(val=強い)

イメージはシンプルです。相手より先に、強いほうに出る。だから「勝る」「打ち勝つ」。

そして、勝ったものはどうなるか。その場を占めて、あたりまえになっていきます。だから prevail には、もうひとつ「広く行き渡る」「広まっている」という意味がある・・・ここが、この単語の面白いところです。

  • 競り合って勝つ → prevail over ~
  • 勝った結果、その場を占める → 広まる、行き渡る

「勝つ」と「広まる」。辞書で2つ並んでいると別物に見えますが、語源でつなぐと一本の線です。

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prevail の基本の意味と使い方

prevail は動詞で、主に3つの顔を持ちます。

  • 勝る、打ち勝つ:Common sense prevailed.(良識が勝った)
  • 広く行き渡っている:This custom still prevails.(この習慣は今も残っている)
  • prevail upon +人:説得して〜させる

3つめの prevail upon は、少し古風で丁寧な響きがあります。「相手の気持ちに勝つ」から「説き伏せる」になった形で、記録は1570年代まで遡ります。手紙やフォーマルな文章で見かけたら、「なんとか頼み込んで〜してもらった」くらいの温度です。

  • They prevailed upon him to stay.(彼らは頼み込んで、彼に残ってもらった)

混同しやすい prevail と prevent

冒頭の話に戻ります。この2語は、うしろのパーツがまったく違います。

prevailprevent
分解pre(先に)+ val(強い)pre(先に)+ vent(来る)
ラテン語praevalerepraevenire
中心の意味強さで勝る先に来る
今の意味勝る、広まる防ぐ、妨げる

val は「強い」、vent は「来る」。これだけ押さえれば、もう迷いません。

しかも prevent のほうにも、ちょっとした裏話があります。この語が英語に入った15世紀初めの意味は「先回りする・先に来る」で、今の「防ぐ」ではありませんでした。「防ぐ」の意味が定着するのは1540年代以降です。先に着いてしまえば、相手は入れない・・・そこから「阻止する」に傾いていったわけです。

ちなみに vent(来る)のほうは、event(出来事)・invent(発明する)・adventure(冒険)・avenue(通り)と同じ仲間です。prevent を見たら「来る」側、と覚えておくと、こちらの一族もまとめて拾えます。

val(強い)でつながる単語ネットワーク

prevail の意味の中心 val(ラテン語 valere=力を持つ・強い)。evaluation・valuation の記事では「価値」側を扱いましたが、ここでは 元の意味である「強さ」側を集めます。

単語意味イメージ
prevail勝る、広まるpre(先に)+val=先に強い
prevalent広く行き渡った、流行している強く広まっている状態
valiant勇敢な強さ(val)にあふれた
valor勇気、武勇強さ(val)そのもの
convalesce回復するcon(すっかり)+val=強さを取り戻す
invalid無効な/病弱なin(否定)+val=強さがない
countervail相殺する、対抗するcounter(逆に)+val=逆向きの力で打ち消す
avail役に立つ力(val)になる

valere のもともとの意味は「強い・達者である」。そこから「価値がある」へ広がりました。だから val 一族には、「強さ」の顔と「価値」の顔の2つがあります。prevail は、前者のまっただ中にいる単語です。

※ value・valuable・valid・equivalent など「価値」側の一族は、evaluation の記事で詳しく扱っています。available・avail の実務での使い方は valid の記事へどうぞ。

名前にひそむ “強い”|Ronald・Harold・Donald と wield

ここからは、少し遠くまで行きます。

ラテン語 valere のさらに上流にあるとされる印欧祖語の語根 *wal-(強い)。この語根から、ラテン語の外側にも枝が伸びている、と考えられています。たとえば、こんな名前です。

名前・語由来意味
Ronald古ノルド語 Rögnvaldr神々の力を持つ者
Haroldゲルマン系 *hariwald軍を率いる者
Gerald古高ドイツ語 Gerwald槍をふるう者
Oswald古英語 Osweald神の力を持つ者
Donaldケルト祖語 *Dubno-valos世界を治める者
Vladimir古代教会スラヴ語 Vladimiru平和を治める者
wield古英語 wealdan(力を)ふるう、使いこなす

英語の wield(ふるう・行使する)が、この一族の「英語ネイティブ側の代表」です。もともとは「統治する」という重い意味で、今の「剣をふるう」「権力をふるう」に残っています。

Ronald も Donald も Harold も、要するに**「強い人」「治める人」**。prevail(強さで勝る)と、根っこで握手している可能性がある・・・そう思うと、ニュースで見る名前の景色が少し変わります。

※ ただし、ここは語源学でも推定の領域です。etymonline も「この語根から来ているかもしれない語」という留保つきの書き方をしています。断定せず、「そう考えられている」という温度で受け取っておくのが安全です。ラテン語 valere から prevail までの道筋は確実ですが、そのさらに先は推定、という線引きです。

派生語|prevail まわり

単語品詞意味発音
prevail動詞勝る、広まる、説得するプリヴェイル /prɪˈveɪl/
prevailing形容詞広く行き渡った、支配的なプリヴェイリング /prɪˈveɪlɪŋ/
prevalent形容詞広く見られる、流行しているプレヴァレント /ˈprevələnt/
prevalence名詞普及、有病率プレヴァレンス /ˈprevələns/

※ 発音の注意点がひとつ。prevail・prevailing はうしろの -vail にアクセントが来ますが、prevalent・prevalence は頭の pre- にアクセントが移ります。同じ一族でも、音の形が変わるタイプです。声に出して確かめておくと、リスニングで取りこぼしません。

TOEIC・英検での出題傾向

prevail とその派生語は、ビジネス文書で静かに頻出します。とくに prevailing は、覚えておくと得をする形です。

  • prevailing wage(所定労働賃金・標準賃金)・・・建設契約や入札の文書で定番。その地域・職種で最も多く支払われている賃金水準を指します。
  • prevailing market conditions(現在の市況)・・・業績報告やニュースリリースで頻出。
  • prevailing wind(卓越風・恒常風)・・・地理や気象の文章で。「その土地でふだん吹いている風」です。
  • prevailing party(勝訴当事者)・・・契約書の弁護士費用条項でよく出ます。「勝ったほう」です。

TOEIC Part 7 の契約書・社内通達・市場レポートで、この4つはどれも出番があります。英検では準1級以上の論説文で、prevalent(広く見られる)とセットで押さえておくといいでしょう。

「prevailing = いま広く行き渡っている」。この一語で読めてしまう文が、意外に多いです。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. In the end, common sense prevailed.
  2. Kindness often prevails over anger.
  3. If you keep going, you will prevail.
  4. The old custom still prevails in this town.
  5. A quiet voice can prevail in a noisy room.
  6. She prevailed upon her friend to join the team.
  7. Truth tends to prevail, though it takes time.
  8. Let patience prevail when things get hard.
  9. The prevailing mood in the office was hopeful.
  10. Your small efforts will prevail in the end.

語源メモ|praevalere と、つづりに入り込んだ avail

prevail は1400年頃、prevailen の形で英語に現れます。意味は「成功する・効き目がある」。古フランス語 prevaleir(現代フランス語 prévaloir)と、ラテン語 praevalere「より強い・より大きな力を持つ」から直接入りました。

分けると prae(前に)+ valere(力を持つ・強い)。valere のさらに上流は、印欧祖語の語根 *wal-(強い)とされています。

ここで、つづりについて一言。prevail の -vail という形は、ラテン語の valere からそのまま来たというより、英語の avail(役に立つ)の影響を受けた可能性がある、とされています(etymonline も “perhaps” と留保)。語源が同じ一族の2語が、英語の中で互いのつづりを引っぱり合った・・・ありそうな話です。

意味の広がりも整理しておきます。

  • 1400年頃・・・「成功する・効き目がある」
  • 15世紀半ば・・・「優位な影響力を持つ」=勝る
  • 1570年代・・・prevail upon「説得して〜させる」
  • 1776年・・・「広く行き渡っている」
  • 1680年代・・・prevailing が「広く受け入れられた・現行の」の形容詞に

最初は「勝つ」、あとから「広まる」。順番で見ると、意味のつながりがよく見えます。

そして冒頭の prevent。こちらは praevenire(prae+venire=来る)で、別の家です。同じ pre- を頭に載せているだけの、他人同士。この整理をしておけば、長文を速く読んでも取り違えません。

まとめ

prevail は、pre(先に)+ val(強い)で「相手より先に強い」=勝る・打ち勝つ。そこから「広く行き渡る」まで広がった一語です。

  • val(強い)・・・prevalent/valiant/valor/convalesce/countervail/avail
  • val(価値)・・・value/valid/equivalent は evaluation・valuation の記事へ
  • prevent とは別物・・・prevail は「強い」、prevent は「来る」
  • 実務で効く形・・・prevailing wage/prevailing market conditions/prevailing party

先に強いほうが、その場を占める。そして占めたものが、あたりまえになる。prevail という一語には、その流れがまるごと入っています。

prevail の語源ワードマップ。中心は prevail(=先に強い、勝る・広まる)で、
pre(先に)+ val(valere=強い)に分解。語源・中心、val(強さ)系(prevalent /
valiant / valor / convalesce / countervail / avail)、名前にひそむ val(Ronald /
Harold / Donald / Vladimir / wield、印欧祖語レベルの推定)、覚え方のヒント
(prevail=val「強い」/prevent=vent「来る」)の4クラスタに整理した図。
  • 語源・中心:pre(先に)+ val(valere=強い)=「先に強い → 勝る → 広まる」
  • 覚え方のヒント:prevail は「強い(val)」、prevent は「来る(vent)」
  • val(強さ)一族:prevalent/valiant/valor/convalesce/countervail/avail
  • 遠い親戚(推定):Ronald/Harold/Donald/Vladimir/wield

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翻訳練習の解答

  1. 最後には、良識が勝った。
  2. やさしさは、しばしば怒りに勝つ。
  3. 歩き続けていれば、あなたは勝てる。
  4. その古い習慣は、この町に今も生きている。
  5. 騒がしい部屋でも、静かな声が通ることはある。
  6. 彼女は友人を説き伏せて、チームに入ってもらった。
  7. 真実は、時間はかかっても、やがて通るものだ。
  8. つらいときこそ、忍耐を前に出そう。
  9. オフィスに広がっていた空気は、明るいものだった。
  10. あなたの小さな積み重ねは、最後に効いてくる。

BSL(Business Service List)集録語

この単語は Business Service List(BSL) に集録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project