以前の記事で、ライティングの練習が速読能力を高めるという記事を公開しました。
サマリーライティングが速読力を劇的に高める理由と効果的な学習法
この記事では、ライティングがどのようにリスニング能力を高めるのかを解説します。
この記事を読むとわかること
- リスニング力が伸びない人に共通する課題
- なぜ「速読+要約」が聞く力を高めるのか
- 読解とリスニングを同時に伸ばす具体的な学習法
- 誰でもできるトレーニングステップ

※ この方法は、某W大学の帰国生を対象とした授業で実施した活動です。中上級者向けです。
英語が聞き取れないのは「耳」だけの問題じゃない
「英語を聞いても意味がすぐに入ってこない」
「知っている単語なのに、音声だと理解が追いつかない」
こうした悩みを抱えている人は少なくありません。
リスニング力というと「音を聞き取る力」だけに注目しがちですが、実は意味をすばやく処理する力(情報処理スピード)が大きく関係しています。
この「処理スピード」を鍛えるために有効なのが、速読と要約(サマリーライティング)の練習なのです。
「速読+要約」がリスニング力に効く3つの理由
1. 英語の語順で理解する訓練になる
英語を速く読むには、日本語に訳すのではなく英語の語順でそのまま理解する必要があります。
この感覚は、リスニングでもそのまま活きてきます。
音声を聞きながらリアルタイムで意味をとらえるためには、頭の中に「英語の理解回路」が必要です。速読トレーニングはまさにこの回路を鍛える土台になります。
2. 要約することで情報の整理力がつく
音声は一度聞いたら戻れません。だからこそ、「何が大事か」をすばやく判断する力が必要です。
読んだ英文を要約する練習は、この選別力=情報の整理力を高めてくれます。
つまり、ただ読むよりも、読んだあとに書く行為によって、内容理解の質がぐっと上がります。
3. 読解とリスニングに共通する「ワーキングメモリ」を鍛える
英文を読んで、頭に残った内容を英語でまとめるには、一時的に情報を保持して操作する力が必要です。
この力は「ワーキングメモリ(作業記憶)」と呼ばれ、リスニングにおいても非常に重要です。
長いセンテンスを聞きながら、後半の意味を理解するには、前半の情報を覚えていないといけません。
要約練習は、この記憶の持ち方そのものを鍛える効果があります。
リスニング力を高めるための「読む→書く」トレーニング法
ステップ①:英文を制限時間内に黙読
・200〜300語程度の英文を、3〜5分程度で黙読します。
・重要なのは、「訳さずに英語のまま理解しよう」と意識すること。
ステップ②:読んだ内容を要約する
・英文を見ないで、「どんな話だったか」を英語で書いてみます。
・要点だけでOK。1〜3文で十分です。
ステップ③:元の英文を見直して差を確認
・書いた内容と元の英文を比べ、「正しく理解できたか」をチェックします。
・内容が抜けていた部分は、印をつけておくと復習しやすくなります。
詳しくは、サマリーライティングが速読力を劇的に高める理由と効果的な学習法 をご覧ください。
読解とリスニングを同時に伸ばすには?
上記のような「速読して要約する」学習を週に数回取り入れることで、
リスニング中に「意味がとれない」「途中でついていけなくなる」といった悩みが徐々に減っていきます。
さらに、音声付きの英文教材(TED-Edや英検のリスニングスクリプトなど)を使えば、
「読む→要約→聞く→要約」という反復学習で、理解・記憶・スピードのすべてを強化できます。
※注意点
第2言語習得理論等では、「リスニング能力はリーディングに転移しやすいが、リーディング能力はリスニング能力に転移しにくい」と言われます。
つまり、リスニングが得意な人は、リーディングができるようになりやすいということです。
ただ、受験勉強中心の日本では、これは難しい問題です。ですから、リーディングとリスニングの相乗効果を狙った学習法が必要となるわけです。
まとめ:読む力が聞く力の基礎になる
リスニングが苦手だと感じている人の多くは、「聞き取れない」のではなく「意味の処理が追いついていない」のが原因です。
「速読して要約する練習」は、
✔ 語順で理解する力
✔ 要点をとらえる力
✔ 記憶を活かす力
これらをバランスよく鍛えてくれる、聞く力の土台づくりに最適な学習法です。
「耳」だけではなく、「目」と「手」も使って、リスニング力を伸ばしていきましょう。