パソコンやスマホで「エクスポート」というボタン、見たことがありますよね。Excelの表をPDFに書き出すとき、LINEのトーク履歴を保存するとき、アプリの設定をファイルにまとめるとき・・・「データをエクスポートする」というカタカナは、もうすっかり定着しています。
一方で、ニュースや経済の話題では「輸出」という漢語もよく耳にします。自動車の輸出、半導体の輸出・・・。
この2つ、別々の単語だと思っていませんか。実は、どちらも同じ export という一語です。「データを外へ書き出す」も「商品を外国へ送り出す」も、やっていることはまったく同じ・・・何かを「外へ運び出す」。この一点が腑に落ちると、export という単語がすっと軽くなります。
export を分解してイメージで覚える|”外へ運び出す”が正体
export をパーツで見ると、こうなります。
ex(外へ)+ port(運ぶ)
ex は exit(出口)や exhale(息を吐く)でおなじみの「外へ」。port の意味の中心は「港」ではなく「運ぶ」(ラテン語 portare)です。
この port の感覚をつかむのに、ちょうどいい映画があります。ジェイソン・ステイサム主演の『トランスポーター』(The Transporter/2002年)です。
彼が演じる Frank Martin は、中身を詮索せず、どんな荷物でも時間どおりに運び切る凄腕のドライバー・・・つまり「運び屋」。
このタイトルも、分解すれば同じ作りです。
trans(越えて)+ port(運ぶ)+ er(人)= transporter(運ぶ人)
そして今回の主役にも、同じ -er を付けられます。
ex(外へ)+ port(運ぶ)+ er(人)= exporter(外へ運び出す人・国)= 輸出業者
同じ port に、trans が付けば「越えて運ぶ人」、ex が付けば「外へ運び出す人」。頭の部分が入れ替わっているだけです。カタカナで覚えていた「トランスポーター」が、そのまま exporter の読み方のひな形になります。
合わせると「外へ運び出すこと」。これがそのまま export の意味・・・輸出する、データを書き出す、です。パソコンの「エクスポート」も貿易の「輸出」も、どちらも「中にあるものを、外へ運び出す」という同じ絵の上に乗っています。
export の基本の意味と使い方
export は「輸出する」「(データなどを)書き出す」という動詞と、「輸出」「輸出品」という名詞、両方で使われます。
- export goods to overseas markets(海外市場へ商品を輸出する)
- export a file as a PDF(ファイルをPDFとして書き出す)
- a major export of the country(その国の主要な輸出品)
例文で見てみましょう。
- The company decided to export its software to new markets.(その会社は、自社のソフトウェアを新しい市場へ輸出することに決めた。)
発音でひとつ押さえておきたいのが、アクセントの位置です。基本は、動詞が exPORT(後ろ)、名詞が EXport(前)。record や present と同じパターンです。ただし辞書によっては動詞にも前アクセントを併記しているので、「名詞は必ず前」と覚えておくほうが実戦的です。
“port(運ぶ)”の全体像は deportation 記事で
export の port は「運ぶ」・・・ここまでは触れましたが、transport・import・support・report・portable まで広げた port 一族の全体像は、すでに deportation の記事で表にまとめて解説しています。
「port が付いたらだいたい”運ぶ”の話」という感覚を一気につかみたい方は、そちらもあわせてどうぞ。
👉 deportation|その”port”、港じゃない?(/deportation/)
import のほうが先に生まれていた|ex- と im- の対比
export と対になる import(輸入する)、実は英語に入ってきたタイミングが違います。
importare(in=中へ+portare=運ぶ)から来た import は、15世紀初頭には「意味する、示す」という顔で英語にありました。そして「外国から商品を持ち込む」という貿易の意味は、1540年代にはすでに記録されています。
一方、export が「ある国から別の国へ商品を送り出す」という貿易の意味で記録されるのは1660年代・・・importより100年以上あとです。
さらに面白いのが、important(重要な)という形容詞。これも同じ portare 一族ですが、血筋をたどると export ではなく import 側。
ラテン語 importare には「意味を持つ、重要である」という用法があり、そこから「重要な」という形容詞が生まれました。「運び込まれてくるものには重みがある」というイメージです。export 側からは、ここまで意味の飛んだ形容詞は生まれていません(exportable は「輸出できる」のまま素直です)。
「先に入ってくるものを気にかけ、あとから出ていくものを数えるようになった」・・・この順番、貿易の歴史としても妙に納得感があります。
派生語|export まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| export | 動詞 | 輸出する、(データを)書き出す | イクスポート /ɪkˈspɔːrt/ |
| export | 名詞 | 輸出、輸出品 | エクスポート /ˈekspɔːrt/ |
| exported | 過去形・過去分詞 | 輸出された | イクスポーティッド /ɪkˈspɔːrtɪd/ |
| exporting | 現在分詞・動名詞 | 輸出すること | イクスポーティング /ɪkˈspɔːrtɪŋ/ |
| exporter | 名詞 | 輸出業者、輸出国 | イクスポーター /ɪkˈspɔːrtər/ |
| exportable | 形容詞 | 輸出できる | イクスポータブル /ɪkˈspɔːrtəbl/ |
| exportation | 名詞 | 輸出(ややかたい言い方) | エクスポーテイション /ˌekspɔːrˈteɪʃən/ |
exporter は1623年が初出とされる古い関連語です。意味も作りもそのまま「export する人・国」なので、export さえ押さえておけば迷いません。
TOEIC・英検での出題傾向
export は TOEICの貿易・ビジネス文脈(Part5の語彙問題、Part7の取引文書)で頻出の基本語です。import・export の対で問われることも多く、名詞・動詞の使い分けも狙われやすいポイントです。
英検では準2級〜2級レベルの長文で、貿易や経済をテーマにした文章によく登場します。難単語ではありませんが、import との混同やスペルミスが起きやすいので、ex-(外へ)/im-(中へ)の対比で覚えておくと取りこぼしが減ります。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- Our company exports coffee to Japan.
- This button exports your file as a PDF.
- Rice is a major export of that country.
- You export more kindness than you know.
- She exported the data in one minute.
- Japan exported silk for over seventy years.
- Good teachers export curiosity to their students.
- The exporter sent the goods last week.
- What you export into the world matters.
- Exports grew after the new trade deal.
語源メモ|ex と portare が出会う言葉
export(動詞)は1610年代、「ある場所から取り出す、持ち出す」という一般的な意味で使われ始めました。15世紀末まで遡る可能性も指摘されています。ラテン語 exportare「運び出す、持ち出す、送り出す、輸出する」から、ex(外へ)+ portare(運ぶ、印欧祖語 *per-「導く、渡る」から)という作りです。
「ある国から別の国へ商品を送り出す」という、現在おなじみの貿易の意味で英語に記録されるのは1660年代。export(名詞)「輸出、輸出品」はそこからさらにあとの1680年代です。
同じ portare から生まれた import(貿易の意味は1540年代)、report、support、transport、portable、そして最終的には sports まで・・・export は、この大きな一族の一員です。中心にあるのは、港でも船でもなく「運ぶ」という一語です。
まとめ
export は、ex(外へ)+ port(運ぶ)で「外へ運び出すこと」=輸出する、データを書き出す。
- ex・・・外へ
- port(portare)・・・運ぶ。import/transport/support/report などの一族へ
- import との違い・・・貿易の意味で英語に定着したのは import のほうが100年以上先
- important・・・同じ portare 一族だが、血筋は export ではなく import 側
パソコンの「エクスポート」も、貿易の「輸出」も、同じ一語が「外へ運び出す」を担っているだけ。ここに気づくと、ばらばらに見えていた2つのカタカナが、ひとつの絵でつながります。

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- deportation|その”port”、港じゃない?
- transport・import・export を port でまとめて覚える → (近日中に公開)
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翻訳練習の解答例
- うちの会社は、日本にコーヒーを輸出している。
- このボタンを押すと、ファイルがPDFとして書き出される。
- 米は、その国の主要な輸出品だ。
- あなたは、自分で思っているより多くの優しさを外へ送り出している。
- 彼女は一分でデータを書き出した。
- 日本は七十年以上にわたって生糸を輸出していた。
- 7. よい教師は、生徒に好奇心をもたらす。
- その輸出業者は、先週その商品を発送した。
- あなたが世界へ送り出すものには、意味がある。
- 新しい貿易協定のあと、輸出は伸びた。

