夜の繁華街でまたたく、あの ネオン。英語では neon です。
このネオンという名前、実は「新しい」という意味だと知っていましたか。1898年に発見されたばかりの新顔の気体だったから、ギリシャ語で「新しい」を意味する neos からそのまま名づけられました。
そしてもう一つ。1999年公開の映画『The Matrix』で、キアヌ・リーヴスが演じた主人公の名は Neo。こちらも同じ「ネオ」です。
ネオン、ネオ、そして new・・・この3つは、たまたま音が似ているのではありません。ひとつの祖先から枝分かれした、正真正銘の兄弟です。
new は、それ以上分解できない
語源の記事でいつもやる「パーツ分解」が、new では通用しません。
new は古英語の nīwe(neowe / niowe) がそのまま今の形になったもの。さらにさかのぼると、ゲルマン祖語 *neuja-、その先が印欧祖語 *newo-(新しい)です。
接頭辞もない、語根もない。英語のいちばん古い地層にある、むき出しの一語です。
では語源記事として何もないのかというと、まったく逆です。new は 縦に掘れない代わりに、横に異様に広い。その広がりを見ていきます。
ひとつの祖先が、3方向に分かれた
印欧祖語 *newo- は、言語ごとに姿を変えながらヨーロッパ中に散らばりました。
- ゲルマン語の枝 → 英語 new、ドイツ語 neu、オランダ語 nieuw、スウェーデン語・デンマーク語 ny
- ラテン語の枝 → novus
- ギリシャ語の枝 → neos
ほかにもサンスクリット語 navah、ペルシア語 nau、ロシア語 novyi、ウェールズ語 newydd と、同じ祖先の子孫が並びます。
ここが大事なところです。new は novus から生まれたのでも、neos から生まれたのでもありません。3つとも同じ親から出た、対等な兄弟です。
ところが英語は、そのうちの1つ(new)を自前で持っていながら、あとの2つ(novus系・neos系)も外から大量に借りてきました。だから英語の中には「新しい」を意味する語が三重に積み重なっているわけです。
ギリシャ語 neos の枝|ネオン、ネオ、ナポリ
まずは冒頭のネオンから。
neon(ネオン)は1898年、イギリスの化学者ウィリアム・ラムゼーとモリス・トラヴァースが命名しました。ギリシャ語 neon(neos の中性形)で「新しいもの」。発見されたばかりだから、という理由です。
おもしろいのは、同じ時期に彼らが見つけた仲間たちの名前です。
- xenon(キセノン)・・・xenos「見知らぬ」
- krypton(クリプトン)・・・kryptos「隠れた」
- argon(アルゴン)・・・argos「怠けている」
新顔、よそ者、隠れ者、怠け者。立て続けの発見ラッシュの中で、ギリシャ語の形容詞を片っ端から貼りつけていった空気が伝わってきます。
なお、ネオン管が広告に使われ始めたのは1913年、neon sign(ネオンサイン)という言い方が記録に出るのは1927年から。気体の名前のほうが15年ほど先輩です。
そして Neo。『The Matrix』の中で彼は The One(選ばれし者)と呼ばれ、Neo はその3文字を並べ替えたアナグラムになっています。同時に、neo-(新しい)と読めることも古くから指摘されてきました。制作側が「ギリシャ語 neos から取った」と明言した資料は見当たらないので、ここは断言しません。ただ、仮想世界から目覚めて「新しく生まれ直す」男の名前としては、できすぎた二重構造ではあります。
neo- は接頭辞としても大繁殖しました。ただしその多くは1880年ごろ以降に作られた、わりと新しい造語です。
- neophyte(新人・新入信者)・・・neos+phyton「新しく植えられた」
- neonatal / neonate(新生児の/新生児)
- neolithic(新石器時代の)
- neologism(新語)
地名にも残っています。イタリアの Naples(ナポリ)は、紀元前5世紀にギリシャ人が築いた植民市 Neapolis=「新しい街」。ナポリ風を意味する Neapolitan が3色アイスの名前になったのは1871年からです。
ラテン語 novus の枝|小説もイノベーションも
こちらの枝は、ビジネス語彙の宝庫です。
novel は、もともと形容詞で「新しい、見慣れない」(15世紀半ば)。ラテン語 novellus(novus の指小形=「ちょっと新しい」)から来ています。
では「小説」の novel は? こちらは1560年代に、イタリア語 novella「短い話」から別ルートで入りました。そしてこの novella の原義が 「新しい話・ニュース」なんです。
つまり 小説(novel)とニュース(news)は、出発点が同じ。どちらも「新しい出来事の報告」でした。長編を指すようになったのは1630年代から。それ以前、長い物語は romance と呼ばれていました。
- novelty(目新しさ、14世紀後半)
- innovation(15世紀半ば)・・・ラテン語 innovare=in(中へ)+novus「中に新しさを入れる」
- renovate(1520年代)・・・renovare=re(再び)+novare「新しくする」
- novice(14世紀半ば)・・・novicius。元は「新しく連れてこられた(奴隷)」を指す語でした
- nova(新星、1877年)・・・nova stella「新しい星」。ティコ・ブラーエが1572年に出した観測報告の題が『De nova stella』でした
- art nouveau(1900年)・・・フランス語 l’art nouveau「新しい芸術」
innovation には小さな驚きがあります。英語に入った15世紀半ばの最初の意味は「刷新・回復」で、今のような 「新しい試みを持ち込むこと」の意味は1540年代から。最初のイノベーションは、新しいものを作ることではなく、もとの状態に戻すことだったわけです。
renew と renovate|意味が同じで、血筋が違う
ここが今回いちばん実用的なところです。
- renew(14世紀後半)・・・英語の中で re-+newen(中英語の「新しくする」) から作られた。英語製
- renovate(1520年代)・・・ラテン語 renovare からそのまま借りた。ラテン語製
同じ「また新しくする」という意味を、英語は自前でも作り、外からも輸入したのです。そして両者は使い分けが定着しました。
renew(契約・権利を更新する)
- renew a contract(契約を更新する)
- renew your passport / driver’s license(パスポート・運転免許を更新する)
- renew a subscription(サブスクを更新する)
renovate(建物を改修する)
- We renovated the kitchen last year.(去年キッチンを改装した)
- a newly renovated office(改装したばかりのオフィス)
日本語の「リニューアル」はお店の改装によく使いますが、英語の renewal は契約更新や再生のほうが主です。店舗の改装は renovation。ここはそのまま持ち込むとズレます。
なお「家のリフォーム」に reform が使えない話は、別記事に書いてあります(記事末尾の関連記事から)。
news は「新しいことども」|方角の頭文字ではありません
news は14世紀後半、new の名詞の複数形として生まれました。「新しいことども」です。
フランス語 nouvelles をまねた形で、聖書の翻訳で中世ラテン語 nova(中性複数)「新しいことども」を訳すのに使われていました。
ここで有名な俗説を一つ潰しておきます。
NEWS は North East West South の頭文字で、「四方八方からの情報」という意味・・・
これは誤りです。 etymonline は、この説をはっきり「ばかげた民間語源」として退けています。1640年には記録があるものの、18世紀を通じてもっぱら小話集(ジョーク本)に載っていたネタでした。
複数形から来たのに1560年代以降は単数扱いになる、という中途半端な形が、こういう作り話を呼び込んだのでしょう。
その中途半端さは、今も文法の落とし穴として残っています。
- ○ The news is good.
- × The news are good.
- × a news / × two news
- ○ a piece of news / some news / two pieces of news
newspaper は1660年代から。No news, good news.(便りがないのはよい便り)は1640年代、That’s news to me.(それは初耳だ)は1889年から記録があります。
新しくない new|「初めて」の new
new には、学習者がよく取りこぼす使い方があります。
I’m new to this job.
この new は「作られたばかり」ではありません。その人にとって初めて・不慣れという意味です(1590年代から)。仕事そのものが新しいわけではない。新しいのは、その人との関係のほうです。
- I’m new here.(ここは初めてです)
- She is new to Excel.(彼女はエクセルに不慣れだ)
同じ発想が new moon(新月)にもあります。古英語からある言い方で、新月とは「新しく作られた月」ではなく、また始まったばかりの月のこと。
そして brand-new(1560年代)。brand は炉から出したばかりの焼けた金属のことで、「鍛冶場から出てきたばかりの輝き」が原義です。日本語の「ピカピカの新品」とイメージがほぼ同じなのが愉快なところ。
都市名に New をつける用法は1500年ごろから。New York、New Orleans、New England はこの流れです。
派生語|new まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| new | 形容詞・副詞 | 新しい/新たに | ニュー /njuː/ |
| newly | 副詞 | 最近・新たに | ニューリー /ˈnjuːli/ |
| newness | 名詞 | 新しさ | ニューネス /ˈnjuːnəs/ |
| news | 名詞(不可算) | 知らせ・ニュース | ニューズ /njuːz/ |
| newspaper | 名詞 | 新聞 | ニュースペーパー /ˈnjuːzpeɪpər/ |
| newcomer | 名詞 | 新参者 | ニューカマー /ˈnjuːkʌmər/ |
| newborn | 形容詞・名詞 | 生まれたばかりの/新生児 | ニューボーン /ˈnjuːbɔːrn/ |
| newbie | 名詞 | 初心者(口語) | ニュービー /ˈnjuːbi/ |
| renew | 動詞 | 更新する・再開する | リニュー /rɪˈnjuː/ |
| renewal | 名詞 | 更新・再生 | リニューアル /rɪˈnjuːəl/ |
| renewable | 形容詞 | 更新可能な・再生可能な | リニューアブル /rɪˈnjuːəbl/ |
| anew | 副詞 | 新たに・もう一度 | アニュー /əˈnjuː/ |
| brand-new | 形容詞 | 真新しい | ブランニュー /ˌbrændˈnjuː/ |
この表の中で renew だけは、TOEIC語彙リスト(TSL)とビジネス語彙リスト(BSL)に単独で収録されている重要語です。契約・免許・サブスクの話題では、まず間違いなく顔を出します。
ちなみに renewable energy(再生可能エネルギー)の renewable も、「また新しくできる」がそのまま意味になっています。
TOEIC・英検での出題傾向
TOEIC で効いてくるのは、次の3点です。
1. news は不可算
Part 5 の文法問題で、news に a が付いていたり、動詞が are になっていたりする選択肢は切れます。
2. newly + 過去分詞
- newly appointed manager(新しく任命された部長)
- newly renovated office(改装したばかりのオフィス)
- newly hired staff(新しく採用されたスタッフ)
この形は Part 5 でも Part 7 の社内文書でも定番です。newly は 過去分詞と組むと覚えてしまうのが速い。
3. renew と renovate の取り違え
契約書・案内メールの文脈なら renew、建物・設備の文脈なら renovate。Part 7 では両方が同じ文書に出ることもあります。
4. novel は「斬新な」
a novel approach / a novel idea のように、形容詞で出ます。「小説」で読むと文意が崩れるので注意。英検では準1級以上の長文で見かけます。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- You are new here, but that is not a weakness.
- The news was short, and everyone read it twice.
- She renewed her passport a month before the trip.
- A novel idea often looks strange on the first day.
- You can renew your interest in English at any age.
- The old library was renovated and opened again in spring.
- He was a novice, yet he asked the best question in the room.
- Good news travels slowly in a quiet office.
- You do not need a new life, only a new habit.
- Innovation is not a new word; it has been in English since the 1400s.
語源メモ|now は、new の親戚かもしれない
new を扱うとき、どうしても気になるのが now(今)です。見た目も意味も近い。
結論から言うと、断定はできません。
now は古英語 nu、印欧祖語 *nu(今)から来ています。new の *newo- とは、辞書の上では別の語根です。ただし etymonline は、*nu がもともと「新しく、最近」の意味だった可能性があり、new の語根と関係があるのかもしれない、と留保つきで書いています。
「かもしれない」止まりなので、ここは「近そうだが未確定」とだけ覚えておくのが正直なところです。
もう一つ、空似の注意を。
November(11月)は novus とは無関係です。こちらはラテン語 novem(9)から。古代ローマの暦で9番目の月だった名残で、「新しい月」という意味ではありません。novus と novem、つづりが1文字違いなだけに紛らわしい組み合わせです。
最後に、new という語そのものについて。
接頭辞も語根も持たない、分解不能な一語。にもかかわらず、その祖先はラテン語とギリシャ語を経由して、ネオン・ノベル・イノベーション・ルネサンスならぬリノベーションと、英語の語彙のあちこちに姿を変えて散らばっています。
いちばん短い単語が、いちばん遠くまで旅をしている。語源をたどる面白さは、こういうところにあります。
まとめ
new は印欧祖語 *newo-(新しい)から、英語にまっすぐ降りてきた一語。
- ゲルマン語の枝・・・new、renew、news、newly、newcomer
- ギリシャ語 neos の枝・・・neon、neo-、neophyte、neonatal、Naples
- ラテン語 novus の枝・・・novel、novelty、innovation、renovate、novice、nova
- renew と renovate・・・契約は renew、建物は renovate
- news・・・new の複数形。方角の頭文字という説は俗説
ネオンサインも、イノベーションも、一冊の小説も、たどり着く先は同じ「新しい」。言葉の世界では、いちばん使い古された一語が、いちばん多くの新しさを生んでいます。

- 語源・中心:印欧祖語 *newo-(新しい)= new / novus / neos の共通の祖先
- ゲルマン語の枝:new/renew/renewal/news/newspaper/newly/newcomer/newborn/anew
- ギリシャ語 neos の枝:neon/neo-/neophyte/neonatal/neolithic/neologism/Naples
- ラテン語 novus の枝:novel/novelty/innovation/renovate/novice/nova/art nouveau
- 覚え方のヒント:契約は renew、建物は renovate。news は不可算。November は novem(9)で別語源
集録語彙リスト
この単語は NGSL(New General Service List) に集録されています。
NGSLは大規模な一般英語コーパスから抽出された2,809語のリストで、これらを覚えるだけで日常英語の約92%をカバーできます。new はその中でも 頻度順位79位、カバー率71.1%という最上位クラスの一語です。派生語の news(546位)、newspaper(929位)、newly(2278位)も同じリストに入っています。
出典:New General Service List Project
なお、派生語の renew は TSL(TOEIC Service List)と BSL(Business Service List)に収録されています。こちらは別記事で扱う予定です。
関連記事(内部リンク)
- 【タイパ最強】英単語の語源・パーツ分解全リスト|語源×記憶術で芋づる式に覚える → https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/
- reform の語源(家のリフォームに reform は使えない)→ https://isseisuzuki.org/reform/
- renew の語源(契約を「また新しくする」)→ (近日中に公開)
- innovation の語源(最初の意味は「新しくする」ではなかった)→ (近日中に公開)
翻訳練習の解答
- あなたはここでは新人だが、それは弱点ではない。
- その知らせは短く、誰もが二度読んだ。
- 彼女は旅行の1か月前にパスポートを更新した。
- 斬新な考えは、たいてい初日には奇妙に見える。
- あなたはいくつになっても、英語への関心を新しくできる。
- 古い図書館は改修され、春にまた開館した。
- 彼は初心者だったが、その場でいちばんいい質問をした。
- 静かなオフィスでは、よい知らせはゆっくり伝わる。
- あなたに必要なのは、新しい人生ではなく新しい習慣だけだ。
- innovation は新しい語ではない。1400年代から英語にある。


