結婚にまつわるカタカナ語といえば、「フィアンセ」。婚約者のことですね。
では、英語の spouse(配偶者) は、そのフィアンセの仲間でしょうか。どちらも結婚まわりの言葉で、頭が s と f の違いくらいしかなさそうに見えます。
ところが、この2つはまったく別の家系です。しかも spouse の本当の親戚は、結婚とは縁もゆかりもなさそうな、あの単語たち・・・。入り口はここからです。
spouse を分解してイメージで覚える
spouse をパーツで見ると、こうなります。
spons(誓う・厳かに約束する)+ e
ラテン語の動詞 spondere(厳かに約束する・保証する)。
その過去分詞が sponsus(誓われた男性)/sponsa(誓われた女性) で、これが古フランス語を通って英語の spouse になりました。
つまり spouse の意味の中心は「結婚している人」ではなく、「誓いを交わした人」。結婚式でやっていることそのものが、この一語に入っているわけです。
ここが腑に落ちると、次の意外な事実もすっと受け取れます。spons という並び、どこかで見た覚えはありませんか。
・・・sponsor(スポンサー) です。
スポンサーと配偶者。遠い世界の言葉に見えて、どちらも spondere から出た兄弟でした。どちらも「引き受けると誓った人」。そう並べると、意味の中心が一本の線でつながります。
【語源で覚える】sponsor|respond を切る場所、合っていますか
spouse の基本の意味と使い方
spouse は「配偶者」を表す名詞です。夫にも妻にも使える、性別を問わない語です。
- my spouse(私の配偶者)
- spouse and children(配偶者と子ども)
- spousal support(配偶者への扶助)
発音は /spaʊs/。語尾は濁らず、「スパウス」に近い音です(辞書によっては /spaʊz/ も併記されています)。形容詞形の spousal は /ˈspaʊzəl/ で、こちらは濁ります。
使いどころにはクセがあります。spouse は、書類や法律・制度の文脈で使う、少しあらたまった語です。
日常会話では husband / wife / partner のほうが自然に響きます。日本語の「配偶者」を思い浮かべてもらうと、ぴったり同じ温度です。役所の書類には「配偶者」と書くけれど、友達には「うちの夫が」と言いますよね。英語もまったく同じ感覚です。
- 書類・制度の場面:Please enter your spouse’s full name.
- 日常会話の場面:My wife is a teacher. / I’ll ask my partner.
ちなみに husband の語源も知っておくと面白い一語です。古ノルド語の húsbondi、直訳すると「家に住む人」。hus(家)+ bondi(住む人・自作農)で、もとは「一家の主」のこと。13世紀の終わりごろから、古英語の wer(男)を押しのけて「夫」の座に収まりました。くだけた言い方の hubby は1680年代から記録があります。
フィアンセは、別の家系です
さて、冒頭のフィアンセです。
fiancé(男性の婚約者)/fiancée(女性の婚約者) は、フランス語からそのまま入ってきた語です。たどっていくと、fiancer(婚約させる)← fiance(約束・信頼)← fier(信じる)← ラテン語 fidus(忠実な)・fides(信頼)。
つまり、フィアンセの意味の中心は 「信じる」。spouse の「誓う」とは、まったく別のルートです。
※ 正確には、spouse はラテン語 spondere(誓う)系、fiancé はラテン語 fides(信じる)系で、語源的なつながりはありません。結婚という同じ場面に立っているせいで親戚に見えるだけ、という関係です。
そして fides 側にも、おなじみのカタカナが隠れています。Hi-Fi(ハイファイ)。オーディオの「ハイファイ」は high fidelity の略で、fidelity は「忠実さ」。音を原音に忠実に再現する、という意味です。この fidelity が、fides(信頼)そのものの子孫なんです。
フィアンセとハイファイが同じ家族で、配偶者とスポンサーが同じ家族。英語の語源は、ときどきこういう配置をします。
綴りの豆知識・・・男性は fiancé(e が1つ)、女性は fiancée(e が2つ)。英語に入った時期も少しずれていて、fiancée が1844年、fiancé が1864年です。
spond(誓う)でつながる単語ネットワーク
spondere(誓う)を押さえると、別ジャンルに見える単語が一気につながります。spouse は、この一族への入り口でもあります。
| 単語 | 意味 | 分解のイメージ |
|---|---|---|
| sponsor | 後援者、保証人 | spons(誓った)+or(人) |
| respond | 返答する | re(返して)+spond=誓いを返す |
| response | 返答、反応 | respond の名詞形 |
| responsible | 責任がある | 「問われたら答える義務を負った」状態 |
| correspond | 一致する、文通する | cor(互いに)+respond=誓いを返し合う |
| despondent | 意気消沈した | de(手放して)+spond=望みを手放す |
| espouse | (主義を)支持する、めとる | 「誓って引き受ける」 |
| espousal | 婚約、(主義の)支持 | espouse の名詞形 |
とくに responsible は、この家族の意味がきれいに残っている一語です。「立派な人」ではなく、「問われたら答えると引き受けている」状態のこと。日本語の「責任感がある」より、少し具体的で、少し冷たい言葉です。
そして espouse。もとは「めとる」でしたが、1620年代から「(主義・主張を)採用して支持する」の意味に広がりました。現代の英文では、こちらで出てくるほうが多いです。
- She espouses a simple way of living.(彼女は簡素な暮らし方を支持している)
fides(信じる)でつながる単語ネットワーク
もう一方の家系、フィアンセ側も見ておきましょう。こちらを知っておくと、ビジネス英語がぐっと読みやすくなります。
| 単語 | 意味 | 意味の中心 |
|---|---|---|
| fidelity | 忠実さ、忠誠 | Hi-Fi=high fidelity の fi |
| confidence | 自信、信頼 | con(すっかり)+fid=すっかり信じる |
| confident | 自信のある | 同上の形容詞形 |
| confide | 打ち明ける | 信じて預ける |
| faith | 信念、信仰 | fides が古フランス語を通った形 |
| federal | 連邦の | foedus(信義による盟約)から |
| bona fide | 誠実な、本物の | ラテン語のまま「よき信義で」 |
| infidel | 不信心者 | in(〜でない)+fid |
bona fide は契約書で本当によく見ます。a bona fide offer なら「誠意ある申し出・本物の申し出」。読めないと止まってしまう一語なので、fid=信じる、で覚えておくと得です。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| spouse | 名詞 | 配偶者 | スパウス /spaʊs/ |
| spouses | 名詞(複数) | 配偶者たち | スパウスィズ |
| spousal | 形容詞・名詞 | 配偶者の/婚礼 | スパウザル /ˈspaʊzəl/ |
| spousehood | 名詞 | 配偶者であること | スパウスフッド |
| espouse | 動詞 | 支持する、めとる | イスパウズ /ɪˈspaʊz/ |
| espousal | 名詞 | 婚約、支持 | イスパウザル |
※ spouse には「めとる」という動詞用法もありましたが、現在は古語です。spouseless(配偶者のいない)も15世紀半ばからある語ですが、今はほとんど使われません。
TOEIC・英検での出題傾向
spouse は、TOEIC の Part 7(社内通知・案内文・申込書)で見かける語です。とくに福利厚生まわりの文章に出てきます。
- employees and their spouses(従業員とその配偶者)
- spouse or dependent(配偶者または扶養家族)
- spousal benefits(配偶者向けの給付)
- bring your spouse to the event(イベントに配偶者を同伴する)
「社員本人だけか、家族も含むか」を問う設問の分かれ目になりやすいので、spouse と dependent はセットで覚えておくと確実に効きます。
同じ家族の responsible for 〜(〜に責任がある)、in response to 〜(〜に応えて)も頻出です。どちらも前置詞が決まっているので、形ごと入れてしまうのが早いです。
英検では2級あたりから、書類や制度の話題で見かけます。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- Please write your spouse’s name on this form.
- The word spouse works for a husband or a wife.
- The company covers medical costs for employees and their spouses.
- She travels to almost every conference with her spouse.
- A good spouse listens more than he or she speaks.
- You can bring your spouse to the year-end party.
- My spouse and I decided to save a little each month.
- Your spouse is the person you promised to stand beside.
- If your spouse looks tired tonight, just make tea and sit together.
- Being someone’s spouse means keeping a promise, day after day.
語源メモ
spouse は1200年ごろの英語に現れます。最初は「結婚している人(とくに夫に対する妻)」を指し、「結婚・既婚という状態」そのものを表すこともありました。宗教的な文脈では「魂や教会にとっての霊的な夫としてのキリスト」を指す使い方もあり、呼びかけの言葉としても使われています。
さかのぼると、古フランス語 spous(女性形 spouse)、その元は espous/espouse(現代フランス語 épous/épouse)。さらに元はラテン語 sponsus(花婿)/sponsa(花嫁) で、字義どおりには「誓われた者」。動詞 spondere(身を縛る・厳かに約束する) の過去分詞です。
もっと奥を見ると、印欧祖語の *spend-(捧げ物をする・儀式を行う) にたどり着きます。ギリシャ語の spendein(神に酒を注ぐ)、spondē(献酒)が同じ系統。約束とは、もともと 神前で酒を注ぐ儀式そのもの だったわけです。詩の韻律用語 spondee(長長格)も、この献酒の詠唱で使われた拍から来ています。
関連して、古い英語には spouse-breach(13世紀初め)という語がありました。直訳すると「誓いを破ること」で、不貞を指す言葉です。誓いという原義が生きていた時代の言い回しですね。
混同しやすい語の整理
- fiancé/fiancée(婚約者)・・・ラテン語 fides(信頼)系。spouse(spondere=誓う)とは別ルートです
- spontaneous(自発的な)・・・ラテン語 sponte(自分の意志で)から。綴りは似ていますが、sponte 自体の語源が分かっておらず、spondere とつなげると誤りになります
- husband(夫)・・・古ノルド語 húsbondi(家に住む人)。ゲルマン系で、ラテン語由来の spouse とは血縁がありません
まとめ
spouse は、spons(spondere=厳かに誓う)+e で「誓いを交わした人」=配偶者。
- spondere・・・厳かに約束する。意味の中心はここ
- spons 一族・・・sponsor/respond/responsible/correspond/despondent/espouse
- フィアンセは別の家系・・・fiancé は fides(信じる)系で、Hi-Fi(high fidelity)・confidence の仲間
- 書類や制度の場面では spouse、日常会話では husband/wife/partner
結婚しているから spouse なのではなく、誓いを引き受けたから spouse。そう捉え直すと、この一語の手ざわりが変わります。

- 語源・中心:spons(spondere=厳かに誓う)+e =「誓いを交わした人」
- 覚え方のヒント:spouse と sponsor は同じ spons。どちらも「引き受けると誓った人」
- spond(誓う)一族:sponsor/respond/responsible/correspond/despondent/espouse
- 別の家系(fides=信じる):fiancé/fidelity(Hi-Fi)/confidence/faith/bona fide
TSL(TOEIC Service List)・BSL(Business Service List)収録語
この単語は TSL(TOEIC) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。ビジネスでもTOEICでも頻出する、汎用性の高い一語です。
出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答
- この用紙に、配偶者の氏名をご記入ください。
- spouse という語は、夫にも妻にも使える。
- その会社は、従業員とその配偶者の医療費を負担している。
- 彼女は、ほとんどの学会に配偶者と一緒に出かける。
- よき配偶者は、話すよりも多く耳を傾ける。
- 忘年会には、配偶者を連れてきてかまいません。
- 私たち夫婦は、毎月少しずつ貯金することにした。
- 配偶者とは、あなたがそばにいると約束した相手のことだ。
- 今夜、連れ合いが疲れて見えたら、お茶をいれて隣に座るだけでいい。
- 誰かの配偶者であるとは、約束を日々守り続けるということだ。


