旅行のパンフレットで「オプショナルエクスカーション」という言葉を見たことがあるでしょうか。ツアーの合間に、現地発着で出かける小旅行のことです。
この excursion、分解すると見えてくるのは意外な顔です。ex(外へ)+ curs(走る)。つまり「外へ走り出る」。旅行というより、どこか勇ましい成り立ちをしています。
※ この記事は、姉妹編の cursor(カーソル)と対になっています。cursor が「走るもの」そのものの話なら、こちらは「外へ走り出る」の話です。同じ curs でも、向かう先が違います。
excursion を分解してイメージで覚える
excursion をパーツで見ると、こうなります。
ex(外へ)+ curs(走る)+ ion(名詞をつくる)
ex は exit(出口)・export(輸出)でおなじみの「外へ」。curs は「走る」。合わせて「外へ走り出ること」です。
イメージしてほしいのは、いつもいる場所から、ぽんと外へ走り出す感じ。普段の生活圏があって、そこからちょっと外へ出て、また帰ってくる・・・これが excursion の形です。「行きっぱなし」ではないところがポイントで、だから移住や亡命ではなく「小旅行」「遠足」になります。
そしてこの「外へ走り出る」は、物理的な移動だけの話ではありません。話していて本題から外れることも、英語では excursion と言います。本筋から、ちょっと外へ走り出てしまう。同じ絵で説明がつきます。
excursion の基本の意味と使い方
excursion は「小旅行」「遠足」「(短い)外出」を表す名詞です。日帰りや半日程度の、帰ってくることが前提の出かけ方を指します。
- a day excursion(日帰り旅行)
- an optional excursion(オプショナルツアー)
- a boat excursion(遊覧船のツアー)
- an excursion into jazz(ジャズへの寄り道・越境)
最後の例のように、「本来の専門や分野の外へ少し出てみる」という比喩でもよく使われます。作家が初めて推理小説を書いた、ロックバンドがクラシックに挑戦した・・・そういうときの「寄り道」が excursion です。
ちょっと意外なのは、もともとの意味です。英語に入った1570年代ごろ、excursion は「議論の脱線」や「軍の出撃」を指していました。砦から外へ走り出て敵を突く、あの動きです。「小旅行」という平和な意味がついたのは1660年代から。物騒な言葉が、観光の言葉になった・・・そんな来歴があります。
trip・journey との使い分け
旅行を表す語はいくつもあるので、ざっくり整理しておきます。
| 単語 | 中心のイメージ |
|---|---|
| excursion | 拠点から外へ出て、また戻る短い旅。遠足・現地ツアー |
| trip | 行って帰ってくる旅全般。いちばん広く使える |
| journey | 移動そのもの、長い道のり。比喩でも使う |
| tour | いくつかの場所をめぐる旅。周遊 |
excursion は「ベースキャンプがあって、そこから出る」という前提が効いている言葉です。だからホテル滞在中の半日ツアーにはぴったりで、引っ越しや長期の旅には使いません。
curs/cour(走る)でつながる単語ネットワーク
excursion の意味の中心 curs(走る/ラテン語 currere)を知っておくと、まったく別ジャンルに見える単語が一気につながります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| cursor | カーソル | 走るもの(→ くわしくは cursor の記事で) |
| current | 現在の、流れ、電流 | 今まさに走っているもの |
| course | 進路、課程、コース | 走る道筋 |
| corridor | 廊下、回廊 | 走り抜ける通路 |
| curriculum | 教育課程 | 学びの「走る道」 |
| cursive | 筆記体 | ペンが止まらず走る書き方 |
| cursory | ざっと目を通す、大ざっぱな | 表面を走り抜けるだけ |
| occur | 起こる | 目の前に走り出てくる |
| recur | 再発する、繰り返される | また走って戻ってくる |
| precursor | 前触れ、先駆者 | 先に走る者 |
| courier | 宅配便、使者 | 走って届ける人 |
| concourse | (駅の)コンコース、集合 | みんなが走り集まる場所 |
「curs/cour/cour- が入っていたら、たぶん”走る”話」・・・そう見えるようになると、初見の単語でも見当がつきます。
ちなみに、スポーツの「パルクール(parkour)」もこの一族です。フランス語経由で綴りは変わっていますが、根っこは同じ「走る」。街を駆け抜ける競技の名前として、これ以上ないくらい素直な命名です。
ex(外へ)でつながる単語ネットワーク
もう一方のパーツ ex(外へ)をたどると、こちらもまとまって見えてきます。
| 単語 | 意味 | 語源 |
|---|---|---|
| exit | 出口 | ex〈外へ〉+ it〈行く〉 |
| export | 輸出する | ex〈外へ〉+ port〈運ぶ〉 |
| extend | 伸ばす、広げる | ex〈外へ〉+ tend〈伸ばす〉 |
| express | 表現する、急行 | ex〈外へ〉+ press〈押す〉 |
| exclude | 締め出す | ex〈外へ〉+ clude〈閉じる〉 |
| expand | 拡大する | ex〈外へ〉+ pand〈広げる〉 |
excursion は、この「ex(外へ)」と「curs(走る)」が出会った場所に立っている単語です。一語から、二方向に世界が広がります。
派生語|excursion まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| excursion | 名詞 | 小旅行、遠足、脱線 | イクスカージョン /ɪkˈskɜːrʒən/ |
| excursive | 形容詞 | 話が脱線した、とりとめのない | イクスカーシヴ /ɪkˈskɜːrsɪv/ |
| excursionist | 名詞 | 遠足客、行楽客 | イクスカージョニスト |
| excursus | 名詞 | (論文などの)余論、補説 | イクスカーサス |
excursive と excursus は、どちらも「本筋から外へ走り出る」の方の意味を受け継いでいます。日常会話での登場頻度は高くありませんが、語源のつながりを見るには分かりやすい2語です。
TOEIC・英検での出題傾向
excursion は、旅行・観光まわりの文章で出てくる語です。TOEIC では、社員旅行や出張の案内メール、ツアー会社の広告、ホテルの滞在案内といった文脈で見かけます。optional excursion(オプショナルツアー)、excursion fare(周遊割引運賃)のような形で、Part 7 の読解に紛れていることがあります。
英検では準1級あたりで出会う可能性のある語、という位置づけです。最頻出の単語ではありませんが、「旅行の文章が出たら、この語が混ざっているかもしれない」と構えておくと読みやすくなります。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- We went on a short excursion to the lake.
- The school organized an excursion to the museum.
- An excursion is a trip that brings you back home.
- Your weekend excursion sounds like a good idea.
- She booked an optional excursion for the second day.
- This chapter is a short excursion into history.
- Sometimes an excursion outside your field teaches you the most.
- The guide led the group on a morning excursion.
- Take a small excursion today, even just to the next station.
- Every excursion begins with one step out the door.
語源メモ|「出撃」から「遠足」へ
excursion は、ラテン語 excursio(走り出ること、出撃、脱線)に由来します。もとは動詞 excurrere「走り出る、突き出る、伸びる」の名詞形で、ex(外へ)+ currere(走る)という組み立て。currere は印欧祖語の *kers-「走る」にさかのぼります。
英語に入ったのは1570年代ごろ。このときの意味は「議論の脱線」と「軍の出撃」でした。砦の中から外へ走り出て、敵に一撃を加えてまた戻る。あの軍事行動が excursion です。「拠点があって、出て、戻る」という形は、このころからすでにありました。
「小旅行」の意味で使われ始めたのは1660年代。出ていく対象が敵陣から行楽地に変わっただけで、動きの形はそのまま残っています。
currere 一族は、英語の中にかなりの数が入り込んでいます。cursor・current・course・corridor・curriculum・cursive・occur・recur・precursor・courier・concourse・discourse・career、さらにはフランス語経由の parkour まで。一見すると共通点が見えない顔ぶれですが、全部「走る」でつながっています。
まとめ
excursion は、ex(外へ)+ curs(走る)+ ion で「外へ走り出ること」=小旅行・遠足。
- ex・・・外へ。exit/export/extend などの一族へ
- curs(currere)・・・走る。cursor/current/course/corridor/occur などの一族へ
- もとの意味は「出撃」と「脱線」。拠点から出て、また戻る形は今も変わらない
いつもの場所から、ちょっとだけ外へ走り出てみる。旅も、学びも、始まりはそこかもしれません。

- 語源・中心:ex(外へ)+ curs(走る)+ ion =「外へ走り出ること」
- 覚え方のヒント:拠点から出て、また戻る短い旅
- curs(走る)一族:cursor/current/course/corridor/curriculum/occur/recur/precursor
- ex(外へ)一族:exit/export/extend/express/exclude/expand
関連記事(内部リンク)
- cursor の語源(カーソル・走るもの)→ https://isseisuzuki.org/cursor/
- 【語源で覚える】currently|”cur” は car の親戚。「走る・流れる」で覚える「今」
- course の語源 → (近日中に公開)
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翻訳練習の解答
- 私たちは、湖まで短い小旅行に出かけた。
- 学校は、博物館への遠足を企画した。
- 遠足とは、またちゃんと家に帰ってくる旅のことだ。
- あなたの週末の小旅行、いい考えだと思う。
- 彼女は、2日目のオプショナルツアーを予約した。
- この章は、歴史へのちょっとした寄り道だ。
- 専門の外へ出てみることが、いちばんの学びになることもある。
- ガイドは、朝のツアーにグループを連れていった。
- 今日は少しだけ外へ出てみよう。隣の駅までだっていい。
- どんな旅も、玄関の外への一歩から始まる。
BSL(Business Service List)集録語
この単語は Business Service List(BSL) に集録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project


