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【語源で覚える】outperform|「アウト」なのに、外に出ていない

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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株や投資信託のニュースで「アウトパフォーム」という言葉を見かけたことはないでしょうか。「このファンドはベンチマークをアウトパフォームした」。意味は「上回った」です。

ここで少し引っかかりませんか。アウト(out)は「外」のはずです。野球のアウトも「外に出される」イメージですし、アウトドア、アウトプット、アウトラインも全部「外」で通ります。

ところが outperform の out には、「外」の意味がまったくありません。

この out は、動詞の前につけて「〜を上回る」という意味だけを作る、専用の接頭辞です。そして一度これを知ると、outdo、outweigh、outlast、outnumber・・・英語に無数にある「out+動詞」の形が、全部同じ仕組みで読めるようになります。

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語源をパーツで見る

outperform は、見た目どおり2つのパーツでできています。

out(〜を上回って)+ perform(やり遂げる)=「やり遂げる度合いで相手を上回る」

初出は1915年。英語の単語としてはかなり新しい部類です。しかも Online Etymology Dictionary は、この語について「最初は広告業界の言葉だった」と注記しています。「うちの製品は他社を outperform します」という、売り文句として生まれた単語だったわけです。100年後に証券アナリストの格付け用語になることまでは、当時の広告マンも想像していなかったでしょう。

なお後半の perform ですが、これは form(形)とは語源的に無関係です。中に form が見えているのに別物、という少し意地悪な語で、その話は別記事にまとめてあります(関連記事に置いておきます)。今回は前半の out に集中します。

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「外」ではない out ・・・比較の out-

英語の out- には、大きく分けて3つの顔があります。

ひとつ目は、いちばん素直な「外・外側」。outdoor、outside、outlet、outskirts。これは誰でも知っている out です。

ふたつ目は、句動詞がひっくり返ってできた形。break out(勃発する)が outbreak に、go out(出ていく)が outgoing に、flow out(流出する)が outflow になる。動詞+out が、名詞や形容詞になるときに out が前へ回り込むパターンです。

そして3つ目が、今回の主役。動詞の前につけて「〜を上回る」という他動詞を作る out- です。

19世紀の権威ある辞書 Century Dictionary は、out- の用法を説明するなかで、この3つ目について「この用法では、out はほとんどどんな名詞や動詞にでもつけられる」と書いています。つまり、決まった単語のリストがあるのではなく、話し手がその場で作ってよい、生きた仕組みだということです。

この仕組み自体は、かなり古くからあります。outlive(長生きする)は15世紀後半、outstrip(追い抜く)は1570年代、outweigh(上回る)は1590年代、outdo(しのぐ)は1600年ごろ。16世紀から17世紀にかけて、一気に増えました。

シェイクスピアが人名にまでつけた

この out- の自由さを、いちばん派手に使ったのがシェイクスピアです。

『ハムレット』第3幕第2場。ハムレットが役者たちに演技指導をする有名な場面で、大げさすぎる芝居を批判してこう言います。it out-Herods Herod.

Herod はヘロデ王。中世の宗教劇で「わめき散らす暴君」の定番キャラクターでした。つまり「ヘロデ王よりヘロデ王している」。日本語にするなら「悪役をやりすぎて、本家の悪役を超えてしまっている」といったところです。

シェイクスピアは同じ作り方を他でもやっていて、『終わりよければすべてよし』には out-villain’d villany(悪党ぶりで悪党を上回った)という表現が出てきます。

この型はその後も生き続けました。ジェーン・オースティンの『エマ』(1816年)には、成り上がりの女性を評して she has out-Churchill’d them all(チャーチル家の誰よりチャーチル家らしくふるまっている)という一節があります。

名詞でも固有名詞でも、とりあえず out をつければ「それを上回る」になる。outperform も、この長い伝統のいちばん新しい枝のひとつなのです。

out は「外」よりもっと広い

なぜ「外」が「上回る」になるのか。

もともと out の根っこにあるイメージは、「外へ」というより「限界を越えて向こう側へ」です。古英語の ut は「外へ」のほかに「最後まで、完全に」という意味でも使われました(この「完全に」の用法は1300年ごろから記録されています)。

境界線を越えていく。その「越える」の感覚が相手との比較に向けば、「相手の到達点より向こうへ行く」、つまり「上回る」になります。

さらにさかのぼると、印欧祖語の段階では「上へ、外へ、高いところへ」という意味だったと再構されています。「外」と「上」が同じ語根にまとまっているのは、現代の感覚だと不思議ですが、容器の中から出るときは上へ出るのだと考えれば、そうおかしくもありません。

隠れている out を探す

ここからが、この単語のいちばん面白いところかもしれません。out は、まったく out に見えない語の中に何度も潜り込んでいます。

utter。

utter nonsense(まったくのナンセンス)の utter です。これは古英語 utera、つまり out の比較級でした。「より外の」→「いちばん端の」→「極端な」→「完全な」と意味が動いて、今の「まったくの」になりました。

ちなみに utter a word(言葉を発する)の utter も、たどっていくと同じ out にぶつかります。こちらは「外へ出す」からの「口に出す」。つまり utter という綴りは、2つの道から同じ場所へ戻ってくる語です。

utmost。

to the utmost(最大限まで)の utmost は、古英語 utmest。out に最上級がふたつ重なった形で、「いちばん外の」が原義です。utter が比較級、utmost が最上級。out という単語は、こんなところで活用していたわけです。

about。

古英語 abutan を分解すると、on(〜に)+ be(そばに)+ utan(外に)。「〜の外側のあたりに」が原義で、そこから「周りに」「〜について」「およそ」へ広がりました。

without。

古英語 wiðutan。with(〜に対して)+ utan(外に)で、「外側に対して」。within(内側に)の正反対です。「〜なしで」の意味は1200年ごろから。

but。

これが個人的にはいちばん驚きます。古英語 butan は be(そばに)+ utan(外に)。「それの外側に」つまり「それを除いて」。everything but the kitchen sink の but が「〜を除いて」なのは、原義がそのまま残っているからです。「しかし」という接続詞の用法は、古英語の終わりごろになってやっと出てきた後発の意味でした。

出てきた順に並べると、こうなります。

out → utter → utmost → about → without → but

全部同じ一粒から育った枝です。

遠い親戚

印欧祖語までさかのぼると、ゲルマン語以外にも同じ根から出た語が見つかります。

ドイツ語の aus(外へ)、オランダ語の uit は、英語の out とそのまま同じ語です。Ausgang(出口)の aus を知っていれば、out と並べて覚えられます。

少し意外なのが、ギリシャ語の hysteros「後の、あとに来る」。ここから hysteresis(ヒステリシス) が出ています。磁性体などで、原因の変化に結果が遅れてついてくる現象のことです。「後から来る」という意味が、out の「外へ、越えて」と同じ根に由来している、というのは言われないと気づけません。

ここで注意がひとつ。似た綴りの hysteria(ヒステリー)は完全に別語源です。

こちらはギリシャ語 hystera「子宮」から来ていて、uterus(子宮)の親戚。かつてヒステリーが女性特有の病とされ、子宮の不調が原因だと考えられていた名残です。ヒステリーとヒステリシス、カタカナでは2文字違いですが、語源はまったく交わりません。

関連語ネットワーク

単語構成意味out のはたらき
outperformout+perform〜より良い成績を出す上回る
outdoout+do〜をしのぐ上回る
outweighout+weigh〜より重要である上回る
outlastout+last〜より長くもつ上回る
outnumberout+number〜より数で勝る上回る
outliveout+live〜より長生きする上回る
outshineout+shine〜より目立つ上回る
outrunout+run〜より速く走る・振り切る上回る
outsmartout+smart出し抜く上回る
outlineout+line輪郭・概要外側
outputout+put産出・出力外へ
outlookout+look見通し・展望外へ
outletout+let出口・販路外へ
outbreakbreak out勃発句動詞の倒置
outflowflow out流出句動詞の倒置
utterout の比較級まったくの隠れた out
utmostout の二重最上級最大限の隠れた out
abouton+be+utan〜について隠れた out
withoutwith+utan〜なしで隠れた out
butbe+utan〜を除いて・しかし隠れた out

派生語

語形品詞意味
outperform動詞〜を上回る成績を出す
outperformed / outperforming活用形〜
outperformance名詞ベンチマーク超過分
outperformer名詞市場平均を上回る銘柄・人
underperform動詞〜を下回る、期待に届かない
underperformance名詞成績不振

out- の反対側には under- がいます。under- もまた「〜に満たない」という動詞を作る接頭辞で、underestimate(過小評価する)、undervalue(低く見積もる)、underpay(安く払う)が同じ仕組みです。金融の世界で「アウトパフォーム/アンダーパフォーム」がきれいな対になっているのは、英語の接頭辞のペアがそのまま使われているからです。

TOEIC・ビジネスでの出方

outperform は他動詞です。ここが日本人学習者のつまずきやすいところで、「〜を上回る」の「〜を」を前置詞なしで直に置きます。

正:Our division outperformed all the others.
誤:Our division outperformed than all the others.

「上回る」という日本語から than を連想してしまいがちですが、比較の意味はすでに out- が背負っているので、than は不要です。

よく出る組み合わせも押さえておくと得です。

outperform the market(市場平均を上回る)
outperform expectations(予想を上回る)
outperform its competitors(競合他社を上回る)
consistently outperform(継続的に上回る)

Part 5 では語彙問題として exceed、surpass、outperform の選択で出ることがあります。ざっくりした使い分けは、exceed が「数値・基準を超える」、surpass が「質や程度で越える」、outperform が「成績・性能の比較で相手に勝つ」。目的語に「相手」が来ているなら outperform が自然です。

英文翻訳練習

次の10文を日本語にしてみてください。答え合わせは記事の最後にあります。

  1. The new model outperformed every competitor in the first quarter.
  2. Small teams often outperform large ones when the goal is clear.
  3. Our fund outperformed the benchmark even in a falling market.
  4. You do not have to outperform everyone to be useful here.
  5. The older machine still outperforms the newer one on heavy loads.
  6. If you keep going, you will outperform the version of yourself from last year.
  7. Analysts rated the stock outperform after the earnings report.
  8. No strategy outperforms a habit you can keep.
  9. You may outperform your own expectations once the pressure is gone.
  10. Quiet effort often outperforms loud talent.

語源メモ

outrage は out ではありません。

綴りを見ると out+rage(外へ出た怒り)に見えますが、これは偶然の一致です。outrage は古フランス語 outrage、さらに俗ラテン語 *ultraticum「過剰」、ラテン語 ultra「越えて」から来ています。ultra の一族には alter、alien、other、else、ultimate が並んでいて、out とはまったく別の家系です。

ただし面白いのは、英語話者もこれを out+rage だと誤解したという点です。etymonline は、その民間語源の影響で、本来「度を越したふるまい全般」だった意味が「暴力的な過剰」の方向へ狭まった、と説明しています。間違った語源理解が、実際に単語の意味を動かしてしまった例です。

utility は utmost の仲間ではありません。

ut- で始まる綴りが似ていますが、utility・utilize はラテン語 uti「使う」から来た別語源です。utmost・utter はゲルマン語系の out の一族。混ぜないように注意してください。

outstanding の「優秀な」は、別の筋です。

outstanding は stand out(目立つ)側から来た語で、今回扱った「比較の out-」とは作られ方が違います。しかも「未払いの」というもうひとつの意味もあり、話が長くなるので別記事に譲ります。

印欧祖語の再構形には表記のゆれがあります。
etymonline は out の項で *uidh- という形を挙げていますが、hysteresis の項では *ud- と書いています。文献によって再構形の表記が異なるので、本記事では「同じ根から出た」という事実関係だけを扱い、形の確定には踏み込んでいません。

まとめ

outperform の out は、「外」でも野球の「アウト」でもありません。「相手の到達点を越えて向こうへ行く」という、比較専用の接頭辞です。

この out- がわかると、outdo も outweigh も outlast も outnumber も、辞書を引かずに意味が立ち上がります。そして utter、utmost、about、without、but といった、まったく out に見えない基本語の中にも、同じ一粒が埋まっていることが見えてきます。

outperform の語源ワードマップ。中心に outperform(out 越えて+perform やり遂げる)を置き、比較の out-(outdo・outweigh・outlast・outnumber・outlive)、位置方向の out-(outline・output・outlook・outlet)、隠れた out(utter・utmost・about・without・but)、別語源で紛らわしい語(outrage・hysteria)の4グループに分けて図示したもの。
  • 語源・中心:out(外へ・越えて)+ perform(やり遂げる)
  • 比較の out-:outdo/outweigh/outlast/outnumber/outlive/outshine
  • 位置・方向の out-:outline/output/outlook/outlet/outdoor
  • 隠れた out:utter/utmost/about/without/but
  • 別語源で紛らわしい語:outrage(ultra「越えて」)/hysteria(hystera「子宮」)

収録語彙リストについて

outperform は BSL(Business Service List/ビジネス英語の基本語リスト)に収録されています。NAWL(学術語彙)・TSL(TOEIC語彙)には収録されていません。ビジネス文書と企業の業績報告で繰り返し出てくる語で、TOEIC の Part 5・Part 7 でも業績関連の文脈で登場します。

関連記事

perform と form が別語源である話はこちら:performance の語源 →https://isseisuzuki.org/performance/

over- の多層的な用法はこちら:overhead の語源 → https://isseisuzuki.org/overhead/

👇 語源の全リストはこちら → https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/

【タイパ最強】英単語の語源・パーツ分解全リスト|語源×記憶フックで芋づる式に覚える
英単語を最小限の労力でマスターする「語源+パーツ分解」の全リスト。学術的に正確な語源データと、タイパ(時短)を追求した記憶フックを完全分離して掲載。芋づる式に派生語を暗記し、実務やニュースで使える英語力を最速で身につけましょう。

翻訳練習の解答

  1. 新モデルは第1四半期、すべての競合製品を上回った。
  2. 目標がはっきりしているとき、小さなチームが大きなチームを上回ることはよくある。
  3. 私たちのファンドは、下落相場でもベンチマークを上回った。
  4. ここで役に立つために、全員を上回る必要はない。
  5. 古い方の機械でも、負荷が重いときは新しい方を上回る。
  6. 続けていれば、去年の自分を上回ることになる。
  7. 決算発表のあと、アナリストはその銘柄を「アウトパフォーム」と格付けした。
  8. 続けられる習慣を上回る戦略はない。
  9. プレッシャーがなくなれば、自分の予想を上回ることもある。
  10. 静かな努力は、派手な才能を上回ることが多い。