株や投資信託のニュースで「アウトパフォーム」という言葉を見かけたことはないでしょうか。「このファンドはベンチマークをアウトパフォームした」。意味は「上回った」です。
ここで少し引っかかりませんか。アウト(out)は「外」のはずです。野球のアウトも「外に出される」イメージですし、アウトドア、アウトプット、アウトラインも全部「外」で通ります。
ところが outperform の out には、「外」の意味がまったくありません。
この out は、動詞の前につけて「〜を上回る」という意味だけを作る、専用の接頭辞です。そして一度これを知ると、outdo、outweigh、outlast、outnumber・・・英語に無数にある「out+動詞」の形が、全部同じ仕組みで読めるようになります。
語源をパーツで見る
outperform は、見た目どおり2つのパーツでできています。
out(〜を上回って)+ perform(やり遂げる)=「やり遂げる度合いで相手を上回る」
初出は1915年。英語の単語としてはかなり新しい部類です。しかも Online Etymology Dictionary は、この語について「最初は広告業界の言葉だった」と注記しています。「うちの製品は他社を outperform します」という、売り文句として生まれた単語だったわけです。100年後に証券アナリストの格付け用語になることまでは、当時の広告マンも想像していなかったでしょう。
なお後半の perform ですが、これは form(形)とは語源的に無関係です。中に form が見えているのに別物、という少し意地悪な語で、その話は別記事にまとめてあります(関連記事に置いておきます)。今回は前半の out に集中します。
「外」ではない out ・・・比較の out-
英語の out- には、大きく分けて3つの顔があります。
ひとつ目は、いちばん素直な「外・外側」。outdoor、outside、outlet、outskirts。これは誰でも知っている out です。
ふたつ目は、句動詞がひっくり返ってできた形。break out(勃発する)が outbreak に、go out(出ていく)が outgoing に、flow out(流出する)が outflow になる。動詞+out が、名詞や形容詞になるときに out が前へ回り込むパターンです。
そして3つ目が、今回の主役。動詞の前につけて「〜を上回る」という他動詞を作る out- です。
19世紀の権威ある辞書 Century Dictionary は、out- の用法を説明するなかで、この3つ目について「この用法では、out はほとんどどんな名詞や動詞にでもつけられる」と書いています。つまり、決まった単語のリストがあるのではなく、話し手がその場で作ってよい、生きた仕組みだということです。
この仕組み自体は、かなり古くからあります。outlive(長生きする)は15世紀後半、outstrip(追い抜く)は1570年代、outweigh(上回る)は1590年代、outdo(しのぐ)は1600年ごろ。16世紀から17世紀にかけて、一気に増えました。
シェイクスピアが人名にまでつけた
この out- の自由さを、いちばん派手に使ったのがシェイクスピアです。
『ハムレット』第3幕第2場。ハムレットが役者たちに演技指導をする有名な場面で、大げさすぎる芝居を批判してこう言います。it out-Herods Herod.
Herod はヘロデ王。中世の宗教劇で「わめき散らす暴君」の定番キャラクターでした。つまり「ヘロデ王よりヘロデ王している」。日本語にするなら「悪役をやりすぎて、本家の悪役を超えてしまっている」といったところです。
シェイクスピアは同じ作り方を他でもやっていて、『終わりよければすべてよし』には out-villain’d villany(悪党ぶりで悪党を上回った)という表現が出てきます。
この型はその後も生き続けました。ジェーン・オースティンの『エマ』(1816年)には、成り上がりの女性を評して she has out-Churchill’d them all(チャーチル家の誰よりチャーチル家らしくふるまっている)という一節があります。
名詞でも固有名詞でも、とりあえず out をつければ「それを上回る」になる。outperform も、この長い伝統のいちばん新しい枝のひとつなのです。
out は「外」よりもっと広い
なぜ「外」が「上回る」になるのか。
もともと out の根っこにあるイメージは、「外へ」というより「限界を越えて向こう側へ」です。古英語の ut は「外へ」のほかに「最後まで、完全に」という意味でも使われました(この「完全に」の用法は1300年ごろから記録されています)。
境界線を越えていく。その「越える」の感覚が相手との比較に向けば、「相手の到達点より向こうへ行く」、つまり「上回る」になります。
さらにさかのぼると、印欧祖語の段階では「上へ、外へ、高いところへ」という意味だったと再構されています。「外」と「上」が同じ語根にまとまっているのは、現代の感覚だと不思議ですが、容器の中から出るときは上へ出るのだと考えれば、そうおかしくもありません。
隠れている out を探す
ここからが、この単語のいちばん面白いところかもしれません。out は、まったく out に見えない語の中に何度も潜り込んでいます。
utter。
utter nonsense(まったくのナンセンス)の utter です。これは古英語 utera、つまり out の比較級でした。「より外の」→「いちばん端の」→「極端な」→「完全な」と意味が動いて、今の「まったくの」になりました。
ちなみに utter a word(言葉を発する)の utter も、たどっていくと同じ out にぶつかります。こちらは「外へ出す」からの「口に出す」。つまり utter という綴りは、2つの道から同じ場所へ戻ってくる語です。
utmost。
to the utmost(最大限まで)の utmost は、古英語 utmest。out に最上級がふたつ重なった形で、「いちばん外の」が原義です。utter が比較級、utmost が最上級。out という単語は、こんなところで活用していたわけです。
about。
古英語 abutan を分解すると、on(〜に)+ be(そばに)+ utan(外に)。「〜の外側のあたりに」が原義で、そこから「周りに」「〜について」「およそ」へ広がりました。
without。
古英語 wiðutan。with(〜に対して)+ utan(外に)で、「外側に対して」。within(内側に)の正反対です。「〜なしで」の意味は1200年ごろから。
but。
これが個人的にはいちばん驚きます。古英語 butan は be(そばに)+ utan(外に)。「それの外側に」つまり「それを除いて」。everything but the kitchen sink の but が「〜を除いて」なのは、原義がそのまま残っているからです。「しかし」という接続詞の用法は、古英語の終わりごろになってやっと出てきた後発の意味でした。
出てきた順に並べると、こうなります。
out → utter → utmost → about → without → but
全部同じ一粒から育った枝です。
遠い親戚
印欧祖語までさかのぼると、ゲルマン語以外にも同じ根から出た語が見つかります。
ドイツ語の aus(外へ)、オランダ語の uit は、英語の out とそのまま同じ語です。Ausgang(出口)の aus を知っていれば、out と並べて覚えられます。
少し意外なのが、ギリシャ語の hysteros「後の、あとに来る」。ここから hysteresis(ヒステリシス) が出ています。磁性体などで、原因の変化に結果が遅れてついてくる現象のことです。「後から来る」という意味が、out の「外へ、越えて」と同じ根に由来している、というのは言われないと気づけません。
ここで注意がひとつ。似た綴りの hysteria(ヒステリー)は完全に別語源です。
こちらはギリシャ語 hystera「子宮」から来ていて、uterus(子宮)の親戚。かつてヒステリーが女性特有の病とされ、子宮の不調が原因だと考えられていた名残です。ヒステリーとヒステリシス、カタカナでは2文字違いですが、語源はまったく交わりません。
関連語ネットワーク
| 単語 | 構成 | 意味 | out のはたらき |
|---|---|---|---|
| outperform | out+perform | 〜より良い成績を出す | 上回る |
| outdo | out+do | 〜をしのぐ | 上回る |
| outweigh | out+weigh | 〜より重要である | 上回る |
| outlast | out+last | 〜より長くもつ | 上回る |
| outnumber | out+number | 〜より数で勝る | 上回る |
| outlive | out+live | 〜より長生きする | 上回る |
| outshine | out+shine | 〜より目立つ | 上回る |
| outrun | out+run | 〜より速く走る・振り切る | 上回る |
| outsmart | out+smart | 出し抜く | 上回る |
| outline | out+line | 輪郭・概要 | 外側 |
| output | out+put | 産出・出力 | 外へ |
| outlook | out+look | 見通し・展望 | 外へ |
| outlet | out+let | 出口・販路 | 外へ |
| outbreak | break out | 勃発 | 句動詞の倒置 |
| outflow | flow out | 流出 | 句動詞の倒置 |
| utter | out の比較級 | まったくの | 隠れた out |
| utmost | out の二重最上級 | 最大限の | 隠れた out |
| about | on+be+utan | 〜について | 隠れた out |
| without | with+utan | 〜なしで | 隠れた out |
| but | be+utan | 〜を除いて・しかし | 隠れた out |
派生語
| 語形 | 品詞 | 意味 |
|---|---|---|
| outperform | 動詞 | 〜を上回る成績を出す |
| outperformed / outperforming | 活用形 | 〜 |
| outperformance | 名詞 | ベンチマーク超過分 |
| outperformer | 名詞 | 市場平均を上回る銘柄・人 |
| underperform | 動詞 | 〜を下回る、期待に届かない |
| underperformance | 名詞 | 成績不振 |
out- の反対側には under- がいます。under- もまた「〜に満たない」という動詞を作る接頭辞で、underestimate(過小評価する)、undervalue(低く見積もる)、underpay(安く払う)が同じ仕組みです。金融の世界で「アウトパフォーム/アンダーパフォーム」がきれいな対になっているのは、英語の接頭辞のペアがそのまま使われているからです。
TOEIC・ビジネスでの出方
outperform は他動詞です。ここが日本人学習者のつまずきやすいところで、「〜を上回る」の「〜を」を前置詞なしで直に置きます。
正:Our division outperformed all the others.
誤:Our division outperformed than all the others.
「上回る」という日本語から than を連想してしまいがちですが、比較の意味はすでに out- が背負っているので、than は不要です。
よく出る組み合わせも押さえておくと得です。
outperform the market(市場平均を上回る)
outperform expectations(予想を上回る)
outperform its competitors(競合他社を上回る)
consistently outperform(継続的に上回る)
Part 5 では語彙問題として exceed、surpass、outperform の選択で出ることがあります。ざっくりした使い分けは、exceed が「数値・基準を超える」、surpass が「質や程度で越える」、outperform が「成績・性能の比較で相手に勝つ」。目的語に「相手」が来ているなら outperform が自然です。
英文翻訳練習
次の10文を日本語にしてみてください。答え合わせは記事の最後にあります。
- The new model outperformed every competitor in the first quarter.
- Small teams often outperform large ones when the goal is clear.
- Our fund outperformed the benchmark even in a falling market.
- You do not have to outperform everyone to be useful here.
- The older machine still outperforms the newer one on heavy loads.
- If you keep going, you will outperform the version of yourself from last year.
- Analysts rated the stock outperform after the earnings report.
- No strategy outperforms a habit you can keep.
- You may outperform your own expectations once the pressure is gone.
- Quiet effort often outperforms loud talent.
語源メモ
outrage は out ではありません。
綴りを見ると out+rage(外へ出た怒り)に見えますが、これは偶然の一致です。outrage は古フランス語 outrage、さらに俗ラテン語 *ultraticum「過剰」、ラテン語 ultra「越えて」から来ています。ultra の一族には alter、alien、other、else、ultimate が並んでいて、out とはまったく別の家系です。
ただし面白いのは、英語話者もこれを out+rage だと誤解したという点です。etymonline は、その民間語源の影響で、本来「度を越したふるまい全般」だった意味が「暴力的な過剰」の方向へ狭まった、と説明しています。間違った語源理解が、実際に単語の意味を動かしてしまった例です。
utility は utmost の仲間ではありません。
ut- で始まる綴りが似ていますが、utility・utilize はラテン語 uti「使う」から来た別語源です。utmost・utter はゲルマン語系の out の一族。混ぜないように注意してください。
outstanding の「優秀な」は、別の筋です。
outstanding は stand out(目立つ)側から来た語で、今回扱った「比較の out-」とは作られ方が違います。しかも「未払いの」というもうひとつの意味もあり、話が長くなるので別記事に譲ります。
印欧祖語の再構形には表記のゆれがあります。
etymonline は out の項で *uidh- という形を挙げていますが、hysteresis の項では *ud- と書いています。文献によって再構形の表記が異なるので、本記事では「同じ根から出た」という事実関係だけを扱い、形の確定には踏み込んでいません。
まとめ
outperform の out は、「外」でも野球の「アウト」でもありません。「相手の到達点を越えて向こうへ行く」という、比較専用の接頭辞です。
この out- がわかると、outdo も outweigh も outlast も outnumber も、辞書を引かずに意味が立ち上がります。そして utter、utmost、about、without、but といった、まったく out に見えない基本語の中にも、同じ一粒が埋まっていることが見えてきます。

- 語源・中心:out(外へ・越えて)+ perform(やり遂げる)
- 比較の out-:outdo/outweigh/outlast/outnumber/outlive/outshine
- 位置・方向の out-:outline/output/outlook/outlet/outdoor
- 隠れた out:utter/utmost/about/without/but
- 別語源で紛らわしい語:outrage(ultra「越えて」)/hysteria(hystera「子宮」)
収録語彙リストについて
outperform は BSL(Business Service List/ビジネス英語の基本語リスト)に収録されています。NAWL(学術語彙)・TSL(TOEIC語彙)には収録されていません。ビジネス文書と企業の業績報告で繰り返し出てくる語で、TOEIC の Part 5・Part 7 でも業績関連の文脈で登場します。
関連記事
perform と form が別語源である話はこちら:performance の語源 →https://isseisuzuki.org/performance/
over- の多層的な用法はこちら:overhead の語源 → https://isseisuzuki.org/overhead/
👇 語源の全リストはこちら → https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/

翻訳練習の解答
- 新モデルは第1四半期、すべての競合製品を上回った。
- 目標がはっきりしているとき、小さなチームが大きなチームを上回ることはよくある。
- 私たちのファンドは、下落相場でもベンチマークを上回った。
- ここで役に立つために、全員を上回る必要はない。
- 古い方の機械でも、負荷が重いときは新しい方を上回る。
- 続けていれば、去年の自分を上回ることになる。
- 決算発表のあと、アナリストはその銘柄を「アウトパフォーム」と格付けした。
- 続けられる習慣を上回る戦略はない。
- プレッシャーがなくなれば、自分の予想を上回ることもある。
- 静かな努力は、派手な才能を上回ることが多い。


