「デザイン(design)」は、もう日本語と言っていい一語です。グラフィックデザイン、デザイナーズ家具、デザイン思考・・・日常のあちこちに顔を出します。
そこで、今日の単語を見てください。
designate
頭から6文字、design がそのまま入っています。
綴りが似ているだけの偶然・・・ではありません。design と designate は、同じラテン語の動詞から、別の道をたどって英語に入ってきた「双子」です。しかも英語に入った時期も、通ってきた国も違います。
この関係が見えると、designate の「指定する・任命する」という、一見かたい意味が、すっと手前に下りてきます。
- designate を分解してイメージで覚える
- designate の基本の意味と使い方
- 名詞のうしろに置く designate|「まだ就任していない」
- design と designate|同じ語から出た双子
- sign(signum=しるし)でつながる単語ネットワーク
- designated hitter と designated driver|現代英語を作った一語
- 派生語|designate まわりの Word Family
- TOEIC・英検での出題傾向
- 英文で確認|翻訳練習10問
- 語源メモ|designare と signum の話
- まとめ
- TSL(TOEIC Service List)・BSL(Business Service List)収録語
- 関連記事
- 翻訳練習の解答
designate を分解してイメージで覚える
designate をパーツで見ると、こうなります。
de(はっきりと・外へ)+ sign(signum=しるし)+ ate(〜する)
意味の中心は、真ん中の sign。みなさんがよく知る「サイン」の sign、ラテン語の signum(しるし・目印)です。
そこに de(はっきりと・外へ)が付くと、「しるしをつけて、外にはっきり示す」。
- ここが駐車スペースです、と線を引いて示す
- この人が担当です、と名前を挙げて示す
どちらも「designate」です。頭の中にあるものを、誰が見てもわかる形で外に出して、これだ、と指す。それが designate の一枚絵です。
そして design も、もともとは同じ動きでした。頭の中にある形に、輪郭という「しるし」を与えて、紙の上に出す・・・それが design です。片方は「図案」の方向へ、もう片方は「指定・任命」の方向へ育った。それだけの違いです。
designate の基本の意味と使い方
designate は「指定する」「任命する」「〜と呼ぶ」を表す動詞です。公的な場面・書面の場面で使われることが多い一語です。
- designate a parking area(駐車区域を指定する)
- She was designated as the new team leader.(彼女が新しいチームリーダーに任命された。)
- The building was designated a national treasure.(その建物は国宝に指定された。)
ポイントは「誰かが、公に、はっきりと決める」というニュアンスです。choose(選ぶ)より重く、公式な響きがあります。
過去分詞 designated は、ほぼ形容詞として使われる
実務でよく見るのは、むしろこちらの形です。
- a designated area(指定区域)
- designated smoking area(指定喫煙所)
- designated representative(指名された代表者)
- in the designated space(所定の欄に)
空港や役所の英語表示でも頻出します。「designated = あらかじめ決められている」と読めると、初見の掲示でも迷いません。
名詞のうしろに置く designate|「まだ就任していない」
designate には、ちょっと変わった使い方があります。名詞のうしろに置く形容詞です。
- ambassador designate(次期大使・内定しているがまだ着任していない)
- president-designate(次期会長・次期大統領)
- chairman designate(次期議長)
意味は「任命・指名はされたが、まだその職に就いていない」。英語では1640年代から使われている、かなり古い用法です。
英語の形容詞はふつう名詞の前に置きますが、法律やフランス語由来の格式ばった言い回しでは、うしろに残っているものがあります(court-martial〈軍法会議〉などと同じ仲間です)。ニュースで ambassador designate を見かけたら、「まだ着任前なんだな」と読めます。
design と designate|同じ語から出た双子
ここが、この単語のいちばん面白いところです。
| 語 | 英語に入った時期 | 通ってきた道 | 育った方向 |
|---|---|---|---|
| design | 14世紀後半 | ラテン語 → イタリア語・フランス語を経由 | 形づくる → 図案・設計・意図 |
| designate | 15世紀初め(形容詞) | ラテン語 designatus から直接 | 印をつけて示す → 指定・任命 |
もとは同じラテン語 designare(印をつけて示す)。フランス語・イタリア語という「回り道」を通ってきたのが design、ラテン語から直行便で入ってきたのが designate です。
同じ語が、違うルートで二度入ってきて、別々の単語になる・・・語源の世界ではよくある現象で、こういうペアを「二重語」と呼びます。
さらに面白いのが、17世紀の英語では design が、いまの designate の意味でも使われていたこと。つまり当時は、2つの単語の守備範囲がまだ重なっていたわけです。そこから数百年かけて、design は「図案」、designate は「指定」へと、きれいに役割分担していきました。
発音にも、回り道の跡が残っている
- design ・・・ ディザイン /dɪˈzaɪn/(g は読まない)
- designate ・・・ デズィグネイト /ˈdezɪɡneɪt/(g を読む)
綴りは重なっているのに、音がここまで違う。フランス語を通ってきた design は音がなめらかに溶け、ラテン語から直接入った designate は g が残った・・・そう見ると、発音の違いも覚えやすくなります。
sign(signum=しるし)でつながる単語ネットワーク
designate の意味の中心 sign(ラテン語 signum=しるし・目印)は、驚くほど多くの単語に住んでいます。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| sign | しるし、合図、署名する | signum そのもの |
| signal | 信号、合図 | しるしで送る合図 |
| signature | 署名 | 自分だけのしるし |
| significant | 重要な | しるしを作る → 見落とせない |
| assign | 割り当てる | ad(〜へ)+ しるしをつけて渡す |
| consign | 委託する、送る | すっかりしるしをつけて託す |
| resign | 辞任する | 帳簿に逆の記入をして帳消しにする |
| insignia | 記章 | 身につける公式のしるし |
| ensign | 旗、少尉 | insignia と同じ語から出た双子 |
| seal | 封印、印章 | sigillum(signum の「小さいもの」形) |
seal(封印)も signum の家族というのは、ちょっと意外ではないでしょうか。sigillum は signum に「小さい」を付けた形で、「小さなしるし」=ろう印のこと。封筒や文書に押す、あの印です(※ 動物のアザラシの seal は、まったく別の単語です)。
この sign 一族は広いので、ここでは designate の周辺に絞りました。一族全体の広がりは、下の関連記事からどうぞ。
designated hitter と designated driver|現代英語を作った一語
designate の過去分詞 designated は、20世紀に入ってから、英語に2つの有名な言い回しを残しました。
designated hitter(指名打者・DH)
投手の代わりに打席に立つ選手のこと。アメリカン・リーグがこの制度を導入したのが1973年です。
この言い方が野球を越えて広まり、「designated + 役割」で「その役を割り当てられた人」を表す型ができました。
designated driver(ハンドルキーパー)
その型から生まれたのが、1985年ごろに広まった designated driver です。飲み会で「今日は自分が運転するから飲まない」と引き受ける人のこと。
日本語の「ハンドルキーパー」は和製英語に近いので、英語では designated driver と言うのが自然です。海外での会食で、そのまま使える一語です。
「印をつけて、この人、と指す」・・・1つのラテン語が、2000年後のバーの席にまで届いている、ということになります。
派生語|designate まわりの Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| designate | 動詞 | 指定する、任命する | デズィグネイト /ˈdezɪɡneɪt/ |
| designate | 形容詞 | 任命されたがまだ就任していない | デズィグナト /ˈdezɪɡnət/ |
| designated | 形容詞 | 指定された、所定の | デズィグネイティッド /ˈdezɪɡneɪtɪd/ |
| designation | 名詞 | 指定、任命、名称 | デズィグネイション /ˌdezɪɡˈneɪʃn/ |
| design | 動詞・名詞 | 設計する、デザイン、意図 | ディザイン /dɪˈzaɪn/ |
| designer | 名詞 | 設計者、デザイナー | ディザイナー /dɪˈzaɪnər/ |
| redesign | 動詞・名詞 | 設計し直す、再設計 | リーディザイン /ˌriːdɪˈzaɪn/ |
動詞の designate と形容詞の designate は、綴りが同じで後半の音が違うのが要注意ポイントです。動詞は「ネイト」とはっきり、形容詞は「ナト」とあいまいに。separate や estimate と同じパターンです。
TOEIC・英検での出題傾向
TOEIC では、designated の形で出会う確率が高い一語です。
- designated smoking area / designated parking area(社内通知・案内掲示)
- Please submit the form to the designated representative.(designated+役職の形)
- the designated date(指定日)
Part 5 の品詞問題では、designate / designated / designation を選ばせる形が定番です。「空所のうしろに名詞があるなら designated」と押さえておくと処理が速くなります。
英検 では準1級〜1級レベル。長文で be designated as a World Heritage site(世界遺産に指定される)のような形で登場します。
TSL(TOEIC)とBSL(ビジネス)の両方に入っている語なので、仕事で英語を使う人は、意味だけでなく designated area のような形ごと覚えておくと効きます。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- The company designated her as the new project leader.
- Please designate a time that works for you.
- This area has been designated a World Heritage site.
- You can designate one corner of your room as your reading place.
- He designated his mornings for the work that mattered most.
- The seats near the entrance are designated for visitors.
- She was designated to speak on behalf of the team.
- Designate one day a week as a day for rest.
- You get to designate what deserves your attention today.
- What you designate as important quietly shapes your life.
語源メモ|designare と signum の話
designate は、ラテン語 designare(印をつけて示す・選ぶ・任命する)の過去分詞 designatus から来ています。分けると de(外へ・はっきりと)+ signare(印をつける)。signare の元は signum(しるし・目印・軍旗)です。
英語に入った順番を整理すると、こうなります。
- designation・・・14世紀後半。「指し示すこと、表記」
- design(動詞)・・・14世紀後半。「作る、形づくる」
- designate(形容詞)・・・15世紀初め。「印をつけられた、示された」(この意味は今は使いません)
- designate(形容詞)の「就任前の」の意味・・・1640年代
- designate(動詞)・・・18世紀末に定着(※ 辞書によって初出年の扱いに差があり、Merriam-Webster は16世紀末を動詞の初出としています)
- designated(形容詞)・・・1868年。designated hitter は1973年、designated driver は1985年ごろ
design のほうが先に英語に入り、designate は後から追いかけてきた・・・という順番です。
design が通ってきた回り道
16世紀のイタリア語で、動詞 disegnare が「企てる・意図する」と「描く・図案にする」という2つの意味を育てました。フランス語はこの2つを別々の形で受け取り、現代フランス語では dessein(意図・計画)と dessin(図案)に分かれています。英語はそれを両方とも design 一語で引き受けた・・・だから英語の design は「設計」も「意図」も表せるわけです。
by design(意図的に)という言い方に「意図」側の意味が残っているのは、この歴史の名残です。
signum の、さらに先
signum より奥は、実ははっきりしていません。「人が後について進む軍旗」から「ついて行く」の語根とする説、「切り出したもの」から「切る」の語根とする説、そしてラテン語もヘブライ語も、どこか別の言語から借りた語ではないかという説まであります。ここは諸説ある、と押さえておけば十分です。
ひとつ注意
日本語の「サイン(署名)」は、英語では signature、有名人のサインなら autograph です。英語の sign は「しるし・標識」や「署名する(動詞)」で、名詞で署名の意味には使いません。designate を入り口に、このあたりもまとめて整理しておくと役に立ちます。
まとめ
designate は、de(はっきりと)+ sign(signum=しるし)+ ate で「印をつけて、これだと指し示す」=指定する・任命する。
- 入り口・・・頭の design。偶然の空似ではなく、同じ designare から出た双子
- sign(signum)・・・意味の中心。signal/signature/assign/seal などの一族へ
- designated・・・実務での主役。designated area/designated driver
- ambassador designate・・・名詞のうしろに置くと「まだ就任していない」
頭の中にあるものに、輪郭を与えて外に出す。design も designate も、やっていることは同じです。

- 語源・中心:de(はっきりと)+ sign(signum=しるし)+ ate =「印をつけて指し示す」
- 覚え方のヒント:頭の design = あの「デザイン」。同じ語から出た双子
- sign(しるし)一族:sign/signal/signature/significant/assign/consign/resign/insignia/ensign/seal
- designate 派生:designation/designated/design/designer/redesign
TSL(TOEIC Service List)・BSL(Business Service List)収録語
この単語は TSL(TOEIC) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。ビジネスでもTOEICでも頻出する、汎用性の高い一語です。
出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答
- 会社は、彼女を新しいプロジェクトリーダーに任命した。
- ご都合のよい時間を指定してください。
- この地域は、世界遺産に指定された。
- 部屋の片隅を一つ、読書の場所に決めてしまってもいい。
- 彼は、いちばん大事な仕事のために午前中を空けておいた。
- 入口近くの席は、来客用になっている。
- 彼女が、チームを代表して話す役に選ばれた。
- 週に一日、休む日を決めておこう。
- 今日、何に心を向けるかは、あなたが決めていい。
- 何を大切だと決めるかが、静かにあなたの人生をつくっていく。

