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会話のすべてが英語教材になる|「伝えようとする人」がいつの間にか上達する理由

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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前回の記事で、英語を話すときは完璧を目指さなくていい、というお話をしました。頭が真っ白になっても、単語に詰まっても、相手と協力する姿勢さえあれば十分に伝わる・・・そんな研究の話でした。

今回はその続きです。実は「伝えようとする姿勢」には、もう1つ大きなメリットがあります。それは、会話のやり取りそのものが、あなたにとって最高の英語教材になるということです。

参考書を開かなくても、単語帳を暗記しなくても、英語は伸びていきます。その仕組みを、順番に見ていきましょう。

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相手の「こういうこと?」が、そのまま答えになる

前回、うまく伝わらないとき、相手が「こういうこと?」と英語で言い直してくれる、というお話をしました。

ここに、大きなヒントがあります。

相手が返してくれた内容が、あなたの言いたかったことと同じであれば・・・その英語を、そのまま頭に入れてしまえばいいのです。

たとえば、あなたが「電車が遅れて、待たされて大変だった」と言いたかったとします。うまく言葉が出てこなくて、”Train… late… I waited…” としか言えなかったとしても、相手はこう返してくれるかもしれません。

・”Oh, your train was delayed and you had to wait for a long time?”(電車が遅れて、長い間待たなきゃいけなかったの?)

これがまさに、あなたの言いたかったことなら、”Yes!” と一言返すだけでいい。そして同時に、あなたは “was delayed”(遅れた)という、次に使えるフレーズを手に入れたことになります。

自分が言いたかったことほど、答えを知ったときに頭に残るものです。その「答え」を、相手が会話の中で教えてくれる。これほど効率のいい学び方はありません。

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英語を使う人の強み|会話のすべてが良質なインプットになる

ここで大事な考え方を1つ。

英語を「使う」人の最大の強みは、コミュニケーションの場面すべてが、良質なインプットになるという点です。

机の上での勉強は、正直つらいものです。覚えても使わなければ忘れていきます。ところが会話で得た英語は違います。「伝えたい」という気持ちとセットで頭に入るので、記憶に残りやすいのです。

しかも、相手が使ってくれる英語は、あなたのレベルにちょうど合っていることが多い・・・これには理由があります。

相手はあなたに「やさしい英語」を使ってくれる

海外から来る方や、ネットでやり取りする相手は、必ずしも英語が母語とは限りません。

英語で頭が真っ白になる苦手意識を消すヒント|カフェでリラックスして英会話する男女のイラスト

英語が母語でない相手の場合、お互いに通じ合うために、比較的やさしい英語を選んで話してくれることがよくあります。こうした、相手に合わせて調整されたわかりやすい話し方を、専門的には**ケア・テイカー・スピーチ(caretaker speech)**と呼んだりします。

これは学習者にとって、とてもありがたい環境です。ネイティブ同士の速い会話より、ずっと聞き取りやすく、まねしやすい英語が返ってくるのですから。

そしてもう1つ、心強い事実があります。

相手も英語でミスをすることを、当然だと思っています。だから、あなたが間違った英語を使ったとしても、「その英語、間違ってるよ」なんて、いちいち指摘してくることはまずありません。

うまく伝わらなかったときは、聞き返してくれるだけです。そうしたら、また言い直せばいい。ただそれだけのことなのです。

「間違い→言い直し」のくり返しで、使える単語が増えていく

会話の流れを整理すると、だいたいこうなります。

  1. あなたが、たどたどしくても伝えようとする
  2. 相手が「こういうこと?」と言い直してくれる
  3. 合っていれば “Yes” と返すだけ
  4. 相手の言い直した英語が、あなたの新しい語彙になる

この経験を積めば積むほど、あなたの「使える英単語」が少しずつ増えていきます。しかも、自分が心から伝えたかったことばかりなので、驚くほど記憶に定着します。

英語が母語でない相手の場合は、相手の言い直しが間違っていることもあります。そのときは、あとで辞書やネットで確かめる必要があるかもしれません。でも、その「確かめるひと手間」こそが、あなたの語彙をさらに増やしてくれます。手間をかけた単語ほど、忘れないものです。

「正確さ」が要る場面と、要らない場面を分ける

もちろん、正確さが命という場面もあります。

たとえば外資系の会社に就職して、契約を交わすような場面。ここでは、きわめて正確な英語が要求されます。ひとつの単語の解釈が、大きな責任につながることもあるからです。

けれど、日常的な人間関係を保つための英語なら、話は別です。多少の間違いは、じゅうぶん許容範囲。

むしろ、正確さを気にして黙り込んでしまうより、間違えながらでも伝えようとするほうが、相手に好感を持ってもらえます。「この人は自分と話そうとしてくれている」・・・その姿勢が伝われば、コミュニケーションはぐっと円滑に進んでいきます。

前回の記事で紹介した研究も、まさにこのことを裏づけていました。伝わりやすさを決めるのは、文法の正確さよりも「協力しようとする姿勢」だったのです。

まとめ|伝えようとするだけで、英語は勝手に伸びていく

今回お伝えしたことを、ひとことでまとめます。

「伝えよう」とする姿勢さえあれば、会話のすべてが教材に変わり、英語はいつの間にか伸びていく。

相手の言い直しが、あなたの新しいフレーズになる。やさしい英語が返ってくる。間違えても責められない。確かめるひと手間で語彙が定着する。どれも、机に向かうだけでは得られない学びです。

「点数が取れる、スコアが取れる」英語から、「使える」英語へ。そのマインドセットの切り替えこそが、遠回りに見えて、いちばんの近道なのです。

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