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【語源で覚える】dividend|頭の di は「2」じゃない

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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スマホやパソコンのことを「デバイス」と呼びますよね。あの device が、株の dividend(配当) と同じ語源だと聞くと、少し意外ではないでしょうか。

そして、この dividend にはもう一つ仕掛けがあります。頭の di。dioxide(二酸化物)や dilemma(板挟み)を知っていると、つい「di = 2」と読みたくなるところです。

ところが、dividend の di は「2」ではありません。ここを正しく押さえると、divide・division・individual・device・divisor まで、見た目のバラバラな単語が一本の線でつながります。

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dividend を分解してイメージで覚える|di は「2」じゃない

dividend をパーツで見ると、こうなります。

di(dis = 離れて・バラバラに)+ vid(分ける)+ end(〜されるべきもの)

つまり 「分けられるべきもの」。これがそのまま、会社の利益から切り分けて株主に配る「配当金」の意味になっています。算数の「割られる数」も同じで、これから分けられる側の数です。

語源と意味がぴたりと重なる、気持ちのいい一語です。

ここで引っかかるのが頭の di ですよね。dioxide(二酸化炭素の「二」)、dilemma(2つの選択肢に挟まれる)、dioxin・・・たしかに「2」を表す di はあります。でも dividend の di は、そちらではありません。

正体は dis(離れて・バラバラに)。dis は、後ろに v や d などの濁る音が来ると s が落ちて di の形になります。dis-appear(消える)の dis と、同じものなんです。

※ 正確には、dioxide の di はギリシャ語 dis「2度」から来た接頭辞で、dividend の di(ラテン語 dis)とはまったく別ルートです。ただし、はるか上流では両者が遠い親戚にあたるという見方もあります(くわしくは記事末の語源メモで)。

覚え方のヒント:dis-appear の dis が、v の前で身軽になって di になった・・・と思い出してください。「2つに」ではなく「バラバラに」です。

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dividend の基本の意味と使い方

dividend は名詞で、大きく3つの顔を持っています。

① 配当、配当金(ビジネス・投資)

  • an annual dividend(年1回の配当)
  • a dividend of 50 yen per share(1株あたり50円の配当)
  • The company raised its dividend.(その会社は配当を増やした)

② 割られる数(算数)

12 ÷ 3 = 4 のとき、12 が dividend、3 が divisor、4 が quotient です。「分けられる側の数」と覚えればそのままです。

③ 成果、見返り(比喩)

これが実は日常でいちばんよく使われます。

  • pay dividends(後になって効いてくる、実を結ぶ)
  • Your daily practice will pay dividends.(毎日の練習は、いつか必ず報われます)

「あとで分け前が返ってくる」というイメージから、努力や投資が後から成果になって戻ってくることを表します。会話でもビジネス文書でも頻出の言い回しです。

ニュースで見かける組み合わせ

  • peace dividend(平和の配当)・・・戦争や冷戦の終結で軍事費が減り、その分を他に回せるようになること。1968年の経済誌が広めた言い方です。
  • demographic dividend(人口ボーナス)・・・働き盛りの人口が多い時期に経済が伸びやすくなること。

使い分け・対比|dividend と divisor、配当と利息

まず算数の2語。どちらも divid- の仲間ですが、立場が正反対です。

単語立場覚え方
dividend割られる数-end =「分けられる側」
divisor割る数-or =「分ける側(する人・もの)」

-end は受け身、-or は行為者。この対応は legend(読まれるべきもの)、agenda(なされるべきこと)にも同じ形で出てきます。

次にビジネスでの対比。日本語だと「配当」も「利息」もお金が入ってくる点で似て見えますが、英語では考え方がはっきり違います。

  • dividend ・・・ 会社の利益を切り分けてもらうもの。利益が出なければ出ないこともある
  • interest ・・・ 貸したお金に対して付くもの。業績とは切り離されている

dividend が「分けられるべきもの」という語源であることを知っていると、この違いが腑に落ちます。

関連語ネットワーク|「バラバラに分ける」でつながる単語

dividend の意味の中心は dividere(分ける)。ここを押さえると、見た目がまったく違う単語が一気につながります。

単語意味イメージ
divide分ける、割るdis(離れて)+vid(分ける)
division分割、部門、割り算分けること、分けられた一区画
individual個人の、個人in(否定)+dividuus(分けられる)=これ以上分けられない
individualism個人主義individual + -ism
divisible分けられるdivis- + -ible
divisive分断を招く人を分けてしまう性質
divisor割る数分ける側のもの
device装置、機器「分け方・段取り」→「工夫」→「仕掛け」
devise考案する分けて配置する=計画を練る
divvy山分けする(口語)dividend を短くした俗語

individual(個人) は、この一族でいちばん哲学的な顔をしています。in(否定)+ dividuus(分けられる)で「これ以上は分けられないもの」。社会を細かく割っていって、最後に残る単位・・・それが個人だ、という発想が、単語そのものに刻まれています。

device(デバイス) の道のりも面白いところです。もとは「どう分けるか=段取り・工夫」で、そこから「工夫して作ったもの」へ、さらに「仕掛け・装置」へ。スマホやタブレットを指す今の使い方は、かなり最近に定着したものです。

関連語ネットワーク②|di が付いているのに仲間ではない単語

ここは中級以上の方への寄り道です。di(dis = 離れて)という頭は共通でも、後ろの語根が違えば別の一族になります。綴りが似ているのに意味が噛み合わない語は、たいていここが原因です。

単語分解後半の正体
divide / dividenddi + vid分ける
diverse / divert / divorcedi + vertvertere(回る・向きを変える)
differ / differentdi + ferferre(運ぶ)
digestdi + gestgerere(運ぶ・行う)
dilutedi + luteluere(洗う)

diverse(多様な)と divide(分ける)は、別の一族です。意味が近いので同じに見えますが、diverse は「別々の方向を向いている」で、回るほうの vert。ここを混ぜないでおくと、あとで効いてきます。

一方で、dioxide や dilemma の di はそもそもギリシャ語由来で、この表の仲間ですらありません。

見分け方の目安:di の後ろを見る。vid なら「分ける」、vert なら「向きを変える」、fer なら「運ぶ」。頭ではなく、後半で判断します。

派生語 Word Family

単語品詞意味発音
dividend名詞配当、配当金、割られる数、成果ディビデンド /ˈdɪvɪdend/
dividend yield名詞句配当利回り―
dividend payout名詞句配当性向、配当支払い―
ex-dividend形容詞配当落ちの―
divide動詞・名詞分ける、割る/隔たりディバイド /dɪˈvaɪd/
division名詞分割、部門、割り算ディビジョン /dɪˈvɪʒən/
divisible形容詞分けられる/dɪˈvɪzəbl/
divisor名詞割る数/dɪˈvaɪzər/

TOEIC・英検での傾向

dividend は、TOEIC で確実に出会う一語です。Part 7 の決算発表・株主向け通知・ビジネス記事で、次のような形で現れます。

  • declare a dividend(配当を発表する)
  • pay a quarterly dividend(四半期配当を支払う)
  • dividend yield(配当利回り)
  • the dividend payout ratio(配当性向)

正直に言うと、配当そのものの知識が問われることはほとんどありません。問われるのは「この文書が何の知らせか」を読み取る力なので、dividend を見た瞬間に「株主にお金を配る話だ」と判断できれば十分です。

それ以上に実用的なのが pay dividends(後で効いてくる) の比喩用法。こちらはスピーキングやライティングで自分から使えると、ぐっと大人びた英語になります。英検でも準1級以上の長文で見かけます。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. The company paid a dividend to its shareholders.
  2. A dividend is simply the part that is meant to be shared.
  3. Your patience will pay dividends someday.
  4. In math, the dividend is the number that is divided.
  5. She reinvested her dividend into the same fund.
  6. You can receive a dividend without selling your shares.
  7. The board decided to raise the dividend this year.
  8. Learning a language pays dividends for the rest of your life.
  9. Small daily effort quietly pays a dividend.
  10. Kindness often comes back to you as an unexpected dividend.

語源メモ|「分けられるべきもの」という形

dividend は、ラテン語 dividendum「分けられるべきもの」に由来します。これは動詞 dividere(分ける)の動形容詞(gerundive)の中性形で、ラテン語のこの形は「〜されるべき」という義務・必然を表します。

単に「分けられたもの」ではなく、「分けられることになっているもの」というニュアンスが、もともと入っているわけです。

dividere の内部は dis(離れて)の同化形 + -videre(分ける)。後半の -videre は、de Vaan によれば印欧祖語 (d)uid-「分ける・区別する」にさかのぼり、サンスクリットの avidhat「割り当てた」などと同族とされます。この語根はもともと頭の *d- を持っていたものの、次に来る歯音の前で脱落し、ラテン語ではその分を dis- で補強した・・・という説明です。

ここが要注意:-videre は「見る」の videre(video・vision・evident の仲間)とは別物です。綴りが同じなので紛らわしいのですが、dividend に「見る」の意味は一切入っていません。

英語に入ってからの歩みも、きれいに段階が追えます。

  • 15世紀初め・・・ divident「仕切りになるもの」
  • 1500年ごろ・・・「分けること」
  • 15世紀後半・・・「分けられる取り分」
  • 1620年代・・・「等分されるべき金額」、そこから「ローンや株式から受け取る取り分」へ
  • 1540年代・・・ 数学の「割られる数」(フランス語 dividende から直接入った可能性あり)

つまり 配当という意味は、語源の「分けられるべきもの」から一歩も離れていません。意味が大きくねじれる単語が多いなかで、これはかなり素直な部類です。

接頭辞 di の整理

  • di(ギリシャ語由来) ・・・「2・二重の」。dioxide、dilemma、diatomic など。dis「2度」が縮んだ形で、duo や bi- と同族
  • di(ラテン語由来) ・・・「離れて・バラバラに」。dis- が有声子音の前で s を落とした形。divide、dividend、divert、differ など

同じ綴りでも別ルートです。ただ、ややこしいことに、ラテン語 dis- の印欧祖語形は *dwis- の二次形とされ、bis(2度)や duo とも関係があると考えられています。「2つに分かれる」→「バラバラに」という発想のつながりですね。

ですから厳密には、「di は2とまったく無関係」ではなく、**「ずっと上流まで遡れば遠い親戚かもしれないが、dividend の di が直接『2』を意味しているわけではない」**というのが正確なところです。

おまけ① device の1996年

device は1300年ごろに「意図・計画・意匠」として英語に入り、1400年ごろには「機械仕掛け」(クランク付きの大型クロスボウなど)を指すようになりました。そして、私たちがいちばんよく使う「携帯型の電子機器・コンピュータ機器」という語義が定着したのは、1996年ごろからとされています。スマホより前、パソコンが各家庭に入り始めた時期です。device という単語そのものは700年前からあるのに、「デバイス」としての顔はごく最近のものなんですね。

おまけ② individual の遅咲き

individual は15世紀初めに「一つで分かちがたい」という意味で登場しますが、これは三位一体を説明するための神学用語でした。「個々の、ひとつひとつの」という今の意味が出てくるのは1610年代、「ひとりの人間」という名詞用法は1640年代です。

individualism(個人主義)に至っては1815年で、社会思想の名前として使われるのは1851年の J.S. ミルの著作から。「個人」という考え方そのものが、言葉としては意外に新しいことがわかります。

おまけ③ divvy

「山分けする」という口語の divvy は、1865年に名詞として、1877年にアメリカ英語の動詞として記録された、dividend の俗語的な短縮形です。Let’s divvy it up.(山分けしよう)という形で今も使われています。

留保:widow(未亡人)が dividend と同じ語根から来ているという説明を見かけることがあります。widow の語根は「分ける・引き離す」と説明されており、ラテン語 viduus(失った・欠けた)とつながるのは確かですが、dividere の -videre と同一の語根と断定できるかは辞書によって扱いが分かれます。面白い説ではありますが、ここでは確定した話としては扱いません。

まとめ

dividend は、di(dis = 離れて)+ vid(分ける)+ end(〜されるべきもの)で 「分けられるべきもの」。それがそのまま配当金であり、割られる数であり、後から返ってくる成果です。

  • di ・・・「2」ではなく dis(離れて・バラバラに)。dis-appear の dis と同じ
  • vid ・・・ 分ける。「見る」の videre とは別物
  • -end ・・・〜されるべきもの。divisor(分ける側)と対になる
  • 一族は divide/division/individual/device/divisor/divisible へ

頭の2文字に引っかかったままだと、この単語はずっと暗記対象のままです。di を「バラバラに」と読み替えた瞬間に、10語以上がまとめて自分のものになります。

dividend の語源ワードマップ。中心は dividend(=分けられるべきもの)で、di(dis=離れて)+vid(分ける)+end(〜されるべきもの)に分解。vid(分ける)系(divide / division / individual / divisible / divisor / divisive)、device・devise系(device / devise / divvy / dividend yield / pay dividends)、覚え方のヒント(di は「2」ではなく dis-appear の dis、dioxide の di や diverse の vert は別ルート)の4クラスタに整理した図。
  • 語源・中心:di(dis = 離れて)+ vid(分ける)+ end(されるべきもの)=「分けられるべきもの」
  • 覚え方のヒント:di は「2」ではなく、dis-appear の dis。後ろの vid が「分ける」
  • vid(分ける)一族:divide/division/individual/device/devise/divisor/divisible/divisive
  • 別ルートの注意:dioxide の di(ギリシャ語「2」)/diverse・divert の vert(回る)

TSL(TOEIC Service List)・BSL(Business Service List)収録語

この単語は TSL(TOEIC) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。ビジネスでもTOEICでも頻出する、汎用性の高い一語です。

出典:New General Service List Project

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翻訳練習の解答

  1. その会社は株主に配当を支払った。
  2. 配当とは、つまり「分けることになっている取り分」のことだ。
  3. あなたのその粘り強さは、いつかきっと実を結ぶ。
  4. 算数では、dividend は割られる側の数を指す。
  5. 彼女は受け取った配当を、同じファンドに再投資した。
  6. 株を手放さなくても、配当は受け取れる。
  7. 取締役会は、今年の配当を引き上げることを決めた。
  8. 語学の勉強は、その後の人生ずっと見返りを返してくれる。
  9. 毎日の小さな積み重ねは、静かに実を結んでいく。
  10. 人に向けたやさしさは、思いがけない形で自分に返ってくることが多い。