スマホやパソコンのことを「デバイス」と呼びますよね。あの device が、株の dividend(配当) と同じ語源だと聞くと、少し意外ではないでしょうか。
そして、この dividend にはもう一つ仕掛けがあります。頭の di。dioxide(二酸化物)や dilemma(板挟み)を知っていると、つい「di = 2」と読みたくなるところです。
ところが、dividend の di は「2」ではありません。ここを正しく押さえると、divide・division・individual・device・divisor まで、見た目のバラバラな単語が一本の線でつながります。
dividend を分解してイメージで覚える|di は「2」じゃない
dividend をパーツで見ると、こうなります。
di(dis = 離れて・バラバラに)+ vid(分ける)+ end(〜されるべきもの)
つまり 「分けられるべきもの」。これがそのまま、会社の利益から切り分けて株主に配る「配当金」の意味になっています。算数の「割られる数」も同じで、これから分けられる側の数です。
語源と意味がぴたりと重なる、気持ちのいい一語です。
ここで引っかかるのが頭の di ですよね。dioxide(二酸化炭素の「二」)、dilemma(2つの選択肢に挟まれる)、dioxin・・・たしかに「2」を表す di はあります。でも dividend の di は、そちらではありません。
正体は dis(離れて・バラバラに)。dis は、後ろに v や d などの濁る音が来ると s が落ちて di の形になります。dis-appear(消える)の dis と、同じものなんです。
※ 正確には、dioxide の di はギリシャ語 dis「2度」から来た接頭辞で、dividend の di(ラテン語 dis)とはまったく別ルートです。ただし、はるか上流では両者が遠い親戚にあたるという見方もあります(くわしくは記事末の語源メモで)。
覚え方のヒント:dis-appear の dis が、v の前で身軽になって di になった・・・と思い出してください。「2つに」ではなく「バラバラに」です。
dividend の基本の意味と使い方
dividend は名詞で、大きく3つの顔を持っています。
① 配当、配当金(ビジネス・投資)
- an annual dividend(年1回の配当)
- a dividend of 50 yen per share(1株あたり50円の配当)
- The company raised its dividend.(その会社は配当を増やした)
② 割られる数(算数)
12 ÷ 3 = 4 のとき、12 が dividend、3 が divisor、4 が quotient です。「分けられる側の数」と覚えればそのままです。
③ 成果、見返り(比喩)
これが実は日常でいちばんよく使われます。
- pay dividends(後になって効いてくる、実を結ぶ)
- Your daily practice will pay dividends.(毎日の練習は、いつか必ず報われます)
「あとで分け前が返ってくる」というイメージから、努力や投資が後から成果になって戻ってくることを表します。会話でもビジネス文書でも頻出の言い回しです。
ニュースで見かける組み合わせ
- peace dividend(平和の配当)・・・戦争や冷戦の終結で軍事費が減り、その分を他に回せるようになること。1968年の経済誌が広めた言い方です。
- demographic dividend(人口ボーナス)・・・働き盛りの人口が多い時期に経済が伸びやすくなること。
使い分け・対比|dividend と divisor、配当と利息
まず算数の2語。どちらも divid- の仲間ですが、立場が正反対です。
| 単語 | 立場 | 覚え方 |
|---|---|---|
| dividend | 割られる数 | -end =「分けられる側」 |
| divisor | 割る数 | -or =「分ける側(する人・もの)」 |
-end は受け身、-or は行為者。この対応は legend(読まれるべきもの)、agenda(なされるべきこと)にも同じ形で出てきます。
次にビジネスでの対比。日本語だと「配当」も「利息」もお金が入ってくる点で似て見えますが、英語では考え方がはっきり違います。
- dividend ・・・ 会社の利益を切り分けてもらうもの。利益が出なければ出ないこともある
- interest ・・・ 貸したお金に対して付くもの。業績とは切り離されている
dividend が「分けられるべきもの」という語源であることを知っていると、この違いが腑に落ちます。
関連語ネットワーク|「バラバラに分ける」でつながる単語
dividend の意味の中心は dividere(分ける)。ここを押さえると、見た目がまったく違う単語が一気につながります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| divide | 分ける、割る | dis(離れて)+vid(分ける) |
| division | 分割、部門、割り算 | 分けること、分けられた一区画 |
| individual | 個人の、個人 | in(否定)+dividuus(分けられる)=これ以上分けられない |
| individualism | 個人主義 | individual + -ism |
| divisible | 分けられる | divis- + -ible |
| divisive | 分断を招く | 人を分けてしまう性質 |
| divisor | 割る数 | 分ける側のもの |
| device | 装置、機器 | 「分け方・段取り」→「工夫」→「仕掛け」 |
| devise | 考案する | 分けて配置する=計画を練る |
| divvy | 山分けする(口語) | dividend を短くした俗語 |
individual(個人) は、この一族でいちばん哲学的な顔をしています。in(否定)+ dividuus(分けられる)で「これ以上は分けられないもの」。社会を細かく割っていって、最後に残る単位・・・それが個人だ、という発想が、単語そのものに刻まれています。
device(デバイス) の道のりも面白いところです。もとは「どう分けるか=段取り・工夫」で、そこから「工夫して作ったもの」へ、さらに「仕掛け・装置」へ。スマホやタブレットを指す今の使い方は、かなり最近に定着したものです。
関連語ネットワーク②|di が付いているのに仲間ではない単語
ここは中級以上の方への寄り道です。di(dis = 離れて)という頭は共通でも、後ろの語根が違えば別の一族になります。綴りが似ているのに意味が噛み合わない語は、たいていここが原因です。
| 単語 | 分解 | 後半の正体 |
|---|---|---|
| divide / dividend | di + vid | 分ける |
| diverse / divert / divorce | di + vert | vertere(回る・向きを変える) |
| differ / different | di + fer | ferre(運ぶ) |
| digest | di + gest | gerere(運ぶ・行う) |
| dilute | di + lute | luere(洗う) |
diverse(多様な)と divide(分ける)は、別の一族です。意味が近いので同じに見えますが、diverse は「別々の方向を向いている」で、回るほうの vert。ここを混ぜないでおくと、あとで効いてきます。
一方で、dioxide や dilemma の di はそもそもギリシャ語由来で、この表の仲間ですらありません。
見分け方の目安:di の後ろを見る。vid なら「分ける」、vert なら「向きを変える」、fer なら「運ぶ」。頭ではなく、後半で判断します。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| dividend | 名詞 | 配当、配当金、割られる数、成果 | ディビデンド /ˈdɪvɪdend/ |
| dividend yield | 名詞句 | 配当利回り | ― |
| dividend payout | 名詞句 | 配当性向、配当支払い | ― |
| ex-dividend | 形容詞 | 配当落ちの | ― |
| divide | 動詞・名詞 | 分ける、割る/隔たり | ディバイド /dɪˈvaɪd/ |
| division | 名詞 | 分割、部門、割り算 | ディビジョン /dɪˈvɪʒən/ |
| divisible | 形容詞 | 分けられる | /dɪˈvɪzəbl/ |
| divisor | 名詞 | 割る数 | /dɪˈvaɪzər/ |
TOEIC・英検での傾向
dividend は、TOEIC で確実に出会う一語です。Part 7 の決算発表・株主向け通知・ビジネス記事で、次のような形で現れます。
- declare a dividend(配当を発表する)
- pay a quarterly dividend(四半期配当を支払う)
- dividend yield(配当利回り)
- the dividend payout ratio(配当性向)
正直に言うと、配当そのものの知識が問われることはほとんどありません。問われるのは「この文書が何の知らせか」を読み取る力なので、dividend を見た瞬間に「株主にお金を配る話だ」と判断できれば十分です。
それ以上に実用的なのが pay dividends(後で効いてくる) の比喩用法。こちらはスピーキングやライティングで自分から使えると、ぐっと大人びた英語になります。英検でも準1級以上の長文で見かけます。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- The company paid a dividend to its shareholders.
- A dividend is simply the part that is meant to be shared.
- Your patience will pay dividends someday.
- In math, the dividend is the number that is divided.
- She reinvested her dividend into the same fund.
- You can receive a dividend without selling your shares.
- The board decided to raise the dividend this year.
- Learning a language pays dividends for the rest of your life.
- Small daily effort quietly pays a dividend.
- Kindness often comes back to you as an unexpected dividend.
語源メモ|「分けられるべきもの」という形
dividend は、ラテン語 dividendum「分けられるべきもの」に由来します。これは動詞 dividere(分ける)の動形容詞(gerundive)の中性形で、ラテン語のこの形は「〜されるべき」という義務・必然を表します。
単に「分けられたもの」ではなく、「分けられることになっているもの」というニュアンスが、もともと入っているわけです。
dividere の内部は dis(離れて)の同化形 + -videre(分ける)。後半の -videre は、de Vaan によれば印欧祖語 (d)uid-「分ける・区別する」にさかのぼり、サンスクリットの avidhat「割り当てた」などと同族とされます。この語根はもともと頭の *d- を持っていたものの、次に来る歯音の前で脱落し、ラテン語ではその分を dis- で補強した・・・という説明です。
ここが要注意:-videre は「見る」の videre(video・vision・evident の仲間)とは別物です。綴りが同じなので紛らわしいのですが、dividend に「見る」の意味は一切入っていません。
英語に入ってからの歩みも、きれいに段階が追えます。
- 15世紀初め・・・ divident「仕切りになるもの」
- 1500年ごろ・・・「分けること」
- 15世紀後半・・・「分けられる取り分」
- 1620年代・・・「等分されるべき金額」、そこから「ローンや株式から受け取る取り分」へ
- 1540年代・・・ 数学の「割られる数」(フランス語 dividende から直接入った可能性あり)
つまり 配当という意味は、語源の「分けられるべきもの」から一歩も離れていません。意味が大きくねじれる単語が多いなかで、これはかなり素直な部類です。
接頭辞 di の整理
- di(ギリシャ語由来) ・・・「2・二重の」。dioxide、dilemma、diatomic など。dis「2度」が縮んだ形で、duo や bi- と同族
- di(ラテン語由来) ・・・「離れて・バラバラに」。dis- が有声子音の前で s を落とした形。divide、dividend、divert、differ など
同じ綴りでも別ルートです。ただ、ややこしいことに、ラテン語 dis- の印欧祖語形は *dwis- の二次形とされ、bis(2度)や duo とも関係があると考えられています。「2つに分かれる」→「バラバラに」という発想のつながりですね。
ですから厳密には、「di は2とまったく無関係」ではなく、**「ずっと上流まで遡れば遠い親戚かもしれないが、dividend の di が直接『2』を意味しているわけではない」**というのが正確なところです。
おまけ① device の1996年
device は1300年ごろに「意図・計画・意匠」として英語に入り、1400年ごろには「機械仕掛け」(クランク付きの大型クロスボウなど)を指すようになりました。そして、私たちがいちばんよく使う「携帯型の電子機器・コンピュータ機器」という語義が定着したのは、1996年ごろからとされています。スマホより前、パソコンが各家庭に入り始めた時期です。device という単語そのものは700年前からあるのに、「デバイス」としての顔はごく最近のものなんですね。
おまけ② individual の遅咲き
individual は15世紀初めに「一つで分かちがたい」という意味で登場しますが、これは三位一体を説明するための神学用語でした。「個々の、ひとつひとつの」という今の意味が出てくるのは1610年代、「ひとりの人間」という名詞用法は1640年代です。
individualism(個人主義)に至っては1815年で、社会思想の名前として使われるのは1851年の J.S. ミルの著作から。「個人」という考え方そのものが、言葉としては意外に新しいことがわかります。
おまけ③ divvy
「山分けする」という口語の divvy は、1865年に名詞として、1877年にアメリカ英語の動詞として記録された、dividend の俗語的な短縮形です。Let’s divvy it up.(山分けしよう)という形で今も使われています。
留保:widow(未亡人)が dividend と同じ語根から来ているという説明を見かけることがあります。widow の語根は「分ける・引き離す」と説明されており、ラテン語 viduus(失った・欠けた)とつながるのは確かですが、dividere の -videre と同一の語根と断定できるかは辞書によって扱いが分かれます。面白い説ではありますが、ここでは確定した話としては扱いません。
まとめ
dividend は、di(dis = 離れて)+ vid(分ける)+ end(〜されるべきもの)で 「分けられるべきもの」。それがそのまま配当金であり、割られる数であり、後から返ってくる成果です。
- di ・・・「2」ではなく dis(離れて・バラバラに)。dis-appear の dis と同じ
- vid ・・・ 分ける。「見る」の videre とは別物
- -end ・・・〜されるべきもの。divisor(分ける側)と対になる
- 一族は divide/division/individual/device/divisor/divisible へ
頭の2文字に引っかかったままだと、この単語はずっと暗記対象のままです。di を「バラバラに」と読み替えた瞬間に、10語以上がまとめて自分のものになります。

- 語源・中心:di(dis = 離れて)+ vid(分ける)+ end(されるべきもの)=「分けられるべきもの」
- 覚え方のヒント:di は「2」ではなく、dis-appear の dis。後ろの vid が「分ける」
- vid(分ける)一族:divide/division/individual/device/devise/divisor/divisible/divisive
- 別ルートの注意:dioxide の di(ギリシャ語「2」)/diverse・divert の vert(回る)
TSL(TOEIC Service List)・BSL(Business Service List)収録語
この単語は TSL(TOEIC) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。ビジネスでもTOEICでも頻出する、汎用性の高い一語です。
出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答
- その会社は株主に配当を支払った。
- 配当とは、つまり「分けることになっている取り分」のことだ。
- あなたのその粘り強さは、いつかきっと実を結ぶ。
- 算数では、dividend は割られる側の数を指す。
- 彼女は受け取った配当を、同じファンドに再投資した。
- 株を手放さなくても、配当は受け取れる。
- 取締役会は、今年の配当を引き上げることを決めた。
- 語学の勉強は、その後の人生ずっと見返りを返してくれる。
- 毎日の小さな積み重ねは、静かに実を結んでいく。
- 人に向けたやさしさは、思いがけない形で自分に返ってくることが多い。


