「サステナブル」。食品トレーの表示でも、企業のCSRページでも、もう当たり前のように見かける言葉です。すっかり「環境にやさしい」の言い換えとして定着しました。
ところが、同じ単語がもう一つ、まったく別の場所で日本語になっています。ギターの「サステイン」。弦をはじいたあと、音がどれだけ長く伸びて消えずにいるか、という意味で使われます。
ピアノの右ペダルも「サステインペダル」。シンセサイザーやDTMをいじったことがある方なら、ADSR(アタック・ディケイ・サステイン・リリース)の3番目でおなじみのはずです。
カタカナの上では「サステナブル」と「サステイン」は別の単語の顔をしています。でも綴りを並べると sustainable と sustain・・・同じ一語です。しかも、音楽側のほうが先に日本語に入っていました。
ここを押さえると、sustainable の意味の中心がはっきり見えてきます。「環境にやさしい」ではないんです。
sustainable を分解してイメージで覚える
パーツで見ると、こうなります。
sus(sub=下から)+ tain(tenere=持つ・保つ)+ able(〜できる)
つなげると「下から支えて、持ちこたえさせられる」。
ギターの音を思い浮かべてください。はじいた瞬間がいちばん大きくて、ふつうはすぐ消えます。でも何かが下から支えていれば、音は一定の高さのまま伸び続ける。その「支えて保たせる」が sustain です。
sustainable は、そこに able(〜できる)がついた形。つまり「その状態を保ち続けられる」。環境の話でなくても使えます。残業づけの働き方に This isn’t sustainable. と言えば、「このやり方は続かない」という意味になります。
ちなみに頭の sub(下から)は、後ろの音に引っぱられて形を変えることがあり、sus- になるのがこのタイプ。suspend(吊るす)・suspect(疑う)も同じ sus- の仲間で、どれも sub が顔つきを変えたものです。
「サステナブル」と「サステイン」は、同じ一語
音楽の sustain は、思いつきの流用ではありません。
英語の sustained が「一様に保たれた」という意味で記録に出てくるのは1775年で、もともと音符について言った言葉でした。ピアノの sustaining pedal(サステインペダル)という呼び名は1889年から。
音を「下から支えて保たせる装置」だから、この名前なんですね。
シンセサイザーのADSRも同じ発想です。1965年、ロバート・ムーグがコロンビア・プリンストン電子音楽センターのウラジミール・ウサチェフスキーとやりとりする中で生まれたエンベロープの考え方が、のちにARP社の手でアタック・ディケイ・サステイン・リリースという形に整理されました。ここでの sustain は「鍵盤を押している間、保たれている音量」。やはり「保つ」です。
もう一つ、音楽つながりで面白い親戚がいます。tenor(テノール)。これも tenere(持つ)から来ていて、中世の多声音楽で主旋律を「保持する」声部を指しました。英語の語源辞典は、この声部の役割をまさに「保たれた旋律(sustained melody)」と説明しています。保ち続ける声だから、テノール。
サステナブル、サステイン、テノール。日本語の中ではまったく別のジャンルに散らばっている3語が、「持ち続ける」という一点でつながっています。
sustainable の基本の意味と使い方
sustainable は「(ある状態を)続けられる、維持できる」を表す形容詞です。
- sustainable development(持続可能な開発)
- sustainable energy(持続可能なエネルギー)
- sustainable growth(持続可能な成長)
- a sustainable pace(無理なく続けられるペース)
環境の文脈で見かけることが圧倒的に多いので「エコな」と覚えてしまいがちですが、中心にあるのは「続けられる/もちこたえる」です。だから働き方にも、予算にも、人間関係にも使えます。
動詞 sustain のほうは、顔がもう少し多い単語です。
- 支える・維持する:The beams sustain the roof.(梁が屋根を支えている)
- 続ける:She sustained her effort for ten years.(彼女は10年間、努力を続けた)
- (損害・けがを)被る:He sustained a minor injury.(彼は軽傷を負った)
- (異議を)認める:法廷で “Objection sustained.”(異議を認めます)
3番目の「被る」は日本語の感覚から遠く見えますが、「打撃を下から受け止める」と考えると筋が通ります。TOEICのニュース記事風の長文では、sustain damage(損害を受ける)の形でよく出てきます。
使い分け|sustainable / sustained / sustaining / sustenance
形が似ていて、混ざりやすい4語です。
| 語 | 意味の中心 | 例 |
|---|---|---|
| sustainable | 続けられる(可能性) | a sustainable business model |
| sustained | 一定に保たれた(結果) | sustained growth/sustained effort |
| sustaining | 支えている(働き) | self-sustaining community |
| sustenance | 命をつなぐもの(食べ物・栄養) | food and sustenance |
sustained growth と sustainable growth は、日本語にするとどちらも「持続的な成長」になりがちですが、前者は「実際に続いてきた成長」、後者は「この先も続けられる成長」。時間の向きが逆です。
sustenance(サステナンス)だけ少し遠く見えますが、これは sustain のいちばん古い意味をそのまま残した単語。英語の sustain は13世紀末、「生きるのに必要なものを与える」という意味で入ってきました。食べ物こそ、人を下から支えるものだったわけです。
tain(tenere=持つ)でつながる単語ネットワーク
sustainable の意味の中心 tain は、ラテン語 tenere(持つ・保つ)。英語の中で、ものすごく大きな家族を作っています。まずは見た目で分かる「-tain 動詞」から。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| contain | 含む、抑える | con(一緒に)+tain=まとめて持っている |
| maintain | 維持する、主張する | manu(手で)+tain=手に持ち続ける |
| obtain | 手に入れる | ob(〜に向かって)+tain=つかみ取る |
| retain | 保持する | re(後ろに)+tain=手元に持ったままにする |
| detain | 引き止める、拘留する | de(離して)+tain=行かせずに持っておく |
| abstain | 控える、棄権する | abs(離れて)+tain=自分を引き離して持つ |
| entertain | もてなす、楽しませる | enter(間に)+tain=人を間に引き止めておく |
| pertain | 関係する | per(通して)+tain=つながって保たれている |
| sustain | 支える、維持する | sus(下から)+tain=下から持ち上げ続ける |
maintain が「手で(manu)持ち続ける」だと知ると、「メンテナンス」が点検ではなく「手をかけて保ち続けること」だと腑に落ちます。entertain の「間に引き止めておく」も、お客を帰さずに場に留める、と考えると納得のいく形です。
注意点:attain は仲間ではありません。 綴りは -tain ですが、こちらは ad+tangere(触れる)で、contact・tangible と同じ「触れる」の一族。「手を伸ばして触れるところまで到達する」が原義です。見た目にだまされやすい一語なので、ここだけ切り分けておいてください。
ten で姿を変えた一族|tenant から tennis まで
tenere は -tain の形だけでなく、ten- のまま英語に入ったものもたくさんあります。こちらは見た目でつながりに気づきにくい分、知っておくと得をします。
| 単語 | 意味 | 語源 |
|---|---|---|
| tenant | 借主、テナント | 土地や部屋を「持っている」人 |
| tenure | 在職権、保有期間 | 持ち続けている状態(大学の終身在職権もこれ) |
| tenacious | 粘り強い | しっかり握って離さない |
| tenet | 信条 | 「彼は〜を保持する」というラテン語の一語がそのまま名詞に |
| tenable | 擁護できる、維持できる | 持ちこたえられる |
| tenor | テノール、大意 | 主旋律を保持する声部/話の筋を保っているもの |
| continue | 続く | 途切れずに保たれる |
| content | 中身/満足した | 中に保たれているもの/自分の中が満たされて保たれている |
| continent | 大陸/自制心のある | 切れ目なく保たれた陸地/自分を保っている |
| lieutenant | 中尉、代理 | lieu(場所)+tenant=人の場所を「持つ」代理人 |
| tennis | テニス | 古フランス語 tenez「取って!」(tenir の命令形)から来たとされる |
content が「中身」と「満足した」の二役をこなしているのも、continent が「大陸」と「自制心のある」という遠く離れた二つの意味を持っているのも、どちらも「保つ」という一点で説明がつきます。大陸は「途切れずに保たれた陸地」、自制心は「自分を保っていること」。同じ絵の別角度です。
テニスについては、サーブする人が相手に「取って!」と声をかけたのが名前になった、という説明が語源辞典に載っています。中世のハンドボール風の球技がルーツなので、声をかけ合う競技だった名残ですね。
さらに遠い親戚:ラテン語 tenere(持つ)と tendere(伸ばす)は、どちらも印欧祖語 *ten-(伸ばす)から枝分かれした兄弟です。つまり attend・intend・extend・tend・tension・tent(テント=張るもの)・tone まで、遠くでつながっています。「ぴんと張る」から「張ったまま保つ」へ、という流れですね。tendere 側の広がりは intend の記事で詳しく扱っているので、そちらもどうぞ。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| sustainable | 形容詞 | 持続可能な、続けられる | サステイナブル /səˈsteɪnəbl/ |
| sustainability | 名詞 | 持続可能性 | サステイナビリティ /səˌsteɪnəˈbɪləti/ |
| sustainably | 副詞 | 持続可能な形で | サステイナブリー /səˈsteɪnəbli/ |
| unsustainable | 形容詞 | 続けられない | アンサステイナブル /ˌʌnsəˈsteɪnəbl/ |
| sustain | 動詞 | 支える、維持する、被る | サステイン /səˈsteɪn/ |
| sustained | 形容詞 | 一定に保たれた、継続的な | サステインド /səˈsteɪnd/ |
| self-sustaining | 形容詞 | 自立した、自給できる | セルフサステイニング |
| sustenance | 名詞 | 食べ物、栄養、支え | サステナンス /ˈsʌstənəns/ |
発音でひとつだけ。日本語では「サステナブル」と書かれることが多いのですが、英語の音は「サステイナブル」。真ん中の tain は /teɪn/ で、はっきり二重母音になります。sustenance だけが例外で、こちらは「サステナンス」。カタカナにつられて sustainable を「サステナブル」と読むと通じにくいので、ここは意識して直しておくと効きます。
なお、動詞の sustain は基礎語彙リスト NGSL にも収録されている基本語です。形容詞 sustainable とセットで覚えておくと、守備範囲が一気に広がります。
TOEIC・英検での傾向
TOEICでは、2つの方向で出ます。
ひとつは「環境・CSR」方面。sustainable development、sustainability report、sustainable packaging といった形で、企業の取り組みを紹介する記事やプレスリリースに登場します。Part 7の長文でおなじみの型ですね。
もうひとつが、意外と取りこぼしやすい動詞の sustain。sustain damage(損害を被る)、sustain an injury(けがを負う)の形で、事故や設備トラブルの記事に出てきます。「支える」だけで覚えていると、ここで止まります。sustainは支える側にも、受ける側にも立つと押さえておいてください。
英検では準1級あたりから。環境や社会問題のテーマが増える級なので、sustainability とセットで出会う確率が高い一語です。ライティングでも使い勝手がよく、「この政策は長続きしない」を This policy is not sustainable. と書けると、表現が一段引き締まります。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- This pace is not sustainable for a whole year.
- You can sustain your effort if you keep it small.
- The company chose a sustainable way to grow.
- A good habit is one you can sustain on a bad day.
- Her quiet kindness sustained me through that winter.
- They are looking for sustainable packaging.
- You don’t need a big push; you need a sustainable one.
- The bridge can sustain a heavy load.
- Sustainable growth is slower, but it lasts.
- What sustains you when the work gets hard?
語源メモ
sustain は、ラテン語 sustinere(下から支える、持ちこたえる)に由来します。分けると、sub(下から上へ)の同化形 sus- と、「持つ」を表す動詞 tenere。古フランス語 sostenir / sustenir を経て、13世紀末の英語に入りました。
英語に入ってからの意味の順番が、なかなか面白いことになっています。
- 13世紀末・・・生きるのに必要なものを与える(= sustenance の意味)
- 14世紀初め・・・支える、倒れないようにする/続ける、保つ
- 1400年ごろ・・・(痛みや苦難に)屈せず耐える
- 15世紀初め・・・(法律で)正当と認める/(損失を)被る
そして形容詞の sustainable は、さらに後から枝分かれしていきます。
- 1610年代・・・「耐えられる」(この意味は今では使われません)
- 1845年・・・「擁護できる、主張として成り立つ」
- 1965年・・・「一定の水準で続けられる」。sustainable growth という言い回しもこの年から記録されています
名詞の sustainability にいたっては、初出が1907年で、しかも法律の文脈(異議が維持できるかどうか)。経済の分野で使われ始めたのが1972年、自然保護・環境保護の文脈に広がったのが1979年ごろとされています。
つまり、私たちが「サステナブル=環境」と思っているあの意味は、この単語の700年を超える歴史の中で、いちばん新しい薄い層なんです。決定打になったのは、1987年に国連の環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)が出した報告書『Our Common Future』。「将来の世代が自分たちのニーズを満たす力を損なわずに、現在のニーズを満たす開発」という定義が広く引用され、ここから sustainable development が世界の共通語になりました。
偶然ですが、「一定の水準で保たれる」という意味での sustainable が記録に現れた1965年は、ムーグとウサチェフスキーのやりとりからシンセサイザーのエンベロープが形になっていく時期とちょうど重なります。語源のつながりはありませんが、同じころに「保ち続ける」という感覚が、環境と音楽の両方で言葉になっていったのは、少し出来すぎた話ではあります。
まとめ
sustainable は、sus(下から)+ tain(tenere=持つ)+ able で「下から支えて、保ち続けられる」。
- sus(sub)・・・下から。suspend/suspect と同じ sus-
- tain(tenere)・・・持つ・保つ。contain/maintain/obtain/retain などの大家族へ
- ten の形・・・tenant/tenure/tenacious/tenor/continue/content/lieutenant/tennis
- 注意・・・attain だけは別語源(tangere=触れる)
ギターのサステインも、テノールも、サステナブルも、やっていることは同じです。消えそうなものを、下から支えて保ち続ける。環境の話に限らず、自分の働き方や習慣に対しても使える、よくできた一語だと思います。

- 語源・中心:sus(下から)+ tain(tenere=持つ)+ able =「下から支えて保ち続けられる」
- 覚え方のヒント:ギター・ピアノの「サステイン」=音を保ち続ける力
- -tain 一族:contain/maintain/obtain/retain/detain/abstain/entertain/pertain
- ten 一族:tenant/tenure/tenacious/tenet/tenor/continue/content/lieutenant/tennis
NAWL(New Academic Word List)・BSL(Business Service List)収録語
この単語は NAWL(学術) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。学術英語でもビジネスでも頻出する、汎用性の高い一語です。
出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答
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- 必要なのは、大きなひと押しではなく、続けられるひと押しだ。
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- 続けられる成長はゆっくりだが、長く続く。
- 仕事がきつくなったとき、あなたを支えてくれるものは何ですか。


