「バリュー(value)」は、もうすっかり日本語ですよね。バリューセット、バリューチェーン、コスパならぬバリュー重視・・・。
その value と、equivalence(同等・等価)が同じ一族だと言われたら、どうでしょうか。equivalence を見たときに真っ先に目に入るのは、たいてい頭の equi(=equal、同じ) のほうだと思います。でも、この単語の本当の仕掛けは後半にあります。
val。これが value と同じ「価値がある・強い」です。
equi(同じ)+ val(価値がある)。つまり equivalence とは、「同じだけの価値を持っていること」。
形や見た目が違っても、はかりに乗せたら釣り合う・・・それが equivalence です。ここが腑に落ちると、value・valid・available・prevail といった、一見バラバラな単語が一本の線でつながります。
equivalence を分解してイメージで覚える
equivalence をパーツで見ると、こうなります。
equi(aequus=同じ・水平な)+ val(valere=価値がある・強い)+ ence(〜であること)
絵にすると、天秤です。左の皿と右の皿に、形も素材も違うものが載っている。それでも棒は水平(equi)に止まっている。なぜなら、両方が同じだけの重み=価値(val)を持っているから。
この「形は違うのに、価値が釣り合う」という感覚が、equivalence のど真ん中にあります。
後半の val を value(価値)と重ねて覚えてください。value・valid・valuable・available・・・すべて同じ「価値がある・強い」の仲間です。equivalence は、その一族の入り口にもなっている単語です。
なお、発音のアクセントは2音節目に来ます。イクィヴァレンス /ɪˈkwɪvələns/。頭に力を入れて「エクイ・・・」と読みたくなりますが、強く読むのは quiv の部分です。
equivalence の基本の意味と使い方
equivalence は「同等であること」「等価」を表す名詞です。形容詞の equivalent(同等の)とセットで覚えると早いです。
- the equivalence of the two methods(その2つの方法が同等であること)
- There is no exact equivalence between the two words.(その2語に、完全に対応する関係はない)
- high school equivalency(高卒同等資格/アメリカでよく使う形)
使う場面は、数学・論理学・翻訳・学歴認定・ビジネス契約など、「別物だけど、同じ扱いにしてよい」と判断するところ全般です。
動詞まわりでいちばんよく見るのは、形容詞の形です。
- be equivalent to 〜(〜に相当する)
- One dollar is equivalent to about 150 yen.(1ドルは約150円に相当する)
equivalence と equality|似ているようで、見ているものが違う
ここが、この単語でいちばん押さえておきたいところです。どちらも日本語にすると「同じ」になりますが、はかっているものが違います。
| 単語 | 語源の中心 | はかっているもの |
|---|---|---|
| equality | aequus(水平・平ら) | 量や程度が同じ |
| equivalence | aequus+valere(価値) | 価値や効果が同じ |
equality は「数が同じ」「扱いが平等」。equivalence は「形は違うが、価値として釣り合う」。
たとえば、1000円札1枚と100円玉10枚。見た目も枚数も違うので equality ではありませんが、価値は同じなので equivalence です。翻訳で「原文と訳文が equivalent である」と言うときも、単語数が同じという意味ではなく、読んだ人に届く効果が釣り合っている、という意味で使います。
この違いが、equivalence に val(価値)が入っている理由そのものです。
val(価値がある・強い)でつながる単語ネットワーク
equivalence の後半 val(ラテン語 valere=強い・健康である・価値がある)を知っておくと、まったく別ジャンルに見える単語が一気につながります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| value | 価値 | valere そのもの |
| valid | 有効な、妥当な | validus=強い。強いから通用する |
| invalid | 無効な/病弱な | in(否定)+valid |
| evaluate | 評価する | ex(外へ)+value=価値を取り出す |
| available | 利用できる | avail(役に立つ)+able=価値を発揮できる |
| prevail | 勝る、広く行き渡る | prae(前に)+valere=人より強い |
| valor | 勇気、武勇 | 「価値」が人の資質に向かった形 |
| valiant | 勇敢な | valor と同じルート |
| convalesce | 快方に向かう | con+valescere=強くなりはじめる |
| ambivalent | 相反する感情を抱いた | ambi(両側)+valentia(強さ) |
| valence | 原子価、(心理学の)誘意性 | valentia=強さ・結びつく力 |
「val が入っていたら、たぶん強さ・価値の話」・・・そう見えるようになると、初見の単語でも見当がつきます。
とくに convalesce(快方に向かう) は、valere のもう一つの顔である「健康である」が生きている単語です。ラテン語の valere は「強い」「元気である」「価値がある」を一つの語でまかなっていました。強いことと、元気なことと、値打ちがあることが地続きだった・・・そう考えると、val の守備範囲の広さに納得がいきます。
もう一つの顔|equi(aequus=水平)の一族
一方、頭の equi(ラテン語 aequus=水平な・平らな・公平な)をたどると、「同じ・平ら」に関わる単語が並びます。
| 単語 | 意味 | 語源 |
|---|---|---|
| equal | 等しい | aequalis〈同じ〉 |
| equity | 公平、株式 | aequitas〈公平さ〉 |
| equator | 赤道 | 地球を等分する線 |
| equinox | 春分・秋分 | aequus+nox〈夜〉=昼夜が等しい日 |
| equilibrium | 均衡 | aequus+libra〈天秤〉 |
equivalence は、この「水平(equi)」と「価値(val)」という2つの家族が出会う場所に立っている単語です。天秤が水平に止まっているのは、両側の価値が釣り合っているから。語源の構造が、そのまま意味の絵になっています。
※ equi 側の広がりは、equal の記事であらためて詳しく扱います。この記事では val 側を主役にしています。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| equivalence | 名詞 | 同等であること、等価 | イクィヴァレンス /ɪˈkwɪvələns/ |
| equivalent | 形容詞・名詞 | 同等の/同等のもの | イクィヴァレント /ɪˈkwɪvələnt/ |
| equivalently | 副詞 | 同等に | ― |
| equivalency | 名詞 | 同等(equivalence の別形。アメリカでは学歴の同等資格の意味でよく使う) | ― |
TOEIC・英検での傾向
正直なところ、名詞の equivalence そのものがテストに出る頻度は、それほど高くありません。出会うのはほとんど形容詞の equivalent のほうです。
TOEIC では Part 5・Part 7 で be equivalent to 〜(〜に相当する)の形がよく登場します。金額・数量・役職・資格などを言い換える場面で使われるので、ビジネス文書を読むときに知っていると助かる一語です。英検なら準1級以上の語彙レベル。
ただし、この記事の価値はテスト対策よりも先にあります。val という語根を一度押さえておけば、value・valid・available・evaluate・prevail という高頻度語がまとめて手に入ります。equivalence 単体よりも、その入り口としての値打ちのほうが大きい単語です。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- There is no exact equivalence between these two words.
- Our teacher explained the equivalence of the two fractions.
- Your past work has a clear equivalence to this new role.
- The university granted equivalence for her overseas credits.
- In math, equivalence means both sides carry the same value.
- Do not expect perfect equivalence between two languages.
- Equivalence is about value, not about shape.
- If you look closely, you will see the equivalence hidden in the numbers.
- Her patience and his kindness have a quiet equivalence.
- Finding that equivalence will make the whole problem easier for you.
語源メモ|aequus と valere が出会った言葉
equivalence は1540年代の英語に、フランス語 équivalence から入りました。さかのぼると中世ラテン語 aequivalentia、さらに後期ラテン語 aequivalentem(equivalent の語源)にたどり着きます。
その aequivalentem は、動詞 aequivalere(同等である)の現在分詞。分けると aequus(同じ・水平な)+ valere(強い・元気である・価値がある) です。形容詞 equivalent のほうが先に英語に入っていて、15世紀初め。名詞の equivalence はそれより1世紀以上あとに加わりました(別形の equivalency は1530年代)。
valere の広がり
valere は、印欧祖語の語根 *wal-(強くある) から来ています。この語根の子孫は、ラテン語経由の単語だけにとどまりません。
- 古英語 wealdan(支配する)・・・現代英語の wield(振るう・行使する)
- 古代教会スラヴ語 vlasti(支配する)
- ケルト語 *walos-(支配者)、古アイルランド語 flaith(支配)
「強い」が「支配する」に転じるのは、言われてみれば自然な流れです。なお etymonline は、Donald・Harold・Gerald・Walter・Vladimir といった人名もこの語根に属する可能性があるとしています。ただし人名の語源は推定を含むため、ここでは「そう考えられている」というところまでにとどめます。
バレンタインの「バレン」も、この val
もう一つ、日本でもおなじみの単語がこの一族にいます。Valentine。後期ラテン語の人名 Valentinus から来ていて、その元はラテン語 valentia(強さ・力量)。valentia は valens(強い)の名詞形で、valens は valere の現在分詞です。
つまりバレンタインは、もともと「強い人」という意味の名前でした。恋愛とは何の関係もありません。2月14日と恋愛が結びついたのは14世紀のイギリスとフランスの宮廷の習慣からで、聖人そのものに恋愛的な逸話があったわけではない・・・etymonline はそう記しています。
【語源で覚える】valuation|「バレンタイン」や「valid」と同じ「強さ」から生まれた査定・企業価値の言葉

【語源で覚える】valid|バリュー・バレンタインと同じ “val” は「強い」

また、別れのあいさつにも val がいます
valediction(告別のことば)は1610年代。ラテン語 valedicere(別れを告げる)から来ていて、分けると vale + dicere(言う)。この vale は valere の二人称単数命令形で、意味は「お達者で」。
つまりローマ人の別れのあいさつは、「さようなら」ではなく「強くあれ・元気でいろ」でした。アメリカの卒業式で総代を務める学生を valedictorian と呼ぶのは、この vale(お達者で)を述べる役だからです。
まぎらわしい単語2つ
最後に、混同しやすいものを整理しておきます。
- equivocal(あいまいな) は equivalence の仲間ではありません。こちらは aequus + vox / vocare(声・呼ぶ) で、「同じ重みの声が2つある」から「どちらとも取れる」。前半は共通ですが、後半が valere ではなく vox です。voice・vocal と同じ一族だと覚えてください。
- vale(谷) も別物です。こちらはラテン語 vallis(谷)由来で、valley と同じルート。「お達者で」の vale とは綴りが同じだけの他人です。
なお、前半の aequus そのものの語源は、etymonline も「不明」としています。ラテン語より前はたどれていない、ということです。語源をさかのぼる旅は、どこかで必ず行き止まりに出会います。
まとめ
equivalence は、equi(aequus=同じ・水平)+ val(valere=価値がある・強い)+ ence で「同じだけの価値を持っていること」=同等・等価。
- val(valere)・・・価値がある・強い。value/valid/available/prevail/evaluate の一族へ
- equi(aequus)・・・同じ・水平。equal/equity/equator/equinox の一族へ
- equivalence は、その2つが出会う天秤の上に立っている
equality が「量が同じ」なら、equivalence は「価値が釣り合う」。形が違っても、重みは同じ・・・そう考えられるようになると、英語も、そして人の見方も、少しだけ広くなります。

- 語源・中心:equi(aequus=同じ)+ val(valere=価値がある)+ ence =「同じだけの価値を持つこと」
- 覚え方のヒント:val → value(バリュー)。形は違っても、価値が釣り合う天秤
- val(価値・強い)一族:value/valid/available/evaluate/prevail/valor/convalesce/ambivalent
- equi(同じ・水平)一族:equal/equity/equator/equinox/equilibrium
NAWL(New Academic Word List)収録語
この単語は New Academic Word List(NAWL) に集録されています。NAWLは大規模な学術コーパスから抽出された960語のリストで、これらを覚えるだけで学術英語の約92%をカバーできます。論文や英字ニュースを読むとき、必ず出会う一語です。出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答
- この2つの単語に、きっちり対応する関係はない。
- 先生は、その2つの分数が同じ値であることを説明してくれた。
- あなたのこれまでの仕事は、この新しい役割とはっきり重なっている。
- 大学は、彼女が海外で取った単位を同等のものとして認めた。
- 数学では、equivalence は両辺が同じ値を持つことを意味する。
- 2つの言語のあいだに、完全な一致を求めないでいい。
- 等価とは、価値の話であって、形の話ではない。
- よく見てみれば、数字の中に隠れた等価関係が見えてくる。
- 彼女の忍耐と彼の優しさは、静かに釣り合っている。
- その等価関係に気づけば、問題全体がぐっと解きやすくなる。

