アドセンス、アドネットワーク、アドブロック。ネットを使っていると、「アド」という言葉によく出会います。この「アド」は、英語の ad、つまり advertisement(広告)を短くした形です。
少し懐かしいところでは、デパートの屋上に浮かんでいた「アドバルーン」の「アド」も同じです。空に大きな気球が上がっていると、道行く人はつい顔を上げてしまいますよね。
実は、この「思わず見上げる」という動きこそが、advertise(宣伝する)の語源そのものです。広告の「アド」をほどいていくと、中から vert(回す・向ける) が出てきます。人の顔を、こちらへぐるりと振り向かせる。宣伝とは、もともとそういう言葉でした。
※ この記事は、vertical(バーティカル)の記事と同じ vert 一族の一本です。vertical が「渦巻くてっぺんから、まっすぐ上下へ」の話なら、こちらは「人の注意をこちらへ向ける」の話です。
advertise を分解してイメージで覚える|”vert” が人を振り向かせる
advertise をパーツで見ると、こうなります。
ad(〜の方へ)+ vert(回す・向ける)+ ise
- ad・・・「〜の方へ」。こちらに向かう方向を表します
- vert・・・「回す・向ける」。vertical、convert、reverse と同じ仲間です
合わせると、「(人の注意を)こちらの方へ向ける」。
イメージは、街を歩いている人の肩を、そっとこちらへ回すような感じです。「ねえ、こっちを見て」。気づいてもらうために、相手の顔をこちらへ振り向かせる。それが advertise です。
アドバルーンは、この動きを空の上でやっていたとも言えます。見上げた瞬間、人の注意はもう広告の方を向いています。
語尾の ise には、少しだけ注意があります。「〜にする」という接尾辞に見えますが、実はフランス語から入ってきたときの語形の名残りです。くわしくは記事後半の語源メモで触れています。覚えるときは、ad + vert の二つだけで十分です。
advertise の基本の意味と使い方
advertise は「宣伝する・広告する」を表す動詞です。商品やサービスだけでなく、求人やイベントの告知にも使います。
- advertise a new product(新商品を宣伝する)
- advertise a job opening(求人広告を出す)
- advertise on TV / online(テレビで/ネットで広告を出す)
名詞の形が三つあるので、使い分けも押さえておきましょう。
| 形 | 意味 | 使い方のポイント |
|---|---|---|
| advertisement | (一つひとつの)広告 | 数えられる名詞。an advertisement のように使う |
| ad | 広告(くだけた言い方) | advertisement の短縮形。会話やネットでよく使う |
| advertising | 広告(全般)、広告業 | 数えられない名詞。「広告という活動・業界」を指す |
「広告を1本見た」なら an ad / an advertisement、「広告の仕事をしている」なら I work in advertising。こう分けて覚えると迷いません。
advertise と adverse|同じ ad+vert、向きの意味が逆
姿がよく似ているのが adverse(不利な、逆の)です。実はこの二つ、同じラテン語の動詞 advertere(〜の方へ向ける)から生まれています。
- advertise・・・相手の注意を「こちらへ向けさせる」→ 宣伝する
- adverse・・・向こうが「こちらへ向かって立ちはだかる」→ 逆らう、不利な
同じ「こちらへ向く」でも、振り向いてくれるのか、立ちはだかってくるのかで、意味が正反対になります。adverse については、別の記事でくわしく扱っています(記事末の関連記事からどうぞ)。
“advert(注意を向ける)” でつながる単語ネットワーク
advertise のまわりには、「注意を向ける」という同じイメージでつながる単語が集まっています。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| advertise | 宣伝する | ad(〜へ)+vert=人の注意をこちらへ向けさせる |
| advertisement | 広告 | 人を振り向かせるための一つひとつの告知 |
| ad | 広告(略) | advertisement の短縮形 |
| advertising | 広告(全般)、広告業 | 振り向かせる活動そのもの |
| advertiser | 広告主 | 振り向かせる側の人・企業 |
| advert | 広告(主にイギリス英語) | advertisement の短縮形 |
| inadvertently | うっかり、不注意で | in(〜ない)+advert=注意が向いていない状態で |
いちばん意外なのは inadvertently(うっかり)かもしれません。「注意をこちらへ向ける」に in(〜ない)が付いて、「注意が向いていないまま」・・・つまり「うっかり」。宣伝と「うっかり」が同じ家族だと知ると、ちょっと楽しくなりますよね。
さらに広く見ると、vert は convert(変える)、reverse(逆にする)、universe(宇宙)、anniversary(記念日)などの大家族につながっています。そちらは vertical の記事でまとめています。
カタカナ語で広がる「アド」
日本語になっている「アド」も、たどればみんな advertisement です。
| カタカナ語 | 英語 | 使われ方 |
|---|---|---|
| アドセンス | AdSense | Google のネット広告サービス |
| アドネットワーク | ad network | 複数の広告枠をまとめて配信するしくみ |
| アドブロック | ad blocker | ネット広告を表示させない機能 |
| アドバルーン | (和製英語) | 広告の垂れ幕を下げて空に揚げる気球 |
※ アドバルーンは advertising balloon を略した日本生まれの言葉で、英語で ad balloon とは言いません。
※ アドバルーンには「本格的に動く前に、反応を見るために情報を小出しにする」という比喩の意味もあります。英語では float a trial balloon(観測気球を上げる)と言います。
※ テニスやカードゲームで使う「アド」は advantage(アドバンテージ)の略で、advertise とは別の単語です。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| advertise | 動詞 | 宣伝する、広告する | アドバタイズ /ˈædvərtaɪz/ |
| advertisement | 名詞 | 広告 | アドバタイズメント /ˌædvərˈtaɪzmənt/(米)、アドヴァーティスメント /ədˈvɜːtɪsmənt/(英) |
| advertising | 名詞 | 広告(全般)、広告業 | アドバタイジング /ˈædvərtaɪzɪŋ/ |
| advertiser | 名詞 | 広告主 | アドバタイザー /ˈædvərtaɪzər/ |
| ad | 名詞 | 広告(略) | アド /æd/ |
| inadvertently | 副詞 | うっかり、不注意で | イナドバーテントリー /ˌɪnədˈvɜːrtəntli/ |
advertisement は、アメリカ英語とイギリス英語でアクセントの位置が変わります。リスニングで戸惑いやすいポイントです。
TOEIC・英検での出題傾向
advertise の一族は、TOEIC ではとてもよく出会う単語です。Part 7 では、問題文が「次の広告についての設問です」という形で advertisement そのものを読ませることがあります。求人広告の advertise a position(職の募集を出す)や、advertising campaign(広告キャンペーン)、advertiser(広告主)もビジネス文書の定番です。
英検でも、準2級あたりから advertise や advertisement を見かけるようになります。動詞・名詞・広告業の advertising をセットで押さえておくと、どの形で出ても慌てずに済みます。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- The shop advertises its sale in the newspaper.
- The company advertised the job online.
- We need to advertise our new café.
- She saw the concert advertised on a poster.
- Every advertiser wants you to turn and look.
- A good product does not need loud advertising.
- You don’t have to advertise your kindness.
- Your hard work will advertise itself.
- Advertise your strengths with confidence.
- Keep doing good work; it advertises you better than words.
語源メモ|「気づく」から「宣伝する」へ
advertise は、15世紀のはじめに英語に入りました。古フランス語の advertir(知らせる・注意を向けさせる・向きを変える)を経ていて、元はラテン語 advertere(〜の方へ向ける・注意を向ける)です。advertere は、ad(〜の方へ)+ vertere(回す・向ける)でできています。
おもしろいのは、意味の移り変わりです。
- 15世紀はじめ・・・「(自分が)気づく・注意を払う」。この意味は今は使われていません
- 15世紀半ば・・・「(人に)知らせる・警告する」
- 18世紀後半・・・「商品などに人の注意を向けさせる」= 今の「宣伝する」
自分が振り向く、から、人を振り向かせる、へ。向きの主語が入れ替わって、今の advertise になりました。
語尾の ise についても整理しておきます。これは organize などに付く「〜にする」の -ize とは別もので、フランス語 advertir の活用形の語幹 advertiss- から来ています。見た目が似ているため、分解するときに間違えやすいところです。
関連語の成り立ちも見ておきましょう。
- advertisement・・・15世紀はじめは「何かに注意を向けさせる文書・公示」。新聞などに載る「(お金を払って出す)広告」の意味は1580年代からです
- ad・・・advertisement の略として、1841年から記録があります
- advertiser・・・1560年代は「知らせる人」。1712年から「公示を出す人」の意味で使われるようになりました
まとめ
advertise は、ad(〜の方へ)+ vert(回す・向ける)で「人の注意をこちらへ向けさせる」=宣伝する。
- ad + vert・・・注意をこちらへ向ける。advertisement/advertising/advertiser/ad へ
- in + advert・・・注意が向いていない。inadvertently(うっかり)へ
- 同じ advertere から・・・adverse(こちらへ立ちはだかる → 不利な)
思わず見上げたアドバルーンのように、人の顔をこちらへ振り向かせる。advertise は、そんなイメージの単語です。

- 語源・中心:ad(〜の方へ)+ vert(回す・向ける)=「人の注意をこちらへ向けさせる」
- 覚え方のヒント:アドバルーン = 思わず人が見上げる
- 注意を向ける系:advertisement/advertising/advertiser/ad/advert/inadvertently
- vert(回る・向ける)系:vertical/convert/reverse/adverse
関連記事
- vertical の語源(渦巻くてっぺんから、まっすぐ上下へ)
- anniversary と -vers でつながる adverse・diverse の記憶術 → https://isseisuzuki.org/etymology-anniversary-vers/
- anniversary の語源 → https://isseisuzuki.org/アニバーサリー/
- 【語源で覚える】convert|con は complete の “完全”、vert は universe の “回る”
- 【タイパ最強】英単語の語源・パーツ分解全リスト|語源×記憶術で芋づる式に覚える → https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/ 👇

翻訳練習の解答
- その店は、新聞でセールを宣伝している。
- その会社は、ネットで求人を出した。
- 私たちの新しいカフェを、宣伝しないといけない。
- 彼女は、ポスターでそのコンサートの告知を見た。
- どの広告主も、あなたに振り向いて見てほしいと思っている。
- よい商品に、派手な宣伝はいらない。
- あなたのやさしさは、わざわざ宣伝しなくていい。
- あなたの努力は、黙っていても自然と伝わっていく。
- 自分の強みは、自信をもってアピールしよう。
- いい仕事を続けよう。それが言葉よりも、あなたのことを伝えてくれる。
収録リスト
関連語のadvertiserは以下のリストに収録
TSL(TOEIC Service List)収録語
この単語は TOEIC Service List(TSL) に収録されています。TSLはTOEICの出題語彙を分析して作られた1,200語のリストで、これらを押さえればテストに出る語彙の約99%をカバーできます。スコアアップに直結する一語です。出典:New General Service List Project
BSL(Business Service List)収録語
この単語は Business Service List(BSL) に収録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。出典:New General Service List Project

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