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【語源で覚える】splice|split と同じ家族なのに、意味が真逆になった理由

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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ボウリングで、ピンが左右にぱっくり分かれて残る「スプリット」。喫茶店のメニューにある「バナナスプリット」。走るときの「スプリットタイム」。どれも split(裂く・分ける)です。カタカナで、もうすっかり日本語になっていますよね。

その split と、splice は同じ家族です。綴りを並べてみると、spl まで同じ。

ところが splice の意味は「つなぎ合わせる」。裂くの反対です。同じ家族なのに、まるで正反対。

この「なぜ逆になったのか」をたどると、ロープを扱う船乗りたちの手つきが見えてきます。そしてその手つきがわかった瞬間、splice は忘れられない単語になります。

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splice を分解してイメージで覚える|「ほどいて、編み直す」

splice は接頭辞や語根に分けるタイプの単語ではありません。一語まるごとで、ゲルマン系の spl-(裂く) の家族です。

覚え方の入り口は、こうです。

splice = split(裂く)の親戚。ただし「裂いたあと」まで含んだ語。

船の上を想像してみてください。二本のロープをつなぎたい。でも結び目を作ると、そこが太くなって滑車に引っかかるし、力がかかると緩みます。

そこで船乗りはどうしたか。まず、それぞれのロープの端をほどきます。より合わさった繊維を、ばらばらに裂く。そして、ばらした繊維同士を互い違いに編み込んでいく。結び目のない、一本に見えるロープができあがります。

つまり splice は、「裂く」で終わらずに「裂いて、編み直す」まで一続きの作業を指す言葉です。だから結果だけを見れば「つなぐ」。でも手の動きの出発点は、たしかに split と同じ「裂く」だったわけです。

一度ほどかないと、本当には一つにならない。splice はそういう単語です。

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splice の基本の意味と使い方

splice は「(二つのものを)つなぎ合わせる」という動詞、そして「つなぎ目」という名詞です。結んだりテープで留めたりではなく、端と端を組み合わせて一体にするイメージが土台にあります。

  • splice two ropes(二本のロープをつなぐ)
  • splice the film(フィルムをつなぐ)
  • splice a cable(ケーブルを接続する)
  • gene splicing(遺伝子のスプライシング)

現代の使い道は、ロープから広がりました。映画のフィルム編集で使われるようになったのが1912年ごろ、遺伝子の話で使われ始めたのが1975年ごろです。光ファイバーの世界で「融着接続」を splice と呼ぶのも同じ発想で、切った端と端を溶かしてつなぎ、一本にします。

ちなみに遺伝子のスプライシングは、不要な部分(イントロン)を切り出して、残り(エクソン)をつなぐ作業です。「裂く」と「つなぐ」が一語の中に同居している splice に、これ以上ない仕事だと思いませんか。

split と splice の使い分け

同じ家族でも、現代英語では役割がきれいに分かれています。

語意味場面
split裂く、分ける、分裂するボウリングのスプリット、株式分割、意見が割れる
spliceつなぎ合わせる、接合するロープ、ケーブル、フィルム、遺伝子

split は日常語で、比喩でも広く使います(split the bill=割り勘にする、split hairs=細かいことにこだわる)。一方 splice は、手を使って物理的に一体化させる場面に寄った、少し専門寄りの語です。

なお英語には、くだけた言い方で「結婚する」を get spliced と言う用法があります(1830年ごろから)。二人を結ぶのに結び目ではなく splice を選んだところに、ちょっとした含みがありますよね。

spl-(裂く)でつながる単語ネットワーク

spl- の音を持つこの家族は、どれも「裂く・細く割れる」が出発点です。

単語意味イメージ
split裂く、分ける、分裂縦にまっすぐ割れる
spliceつなぎ合わせる裂いてから編み直す
splinterとげ、破片、分派裂けて飛んだ細い木片
splint添え木、副木薄く割った板。骨折した腕を固定するあれ
split ends枝毛毛先が裂けた状態

splinter と splint は、どちらも「薄く割り取ったもの」。骨折のときに当てる添え木が splint、刺さると痛いとげが splinter です。政党が割れたときの「分派」も splinter group と言います。

おもしろいのは、ここでも splint が「割った板」でありながら「固定して一つに保つ」道具だという点。spl- の家族には、割ることと支えることが、どこか地続きで入っています。

身近な「スプリット」で思い出す

英語の勉強では、すでに知っているカタカナから引っ張るのが一番速いです。

カタカナ中身
スプリット(ボウリング)ピンが左右に分かれて残る
バナナスプリットバナナを縦に裂いた上にアイス
スプリットタイム全体を区切って計った時間
スプリット(ストレッチ)開脚。脚を左右に割る
株式分割(stock split)一株を複数に分ける
スプライシング(遺伝子)切って、つなぐ

ここまでが全部 split の仲間だとわかると、splice は「その中で唯一、つなぐ側に回った一語」として記憶に残ります。

派生語|splice まわり

単語品詞意味発音
splice動詞・名詞つなぎ合わせる/つなぎ目スプライス /splaɪs/
spliced形容詞・過去形つながれたスプライスト /splaɪst/
splicing名詞接合、スプライシングスプライシング /ˈsplaɪsɪŋ/
splicer名詞接合する人・装置スプライサー /ˈsplaɪsər/

TOEIC・英検での出題傾向

正直に書きます。splice は TOEIC や英検で頻出する語ではありません。日常会話にもあまり出てきません。

ただし、覚える価値はあります。理由は三つ。ひとつは、split という超頻出語の構造を理解する手がかりになること。ふたつめは、理系の英語文献(遺伝子、通信、材料)では普通に出てくること。みっつめは、「正反対の意味がどう生まれるか」という語源の読み方そのものが身につくことです。

受験で点を取る単語というより、英語の仕組みが見えるようになる単語です。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. You can splice two ropes into one strong line.
  2. The editor spliced the two scenes together.
  3. A good splice is stronger than a knot.
  4. Splice the ends, and the rope becomes one again.
  5. She spliced the broken wire with steady hands.
  6. Your past and your present are spliced into one story.
  7. To splice is to undo first, and then to build again.
  8. They spliced the old film by hand, frame by frame.
  9. Every friendship is a splice of two separate lives.
  10. Splice your small days together, and you will see how far you came.

語源メモ|「裂く」が「つなぐ」になった記録

splice が英語に入ったのは1520年代。もともとは船乗りの専門語で、中世オランダ語の splissen(ロープをつなぐ)から来ています。このオランダ語は、現代オランダ語の splitsen、つまり英語 split の語源そのものと同じ一族です。ドイツ語の spleißen は、今でも「裂く」と「つなぐ」の両方の意味を持っています。

意味が逆転した経緯も記録が残っています。オランダ語の splissen は、当初ロープの端の繊維をほぐす(裂く)ことだけを指していました。それが、ほぐしてから編み直すという一連の作業全体を指すようになり、最終的に「つなぐ」へと重心が移った、と説明されています。同じ変化はドイツ語でも起きました。

なお、この家族をさらに印欧祖語まで遡れるかどうかは、研究者の間で意見が分かれます。ポコルニーは *(s)plei-(裂く・splice する)という根を立てましたが、ブートカンはゲルマン語の外での対応語を疑問視し、「確実な印欧祖語の語源はない」としています。英語の flint(火打石)もかつてこの根に結びつけられましたが、現在は留保つきの扱いです。この記事では、ゲルマン語レベルで split と splice が同じ家族であるという、確実な範囲で話を進めています。

使われ方の広がりも記録されています。ロープ以外のものに使われ始めたのが1620年代、映画フィルムが1912年、DNAが1975年。そして1830年ごろには、くだけた言い方で「結婚」を指す用法が生まれました。

まとめ

splice は、split(裂く)と同じゲルマン系の家族。なのに意味は「つなぎ合わせる」です。

  • 出発点は同じ・・・ロープの端を「ほどく(裂く)」
  • ゴールが違う・・・ほどいた繊維を編み直して、一本にする
  • spl- の家族・・・split/splinter/splint/split ends
  • 確実な範囲・・・split と splice はゲルマン語で同族。印欧祖語まで遡る説には異論もある

結び目を作らずに、一度ほどいてから編み直す。そうして出来たつなぎ目は、結んだだけのロープより強い。splice は、そういう強さの名前です。

splice の語源ワードマップ。中心は splice(=ほどいて、編み直す=つなぎ合わせる)で、中世オランダ語 splissen に由来し split(裂く)と同じゲルマン系spl-の家族であることを示す。spl-(裂く)一族(split/splinter/splint/split ends)、身近なスプリット(ボウリング/バナナスプリット/スプリットタイム/株式分割/スプライシング)、覚え方のヒント(splice は split の親戚)の4クラスターに整理した図。
  • 語源・中心:splice =「ほどいて、編み直す」=つなぎ合わせる
  • 覚え方のヒント:splice は split の親戚。裂くの先まで含んだ語
  • spl-(裂く)一族:split/splinter/splint/split ends
  • 身近なスプリット:ボウリング/バナナスプリット/スプリットタイム/株式分割

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翻訳練習の解答

  1. 二本のロープをつないで、一本の丈夫な綱にできる。
  2. 編集者が、二つの場面をつなぎ合わせた。
  3. うまくつないだ継ぎ目は、結び目より強い。
  4. 端と端を編み合わせれば、ロープはまた一本に戻る。
  5. 彼女は落ち着いた手つきで、切れた配線をつないだ。
  6. あなたの過去と今は、一つの物語につながっている。
  7. つなぐとは、まずほどき、そしてもう一度組み立てること。
  8. 彼らは古いフィルムを、一コマずつ手でつないだ。
  9. どんな友情も、別々だった二つの人生のつなぎ目だ。
  10. 小さな一日一日をつないでいけば、どれだけ来たかが見えてくる。

NAWL(New Academic Word List)集録語

この単語は New Academic Word List(NAWL) に集録されています。NAWLは大規模な学術コーパスから抽出された960語のリストで、これらを覚えるだけで学術英語の約92%をカバーできます。論文や英字ニュースを読むとき、必ず出会う一語です。出典:New General Service List Project