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【語源で覚える】portray|”ポートレート”と兄弟だと気づくと忘れない

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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「ポートレート(portrait)」、カメラ好きでなくても耳にする言葉ですよね。

実はこの言葉、今日の portray と、同じ親から生まれた兄弟です。

portray は「描写する」「(役を)演じる」という意味の動詞。名詞の portrait とは別物に見えますが、どちらも古フランス語の同じ一語から枝分かれしました。

しかも、この2語の元をたどっていくと、train(列車)や treat(扱う)といった、まったく関係なさそうな単語にまで道がつながります。ポートレートを入り口に、その道筋をたどっていきます。

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portray を分解してイメージで覚える|”引き出して見せる”

portray をパーツで見ると、こうなります。

por(=pro「前へ」)+ tray(=trahere「引く・引きずる」)

合わせて「前へ引き出す」。対象の中にあるものを、外へ引き出して形にする・・・それが portray のイメージです。

写真を撮るときも、小説を書くときも、俳優が役を演じるときも、していることは同じです。そこにある表情や性格や空気を、見える形に引き出してくる作業。

そしてこのイメージがいちばん素直に残っているのが、冒頭のポートレート(portrait)です。portray と portrait は、どちらも古フランス語 portraire(描く・写す)から来た兄弟語。portray は動詞としてそのまま、portrait は portraire の過去分詞が名詞になる形で、それぞれ英語に入りました。

ひとつ余談を。英語に入った時期は、portray が13世紀半ば、portrait が16世紀。兄弟とはいえ、英語に来るまでに300年ほどの開きがあります。

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portray の基本の意味と使い方

portray は「描写する」「(役を)演じる」という意味の動詞です。

  • The movie portrays life in 1920s Paris.(その映画は1920年代パリの暮らしを描いている)
  • She portrays the role of a struggling artist.(彼女は苦悩する芸術家の役を演じている)
  • The novel portrays the quiet strength of ordinary people.(その小説は、ふつうの人たちの静かな強さを描いている)

ただ事実を並べるのではなく、ある視点・ある解釈を通して描くというニュアンスがあります。だから portray は、portray A as B(AをBとして描く)の形をよく取ります。

The article portrays remote work as a positive change.
(その記事は、リモートワークを前向きな変化として描いている)

「どう描くかは、描く人しだい」・・・この余地があるのが portray です。

使い分け|portray・depict・describe

「描く」に近い語は複数ありますが、語源をたどるとニュアンスの違いがはっきりします。

語語源ニュアンス
describede(下に)+scribere(書く)言葉で書き記す。客観的な説明
depictde(下に)+pingere(絵の具で塗る)絵のように視覚的に描く
portraypor(前へ)+trahere(引く)性格・人物像まで含めて描く。描き手の見方が入る

describe は「書く」、depict は「塗る」、portray は「引き出す」。解釈や人物像をともなって描くときが portray です。

1枚の写真を例にすると、違いがはっきりします。

  • describe:「青いシャツの男性が、窓際に座っている」・・・誰が見ても同じになる説明
  • depict:窓からの光と室内の様子を、そのまま画面に写し取る
  • portray:同じ写真を見て「孤独な男として描く」・・・描き手の解釈が加わる

describe は「書く」、depict は「塗る」、portray は「引き出す」。その人がどういう人か、という中身まで描くときが portray です。だから「批判的に描かれた(negatively portrayed)」「英雄として描かれた(portrayed as a hero)」のように、評価とセットで使われます。

“trahere(引く)”でつながる単語ネットワーク

portray の意味の中心 trahere(引く・引きずる/ラテン語。過去分詞は tractus)を知っておくと、見た目がまるで違う単語が一気につながります。

単語意味イメージ
attract引きつけるat(〜へ)+tract=そちらへ引く
contract契約する、収縮するcon(一緒に)+tract=引き合ってまとまる
extract抜き出すex(外へ)+tract=外へ引き出す
distract気をそらすdis(別方向に)+tract=あちこちへ引っ張る
subtract引き算するsub(下から)+tract=下から引く
retract撤回するre(後ろへ)+tract=引っ込める
tractorトラクター引っ張る機械

ここまでは「tract」が見えているので、気づきやすい仲間です。

面白いのは、ここから先です。綴りに tract が残っていない単語にも、同じ「引く」がひそんでいます。

単語意味つながり
train列車、訓練する引きずるもの → 長い裾、連なり、引っ張って育てる
treat扱う、おごるtractare(引き回す→手で扱う)から
traceたどる、痕跡引かれた線 → あとをたどる
trait特徴一筆で引かれた線 → その人らしさの一筆
portrait肖像画引き出して見せたもの

「列車(train)の語源が”引きずるもの”」と聞くと納得しやすいですが、treat(おごる・扱う)や trait(特徴)まで同じ一族だとは、なかなか気づきません。

tract/tray/trait/train/treat・・・”tra” が見えたら、たぶん”引く”話。 こう見えてくると、初見の単語でも見当がつくようになります。portray は、この広い一族への入り口です。

派生語 Word Family

単語品詞意味発音
portray動詞描写する、演じるポートレイ /pɔːrˈtreɪ/
portrayal名詞描写、(役の)演技ポートレイアル /pɔːrˈtreɪəl/
portrait名詞肖像画、人物写真ポートリット /ˈpɔːrtrət/
self-portrait名詞自画像セルフポートリット
portraiture名詞肖像画法、肖像画ポートリチャー /ˈpɔːrtrətʃər/

※ 発音で一つ注意を。日本語の「ポートレート」は、英語の portrait とは音が違います。英語は ˈpɔːrtrət(ポートリット) で、アクセントは前。いっぽう portray は pɔːrˈtreɪ(ポートレイ) で、アクセントは後ろです。兄弟なのにアクセントの位置が逆、と覚えておくと間違えません。

TOEIC・英検での出題傾向

portray は、TOEIC の文法問題でねらわれるタイプの語ではありません。出てくるとしたら Part 7 の読解・・・新聞記事、書評、人物紹介、広報文のような「誰かが何かをどう描いているか」を扱う英文です。

The report portrays the company as an industry leader.
(その報告書は、その会社を業界のリーダーとして描いている)

英検では準1級〜2級の長文や、大学入試の評論文でもよく見かけます。

読解でのポイントは一つだけ。portray A as B の形を見つけたら、B にあたる部分が筆者の見方です。事実の記述ではなく解釈が入っている合図なので、設問でもそこがよく問われます。

英文で確認|翻訳練習10問

  1. This photo portrays her calm and gentle side.
  2. The documentary portrays the daily life of local farmers.
  3. He was chosen to portray the lead character in the film.
  4. The article portrays remote work as a positive change.
  5. Your resume should portray your strengths clearly.
  6. The painting portrays a quiet afternoon by the sea.
  7. She portrayed her grandmother with great warmth.
  8. How you portray yourself in an interview matters a lot.
  9. The story portrays hope even in difficult times.
  10. A good portrait portrays not just a face, but a life.

語源メモ|portray と protract は、同じ一語だった

portray が英語に入ったのは13世紀半ば。アングロ・フランス語 purtraire、古フランス語 portraire(描く・写す)からで、分解すると por-(ラテン語 pro-「前へ」)+ traire(ラテン語 trahere「引く」)。文字どおり「引き出す・なぞる」です。

対応するラテン語の動詞は protrahere(前へ引き出す)。もともとは物理的に「引っぱり出す」意味でしたが、中世ラテン語では「描く・塗る」の意味でも使われるようになりました。

ここでもう一つ。この protrahere は、**protract(引き延ばす)**としても英語に入っています。つまり portray と protract は、語源としては同じ一語です。片方はフランス語を経由して形が崩れ「描く」になり、もう片方はラテン語から直接入って「引き延ばす」になった・・・同じ親から生まれた、顔の似ていない兄弟というわけです。

そして trahere は、過去分詞 tractus の形で英語のあちこちに残っています。attract・contract・extract・distract・subtract・retract・tractor。さらに、綴りが崩れた train・treat・trace・trait・portrait。「引く」というたった一つの動作から、これだけの語が枝分かれしました。

「por(前へ)+ tray(引く)=引き出して見せる」。このイメージひとつ持っておくと、かなり広い範囲に手が届きます。

まとめ

portray は、por(=pro「前へ」)+ tray(=trahere「引く」)で「前へ引き出して見せる」=描写する・演じる。

  • ポートレート(portrait)と兄弟・・・どちらも古フランス語 portraire から
  • protract(引き延ばす)とは同じラテン語・・・経路が違っただけ
  • trahere(引く)一族・・・attract/contract/extract/distract/subtract/retract/tractor
  • 綴りが崩れた仲間・・・train/treat/trace/trait/portrait

写真も、文章も、演技も、していることは同じです。相手の中にあるものを、そっと外へ引き出してみせる。それが portray です。

portray の語源ワードマップ。中心は portray(=前へ引き出して見せる)で、por(ラテン語 pro=前へ)+tray(ラテン語 trahere=引く)に分解。portrait一族(portrait/portrayal/self-portrait/portraiture/protract)、trahere(引く)一族(attract/contract/extract/train/treat/trace/trait)、覚え方のヒント(ポートレートは portray の兄弟)の4クラスタに整理した図。
  • 語源・中心:por(pro=前へ)+tray(trahere=引く)=「引き出して見せる」
  • 覚え方のヒント:ポートレート(portrait)は portray の兄弟
  • portray一族:portrait/portrayal/self-portrait/portraiture/protract
  • trahere(引く)一族:attract/contract/extract/distract/subtract/retract/tractor/train/treat/trace/trait

NAWL(New Academic Word List)・BSL(Business Service List)収録語

この単語は NAWL(学術) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。学術英語でもビジネスでも頻出する、汎用性の高い一語です。

出典:New General Service List Project

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翻訳練習の解答

  1. この写真は、彼女の穏やかでやさしい一面を写し出している。
  2. そのドキュメンタリーは、地元の農家の日常を描いている。
  3. 彼はその映画で主人公を演じることに選ばれた。
  4. その記事は、リモートワークを前向きな変化として描いている。
  5. あなたの履歴書は、あなたの強みをはっきりと伝えるべきだ。
  6. その絵は、海辺の静かな午後を描いている。
  7. 彼女は、祖母を温かく演じた。
  8. 面接であなた自身をどう見せるかは、とても大事だ。
  9. その物語は、厳しい時代の中にも希望を描いている。
  10. 10. 良い肖像画は、顔だけでなく、その人の人生までも描き出す。。