「プロデュース」「プロダクション」。どちらも、意味を説明しろと言われたら少し困る言葉ですよね。なんとなく「作ること」だろう、くらいの理解で通り過ぎている人が多いはずです。
ところが produce の語源をほどくと、「作る」という言葉はどこにも出てきません。
出てくるのは、pro(前へ)+ duce(導く)。つまり「前へ導き出す」。
プロデューサーは、何もないところから作る人ではなく、才能や企画を表舞台へ”導き出す”人だった・・・そう考えると、あの肩書きが急に腑に落ちます。
そしてこの duce(導く)は、カタカナになって私たちの生活にかなり入り込んでいます。リデュース、イントロ、コンダクター。全部、同じ「導く」です。
produce を分解してイメージで覚える|pro(前へ)+ duce(導く)
produce をパーツで見ると、こうなります。
pro(前へ)+ duce(導く)= 前へ導き出す
思い浮かべてほしいのは、暗い舞台裏から、明るいステージへ、誰かの手を引いて連れ出す絵です。
隠れていたものを、見えるところまで引っぱってくる。それが produce の中心にあるイメージです。
- 土の中に隠れていた野菜を、収穫して市場へ → 農産物を produce する
- 頭の中にあった企画を、形にして世に出す → 映画を produce する
- ポケットの中のチケットを、相手の前に出す → チケットを produce する
「作る」は、この「前へ導き出す」から後から育った意味です。順番が逆なんですね。語源のほうが先にあって、そこから「生み出す」へ広がった。
だから produce は、ゼロから作るときより、「もともとあったものを表に出す」ときにしっくりきます。
produce の基本の意味と使い方
produce は動詞と名詞の両方で使い、しかもアクセントの位置が変わります。 ここは後で TOEIC の話にもつながるので、頭の片隅に置いておいてください。
動詞 produce /prəˈduːs/(デュのところが強い)
生産する・制作する・引き起こす・提示する。
This farm produces organic vegetables.
(この農場は有機野菜を作っている)
The new policy produced good results.
(新しい方針が、よい結果を生んだ)
Please produce your ticket at the gate.
(ゲートでチケットをご提示ください)
3つ目が意外かもしれませんが、これこそ語源どおりの使い方です。ポケットの中のものを「前へ導き出す」=見せる。
名詞 produce /ˈproʊduːs/(プロのところが強い)
こちらは「農産物」。スーパーの野菜売り場に produce と書いてあるのは、この意味です。
Fresh produce arrives early in the morning.
(新鮮な農産物は、朝いちばんに届く)
同じ綴りでも、強く読む場所が前にずれると名詞になる・・・この入れ替わりは record、present、object などにもある、英語のよくある仕掛けです。
使い分け|produce・make・manufacture・create・generate
「作る」と訳せる語はいくつもありますが、立ち位置が違います。
| 語 | 立ち位置 | 使う場面 |
|---|---|---|
| make | いちばん広い日常語 | 手で作る、料理を作る、何にでも使える |
| produce | 前へ導き出す | 農産物・工業製品・作品・結果を世に出す |
| manufacture | 工場で機械的に | 大量生産、製造業の文脈 |
| create | ゼロから新しく | 創造する、これまでなかったものを生む |
| generate | 発生させる | 電気・熱・データ・収益など |
迷ったときの目安は、「もとになるものがあるか」です。土・原料・才能・努力といった元手があって、そこから表へ出すなら produce。何もないところから立ち上げるなら create。
関連語ネットワーク|duc・duct(導く)でつながる単語
ここからが produce を覚える本当の得です。duc/duct(導く)は、驚くほど多くの単語に入っています。しかも、そのかなりがカタカナになって日本語に入っている。
| 単語 | 分解 | 意味 |
|---|---|---|
| introduce | intro(内へ)+duce | 中へ導く → 紹介する・導入する |
| reduce | re(後ろへ)+duce | 後ろへ導く → 減らす |
| conduct | con(共に)+duct | 共に導く → 指揮する・実施する |
| conductor | conduct+or | 導く人 → 指揮者・車掌 |
| product | pro(前へ)+duct | 前へ導き出されたもの → 製品 |
| production | product+ion | 導き出すこと → 生産・制作 |
| deduce | de(下へ)+duce | 下へ導く → 推論する |
| induce | in(中へ)+duce | 中へ導く → 引き起こす・促す |
| seduce | se(離れて)+duce | わきへ導く → そそのかす・誘う |
| abduct | ab(離して)+duct | 離れた所へ導く → 連れ去る |
| duct | ducere そのもの | 導管・ダクト(空気を導く管) |
| aqueduct | aqua(水)+duct | 水を導くもの → 水道橋 |
| duke | dux(指導者) | 導く者 → 公爵 |
カタカナで並べ直すと、つながりが一気に見えてきます。
リデュース(3Rのリデュース=減らす)、イントロ(introduction の略=曲の導入)、コンダクター(オーケストラの指揮者)、プロダクト(製品)、ダクト(空調の管)。
全部、「導く」です。減らすのも、紹介するのも、指揮するのも、英語ではどの方向へ導くかを接頭辞で言い分けているだけ・・・そう見えると、初めて会う単語でも方向の見当がつくようになります。
duke(公爵) も同じ一族です。ラテン語 dux(指導者)から来ていて、ducere(導く)と兄弟。軍を導く者が、やがて貴族の称号になりました。
ひとつだけ、断っておきたい語があります。educate(教育する) です。「ex(外へ)+ducere で、子どもの力を外へ引き出すこと」という説明をよく見かけますが、これは定説ではありません。educate の直接のもとはラテン語 educare(育てる・しつける) で、educere(外へ導く)とは「関連はあるが同一ではない」という距離にあります。辞書によっては「教育の原義は才能を引き出すこと、という通説に根拠はない」とはっきり書いています。
同じ *deuk-(導く)の大きな一族には入っている。けれど「教育=引き出すこと」と言い切るのは踏み込みすぎ・・・このくらいの温度で覚えておくのが正確です。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| produce | 動詞 | 生産する・制作する・提示する | プロデュース /prəˈduːs/ |
| produce | 名詞 | 農産物 | プロデュース /ˈproʊduːs/(前が強い) |
| producer | 名詞 | 生産者・制作者 | プロデューサー |
| product | 名詞 | 製品・成果 | プロダクト |
| production | 名詞 | 生産・制作 | プロダクション |
| productive | 形容詞 | 生産的な・実りある | プロダクティブ |
| productivity | 名詞 | 生産性 | プロダクティビティ |
| reproduce | 動詞 | 再現する・複製する・繁殖する | リプロデュース |
| reproduction | 名詞 | 再現・複製・繁殖 | リプロダクション |
| by-product | 名詞 | 副産物 | バイプロダクト |
TOEIC・英検での傾向
ねらわれるのは、まず品詞問題です。
produce / product / production / productive / productivity。形が似ていて、どれも実際によく使われるので、空所の前後から品詞を決める練習がそのまま得点になります。
The company reported a sharp rise in ____ last quarter.
前が in、後ろがピリオド方向。名詞が入る位置なので productivity(または production)。productive(形容詞)を選ばないよう気をつけてください。
次に、発音・アクセント問題。
動詞 produce は後ろ(デュ)が強く、名詞 produce は前(プロ)が強い。英検のアクセント問題や、リスニングの聞き分けで効いてきます。record・present・object と同じ仲間として、まとめて押さえると早いです。
Part 7 では、ビジネス文書の定番語として出ます。
production facility(生産施設)、production schedule(生産計画)、mass-produce(大量生産する)、by-product(副産物)。どれも案内文・社内メールでよく見る形です。
The new production line will double our output.
(新しい生産ラインで、生産量は倍になります)
スーパーや市場の文脈で produce section(青果売り場)が出たときに「生産する」と読んでしまう・・・これが地味な落とし穴なので、名詞の「農産物」は必ずセットで覚えておきましょう。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にあります。
- This small farm produces wonderful vegetables.
- You can produce more than you think.
- Hard work does not always produce quick results.
- She produced a short film with her friends.
- The meeting produced a few good ideas.
- Please produce your ticket at the gate.
- Produce something today, even a small thing.
- The factory produces parts for electric cars.
- Fresh produce arrives at the market early in the morning.
- What you read today produces who you are tomorrow.
語源メモ|producere と、deuk- という大きな一族
produce は、ラテン語 producere に由来します。pro(前へ・先へ)+ ducere(導く・引く) で、字義どおりなら「前へ導き出す、引き出す」。過去分詞の形が productum で、こちらが product・production の直接のもとになりました。
おもしろいのは、英語に入った当初の意味です。15世紀はじめの producen は「伸ばす・延ばす・進める」でした。「生み出す・存在させる」の意味が出てくるのは15世紀の終わり。「芝居を舞台にかける」は1580年代、「心身の労働で引き起こす」は1630年代です。
名詞の produce(生産されたもの)は1690年代と、かなり遅い。そこから「工業製品と区別した農産物」に意味が絞られるのが1745年ごろ。スーパーの青果売り場の produce は、300年近く前に生まれた用法というわけです。
ducere のさらに奥には、「導く」を意味する印欧祖語の *deuk- があります。ここから produce・introduce・reduce・conduct・deduce・induce・seduce・duct・aqueduct・duke と、驚くほどの数が枝分かれしました。英語の中にある「導く」の大半は、この一本の根から出ています。
ひとつ補足を。先に触れた educate も、この大きな一族には属しています。ただし直接の親は educare(育てる)で、educere(外へ導く)とは一段離れている。「教育とは才能を外へ引き出すこと」という説明は美しいのですが、語源の裏づけとしては弱い、というのが辞書の立場です。きれいな話ほど、一度確かめる価値があります。
まとめ
produce は、pro(前へ)+ duce(導く)で「前へ導き出す」。そこから「生産する」「制作する」「提示する」へ広がりました。

- 語源・中心:pro(前へ)+ duce(導く)=前へ導き出す
- 覚え方のヒント:プロデューサーは「作る人」ではなく「導く人」
- duc/duct(導く)一族:introduce/reduce/conduct/conductor/deduce/induce/seduce/duct/aqueduct/duke
- produce 一族:producer/product/production/productive/productivity/reproduce/by-product
作ることと、導き出すこと。似ているようで、少し違います。あなたの中にすでにあるものを、ほんの少し前へ出してみる。produce は、たぶんそういう言葉です。
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翻訳練習の解答
- この小さな農場は、すばらしい野菜を作っている。
- あなたは、自分で思っているより多くのものを生み出せる。
- 努力がいつも、すぐに結果を生むとはかぎらない。
- 彼女は友人たちと、短編映画を制作した。
- その会議から、いくつかいいアイデアが出てきた。
- ゲートで、チケットをご提示ください。
- 今日、何かひとつ生み出してみよう。小さなことでいい。
- その工場は、電気自動車の部品を作っている。
- 新鮮な農産物は、朝早く市場に届く。
- 今日あなたが読むものが、明日のあなたをつくる。


