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静かな退職 クビになる?|解雇リスクと会社の本音を整理

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の労働条件・雇用形態・就業規則によって状況は異なります。法的判断が必要な場合は、社会保険労務士または弁護士にご相談ください。

静かな退職だけを理由に解雇することは、日本の法律上、原則としてできません。

ただし「絶対に安全」とも言い切れない状況があります。業務をきちんとこなしている限り、すぐにクビになる可能性は低いと考えられます。

ただ、会社が別の手段で圧力をかけてくることはあります。この記事では、法的な根拠と会社の本音を、両面から整理します。

「このまま最低限しかやっていなかったら、ある日突然クビになるんじゃないか」。

そう思いながら出勤している方は、少なくないかもしれません。「嫌なら辞めろ!」そう会議で豪語する経営者の前で、私は怯えた時期が長くありました。

面と向かって誰かに聞けるような話でもないし、調べても法律の話ばかりで、自分の状況に当てはまるのかよくわからない。

不安の正体をはっきりさせることで、少し楽になれる部分はあります。順番に整理していきます。

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静かな退職だけで、クビになるのは難しいのが日本の現実

結論から言えば、静かな退職を理由に即座に解雇するのは、法的に非常にハードルが高い状況です。

労働契約法第16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。 参照元:Chukidan

噛み砕いて言えば、「誰が聞いても、それはクビにされてもしょうがない」と納得できるような理由がなければ、解雇は認められにくいということです。

「やる気がない」「自主的に動かない」「会議で発言しない」——これらは、解雇の合理的な理由としては認められにくいのが一般的です。

では、実際にどんな段階を経て解雇が現実味を帯びるのでしょうか。

段階状態解雇の現実
静かな退職中最低限の業務はこなしている解雇は認められにくい
注意・面談会社から改善を求められているまだ解雇の根拠にならない
PIP提示書面で改善計画を求められている解雇の準備段階になりうる
長期的な改善なし記録が積み上がっている状態解雇の検討が現実味を帯びる
重大な業務命令違反無断欠勤・著しい勤務怠慢など解雇が認められる可能性がある

日本の法律上、業務命令違反や重大な勤務怠慢がない限り、「自主性がない」「必要最低限しか働かない」といった理由だけで従業員を解雇することは原則できません。 参照元:Maki-sharoushi

「最低限の仕事をこなしている」という状態は、この表の一番上にあります。

解雇が現実化するまでには、多くの段階があることを理解しておくと、漠然とした不安が少し和らぐかもしれません。

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会社が実際に動くのは、どんなときか

会社が静かな退職状態の社員に対して何らかのアクションを起こすとしたら、それはどんな場面でしょうか。

その前に、上司や人事が実際に抱いている「本音」を整理しておきます。

夜間、薄暗い企業の会議室で、一人デスクに座り、置かれた書類を見つめる50代の男性会社員。頭上の単一の照明が、静寂な空間と彼の calmだが疲労感を帯びた表情を照らしている。隣の椅子は空席で、mutedなトーンで統一されたシネマティックな写真。
  • 「扱いにくい」
    業務命令には従うので強く言えないが、周囲の雰囲気が変わることを気にしている
  • 「将来のコストが怖い」
    法律上すぐにはクビにできないため、業績悪化時のリスクを警戒している
  • 「できれば自発的に変わるか、去ってほしい」
    退職勧奨は手間もコストもかかる。遠回しな圧力で自発的な行動を促したい

この本音を理解しておくと、会社が「なぜ遠回しな動きをするのか」がわかります。

直接的な解雇よりも、じわじわと居心地を悪くするアプローチをとりやすいのです。

現実的に起きやすいのは、次のような流れです。

①上司から面談を求められる
「最近どうですか」という名目で1対1の面談が設定されます。この段階では、まだ様子見のケースが多いと考えられます。

②業務改善計画(PIP)を提示される
「今後の目標と改善内容を文書化しましょう」という形で書面での合意を求められることがあります。

内容によっては、会社が後の対応のために記録を残そうとしている場合もあるため、内容をよく確認することをおすすめします。

③異動や配置転換を打診される
直接的な解雇ではなく「部署を変えてみませんか」という形で、事実上の圧力をかけてくるケースもあります。

勤務態度が悪い従業員に対していきなり解雇することは許されず、会社としてその従業員に注意や教育を行い、改善の機会を与えることが必要とされています。

それでも改善されない場合に、はじめて解雇の正当性が認められやすくなります。 参照元:HRプロ

面談や書面のやりとりがある場合は、その内容を自分でも手元に記録しておくことをおすすめします。

→ 評価・査定への影響については「静かな退職 評価 下がる?|最低限の仕事で査定はどうなるのか」で整理しています。

これだけの人が、同じ状態にいる

少し立ち止まって、数字を見てみましょう。

マイナビの調査(2025年)では、正社員の4割以上が静かな退職状態にあると回答しています。

20代が46.7%、50代が45.6%、40代が44.3%と、年代を問わずほぼ同じ水準です。参照元 Mynavi

Mynavi のグラフを参考にしたグラフ

つまり、職場の同僚のうち約半数近くが、程度の差はあれ似たような状態にある可能性があります。

ここで少し考えてみてください。これだけの人を、会社が一斉に解雇したとしたら、社会はどうなるでしょうか。

生産現場は止まり、医療も福祉も教育も立ち行かなくなります。現実的に、そんな選択を企業がするでしょうか?

「静かな退職」は、一部の問題社員の話ではありません。

日本の職場に、そして世界全体で広く静かに広がっている、ごく普通の状態です。あなたがその状態にあるとしても、それは特別に責められるべきことではないのです。

「静かな退職」は海外でも当たり前——米国・中国・韓国の事例から見る、世界に広がる潮流

クビよりも怖い、じわじわと追い詰められるパターン

法的に解雇のハードルが高いとわかっていても、会社は別の形で圧力をかけてくることがあります。

むしろ、こちらのほうが現実的なリスクとして意識しておく必要があるかもしれません。

居場所が狭くなる
重要なプロジェクトから外される、情報共有の輪から外れる、会議に呼ばれなくなる——こういった変化が積み重なると、職場での存在感がじわじわと薄れていきます。

【私自身の体験】
重要な仕事は回ってきませんでした。私だけメールが来ない日がよくありました。

「自主退職」を促される雰囲気になる
直接「辞めてほしい」とは言われないが、居心地が悪くなるような状況が続くことがあります。こうした対応が度を超える場合は、違法性が問われるケースもあると言われています。

【私自身の体験】
「誰とは言わないが・・・」といいつつ、私が特定できるような例を挙げて、遠回しに「辞めてもらいたい」と伝えるような言動がありました。

スキルと市場価値が落ちていく
静かな退職を続けることで、新しい経験や実績が積み上がらなくなることがあります。気づいたときには転職市場での選択肢が狭まっていた——という事態は、解雇よりも長期的に影響が大きいかもしれません。

【私自身の体験】
職場内で居場所がなかったので、職場外のプロジェクトではかなりの成果を残しました。これが転職には逆効果に働きました。

「職場の仕事はあまりしなが、外での仕事には積極的だ」

と業界の人たちが思ったかもしれません。

私自身の、かつての職場での経験をお話ししましょう。

同族経営が行き詰まる前、その職場では、経営者が会議の場で「いやなやつは辞めろ」と怒鳴ることが、日常的に繰り返されていました。

解雇されるのではないかという不安を抱えながら、気づけば10年以上が過ぎていた。毎年、産業医の観察対象になっていたほどです。

そのとき私がとった行動のひとつが、労働組合への「個人加盟」でした。

職場には内緒で、個人として組合に加入する形です。組合の担当者と話す中で、経営者の暴言が不当な行為にあたるという確信を得ることができました。

解決したわけではありませんでした。

でも、「自分はおかしくない」という根拠が手元にできた。それだけで、あの重苦しい毎日の中で、少し息ができるようになった気がしました。

追い詰められていると感じたとき、法律や制度を「知っている」だけで、心の余裕はかなり変わります。一人で抱え込まずに、外部の窓口や専門家を頼ることを、選択肢のひとつとして覚えておいてください。

いずれも「クビ」という形ではありませんが、働き続けることが難しくなるプロセスです。

こうした動きに気づいたら、早めに自分の状況を整理することが大切かもしれません。

→ 職場での人間関係の変化が気になる方は「職場の人間関係に疲れた|静かな退職という選択肢」も参考にしてください。

もし会社から退職を求められたら、どう対応するか

もし面談や書面で退職を求められる場面が来たとしても、すぐに応じる必要はない場合がほとんどです。

まず確認すべきことは、

「これは解雇通知なのか、退職勧奨なのか」

という点です。退職勧奨はあくまでも会社からの「お願い」であり、応じるかどうかは本人の判断になります。

一方、解雇通知であれば、会社は法的な手続きと合理的な理由を示す必要があります。

解雇を言い渡されても、納得できない理由であれば退職に応じる必要は一切ありません。

解雇された場合でも、解雇の撤回を求めたり、解決金や慰謝料を請求できる可能性があります。参照元: Vbest

会社から強い圧力を感じている場合は、労働基準監督署や労働局の総合労働相談コーナーへの相談が一つの選択肢になります。

一人で判断が難しいと感じたときは、早めに外部の窓口を頼ることをおすすめします。

法律上の知識は、もし次の職場でも「静かな退職」を選ばざるを得ない時、役に立ちます。

オススメ書籍

「静かな退職」関連の書籍、だいぶ多くなりましたね。
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この記事に関連する本

『静かな退職という働き方』海老原嗣生 著(PHP新書・2025年)

雇用ジャーナリストとして40年以上働き方の現場を見てきた著者が、「静かな退職」を責めるでもなく、礼賛するでもなく、データをもとに構造的に読み解いた一冊です。

「言われた仕事はきちんとやる。ただし、それ以上の過剰な奉仕はしない」——その働き方が、なぜ今の日本で広がっているのかを、欧米との比較も交えながら整理しています。

「自分のこの状態に名前がついた」と感じている方に、特におすすめしたい内容です。

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『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』金間大介 著(PHP研究所・2024年)

タイトルは「若者たち」ですが、内容は世代を問わず「なぜ人は職場で静かになっていくのか」を丁寧に掘り下げています。

笑顔でうなずいていた人が翌週には心を閉じている——そのメカニズムを知ることで、自分の状態を客観的に見やすくなります。「自分がなぜこうなったのか」を整理したい方に。

アマゾン:静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと
楽天市場:静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと

まとめ

  • 静かな退職だけを理由とした解雇は、法律上ハードルが高く、すぐに認められるケースは多くない
  • 会社が動く本音は「扱いにくさ」「将来コストへの警戒」「自発的な退職への誘導」
  • クビより現実的なリスクは「居場所の縮小」「自主退職への誘導」「市場価値の低下」
  • 退職を求められたときは、内容を確認してから判断することをおすすめする。必要なら外部の相談窓口を活用する

たまには自分にごほうび あげてみませんか?

よくある質問

Q. 「やる気がない」と言われてクビになることはありますか?

一般的には、「やる気がない」という理由だけでは解雇の合理的な理由として認められにくいとされています。

業務をきちんとこなしていれば、その言葉だけで解雇が成立するケースは少ないと考えられます。ただし個別の状況によって異なるため、不安な場合は専門家への相談をおすすめします。

Q. 業務改善計画(PIP)を出されたら、どう対応すればいいですか?

まず内容をよく確認することをおすすめします。目標が具体的な数値になっているか、達成可能な水準かどうかを冷静に見てください。

内容に疑問がある場合は、その場ですぐに合意するのではなく、労働局の総合労働相談コーナーや専門家に内容を持ち込んで確認することも一つの選択肢です。

個別の状況によって対応が異なるため、判断が難しいと感じたら早めに相談することをおすすめします。

Q. 退職勧奨と解雇は何が違いますか?

退職勧奨は会社からの「お願い」であり、応じるかどうかは本人の判断です。

解雇は会社による一方的な雇用契約の終了であり、合理的な理由と法的手続きが必要とされています。どちらに該当するかを確認しておくことが、自分の状況を整理する上で大切です。

Q. 静かな退職をしていて、いきなり解雇通知が来た場合は?

まず冷静に、解雇理由の説明を求めることをおすすめします。

会社には、求めがあれば解雇理由証明書を発行する義務があるとされています。内容に納得できない場合は、労働基準監督署や専門家への相談が選択肢になります。

Q. 契約社員やパートの場合、解雇リスクは違いますか?

契約期間中の解雇については、正社員と同様に合理的な理由が必要とされています。

ただし、契約更新を拒否される「雇い止め」は解雇とは異なる扱いになる場合があります。

雇用形態によって状況が異なるため、不安な場合は専門家への確認をおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の労働条件・雇用形態・就業規則によって状況は大きく異なります。法的判断が必要な場合は、社会保険労務士または弁護士にご相談ください。

この記事を読んで、気持ちはどう変わりましたか?

「少し安心した。今の働き方を続けながら、リスクを把握しておきたい」と思った方へ
「静かな退職とは|やる気が出ない原因と無理せず働くための考え方

「評価や査定への影響も、あらためて整理したい」と感じた方へ
→「静かな退職 評価 下がる?|最低限の仕事で査定はどうなるのか

「人間関係の問題も重なっていて、もう職場に居づらい」と気づいた方へ
→「【静かな退職】 人間関係に疲れた|職場で無理に関わらない働き方

「静かな退職」の全体像は以下の記事からどうぞ。
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参照: