20代・30代が「静かな退職」を選ぶのは、怠けたからではない。 入社後に積み重なった「ここでがんばっても意味がない」という経験が、きっかけになっている。
調査では、静かな退職を選んだ人の71%が「働き始めてから選ぶようになった」と答えている。
この記事では、若手世代がなぜ会社への期待をやめるのか、その理由と心理を具体的に解説する。
はじめに:「最近の若者は・・・」どうなのか?
「最近の若者はすぐあきらめる」という声をよく聞く。
でも本当にそうだろうか。入社したとき、ほとんどの人は「ちゃんとやろう」と思っていた。
入社直後は「仕事に100%!」と張り切っているのに・・・そのギャップが伝わってくる。
👇
【work23】“働き方のイマ”仕事とプライベートのバランスは?「最初は仕事に100%」新年度各地で入社式 新社会人の本音は?現役世代の現実は?【news23】|TBS NEWS DIG (Youtube動画)
やる気がなかったわけじゃない。それが、いつの間にか「とりあえず言われたことだけやればいい」に変わっていく。
その変化に気づいたとき、「これって静かな退職じゃないか」と感じた人もいるだろう。
なぜそうなったのか。その「きっかけ」を知ることが、自分を理解する第一歩になる。
20代・30代の「静かな退職」は怠慢じゃない——きっかけは入社後にある
静かな退職は、入社前から決めていたわけではない。職場での経験が、そこへ向かわせる。
GPTW Japan(働きがいのある会社研究所)が2024年に実施した調査によると、静かな退職を実践している人のうち、71%が「働き始めてから静かな退職を選ぶようになった」と回答した。
つまり、最初からやる気がなかったわけではない。何かが積み重なって、そこに至った人がほとんどだ。
マイナビの2025年調査では、静かな退職のきっかけを4つのタイプに分類している。
| タイプ | 内容 | 代表的な声 |
|---|---|---|
| A:不一致 | 仕事・環境とのミスマッチ | 「やりがいのある仕事がない」(50代) |
| B:評価不満 | 処遇・評価への不満 | 「アピールしても評価されない」(20代) |
| C:損得重視 | コスパを考えた合理的判断 | 「給与に見合う仕事量にしている」(30代) |
| D:無関心 | もともとの価値観 | 「キャリアアップに興味がない」(20代) |
注目したいのは、20代・30代はC(損得重視)とD(無関心)の「内発型」の割合が高いという点だ。
その他入社直後に退職する新入社員の中には
「話が違う」「聞いてない」
という意見が多い。
雇用条件を会社が詳しく説明していないためであることが多い。
40代・50代が「評価されない」という外からの不満を抱えるのに対し、若手世代は「そもそも会社に多くを期待していない」という出発点に立っている。
出典:マイナビキャリアリサーチLab「正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)」
→ 「静かな退職とは何か」から確認したい方は
「「静かな退職」とは何か?”当たり前”になりつつある新しい働き方と、自分を大切にするための選択」へ
20代の本音——「期待するだけ損」と学んだ世代
20代が静かな退職を選ぶ最大の理由は、「がんばっても評価されない」という経験の蓄積だ。

20代は静かな退職実践率が全年代で最多(46.7%)だ。一方で、「静かな退職を続けたくない」割合も最も高く35.4%に達する(マイナビ, 2025)。
これは矛盾しているように見えるが、実はそうではない。「本当は変わりたいけど、変えられない」という葛藤が、この数字に表れている。
入社1〜2年目の話をしよう。
会議で意見を言った。「それ、前にも試したけどダメだったよ」と一言で終わった。
次の月も提案してみた。また同じ反応だった。半年もすると、会議中に発言しなくなっていた。
これはサボりではない。「言っても変わらない」という学習の結果だ。心理学ではこれを「学習性無力感」と呼ぶ。何度行動しても結果が変わらないと、人は行動すること自体をやめてしまう。
人間の脳の働きとしては、ごく当たり前のことなのだ。
また、20代の転職理由1位は「労働時間への不満(残業・休日出勤)」だ(doda転職理由ランキング2025)。
長時間働いても見返りがないと感じたとき、20代は「それなら定時で帰ろう」という合理的な選択をする。
30代の本音——「消耗するより賢く働く」という現実判断
30代が静かな退職を選ぶのは、諦めではなく「コスト計算の結果」だ。
30代になると、状況が少し変わる。仕事の全体像が見えてきて、「この会社でがんばったらどうなるか」が具体的にイメージできるようになる。
その答えが「大して変わらない」だったとき、静かな退職という選択が生まれる。
30代の転職理由1位は「給与が低い・昇給が見込めない」だ(doda, 2025)。
一生懸命やっても給与が上がらないなら、エネルギーを使い果たす必要はない——というのが、30代の静かな退職者の本音に近い。
マイナビ調査でも、30代の静かな退職のきっかけとして「お金のために働いているので、それに見合った仕事量にしている」という声が挙がっている。
これは投げやりな発言ではなく、むしろ冷静な現実認識だ。
30代は同時に、プライベートでも変化が多い時期だ。結婚・育児・親の介護など、仕事以外に使うエネルギーが増える。限られたリソースをどこに配分するかを考えたとき、「会社への過剰な貢献」は後回しになりやすい。
→ 「なぜ日本でここまで広がったのか」は
「静かな退職」が日本で広がる原因——低生産性と「報われない」職場の正体へ
「静かな退職」を選んだ若手に、会社は何ができるのか——そして本人はどうするか
一度静かな退職を選んだ後、約4割は「環境が変わっても働き方は変わらない」と答えている。
GPTW Japanの調査によると、静かな退職実践者の約4割が「会社側が何かしてくれても、自分の働き方は変わらない」と回答した。企業側がいくら手を打っても、届かないケースが多いという現実だ。
これを聞いて「もう手遅れだ」と思った人もいるかもしれない。でも、この数字には別の読み方もある。「変わらない」という人が4割なら、残り6割はまだ可能性があるということでもある。
若手世代が静かな退職を選んだとき、それは終わりではない。多くの場合、「ここは消耗の場所」という判断を下しながら、同時に「次に何をするか」を静かに考え始めているからだ。
もし今、静かな退職状態にある20代・30代の方へ
それは弱さではない。むしろ「自分のエネルギーをどこに使うか」を考え始めたサインだ。その感覚を大切にしながら、少しずつ次の一手を探していってほしい。
まとめ
- 静かな退職を選んだ人の71%は「入社後にそうなった」(GPTW Japan, 2024)
- 20代・30代は「損得重視」「無関心」という内発型が多く、会社への期待をそもそも高く持っていない
- 20代は「評価されない経験」の蓄積が主なきっかけ
- 30代は「給与・昇給の見込みのなさ」というコスト計算が背景にある
- 一度選んだ後の約4割は環境が変わっても働き方を変えない——だが残り6割には変化の余地がある
ぜひ読みたい関連記事
「静かな退職」というあきらめのススメ:本当の自分を取り戻すためのロードマップ
心を壊してまで頑張り続ける必要はありません。現状の肯定から、心理的な回復、そして戦略的な再起まで。
キャリアカウンセラーが全15記事で体系化した「自分を守り抜くための生存戦略」の全貌は、以下の目次からご確認いただけます。
👇
「静かな退職」というあきらめのススメ:本当の自分を取り戻すためのロードマップ
なぜ真面目な人ほど静かな退職に向かうのか、そのメカニズムを知りたい方はこちら。
→ 真面目な人が「静かな退職」に向かうまで——評価されない日々が積み重なると、何が起きるのか
次に読みたい関連記事一覧
今のあなたに必要なのは、「頑張り方」を変えることかもしれません。
「静かな退職」を選び、リスキリングに違和感を抱くのは、あなたがこれまで誠実に社会と向き合ってきた証拠です。
心が発しているSOSを無視せず、まずは「今のままでいい理由」を知ることから始めてみませんか。
あなたの自尊心を守りながら、無理のない範囲で新しい視点を取り入れるためのヒントをまとめました。


よくある質問(FAQ)
Q1. 20代・30代の静かな退職は、上の世代と何が違いますか?
40代・50代は「評価されない」「報われない」という外からの不満が主なきっかけになりやすい。一方、20代・30代は「そもそも会社に多くを期待していない」という内発的な価値観が背景にあることが多い。怒りより、冷静な現実判断から始まっているのが若手世代の特徴だ。
Q2. 静かな退職をしている20代は、転職を考えていますか?
マイナビ調査(2025年)によると、「静かな退職を続けたくない」と答えた割合は20代が全年代で最も高く35.4%だった。静かな退職状態に甘んじているわけではなく、「本当は変わりたい」という気持ちを持ちながらも動けずにいる人が多い。
Q3. 入社してすぐ静かな退職状態になるのはなぜですか?
「働き始めてから静かな退職を選ぶようになった」と答えた人が71%に上る(GPTW Japan, 2024)。入社前のイメージと実際の職場環境のギャップ、意見が通らない経験、評価されない日々——これらが短期間で積み重なることで、心が早期に職場から離れてしまう。
Q4. コスパ重視で働くのは悪いことですか?
悪いことではない。「給与に見合った仕事量にする」という考え方は、契約の範囲内で働くという当然の権利だ。問題があるとすれば、その判断に至らせた職場環境の側にある。
Q5. 上司として、部下の静かな退職にどう気づけますか?
会議での発言が減った、以前より反応が薄い、定時ぴったりに帰るようになった——こうした小さな変化が初期サインになりやすい。ただし、それを「問題行動」として指摘する前に、「なぜそうなったか」を問い直す姿勢が先に必要だ。
Q6. 静かな退職状態の若手は、どうすれば変わりますか?
GPTW Japanの調査では、静かな退職実践者の約4割が「環境が変わっても働き方は変わらない」と回答している。裏を返せば、残り6割には変化の余地がある。鍵は評価制度の透明化と、小さな提案が通る経験の積み重ねだ。ただし、手遅れになる前に動くことが重要で、静かな退職が始まった初期段階での対応が効果的とされている。
Q7. 静かな退職をしている自分は、このままでいいですか?
「このまま」を続けることで心が守られているなら、今はそれでいい。ただし、それを「終点」にするのではなく「充電期間」として使えると、次の一手が見えてくる。まず1日15分だけ、仕事と関係のない自分のことを考える時間を作ることから始めてみてほしい。

癒しの色彩心理 イッセーのホームページ
