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【語源で覚える】cheap|「チープ」のつもりで言うと、失礼になる

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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「チープな作り」「チープな感じ」。日本語になったチープは、ちょっと安っぽいね、くらいの軽い言葉ですよね。

でも英語の cheap は、少し扱いが違います。モノに使うなら問題ないのに、人やお店、サービスに向けた瞬間、「ケチ」「みすぼらしい」という刺のある言葉に変わる。カタカナで馴染んでいるぶん、英語で話すときにもつい口から出てしまう・・・それが cheap のいちばん怖いところです。

そしてもう一つ。この cheap、もともとは「安い」という意味ですらありませんでした。

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cheap の意味の中心|もとは「市場・取引」だった

cheap のもとになったのは、古英語の ceap。意味は「取引」「売買」、そして「市場」です。

ここに「安い」はまだ出てきません。では、どこから来たのか。中英語の god chep(良い取引=good bargain)という言い回しがよく使われるようになり、その「お買い得」の部分だけが切り取られて、cheap =「安い」という形容詞になった・・・という流れです。「安い」の意味が定着したのは1500年ごろ。英語の歴史からすると、かなり新しい顔です。

ついでに言うと、古英語で「安い」を表す言葉は undeor、つまり「un+dear(高価でない)」でした。イギリス英語で今も dear が「値段が高い」の意味で使われるのは、その名残です。

意味の中心をひとことで言えば、cheap は「市場で値段をつけられたもの」。この「値踏みされている」感じが残っているせいで、人に向けると「あの人は安い」という響きになってしまうわけです。

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cheap の基本の意味と使い方

まずモノに使う場合。これは日本語のチープとほぼ重なります。

  • a cheap ticket(安いチケット)
  • cheap labor(安価な労働力)
  • Those shoes look cheap.(あの靴は安っぽく見える)

ただし3つ目でわかるように、モノに使っても「安っぽい=品質が低い」の意味が混ざります。cheap は値段と品質の両方を同時に指せる言葉なんです。

問題は、人に使うとき。

  • He’s so cheap.(あいつは本当にケチだ)

これは値段の話ではなく、性格の批判です。日本語のチープのつもりで言うと、かなり角が立ちます。

慣用表現もいくつか押さえておくと便利です。

  • dirt cheap(ものすごく安い・・・直訳は「土のように安い」)
  • on the cheap(安上がりに)
  • a cheap shot(卑怯な一撃、不当な批判)
  • Talk is cheap.(口先だけなら簡単だ)

使い分け|ビジネスで cheap は、まず使わない

ここが実用上いちばん役立つところです。英語圏のビジネス文書や商品説明で、cheap はほとんど見かけません。「安い」と言いたいとき、プロはこう言い換えます。

言い換え意味・ニュアンス使う場面
affordable手が届く、無理のない価格商品説明・広告の定番
inexpensive高くない(中立的・安全)cheap の素直な置き換え
reasonable妥当な、納得できる値段reasonably priced の形で頻出
economical経済的、長い目で得燃費・ランニングコスト
cost-effective費用対効果が高い社内資料・提案書
budget-friendly予算にやさしい旅行・飲食の案内
competitive他社に負けない価格competitive prices で頻出

cheap が「値段は安いが、それなり」と言っているのに対し、affordable は「無理なく買える」と、買い手に寄り添った言い方になります。同じ金額でも、相手に残る印象がまるで違う・・・英語の価格表現は、ここを使い分けています。

迷ったら inexpensive。中立でいちばん安全です。

ceap(取引・市場)でつながる単語ネットワーク

cheap のもとになった ceap(取引・市場)をたどると、まったく別の顔をした言葉が現れます。ここが cheap という単語のいちばん面白いところです。

単語・地名意味つながり
chapman行商人古英語 ceapman〈取引する人〉
chapやつ、男(くだけた語)chapman が縮まった形。もとは「取引相手・客」
cheapen価値を下げる、安っぽくするcheap+-en
cheapskateけちんぼcheap+skate(由来は諸説あり)
Cheapsideロンドンの地名ceap〈市場〉=かつての大市場
Eastcheapロンドンの地名同じく「東の市場」
Copenhagenコペンハーゲン(デンマークの首都)køber〈商人・買い手〉+havn〈港〉=「商人の港」

いちばん驚くのは、たぶん最後の Copenhagen でしょう。デンマーク語の København を分けると、køber(商人・買い手)+ havn(港)。この køber は、英語の cheap とまったく同じゲルマン系の語根から来ています。北欧の美しい首都の名前が、実は「商人たちが集まる港」・・・つまり cheap の親戚なんです。

ドイツ語の kaufen(買う)、オランダ語の goedkoop(安い=「良い取引」そのまま)も同じ一族。ヨーロッパの商いの歴史が、この小さな語に全部残っています。

派生語|cheap まわり

単語品詞意味発音
cheap形容詞安い、安っぽい、ケチなチープ /tʃiːp/
cheaply副詞安く、安上がりにチープリー /ˈtʃiːpli/
cheapness名詞安さ、安っぽさチープネス /ˈtʃiːpnəs/
cheapen動詞価値を下げる、安っぽくするチーペン /ˈtʃiːpən/
cheapskate名詞けちんぼ(口語)チープスケイト /ˈtʃiːpskeɪt/
chap名詞やつ、男(主に英)チャップ /tʃæp/

cheaply は「安く手に入れる・安く作る」の意味で使います。buy it cheaply(安く買う)、produced cheaply(安く作られた)。こちらも、人の行為に向けると「ケチくさく」の響きが出ることがあります。

TOEIC・英検での出題傾向

TOEIC で押さえておきたいのは、cheap そのものより言い換えです。広告やお知らせの英文では、価格の安さは affordable・reasonably priced・competitive prices といった形で書かれます。本文にこれらの語があり、設問や選択肢で別の表現に置き換えられる・・・というパラフレーズは、Part 7 の典型的な出題のしかたです。cheap とセットで覚えておくと、読解でも設問でも効きます。

cheap 自体は英検でも早い級から出る基本語ですが、「人に使うと失礼」という語感は、スピーキングやライティングでこそ差がつくポイントです。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. This jacket was cheap, but it has lasted for years.
  2. Cheap does not always mean poor quality.
  3. You found a cheap flight, and the whole trip became possible.
  4. The café near the station is cheap and warm.
  5. Try “affordable” instead of “cheap” when you talk to a client.
  6. A cheap dinner with a good friend can beat any fancy meal.
  7. Calling a person cheap sounds harsher than you might think.
  8. Your kindness is never cheap, even when it costs nothing.
  9. He started with a cheap guitar and kept playing every day.
  10. Cheap or not, what you chose with care will stay with you.

語源メモ|ceap と、ラテン語 caupo

cheap は、古英語の名詞 ceap(取引、売買、市場)と動詞 ceapian(売買する)にさかのぼります。さらに遡ると、ゲルマン語がラテン語の caupo(小商人・行商人)を早い時期に借用したもの、というのが有力な説です。

形容詞としての cheap が「安い」の意味で定着したのは1500年ごろ。中英語の god chep(良い取引)という言い回し・・・これはフランス語の a bon marché を訳したものですが・・・この後半部分だけが独り立ちしました。「軽んじられる、ありふれた」という否定的な意味が加わったのは1590年代です。ラテン語の vilis(安い→卑しい)にも同じ意味の変化が起きていて、「安い」が「価値がない」に転ぶのは、言語を越えてよくある道筋のようです。

地名に残った ceap も見逃せません。ロンドンの Cheapside と Eastcheap は、どちらも中世の市場があった場所。イングランド各地に残る Chipping ◯◯ という地名も同じ系統で、「市場のある町」を意味します。

そして ceapman(取引する人)が短くなった chap が、「取引相手・客」から「やつ、男」というくだけた呼び方に変わったのが17〜18世紀。old chap と気安く呼びかけるときの chap が、もとは商売の言葉だった・・・というわけです。

まとめ

cheap は、古英語 ceap(取引・市場)=「値踏みされたもの」が意味の中心。そこから「お買い得」→「安い」→「安っぽい・ケチな」へと転がってきました。

  • モノに使う・・・安い、ただし「安っぽい」が混じる
  • 人に使う・・・「ケチ」。日本語のチープのつもりで言うと失礼になる
  • ビジネスでは・・・affordable/inexpensive/reasonable/cost-effective に言い換える
  • 意外な親戚・・・chap(やつ)、Cheapside(ロンドンの市場)、Copenhagen(商人の港)

カタカナになっている言葉ほど、英語での手触りを一度確かめておく。cheap は、その代表格です。

cheap の語源ワードマップ。中心は cheap(=市場で値踏みされたもの、安い)で、語源 ceap(取引・市場)から god chep(良い取引)を経て「安い」に至る流れを示す。言い換え一族(affordable / inexpensive / reasonable / economical / cost-effective)、ceap(取引)一族(chap / chapman / cheapen / cheapskate / Cheapside / Copenhagen)、覚え方のヒント(市場で値踏みされたもの、人に使うとケチに響く)の4クラスターに整理した図。
  • 語源・中心:古英語 ceap(取引・市場)→ god chep(良い取引)→「安い」
  • 覚え方のヒント:市場で値踏みされたもの。だから人に使うと失礼になる
  • 言い換え一族:affordable/inexpensive/reasonable/economical/cost-effective
  • ceap(取引)一族:chap/chapman/cheapen/cheapskate/Cheapside/Copenhagen

関連記事(内部リンク)

翻訳練習の解答

  1. このジャケットは安かったけれど、何年も長持ちしている。
  2. 安いからといって、品質が悪いとはかぎらない。
  3. あなたが安い航空券を見つけたから、この旅行そのものが実現した。
  4. 駅のそばのカフェは、値段が手頃で居心地もいい。
  5. 取引先と話すときは、cheap ではなく affordable を使ってみよう。
  6. 気の合う友人との安い夕食は、どんな豪華な食事にも勝ることがある。
  7. 人をケチ呼ばわりするのは、思っている以上にきつく響く。
  8. あなたのやさしさは、お金がかからなくても決して安いものではない。
  9. 彼は安いギターから始めて、毎日弾き続けた。
  10. 安くても高くても、丁寧に選んだものは長く手元に残る。

BSL(Business Service List)集録語

派生語のcheaplyは Business Service List(BSL) に集録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project