会議で飛び交う「エビデンスは?」の、あのエビデンス。日本語になったのは比較的最近ですが、もうすっかり定着しましたよね。
このエビデンス(evidence)には、兄弟のような単語があります。それが evident(明らかな、はっきりしている)。綴りを並べてみると、最後が違うだけです。
そしてこの2語の真ん中に隠れているのが、vid(見る)。ここに気づくと、まったく別ジャンルに見えていた単語が、一本の線でつながります。たとえば・・・video(ビデオ)。
evident を分解してイメージで覚える
evident をパーツで見ると、こうなります。
e(ex=外へ・すっかり)+ vid(見る)+ ent(〜している)
つまり「外にすっかり見えている状態」。隠れていない、目をこらさなくても見える、だから「明らかな」。
日本語の「明らか」も、よく見れば「明るい」が入っていますよね。暗がりでは見えないものが、光の中ではっきり見える。evident の発想も、まったく同じです。証明や理屈をたどらなくても、もう見えてしまっている・・・それが evident の意味の中心です。
覚え方の手がかりは、やはり エビデンス。「証拠」と訳されますが、もとをたどれば「はっきり見えるもの」。見えるから証拠になる、という順番です。
evident の基本の意味と使い方
evident は「明らかな」「はっきりしている」を表す形容詞です。
- It is evident that she is happy.(彼女が幸せなのは、見ればわかる)
- His talent was evident from the start.(彼の才能は、最初から明らかだった)
- The results are evident in the data.(結果はデータにはっきり表れている)
よく使うのが It is evident that … の形。「〜なのは明らかだ」と切り出すときの定型です。obvious(当たり前に明らか)や clear(はっきりしている)と近い意味ですが、evident には「証拠や様子を見れば判断できる」という、少し理詰めの響きがあります。
evidence との関係|兄弟のような2語
evident(形容詞)と evidence(名詞)は、同じラテン語 evidens から生まれた2語です。
| 単語 | 品詞 | 意味 | 使うとき |
|---|---|---|---|
| evident | 形容詞 | 明らかな | 状態を言う(It is evident that …) |
| evidence | 名詞 | 証拠、根拠 | モノ・情報を指す(There is no evidence.) |
| evidently | 副詞 | 明らかに、どうやら | 文を修飾する |
ひとことで言えば、evidence が「見えるもの」で、evident が「見えている状態」。日本語で先に「エビデンス」を覚えてしまった人は、そこから evident へ逆輸入する形で広げると早いです。
なお evidently には「どうやら〜らしい」という、断定を少しゆるめる使い方もあります。見た感じでそう判断した、というニュアンスです。
vid/vis(見る)でつながる単語ネットワーク
evident の意味の中心 vid(ラテン語 videre=見る)は、英語のなかでも指折りに子だくさんな語根です。形を vis に変えながら、あちこちに顔を出します。
| 単語 | 意味 | 分解とイメージ |
|---|---|---|
| video | 動画、ビデオ | ラテン語で「私は見る」そのもの |
| vision | 視力、展望 | 見ること、見えているもの |
| television | テレビ | tele(遠く)+vision=遠くを見る |
| visible | 目に見える | vis(見る)+ible(できる) |
| visual | 視覚の | vis(見る)+ual |
| visit | 訪問する | もとは「会いに行って見る」 |
| visa | ビザ、査証 | 「見られた=確認済みの書類」から |
| review | 見直す、復習、レビュー | re(再び)+view(見る) |
| revise | 改訂する | re(再び)+vis(見る)=見直す |
| supervise | 監督する | super(上から)+vis(見る) |
| survey | 調査する、見渡す | sur(上から)+vey(見る) |
| provide | 提供する、備える | pro(前もって)+vid(見る)=先を見て用意する |
| prudent | 慎重な、思慮深い | providens(先を見ている)の縮まった形 |
| interview | 面接、インタビュー | inter(互いに)+view=向き合って見る |
| envy | ねたみ、うらやむ | in(〜に向けて)+vid=悪意をもって見る |
provide(提供する)が「見る」の仲間というのは、なかなか意外ではないでしょうか。pro(前もって)+ vid(見る)で「先を見越して用意しておく」。そこから「供給する」へ移りました。prudent(慎重な)も同じ発想で、「先が見えている人」が、いつしか「思慮深い人」になったわけです。
envy(ねたみ)も同じ家族。「じっと見る」という行為に悪意がこもると、ねたみになる。視線の生々しさが、そのまま語源になっています。
もっと遠くまでたどると|wise・idea・history も親戚
さらに語根のレベルまでさかのぼると、vid は印欧祖語の *weid-(見る)に行き着きます。この語根からは、ラテン語経由ではない単語も生まれているとされています。
| 単語 | 意味 | 経由 |
|---|---|---|
| wise | 賢い | ゲルマン語系。「見て知っている」から |
| wisdom | 知恵 | wise+dom |
| wit | 機知、知力 | 「知る」から |
| idea | 考え、アイデア | ギリシャ語 idein(見る)から |
| idol | 偶像、アイドル | ギリシャ語 eidos(姿・見た目)から |
| history | 歴史 | ギリシャ語 histor(見て知っている人)から |
「見る」が「知る」になる・・・この意味の移り変わりは、日本語の「見識」「見解」とも重なります。見たことが、知っていることになる。言語をまたいで同じ発想が働いているのは、少し不思議な気がしますよね。
※ この段落は語根レベルの推定を含みます。評価が確定している vid/vis 系(上の表)とは分けて考えてください。
派生語|evident まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| evident | 形容詞 | 明らかな | エヴィデント /ˈevɪdənt/ |
| evidence | 名詞・動詞 | 証拠、根拠/明らかに示す | エヴィデンス /ˈevɪdəns/ |
| evidently | 副詞 | 明らかに、どうやら | エヴィデントリー /ˈevɪdəntli/ |
| self-evident | 形容詞 | 自明の | セルフエヴィデント |
self-evident は「それ自体で明らか」。アメリカ独立宣言の一節で知られる言い回しで、日本語では「自明の」にあたります。
TOEIC・英検での出題傾向
正直なところ、TOEIC で頻度が高いのは evident より evidence のほうです。Part 7 の報告書・調査関連の文章で「根拠・証拠」として登場します。
一方 evident は、Part 5 の語彙選択問題で obvious・apparent・clear と並べて問われる形が中心。英検では準1級あたりの読解でよく見かけます。どちらも、まず evidence を軸に覚えて、evident・evidently を横に並べるのが効率的です。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- Your progress is evident.
- It is evident that you have practiced a lot.
- Her kindness is evident in small things.
- His effort was evident from the first day.
- It became evident that the plan was working.
- The reason for your growth is evident now.
- It is evident that small steps add up.
- What is evident today was invisible a year ago.
- You may not see it, but your change is evident to others.
- Keep going, and the results will be evident.
語源メモ|ex と videre が出会う言葉
evident は、ラテン語 evidentem(主格 evidens)に由来します。分けると ex(外へ・すっかり) と、videre(見る) の現在分詞 videns。「外にすっかり見えている」が原義です。14世紀後半、古フランス語 evident を経て英語に入りました。
名詞の evidence は、後期ラテン語 evidentia(証明)から。古典ラテン語では修辞学の用語で「鮮明さ・際立ち」を意味していました。英語に入った当初(1300年ごろ)は「そこから推論を引き出せる外観」という、かなり語源に近い意味だったようです。法律用語としての「証拠」は1500年ごろから広まり、それまで使われていた witness を押しのけていきました。
video はずいぶん新しい語で、1935年に audio の視覚版として作られたものです。もとはラテン語の動詞そのまま、「私は見る」という一人称の活用形でした。ラテン語の一文がそのまま英単語になっている・・・という点では、かなり変わった経歴の持ち主です。
なお、television は tele(ギリシャ語「遠く」)+ vision のギリシャ・ラテン混成語。異なる言語の部品を組み合わせた、20世紀初頭らしい造語です。
まとめ
evident は、e(ex=外へ)+ vid(見る)+ ent で「すっかり見えている」=明らかな。
- vid/vis(見る)・・・video/vision/visible/visit/review/supervise/provide など、英語で最も子だくさんな語根のひとつ
- evidence との関係・・・evidence が「見えるもの(証拠)」、evident が「見えている状態(明らかな)」
- 意外な仲間・・・provide(先を見て備える)、prudent(先が見えている)、envy(悪意をもって見る)
会議で聞く「エビデンス」が、video と同じ家族だった。そう気づいた瞬間から、vid/vis が入った単語は、だいたい「見る」の話だと見当がつくようになります。

- 語源・中心:e(ex=外へ)+ vid(見る)+ ent =「すっかり見えている」
- 覚え方のヒント:エビデンス → 見えるから証拠になる
- vid/vis(見る)一族:video/vision/television/visible/visit/visa/review/revise/supervise/survey
- 意外な仲間:provide/prudent/envy/interview
関連記事(内部リンク)
- 英単語の語源・パーツ分解 全リスト → https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/
- accuracy の語源(正確さ/cura=手をかける)→ https://isseisuzuki.org/accuracy/
- obtain の語源(手に入れる/tenere=保つ)→ https://isseisuzuki.org/obtain/
- valid の語源(有効な/val=強い)→ https://isseisuzuki.org/valid/
翻訳練習の解答例
- あなたの成長は、はっきり目に見えている。
- あなたがたくさん練習してきたことは、見ればわかる。
- 彼女のやさしさは、小さなところに表れている。
- 彼の努力は、初日からはっきり伝わってきた。
- その計画がうまくいっていることが、だんだん明らかになった。
- あなたが伸びた理由は、もうはっきりしている。
- 小さな一歩が積み重なるのは、明らかなことだ。
- 今はっきり見えているものも、一年前には見えていなかった。
- 自分では気づかなくても、あなたの変化は周りには見えている。
- 続けていけば、結果はおのずと見えてくる。
集録語彙リスト
この単語は NAWL(学術)・TSL(TOEIC)・BSL(ビジネス)のすべて に集録されています。学術・試験・実務のどの場面でも使われる、最優先で覚えたい一語です。
NAWL(New Academic Word List)集録語
この単語は New Academic Word List(NAWL) に集録されています。NAWLは大規模な学術コーパスから抽出された960語のリストで、これらを覚えるだけで学術英語の約92%をカバーできます。論文や英字ニュースを読むとき、必ず出会う一語です。出典:New General Service List Project
TSL(TOEIC Service List)集録語
この単語は TOEIC Service List(TSL) に収録されています。TSLはTOEICの出題語彙を分析して作られた1,200語のリストで、これらを押さえればテストに出る語彙の約99%をカバーできます。スコアアップに直結する一語です。
出典:New General Service List Project
BSL(Business Service List)集録語
この単語は Business Service List(BSL) に集録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project

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