パソコンやテレビの画面を、日本語でもふつうに「モニター」と呼びますよね。英語で書くと monitor。監視カメラのモニター、血圧をモニターする・・・どれも「見張る」イメージで使われています。
ところが、この monitor のもとになったラテン語 monitor は、「見張る人」ではありません。「思い出させてくれる人、気づかせてくれる人」です。忘れそうなことを、そっと教えてくれる人・・・それが monitor の原点でした。
そして、その「思い出させる」という中身をいちばん短い形で持っている英単語が、mind です。monitor の mon と、mind の min。見た目はよく似ていませんが、たどっていくと同じ場所に行き着きます。
mind を分解してイメージで覚える
mind は、接頭辞と語根に切り分けられるタイプの単語ではありません。古英語 gemynd(記憶・思い出・心)が、そのまま今の形になった一語です。
だから mind は、語根の家族ごとつかまえるのがいちばん早い。意味の中心はこれです。
*mind = 印欧祖語 men-(考える・心に浮かべる)
覚え方のコツを一つ。mind を「心に置いてある状態」とイメージしてください。これだけで、ばらばらに見える表現が一本につながります。
- keep in mind・・・心の中に置いておく
- remind・・・re(もう一度)+ mind = もう一度、心に乗せてあげる
- monitor・・・忘れそうなことを教えてくれる人、知らせてくれる装置
リマインドは「思い出させる」、モニターは「知らせてくれる」。日本語になったカタカナの時点で、実はもう親戚どうしなんです。
そして *men-(考える)は、英語に入るまでに三本の道を通ってきました。
- ゲルマン語の道・・・mind/remind/mindful(英語の本家筋)
- ラテン語の道・・・mens(心)系と monere(思い出させる)系
- ギリシャ語の道・・・mania/mnemonic/amnesia
この三本を知っておくと、mind から一気に世界が広がります。
mind の基本の意味と使い方
mind は名詞と動詞の両方で使われ、しかも日常での顔がかなり違います。
名詞の mind(心・頭・考え)
- make up your mind(決心する)
- change your mind(考えを変える)
- keep it in mind(心に留めておく)
- come to mind(ふと思い浮かぶ)
- peace of mind(心の安らぎ)
動詞の mind(気にする・注意する・世話をする)
- Do you mind if I sit here?(ここに座ってもいいですか)
- Would you mind closing the window?(窓を閉めていただけますか)
- Mind your step.(足元にご注意)
- Could you mind the dog for an hour?(1時間、犬を見ていてもらえますか)
動詞の mind には「嫌だと思う」というニュアンスがあります。だから I don’t mind. は「気にしません=かまいませんよ」。ロンドンの地下鉄の Mind the gap(すき間にご注意)も、この「気をつける」の mind です。
使い分け|mind・remind・remember
この3語は日本語にするとどれも「思い出す」まわりに来るので、混ざりやすいところです。
| 単語 | 誰の頭の中で起きるか | 例文 |
|---|---|---|
| remember | 自分で思い出す | I remember her name.(彼女の名前を覚えている) |
| remind | 人に思い出させる | Remind me to call her.(彼女に電話するよう言ってね) |
| mind | 心に留める・気にする | Keep her name in mind.(彼女の名前を覚えておいて) |
remind は、ひとりでは完結しない動詞です。必ず「誰に」が要ります。
- remind + 人 + of + 名詞 ・・・ You remind me of my sister.(妹を思い出させる)
- remind + 人 + to do ・・・ Please remind me to send it.
- remind + 人 + that ・・・ He reminded me that the office closes early.
ちなみに remember は、見た目が近いのに 語源はまったく別ルートです。こちらはラテン語 memor(覚えている)の家系で、memory や memorial の仲間。「思い出す」でひとくくりにせず、mind 側と memory 側の2系統があると整理しておくと、迷いません。
関連語ネットワーク|mind から広がる三本の道
ラテン語 monere(思い出させる・注意する)系
monitor の直系です。「忘れそうなことを知らせる」が共通の芯になっています。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| monitor | 監視する、モニター | 思い出させてくれる人・装置 |
| monument | 記念碑、記念建造物 | 文字どおり「思い出させるもの」 |
| summon | 召喚する、呼び出す | sub(そっと)+monere=注意を向けさせる |
| admonish | 戒める、忠告する | ad(〜に)+monere=思い出させて注意する |
| premonition | 予感、虫の知らせ | pre(前もって)+monere=先に知らせること |
| monster | 怪物 | monstrum=前触れ・凶兆を知らせるもの |
| demonstrate | 実証する、デモをする | de(しっかり)+monstrare=はっきり示す |
| muster | 召集する、奮い起こす | monstrare(示す)から。点呼して並べる |
monster が入っているのが意外ですが、ローマでは異形の生きものは「神からの前触れ」と受け取られていました。monstrum はもともと「凶兆・前触れ」。知らせるもの、だったんです。
ラテン語 mens(心)系
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| mental | 心の、精神の | mens(心)+-al |
| mention | 言及する | mentio=心に浮かんだことを口に出す |
| comment | コメント、論評 | com+meminisse(思い出す)=心で練り上げたもの |
| dementia | 認知症 | de(離れて)+mens=心から離れた状態 |
| reminisce | 昔を懐かしむ | re+minisci(思い出す) |
| memento | 記念品、形見 | ラテン語の命令形「思い出せ」 |
| mentor | 助言者、メンター | 「考えさせる人」とされる(諸説あり) |
ギリシャ語・サンスクリット側
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| mania | 熱狂、〜狂 | 心が燃え上がった状態 |
| mnemonic | 記憶術の | mneme(記憶)から |
| amnesia | 記憶喪失 | a(〜でない)+mnesi(覚えている) |
| amnesty | 恩赦、大赦 | 「なかったことにする=忘れる」 |
| automatic | 自動の | auto(自分)+matos(考える・動く) |
| mantra | マントラ、真言 | サンスクリット man-(考える)から |
automatic が仲間なのは、ちょっと面白いところです。auto(自分)+ matos(考えている)・・・自動ドアも自動運転も、語源の上では「自分で考えて動くもの」。amnesty(恩赦)が「忘れること」なのも、言われてみれば筋が通っています。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| mind | 名詞・動詞 | 心、頭/気にする、注意する | マインド /maɪnd/ |
| remind | 動詞 | 思い出させる | リマインド /rɪˈmaɪnd/ |
| reminder | 名詞 | 思い出させるもの、通知 | リマインダー /rɪˈmaɪndər/ |
| mindful | 形容詞 | 気を配っている、意識している | マインドフル /ˈmaɪndfəl/ |
| mindfulness | 名詞 | マインドフルネス、気づき | /ˈmaɪndfəlnəs/ |
| mindless | 形容詞 | 何も考えていない、単調な | /ˈmaɪndləs/ |
| mindset | 名詞 | 考え方、心構え | マインドセット /ˈmaɪndset/ |
| open-minded | 形容詞 | 心が開かれた、柔軟な | /ˌoʊpənˈmaɪndɪd/ |
| absent-minded | 形容詞 | うわの空の | /ˌæbsəntˈmaɪndɪd/ |
| mastermind | 名詞・動詞 | 首謀者/立案する | /ˈmæstərmaɪnd/ |
remind も NGSL(基礎語彙)に、reminder は TSL(TOEIC)とBSL(ビジネス)に収録されています。mind を入り口にすると、この3語がまとめて片づきます。
TOEIC・英検での傾向
mind は、TOEICでは文法問題の常連です。押さえるポイントは2つ。
1つめ。mind のあとは動名詞(-ing)で、to不定詞は取れません。
- Would you mind sending me the file?(◯)
- Would you mind to send me the file?(×)
Part 5 で選択肢に to send と sending が並んでいたら、mind を見た瞬間に -ing です。
2つめ。Do you mind ~? への答え方。
mind は「嫌だと思う」なので、OKの返事は No 側になります。
- A: Do you mind if I open the window?
- B: No, not at all.(どうぞ、かまいませんよ)
Part 2 でここを逆に取ると落とします。実際の会話では Go ahead. や Of course not. と返すことも多く、音声問題ではこちらのほうがよく出ます。
そのほか、Please keep in mind that ~(〜にご留意ください)、We have someone in mind.(候補者に心当たりがあります)といった形が、メールや会議のPart 6・7で頻出します。英検では準2級〜2級で、Would you mind ~? の形が会話問題に顔を出します。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- Keep this in mind: you have come a long way.
- Would you mind helping me for a few minutes?
- She changed her mind and decided to start again.
- I don’t mind waiting a little longer.
- Your mind needs rest as much as your body does.
- A kind word can stay in your mind for years.
- He has a quiet mind and a warm heart.
- Make up your mind when you are ready, not when others are.
- Nothing came to mind at first, but the answer arrived later.
- Peace of mind is built one small habit at a time.
語源メモ
mind は、古英語の gemynd(記憶、思い出、心、意図)から来ています。さらにさかのぼるとゲルマン祖語 *ga-mundiz、そして印欧祖語の語根 *men-(1)「考える」。
注目したいのは、mind のいちばん古い意味が「記憶」だったことです。今の英語では「記憶」の意味はほとんど消えていますが、化石のように残っている表現があります。
- bear in mind(14世紀後半)
- call to mind(15世紀初め)
- time out of mind(記憶にないほど昔から/14世紀半ば)
「知性・思考」の意味は1300年ごろ、「意図・つもり」も同じころ。動詞の mind は14世紀半ばに「思い出す」として登場し、「気にする・嫌がる」は1600年ごろ、「世話をする」は1690年代と、意味が後から積み上がっていきました。
remind は、意外と新しい語です。 1640年代に「自分が思い出す」の意味で現れ(この用法は今は消えています)、1650年代になって「人に思い出させる」になりました。しかも re-(ラテン語)+ mind(ゲルマン語)という、出自の違う部品を組み合わせた混血語です。
monitor のほうは、ラテン語 monere(思い出させる、忠告する、警告する)から作られた「〜する人」の形。英語に入ったのは1540年代で、最初の意味は**「風紀を預かる上級生」**でした。その後の広がりがなかなか劇的です。
- 1826年・・・オオトカゲの名前(ワニの接近を人に知らせると信じられていたため)
- 1862年・・・南北戦争の装甲艦「モニター号」。設計者エリクソンが「南部の指導者を戒める(admonish)船」という意図で命名
- 1931年・・・放送の品質をチェックする装置
- そこから・・・カメラの映像を映す画面、つまり今の「モニター」
動詞の monitor(監視する)が生まれたのは1924年で、名詞よりずっと後です。「見張る」は、monitor にとってかなり新しい顔なんですね。
money について一つ注意を。英語の money は、ローマの女神ユノの添え名 Moneta に由来します。その神殿のそばで貨幣が鋳造されたからです。この Moneta を monere(忠告する)と結びつけ「警告する女神」と解する説は古くから伝わっていますが、etymonline は「意味としては筋が通るものの、語源としては難しい」と留保しています。面白い話ではあるので、言い切らずに「そういう説がある」と覚えておくのが安全です(ちなみに mint〈造幣局〉は money の双子の兄弟です)。
remember は別の家系です。ラテン語 memor(覚えている)から来ていて、memory・memorial・commemorate と同じグループ。mind 一族ではありません。
最後に一つだけ。*men- のような印欧祖語の語根は、現存する言語から再構された推定の形です。「たぶんここから枝分かれした」という見取り図であって、確定した一次資料があるわけではありません。そのうえで、mind と monitor と mental と mania が同じ場所に集まる・・・この眺めの良さが、語源で覚えることの一番のごほうびだと思います。
まとめ
mind は、印欧祖語 *men-(考える)から生まれた、「心に置いてある状態」を表す一語。
- 語源・中心・・・*men-(考える・心に浮かべる)。古英語 gemynd の最初の意味は「記憶」
- 覚え方のヒント・・・keep in mind=心に置く。remind=もう一度、心に乗せる
- monere(思い出させる)一族・・・monitor/monument/summon/admonish/premonition/monster
- mens(心)一族・・・mental/mention/comment/dementia/reminisce
- ギリシャ語側・・・mania/mnemonic/amnesia/amnesty/automatic
モニターは、見張るためではなく、気づかせるために生まれた言葉でした。mind を入り口にすると、その「気づかせる」仲間が、一気に地図になって見えてきます。

- 語源・中心:*men-(考える)=「心に置いてある状態」
- 覚え方のヒント:keep in mind(心に置く)/remind(もう一度心に乗せる)
- monere(思い出させる)一族:monitor/monument/summon/admonish/premonition/monster
- mens(心)一族:mental/mention/comment/dementia/reminisce
- ギリシャ語一族:mania/mnemonic/amnesia/amnesty/automatic
NGSL(New General Service List)収録語
この単語は New General Service List(NGSL) に収録されています。NGSL は、大規模な英語コーパスから選ばれた約2,800語の基礎語彙リストで、これらを覚えるだけで一般的な英文の約92%をカバーできます。日常でも英文読解でも、何度も出会う基本の一語です。
出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答
- これだけは覚えておいてください。あなたは、ずいぶん遠くまで歩いてきました。
- 少しのあいだ、手伝っていただけますか。
- 彼女は考えを変えて、もう一度やり直すことにした。
- もう少し待つくらい、私は気になりません。
- あなたの心にも、体と同じだけ休みが必要です。
- やさしい一言は、何年も心に残ることがある。
- 彼は静かな心と、温かい気持ちを持っている。
- 決めるのは、あなたの準備ができたとき。まわりの都合に合わせなくていい。
- 最初は何も浮かばなかったけれど、答えはあとからやってきた。
- 心の安らぎは、小さな習慣を一つずつ積み上げて作られる。


