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【語源で覚える】depart|デパートと同じ depart が、なぜ「故人」を意味するのか

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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デパートの中に depart がいる

駅ビルのデパートに入るとき、「depart」という英単語を思い出す人はまずいないと思います。

でも、デパートは英語の department store の短縮形です。前半を切り出すと department・・・さらに短くすると depart。飛行機や電車の「出発」を表す、あの depart とまったく同じ綴りです。

ここに最初の引っかかりがあります。「出発する」と「お店の売り場」に、どんな関係があるのか。

答えは「分ける」です。そして、この「分ける」をたどっていくと、depart にはもう一つ、日本の学習者がほとんど習わない顔が出てきます。それが departed=「故人」です。

お悔やみの場面で使われる the departed という言い方。なぜ「出発した人たち」が「亡くなった方々」になるのか。そこまで一気に見ていきます。

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depart の語源|de(離れて)+ part(分ける)

depart は後期ラテン語の departire「分ける」から来ています。

de-「〜から・離れて」+ partire「分ける・切り離す」。

後半の partire は、ラテン語 pars(属格 partis)「部分・一片・分け前」から出た動詞です。英語の part(部分)そのものと同じ語です。

つまり depart を分解すると、

de(離れて)+ part(分ける)=「切り離す」

という、驚くほど素直な形になります。part の意味を知っている人なら、ほぼ答えを持っているわけです。

一つだけ注意点があります。depart の親をラテン語 dispartire(dis+partire)とする説明を見かけることがありますが、これは別の語です。dispartire から来たのは英語の dispart(1550年代、分割する)のほうで、depart の直接の親は de- のついた departire です。

なお pars の家族は非常に大きく、part・partial・particle・particular・apart・apartment・compartment・impart・portion・proportion・parcel・parse など、英語の基本語がずらりと並びます。この一族の広がりは partial の記事で詳しく扱っているので、そちらを参照してください。

【語源で覚える】partial|パートタイムの part が「えこひいき」に変わるとき

【語源で覚える】partial|パートタイムの part が「えこひいき」に変わるとき
partial(部分的な)を語源から。パートタイムの part、アパートの part と同じラテン語 pars(部分)。でも I'm partial to ~ は「〜に目がない」。part が持つ「一方の側」という意味がカギです。impartial との関係、jeopardy・parse など綴りから見えない一族、翻訳練習10問つき。

「出発する」は後から来た意味

ここが depart のおもしろいところです。

英語に入ったばかりの depart は、「出発する」ではありませんでした。

・13世紀半ば:互いに別れる・いとまを告げる
・13世紀後半:いくつかの部分に分ける
・1300年ごろ:立ち去る・退く
・14世紀後半:去る・やめる

もとの意味は「分ける・分かれる」で、他動詞としても使われていました。今の私たちが知っている「出発する」は、その後に育った枝です。

日本語で考えると、むしろ自然かもしれません。出発するというのは、その場にいた人たちから「自分を切り離す」ことです。

駅のホームで手を振るとき、物理的に起きているのはまさに分離です。depart は、その分離のほうを先に名前にした語だった、ということになります。

departed はなぜ「故人」を意味するのか

本題です。

英語には depart this life という言い方があります。直訳すると「この人生を去る」。意味は「死ぬ」です。

古い墓碑銘でよく見る形で、現代でも追悼文や formal な文章に残っています。

・He departed this life on May 2nd, 1930.(彼は1930年5月2日に逝去した)

そして、この this life が省かれて depart だけでも「亡くなる」を表すようになり、過去分詞の departed が形容詞・名詞に転じました。

・the departed=故人、先立たれた方々(単数でも複数でも使う)
・our dearly departed=私たちが心から慕う故人

英語圏では、死を「完全な消滅」ではなく「ここから別の場所への移動」として語る習慣が長くあります。depart this life は、その世界観がそのまま言葉になった表現です。直接的な die を避けるための、宗教的・礼儀的な婉曲語句(euphemism)として定着しました。

年代については、少し丁寧に書いておきます。

「死ぬ」の意味での比喩的な用例自体は、14世紀末のチョーサーにさかのぼります。『騎士物語』(1385年ごろ)に、アルシータの死を「この人生という汚れた牢獄から departed した」と表す箇所があります。

ただし depart this life という決まり文句として記録されるのはもう少し後で、OEDは1460年ごろ以降、Etymonlineは1500年ごろとしています。the departed「故人」も同じく1500年ごろです。

つまり「14世紀に婉曲表現として定着した」と言うと行き過ぎで、「14世紀末に比喩としての芽があり、15世紀後半から1500年ごろにかけて決まり文句として固まった」というのが実際のところです。

また、この言い方は英語で一から生まれたものではなさそうです。古フランス語の departir(10世紀)には、すでに「分ける・配る・別れる・死ぬ」という語義があり、departir de cest siecle(この世を去る)という言い方も存在しました。英語はおそらく、この型ごと受け取っています。

1549年の祈祷書に残る、depart の二つの顔

ここが、この語のいちばんきれいな証拠です。

結婚式の誓いの言葉として知られる「till death do us part(死が二人を分かつまで)」。

この原型は、1549年版の英国教会祈祷書(Book of Common Prayer)にあります。そこでの文言は、現代形とは違います。

・to love and to cherishe, til death us departe

part ではなく、departe と書かれています。

この depart は「分かつ」という他動詞です。原義である「切り離す」が、そのまま誓いの言葉の中に生きている形です。1662年版で「till death us do part」に書き換えられ、その後 us と do が入れ替わって、現在の「till death do us part」になりました。

さらに興味深いのは、同じ1549年の祈祷書の別の箇所です。

埋葬式の祈りには、こうあります。

・when we shall departe this lyfe(我らがこの世を去るとき)

こちらは「死ぬ」の depart です。

つまり一冊の本の中で、婚姻式では「分かつ」、埋葬式では「この世を去る」。同じ語が二つの顔を同時に持っていた瞬間が、そのまま印刷物として残っているわけです。

「切り離す」と「旅立つ」が重なっていた、という話の、これ以上ない裏づけになっています。

deceased も、語源は「立ち去る」だった

departed のニュアンスを理解するために、もう一語だけ並べておきます。deceased です。

法律文書や公的書類で使われる、形式的な「死亡した」。日本の英語教育でも、the deceased(故人)として習うことがあります。

この語の語源をたどると、ラテン語 decessus「死」に行き着きます。そしてこの decessus は、もともと「退くこと・立ち去ること」も意味し、そのうえラテン語では mors(死)の婉曲語として使われていた語でした。

分解するとこうなります。

de(離れて)+ cedere(行く)= decedere「立ち去る・退く・死ぬ」

cedere は「行く」。access や process、recession の cess と同じ語根です。

気づくでしょうか。depart も decease も、構造がまったく同じです。

・depart = de(離れて)+ part(分ける)→ 分かれて去る
・decease = de(離れて)+ cede(行く)→ 立ち去る

英語は死を語るために、「去る」という比喩を二つのルートから二重に取り込んでいます。そのうえで、現代ではこう役割が分かれました。

・deceased:法律・行政・報道で使う、感情の温度を持たない形式語
・departed:哀悼や敬意を含む、「先立たれた」「旅立たれた」という柔らかい語

同じ発想から出発して、片方は硬化し、片方は情緒を残した。語源が同じでも使われ方が分かれる、という好例です。

department|部門も、デパートも、「分ける」から

最初のデパートに戻ります。

department が英語に入ったのは1500年ごろ。意味は「終わること・立ち去ること」でした。今は使われない語義です。

その後、フランス語の departement(分割・分配・離別)で「人の集まり」の意味が育ち、そこから英語が1735年ごろに「全体の中の独立した一部門」という意味を借り直しました。

・1769年:政府の一部門(the State Department など)
・1792年:フランスの行政区画
・1869年:略語 dept. が記録される
・1878年:department store(部門別に商品を並べた店)

日本語の「デパート」は、この department store の前半を切り取った和製の短縮形です。英語では department store と言わないと通じません。

整理すると、同じ departire から、

・切り離して去る → depart(出発する・逝去する)
・切り分けられた区画 → department(部門・売り場)

という二方向に伸びたことになります。

派生語・関連語ネットワーク

語構成意味
departde(離れて)+ part(分ける)出発する/逸脱する/逝去する
departuredepart + -ure出発/逸脱/(婉曲的に)死
the departeddepart の過去分詞故人、先立たれた方々
departmentdepart + -ment部門、学科、省庁、売り場
departmentaldepartment + -al部門の、部署ごとの
dept.department の略部門(1869年〜)
aparta(ad=〜へ)+ part離れて、ばらばらに
apartmentapart + -ment一区画の住居
compartmentcom(共に)+ part仕切られた区画
impartim(in=中へ)+ part分け与える、伝える
deceasede(離れて)+ cedere(行く)死去(法律・公的文書)

pars 一族のさらに広い家族(partial・particle・particular・portion・proportion・parcel・parse など)は partial の記事で扱っています。

TOEIC・ビジネスで効く depart の使い方

試験や実務で問われるのは、「出発」よりむしろ次の2つです。

1. depart from = 逸脱する

物理的な出発ではなく、「決まり・方針・前例から外れる」意味で頻出します。

・This proposal departs from the original plan.(この提案は当初の計画から外れている)
・a departure from standard procedure(標準手順からの逸脱)

名詞 departure も同じで、a departure from 〜 の形で押さえておくと読解が速くなります。

2. departure = 退職・退任

人事の文脈では、「会社を去ること」を指します。遠回しで角が立たない言い方です。

・Her departure from the company was announced on Friday.(彼女の退社が金曜に発表された)
・the departing manager(退任する部長)

leave や quit より改まった響きで、社内通知やプレスリリースでよく使われます。

3. 空港表示の読み方

・Departures/Arrivals(出発/到着)
・departure gate(出発ゲート)
・point of departure(出発点、議論の起点)

point of departure は比喩でも使えて、「この議論の出発点は〜」と切り出すときに便利な表現です。

英文翻訳練習

次の英文を日本語にしてみてください。答え合わせは記事の最後にあります。

  1. The train departs from platform 3 at 7:15.
  2. You should check the departure time before you leave home.
  3. This proposal departs from our usual approach.
  4. Her departure from the company surprised everyone.
  5. You do not have to depart from your own values to please other people.
  6. The old prayer book reads “till death us depart.”
  7. The family gathered quietly to remember the departed.
  8. We will depart for Osaka early tomorrow morning.
  9. If you depart from the schedule, please tell the team right away.
  10. You are the one who decides when to depart from a path that no longer fits you.

まとめ

depart は、de(離れて)+ part(分ける)=「切り離す」が原点です。

・もとの意味は「分ける・別れる」で、「出発する」は後から育った枝
・depart this life(この世を去る)という婉曲表現から、the departed=「故人」が生まれた
・1549年の祈祷書には、婚姻式の「分かつ」と埋葬式の「この世を去る」が同居している
・deceased も de+cedere「立ち去る」で、発想は depart と同じ
・department も同じ departire 由来で、「分けられた区画」がデパートになった

part という既知のパーツが見えているぶん、depart は「意味が分かったつもり」で通り過ぎやすい語です。でも、その先に「故人」という顔が隠れています。駅の Departures の表示と、墓碑銘の departed this life が同じ語だと知ると、この単語は忘れにくくなります。

depart の語源ワードマップ。中心に「語源・中心」としてdepart(de 離れて+part 分ける)を配置し、出発・逸脱(departure/departing/point of departure/depart from)、部門(department/departmental/dept./department store)、故人(depart this life/the departed/dearly departed)、pars一族(part/apart/apartment/compartment/impart)、別ルートの「立ち去る」(decease/deceased/decedent)の5クラスタを放射状に配置した図

・語源・中心:depart = de(離れて)+ part(分ける)= 切り離す
・出発・逸脱:departure/departing/point of departure/depart from
・部門:department/departmental/dept./department store
・故人:depart this life/the departed/dearly departed
・pars 一族:part/apart/apartment/compartment/impart
・別ルートの「立ち去る」:decease/deceased/decedent(de + cedere)

語彙リスト収録状況

depart は TSL(TOEIC Service List)と BSL(Business Service List)の2つに収録されています。試験にも実務にも出る語です。

関連記事

・partial の語源|pars(部分)一族の広がり→https://isseisuzuki.org/partial/
・access の語源|cedere(行く)一族と「発作」の話→https://isseisuzuki.org/access/
・process の語源|プロセスチーズの「プロセス」は名詞ではない→https://isseisuzuki.org/process/
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翻訳練習の解答

  1. その電車は7時15分に3番ホームから出発します。
  2. 家を出る前に出発時刻を確認したほうがいいですよ。
  3. この提案は、私たちのいつものやり方から外れています。
  4. 彼女の退社は、みんなを驚かせました。
  5. 他人を喜ばせるために、自分の価値観を手放す必要はありません。
  6. その古い祈祷書には「死が二人を分かつまで」と書かれています。
  7. 家族は静かに集まって、故人をしのびました。
  8. 私たちは明日の朝早く、大阪に向けて出発します。
  9. 予定から外れる場合は、すぐにチームに伝えてください。
  10. もう自分に合わなくなった道から、いつ離れるかを決めるのはあなた自身です。