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【語源で覚える】benefit|ベネッセもボーナスも、同じ「よい」から生まれた

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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進研ゼミやこどもちゃれんじでおなじみの「ベネッセ」。あの社名がラテン語の造語だ、というのはわりと知られた話です。

bene(よく)+ esse(在る・生きる)

で、「よく生きる」。会社の公式サイトにも、そう書いてあります。

さて、ここからが本題です。この「ベネ」を、そのまま頭に乗せた英単語があります。

benefit(利益、恩恵)

be-ne-fit。前半の bene は、ベネッセの bene とまったく同じものです。「よく」。

そして、もうひとつ。日本の会社員にとって、たぶんベネッセより切実なカタカナ語があります。

ボーナス(bonus)

このラテン語 bonus(よい)と、bene(よく)も、実は同じ一語の形違い・・・ラテン語では、形容詞 bonus の副詞形が bene です。「よい」と「よく」。日本語でもそのまま形容詞と副詞の関係になっているのが、ちょっと面白いところです。

ベネッセも、ボーナスも、benefit も、全部おなじ「よい」から出てきた。この記事は、その一本の線をたどる話です。

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benefit を分解してイメージで覚える|bene(よく)+ fit(作る)

benefit をパーツで見ると、こうなります。

bene(よく)+ fit(作る・行う)

直訳すれば「よく作られたこと」「よい行い」。

実際、英語に入ってきたばかりの benefit は、お金の話ではありませんでした。14世紀後半、最初の意味は「よい行い、親切なふるまい」です。誰かが誰かに対してした、いいこと。それが benefit でした。

そこから「よい行いの結果として受け取るもの」へ意味がずれていき、「利益」「恩恵」「給付」になります。

つまり、benefit の中心にあるのは「もうけ」ではなく「誰かがよくしてくれたこと」。ここを押さえておくと、あとで出てくる employee benefits(福利厚生)や benefit concert(チャリティー公演)が、きれいに一本につながります。

bene を見たら「よく」。この一語だけで、benefit の方向は決まります。

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ベネッセの「ベネ」と benefit の「ベネ」

ベネッセ(Benesse)は、1995年に社名になった造語です。公式サイトには、ラテン語の bene(良い、正しい)と esse(生きる)を一語にしたもの、と明記されています。

ここで一つだけ、正確に書いておきます。

ラテン語の esse は、本来は「生きる」ではなく「在る・〜である」。英語の be にあたる動詞です。公式が「生きる」と訳しているのは、「よい状態で在る」=「よく生きる」という意味合いを汲んだ、意訳にあたります。

そして bene esse をそのまま英語に置き換えると、こうなります。

well-being

近ごろよく聞く「ウェルビーイング」です。ベネッセは30年以上前に、その言葉をラテン語で社名にしていたことになります。

で、benefit のほうはというと、bene は共通、後ろだけが違う。

Bene-sse ・・・ よく + 在る
Bene-fit ・・・ よく + 作る

「よく在る」のがベネッセで、「よく作られたもの」が benefit。兄弟というより、同じ親を持ついとこ同士、という距離感です。

後半の fit は、fact・factory と同じ一族

では、benefit の後半の fit は何なのか。

これは、服が fit する(ぴったり合う)のあの fit ではありません。ラテン語 facere(作る・行う)が、単語の中に入ったときの姿です。

fact(事実)=作られたこと
factory(工場)=作る場所
perfect(完璧な)=すっかり作り終えた
profit(利益)=前に進んで生まれるもの
benefit(恩恵)=よく作られたもの

facere は単語の中で fact・fect・fic・fit・fy と、くるくる形を変えます。このシリーズでは何度も登場している語根なので、ここでは深追いしません。くわしくは下の記事にまとめてあります。

satisfactory の語源(綴りに factory が丸ごと見える話)
→ https://isseisuzuki.org/satisfactory/

defect の語源(-fect で終わる語は fact の仲間)
→ https://isseisuzuki.org/defect/

faction の語源(fashion と双子だった派閥)
→ https://isseisuzuki.org/faction/

infect の語源(「感染」の染は、布を染める染)
→ https://isseisuzuki.org/infect/

benefit を覚えるときは、「後半は facere の仲間」とだけ押さえて、前半の bene に集中するのが効率的です。

benefit の基本の意味と使い方

名詞の benefit は「利益」「恩恵」「ためになること」。動詞では「利益を得る」「ためになる」。

名詞:
・the benefits of regular exercise(定期的な運動の効用)
・for the benefit of all members(全会員のために)
・a benefit concert(慈善公演)
・give someone the benefit of the doubt(疑わしきは罰せず、で相手を信じる)

動詞:
・Who benefits from this change?(この変更で得をするのは誰か)
・We all benefit from clear rules.(明確なルールは全員のためになる)

動詞で使うときの決まり文句が benefit from 〜。「〜から利益を得る」です。TOEICでも英検でも、この形が圧倒的によく出ます。

なお、過去形・過去分詞はアメリカ式では benefited と t が1つ。benefitted と2つ書く流儀もありますが、迷ったら1つで問題ありません。

日本語の「ベネフィット」とのズレ|英語の benefits は福利厚生

日本語でカタカナの「ベネフィット」というと、たいていマーケティングの話です。「機能(フィーチャー)ではなく顧客が得る価値(ベネフィット)を語れ」というあれですね。

これは英語の benefit の一面ではありますが、英語圏の日常でいちばん出会う benefit は、たぶん別の顔です。

複数形の benefits = 福利厚生、給付

・a good benefits package(手厚い福利厚生)
・health benefits(医療保険などの給付)
・unemployment benefits(失業給付)
・fringe benefits(給与以外の諸手当)

この「勤務先や組合を通じて受け取る金銭的な支え」という意味の benefits は、1895年ごろから使われています。求人票を読むときの最重要語の一つです。日本語の「ベネフィット」から連想していると、少しズレます。

もう一つ、知っておくと得をするのが 1680年代からある用法。

benefit = 誰かを助けるための興行

benefit concert、benefit match、benefit dinner。いずれも収益を寄付に回す催しのことです。日本語でいう「チャリティーコンサート」に近いニュアンス。

「よい行い」から出発した単語が、「給付金」にも「チャリティー公演」にもなっている。意味が散らかって見えますが、どれも bene(よく)から一歩ずつ歩いた先です。

使い分け|benefit・profit・advantage・gain

日本語にすると全部「利益」になってしまう4語を並べます。

単語中心のイメージ使われる場面
benefitためになること。お金とは限らない健康、制度、福利厚生、公共の利益
profit売上から費用を引いて残るお金会計、ビジネス
advantage他より有利な立場競争、交渉、スポーツ
gain増えた分、手に入れた分数値の増加、体重、知識

「お金に限らず、誰かのためになるもの」なら benefit。「決算書に載る数字」なら profit。この二つを取り違えなければ、まず困りません。

bene(よく)でつながる単語ネットワーク

bene は接頭辞として、いろいろな単語の頭に乗っています。見つけたら「よく」です。

単語意味分解
benefit利益、恩恵bene(よく)+fit(作る)
beneficial有益なbenefit の形容詞形
beneficiary受益者、受取人恩恵を受ける人
benefactor支援者、寄付者bene+factor(作る人)=よいことをする人
benevolent慈悲深いbene+volent(望む)=よかれと願う
benediction祝福bene+diction(言う)=よい言葉をかける
benign良性の、穏やかなbene+gn(生まれる)=よく生まれついた

最後の benign が、個人的にはいちばん面白い一語です。

ラテン語 benignus は、直訳すると「よく生まれた」。そこから「気立てのよい」「穏やかな」になり、医学では「良性の」になりました。

a benign tumor(良性腫瘍)

そして、その反対語がこちら。

a malignant tumor(悪性腫瘍)

malignant の mal は「悪く」。bene の正反対です。良性・悪性という日本語の対比が、英語でもそのまま bene と mal の対比になっている・・・健康診断の結果票が、急に読めるようになる話だと思います。

bene の兄弟は bonus|ボーナス・ボンボン・バウンティ

冒頭にも書いたとおり、ラテン語では bonus(よい)の副詞形が bene(よく)です。つまり bonus 側にも、大きな家族があります。

単語意味メモ
bonus賞与、おまけ1773年、ロンドンの株式取引所の俗ラテン語から
bonbonボンボン(菓子)フランス語で bon(よい)を2回重ねた語
bonanza大当たり、金鉱脈スペイン語経由。もとは「凪・好天」
bounty報奨金、気前のよさラテン語 bonitatem(よさ)から
bon voyageよい旅をフランス語の bon がそのまま
belle美人ラテン語 bellus(美しい)。bonus と同系統

bonus について、ひとつ小ネタを。

英語の bonus は1773年、ロンドンの株式取引所で使われはじめた言葉です。ただしラテン語の文法から言うと、名詞として使うなら本来は bonum であるべきところ。

つまりこの単語、ラテン語としては少し間違った形のまま、英語に定着してしまったものなんです。

ボーナスが文法的に怪しい出自だからといって、ありがたみが減るわけではありませんが。

なお belle・beauty 系の bellus については、印欧祖語までさかのぼった系統関係に異論もあります(de Vaan は「PIE 語源は議論がある」としています)。「たぶん同じ家族」くらいで受け止めておくのが安全です。

また、belligerent(好戦的な)や rebel(反逆する)の bell は、戦争を意味するラテン語 bellum のほう。こちらは別系統として扱うのが普通です。綴りが似ているだけ、と覚えておいてください。

ベネッセの esse はどこへ広がるか|is・essence・interest

benefit には esse は入っていません。ただ、せっかくベネッセから入ったので、esse 側の広がりも見ておきます。こちらも相当な大家族です。

ラテン語 esse(在る)は、印欧祖語の *es-「在る」にさかのぼります。そして英語の is、am も、同じ根っこから来た言葉です。

単語意味分解
essence本質、エッセンス「在ること」そのもの
essential不可欠な本質にかかわる
absent不在のab(離れて)+esse=離れて在る
present出席しているprae(前に)+esse=目の前に在る
interest関心、利子inter(間に)+esse=間に在る、関わりがある
entity実体ens(在るもの)から
improve改善するpro+esse(prodesse=役に立つ)から

interest が「esse の仲間」というのは、言われないと気づきません。「自分と対象のあいだに在る何か」が interest。関心も、利子も、そこから出ています。

もう一つ、improve。pro(前に)+ esse で prodesse(役に立つ)。この語から出た古フランス語 prou(利益)が英語に入って improve になりました。

ここも年代を見ると面白くて、improve が「よくする・改善する」の意味で使われるのは1610年代から。それ以前の improve は「利益に変える、収入を増やす」という、もっと即物的な単語でした。

benefit も improve も、出発点は「得をする」。「よくなる」は、そのあとに育った意味です。

派生語|benefit まわり

単語品詞意味発音
benefit名詞利益、恩恵、給付ベネフィット /ˈbenɪfɪt/
benefit動詞利益を得る、ためになるベネフィット /ˈbenɪfɪt/
benefits名詞(複数)福利厚生、給付ベネフィッツ /ˈbenɪfɪts/
beneficial形容詞有益な、ためになるベネフィシャル /ˌbenɪˈfɪʃl/
beneficiary名詞受益者、保険金受取人ベネフィシャリー /ˌbenɪˈfɪʃieri/
benefactor名詞支援者、寄付者ベネファクター /ˈbenɪfæktər/
beneficence名詞善行、慈善ベネフィセンス /bəˈnefɪsns/

このうち beneficial は、TOEIC語彙リスト(TSL)とビジネス語彙リスト(BSL)の両方に入っている実用語です。benefit とセットで覚えてしまうのが得策です。

TOEIC・英検での出題傾向

benefit は TOEIC の最頻出語の一つです。Part 5 の語彙・品詞問題から、Part 7 の求人広告・社内通知まで、どこにでも顔を出します。

覚えておきたい形:

・benefit from 〜(〜から恩恵を受ける)
・be beneficial to / for 〜(〜にとって有益である)
・employee benefits / benefits package(福利厚生)
・mutually beneficial(相互に有益な)
・the beneficiary of the policy(保険の受取人)

Part 5 でよく狙われるのが、benefit(名詞・動詞)と beneficial(形容詞)の品詞の選び分けです。空欄の前後を見て、be動詞の後ろなら beneficial、主語や目的語の位置なら benefit。これだけで正答率が上がります。

英検では2級あたりから普通に出てきます。benefit of the doubt のような熟語は準1級以上の長文で見かける表現です。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. This class will benefit you more than you think.
  2. Small daily habits benefit your health over time.
  3. You don’t have to be perfect to benefit from the training.
  4. The new policy benefits part-time workers, too.
  5. Everyone on the team benefited from her advice.
  6. What looks like a loss today may benefit you later.
  7. The company offers good benefits to all employees.
  8. You have the benefit of experience, and no one can take that away.
  9. Reading slowly has one clear benefit: you remember more.
  10. Give yourself the benefit of the doubt, just once.

語源メモ|benefactum から benefit へ

benefit が英語に現れるのは14世紀後半、当時の綴りは benefet でした。意味は「よい行い、親切なふるまい」、そして「ためになるもの、利益」。

経路はアングロ・フランス語の benfet(古フランス語 bienfait)で、さかのぼるとラテン語 benefactum「よい行い」に行き着きます。bene facere(よく行う)が一語になったものです。

bene は副詞で「よく、正しく、立派に」。印欧祖語の *dwenelo- から来た形とされ、同じ出どころからラテン語の bonus(よい)、bellus(美しい)が生まれました。beatus(祝福された)もおそらく同系統、というのが現在の見立てです。

facere のほうは、印欧祖語の *dhe-「置く、据える」から。こちらは英語の do ともつながる、とてつもなく子だくさんな語根です。

意味の年代を並べると、benefit という単語の歩き方が見えてきます。

・14世紀後半 よい行い、親切なふるまい/ためになるもの
・15世紀後半 動詞として「ためになる」
・1680年代  慈善のための興行(benefit concert の benefit)
・1895年ごろ 複数形で「福利厚生、給付」

「よい行い」から出発して、500年かけて給与明細に届いた。そういう単語です。

なお、ベルギー・オランダ・ルクセンブルクをまとめて呼ぶ Benelux は、3か国の頭を切ってつないだ第二次大戦後の造語で、bene とは何の関係もありません。綴りに惑わされないよう、念のため。

まとめ

benefit は、bene(よく)+ fit(facere=作る)で「よく作られたもの、よい行い」。

・bene(よく)・・・ベネッセの「ベネ」と同じ。benevolent/benediction/benign へ
・bonus(よい)・・・bene の形容詞形。ボーナス/ボンボン/bounty へ
・fit(facere)・・・fact/factory/perfect/profit の一族。くわしくは姉妹記事へ
・esse(在る)・・・ベネッセの後半。is/essence/interest/improve へ

ベネッセは「よく在る」、benefit は「よく作られたもの」、ボーナスは「よいもの」。

身近なカタカナ語を2つ知っていれば、そこから benevolent も benign も beneficiary も、同じ「よく」の一語でつかまえられます。知らない単語を増やすのではなく、知っている言葉の後ろ側を見にいく・・・語源で覚えるというのは、だいたいそういう作業です。

benefit の語源ワードマップ。中心は benefit(=よく作られたもの・よい行い)で、bene(よく)+fit(facere=作る)に分解。覚え方のヒント(ベネッセ=bene+esse、ボーナス=bene の形容詞形 bonus)、bene 一族(beneficial/beneficiary/benefactor/benevolent/benediction/benign)、bonus 一族(bonus/bonbon/bonanza/bounty/bon voyage/belle)、fit=facere 一族(fact/factory/perfect/profit/manufacture)、esse 一族(is/essence/essential/absent/present/interest/improve)の5クラスターに整理した図。

・語源・中心:bene(よく)+ fit(facere=作る)=「よく作られたもの・よい行い」
・覚え方のヒント:ベネッセ(bene+esse=よく生きる)の「ベネ」と同じ。ボーナスの bonus は bene の形容詞形
・bene 一族:beneficial/beneficiary/benefactor/benevolent/benediction/benign
・bonus 一族:bonus/bonbon/bonanza/bounty/bon voyage/belle
・esse 一族:is/essence/essential/absent/present/interest/improve

NGSL(New General Service List)集録語

この単語は NGSL(New General Service List) に集録されています。NGSLは大規模な一般英語コーパスから抽出された約2,800語のリストで、これらを覚えるだけで一般的な英文の約92%をカバーできます。benefit はその中でも543位という上位に位置する、日常・ビジネスの両方で避けて通れない一語です。
出典:New General Service List Project(https://www.newgeneralservicelist.com/)

関連記事(内部リンク)

・satisfactory の語源(綴りに factory が丸ごと見える話)→ https://isseisuzuki.org/satisfactory/
・defect の語源(-fect で終わる語は fact の仲間)→ https://isseisuzuki.org/defect/
・faction の語源(fashion と双子だった「派閥」)→ https://isseisuzuki.org/faction/
・infect の語源(「感染」の染は、布を染めるの染)→ https://isseisuzuki.org/infect/
・英単語の語源・パーツ分解 全リスト → https://isseisuzuki.org/etymology-parts-list/

翻訳練習の解答

  1. この授業は、あなたが思っている以上にためになります。
  2. 日々のちょっとした習慣が、時間をかけてあなたの健康のためになる。
  3. その研修で得るものを受け取るのに、完璧である必要はない。
  4. 新しい制度は、パートタイムで働く人にとってもプラスになる。
  5. チームの全員が、彼女の助言に助けられた。
  6. 今日は損に見えることが、あとになってあなたのためになるかもしれない。
  7. その会社は、全従業員に手厚い福利厚生を用意している。
  8. あなたには経験という財産がある。それは誰にも奪えない。
  9. ゆっくり読むことには、はっきりした利点が一つある。記憶に残るということだ。
  10. 一度くらい、自分のことも信じてやっていい。