「暗黙の了解」「暗黙の前提」・・・日本語でも「暗黙の」という表現はよく使いますが、英語で implicit と書いたとき、その形からどんな意味が浮かびますか。
じっと見ると、頭に im、真ん中に plic がいます。im は import(輸入する=中へ運ぶ)や impress(印象づける=心の中に押す) でもおなじみの「中に・内側へ」。そして意味の中心になるのが plic、「折る」です。
im(中に)+ plic(折る)で、内側に折り込まれて、外からは見えない・・・それが implicit のイメージです。だから「言葉にしなくても伝わっている」「表面には出ていないが確かにある」という意味になります。
plic(折る)のイメージを定着させるコツが一つあります。日本語でなじみのある 「プリーツ」 を思い浮かべてみてください。
スカートやパンツの折り目、pleat(プリーツ)。布にパタンとひだをつける、あの動きです。実は pleat と plic は語源的につながっています。どちらもラテン語 plicare(折る) にさかのぼる仲間です。
プリーツ(pleat)の折り目 → plic=折る
この一枚の絵が頭に入ると、implicit も explicit も、「折る方向がどちらか」だけの話になります。
- 折り目を 中に(im) 入れる → implicit(暗黙の)
- 折り目を 外に(ex) 広げる → explicit(明確な)
プリーツのひだを内側に折り込むか、パッと外に開くか。そのビジュアルだけで、両方の意味がそのまま出てきます。
この plic(折る) を知ると、familiar な単語が一気につながります。音楽アプリの「E」マークでおなじみの explicit(外に広げて丸見り)は、まさに implicit の正反対。同じ「折る」でも、向きが変わるだけで意味がひっくり返る・・・それが plic 一族の面白さです。
implicit を分解してイメージで覚える|意味の中心は “plic”
implicit をパーツで見ると、こうなります。
im-(中に・内側へ)+ plic(ラテン語 plicare:折る)+ -it(過去分詞語尾:〜された)
つまり「内側に折り込まれた(状態の)」が原義です。-it は「〜された」という受け身のニュアンスを持つ語尾で、explicit の -it も同じ由来です。
覚え方の手がかりに、explicit(明確な・剥き出しの)を並べてみてください。
ex(外に)+ plic(折る)= 外に広げて丸見えにする
explicit は、折りたたまれたものを外にパッと広げる動きです。
implicit は、その真逆。折ったまま im(中に) しまっておく。だから「言葉にしない」「表には出てこない」という意味になります。
「外に広げると explicit、中に折り込むと implicit」・・・この対比で、plic(折る)のイメージと両方の単語が一発で入ります。
implicit の基本の意味と使い方
implicit は主に3つの意味で使われます。どれも根っこにあるのは「内側に折り込まれて、見えていないが確かにある」という感覚です。
1. 暗黙の・言外の 言葉にしなくても、状況や文脈の中に折り込まれて伝わっている。
- There was an implicit agreement between them.(ふたりのあいだには、暗黙の合意があった。)
- Her silence was an implicit refusal.(彼女の沈黙は、暗黙の拒否だった。)
2. 内在する・潜在的な 表面には出ていないが、中に確かに含まれている。
- There is an implicit assumption in this argument.(この議論には、潜在的な前提が含まれている。)
- The risks were implicit in the plan from the start.(リスクは最初から計画の中に内在していた。)
3. 絶対的な・無条件の(implicit trust / implicit faithなど) ここは少し意外に見えますが、折る方向で考えると腑に落ちます。条件を一つひとつ言葉にして外に広げるのが explicit。implicit trust は逆に、あれこれ条件を並べず、すべてを相手の懐に折り込んで丸ごと委ねる。折り込みに隙間がない分、疑いの入る余地がない・・・それが「絶対的な信頼」です。
- She has implicit trust in him.(彼女は彼を、絶対的に信頼している。)
explicit との対比|”外に広げる” か、”中に折り込む” か
| 単語 | 語源 | 意味 |
|---|---|---|
| implicit | im(中に)+ plic(折る) | 暗黙の、内在する、無条件の |
| explicit | ex(外に)+ plic(折る) | 明確な、明示的な、剥き出しの |
同じ plic(折る)を使いながら、im と ex の一文字で意味がひっくり返る。これを押さえると、どちらもぶれなくなります。
→ explicit の詳しい語源解説はこちら:【語源で覚える】explicit の意味|”E” マークの正体は ex(外に)+ plic(折る)

“plic(折る)” でつながる単語ネットワーク
plic(折る/ラテン語 plicare)を知っておくと、まったく別ジャンルに見える単語がつながります。implicit はその入り口です。
| 単語 | パーツ分解 | コアイメージ | 意味 |
|---|---|---|---|
| explicit | ex-(外へ)+plic+-it | 外へ折り目を広げた | 明確な、露骨な |
| imply | im-(中へ)+ply(折る) | 意味を言葉の奥に折り込む | ほのめかす、暗に示す |
| complex | com-(一緒に)+plex(折る) | たくさん折り重なった | 複雑な、複合体 |
| complicated | com+plic+-ated | 一緒に折り込まれた | 込み入った |
| duplicate | du-(二つ)+plic | 二重に折る | 複製する |
| apply | ap-(〜へ)+ply(折る) | 〜に折り重ねる | 適用する、応募する |
| reply | re-(後ろへ)+ply(折る) | 折り返す | 返事する |
| display | dis-(解いて)+play(折る) | 折り畳んだものをパッと広げる | 表示する、展示する |
「plic が入っていたら、たぶん”折る”の話」と見えるようになると、初見の単語でも意味が推測できます。implicit は、この plic 一族への入り口でもあります。
派生語|implicit まわり
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| implicit | 形容詞 | 暗黙の、潜在的な、無条件の | インプリシット /ɪmˈplɪsɪt/ |
| implicitly | 副詞 | 暗黙のうちに、無条件に | ― |
| implicitness | 名詞 | 暗黙性、内在性 | ― |
| implicit bias | 名詞句 | 無意識の偏見 | ― |
| implicit trust | 名詞句 | 絶対的な信頼、無条件の信頼 | ― |
TOEIC・英検での出題傾向
implicit は、ビジネス・学術・法律など幅広い文脈で登場する実用語です。TOEIC では implicit assumption(暗黙の前提)、implicit understanding(暗黙の了解)のような形で、長文読解やビジネス文書の中で見かけます。英検では準1級〜1級の読解で出題されることがあります。
近年は implicit bias(無意識の偏見)がダイバーシティ・研修の文脈でよく使われ、ビジネス英語でも頻度が上がっています。explicit と対比させて覚えておくと、どちらが出てきても迷いません。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- There was an implicit agreement between them.
- Her silence was an implicit refusal.
- The risks were implicit in the plan from the start.
- He has implicit trust in his team.
- Sometimes the most important things stay implicit.
- You don’t always have to say it — implicit understanding is powerful.
- There is an implicit assumption behind that question.
- Try to make the implicit explicit when you communicate.
- Implicit bias affects decisions without people realizing it.
- Your support has always been implicit — and deeply felt.
語源メモ|plicare が生んだ「折る」の入り口
implicit は、ラテン語 implicare(巻き込む・折り込む)に由来します。分けると im(中に)+ plicare(折る)。この plicare(折る)が、explicit・complex・complicated・duplicate・apply・reply・display など、数多くの単語に共通する語源の核です。
implicit の過去分詞形 implicitus が、英語に入って implicit になりました。「中に折り込まれた」が原義で、そこから「表面には出ていないが内側に含まれている」→「暗黙の」「内在する」「(すっかり包み込まれて)無条件の」という意味が生まれています。
覚え方の手がかりとして explicit(外に広げる)と並べると、plic(折る)のイメージがそのまま両方の意味になる・・・この対比が、implicit を長く記憶に残す一番の近道です。
まとめ
implicit は、im(中に)+ plic(折る)+ it で「中に折り込まれて見えない」=暗黙の・内在する・無条件の。
- plic(折る)・・・explicit/complex/complicated/duplicate/apply/reply/display の一族へ
- 覚え方の手がかり:外に広げると explicit、中に折り込むと implicit
- 「言葉にしなくてもある」「表には出ていないが確かにある」がこの語の核
折り込まれたまま伝わるものと、広げて言葉にするもの。どちらも大切な伝え方です。

- 語源・中心:im(中に)+plic(折る)+it =「中に折り込まれて見えない」
- 覚え方のヒント:外に広げる explicit ⇄ 中に折り込む implicit
- plic(折る)一族:explicit/imply/complex/complicated/duplicate/apply/reply/display
関連記事(内部リンク)

翻訳練習の解答
- ふたりのあいだには、暗黙の合意があった。
- 彼女の沈黙は、暗黙の拒否だった。
- リスクは最初から計画の中に内在していた。
- 彼は自分のチームを、絶対的に信頼している。
- 一番大切なことが、言葉にならないまま残ることがある。
- 言わなくていい場合もある。暗黙の了解は、それだけで力を持つ。
- その質問の裏には、暗黙の前提がある。
- 伝えるときは、暗黙のことを言葉にしてみよう。
- 無意識の偏見は、気づかないうちに判断に影響する。
- あなたのサポートは、いつも言葉にならなかった。でも、ちゃんと届いていた。
一夜漬けで覚えるビジネス英単語リスト|語源で理解するTOEIC・英検・社会人の学び直し
著者情報
鈴木一世 現役大学教員
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