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音読に取り組む際の注意点

英語音読の目的

 英語を音読する目的には大きく分けて2つあると言われます。

  • 英語の力を伸ばすための音読
  • 表現のための音読

  この2つは、どこで分けるというものではなくて、「英語の力を伸ばすための音読」に取り組んでいると「表現のための音読」につながっていくというように考えていただくとよいと思います。

英語の力を伸ばすための音読
     ↓
    練 習
     ↓
  表現のための音読

 以下、この2つの目的に沿って、音読の注意点をまとめてみます。

速く音読すればよいというわけではない 英語の力を伸ばすための音読

 音読は、速ければ速いほどよいというものではありません。

 ある程度英語ができる方の中には、できるだけ速く音読しないと気が済まないという方が多いです。そのため、個々の単語の発音がカタカナ読みになることが多いです。「オーストレイリア」と読むべきところを「オーストラーリア」と読んだり。「プセント(percent)」と読むべきところを「パーセント」と音読してしまいます。
 また、結構速く音読できるようになっても、棒読みになることが多いです。

 英語の音読の評価基準としては次のようなものがあります。

  1. 個々の単語の発音の正確さ
  2. フレーズの音変化
  3. ポーズの適切さ(正確に区切れを入れること)
  4. アクセント
    (文章の意味を正確に伝えるために、文の中で一番大切な単語を最も強く読むこと)
  5. イントネーション
    (フレーズや英文の終わりを、上げて読むのか下げて読むのか)

 ある程度速く音読できる方は、2のフレーズの音変化は合格点を取ることが多いのですが、それ以外の項目に意識できないことが多いです。「音変化」については、別の記事で触れます。

関連リンク:音変化(リンクは記事の最後にあります)

 この5つを音読の評価基準にするのかについては、きちんと意味があります。

  1. 個々の単語の発音の正確さ
     速く音読できても、カタカナ発音だと意味が伝わらないことが多いです。TOEICのリスニング模試をした後、解説にある英文を見てもらうと「この単語知ってるのに聞き取れなかった」という学生が多いのですが、自己流のカタカナ発音で英単語の発音を覚えていると、そうなることが多いです。
  2. フレーズの音変化
     2つ以上の英単語を読む場合、音が変化します。Get out of here!は「ゲラウラヒア」と1つの単語のように発音します。

    Get outがくっつき
    outとofがくっつきtの音がラに近い音になり
    ofのfの音が消える

    という具合です。この音変化がわかるかわからないかで、リスニングのスキルに大きな差が出ます。
  3. ポーズの適切さ
     どんなに音読の速度が速くても、かならず適切な位置でポーズが入ります。これは、英語を話す場合、きちんと意味を考えているので、意味の区切りでポーズが入るのです。ポーズを入れずに速く音読している方は、速度だけに集中して意味を考えていない場合が多いです。これを「空読み(からよみ:eye-mouth reading)」と言います。

     意味を考えながら音読する方が、音読の効果が上がることはよく知られています。
     速音読でポーズを適切に入れずに音読している方に、ゆっくり音読してもらうことがあります。すると、とんでもないところにポーズを入れることがあります。これは、音読の際、意味の区切れを考えていないことに加えて、文法の知識を十分に考えていないことを示しています。「適切な場所にポーズを入れることができる=文法的な知識が定着している」ということになります。
  4. アクセント
     英語の音読は、強く言うところと弱く言うところの差が激しいです。弱く言うところは聞こえなくてもいいくらいです。何度も例に出すpercent。100 percentという流れがあれば、percentのper-が聞こえなくても通じてしまうのです。
     これは単語レベルでなく、文でも同じです。英文の意味を考えて、一番大切な単語は、一番強く発音します。他の部分は聞き取れなくても、一番強く言った単語だけ頭に入れておけば、相手の言っていることがわかることだってあります。
  5. イントネーション
     疑問文は文の最後を上げる、普通の英文(平叙文)は最後を下げる。と中学校では教わると思います。実際には疑問文でも最後を下げることはありますし、平叙文でも最後を上げることがあったりします。

 1つの英文の中で、いくつか例を挙げる場合、フレーズの最後が上がります。

主語 動詞 例1⤴, 例2⤴, 例3⤵. 

というような場合です。

 ポーズアクセントイントネーションは、意味の伝わりやすさと関係しています。

適切なポーズがあり
一番大切な単語は一番強く言い
フレーズや英文の最後の上げ下げがきちんとしている

この3つがしっかりできると、スピーキングの際に意味が相手に伝わりやすくなります。冒頭に触れた、音読の目的の2番目、「表現のための音読」につながっていくのです。

 言い方を変えると、ポーズアクセントイントネーションがきちんとでき、速く音読できるようになれば、これは音読としては上級レベルということになります。

とにかくたくさん音読すればよいというわけではない 表現のための音読

 音読は、とにかく速く読めばよいというわけではありません。同じように、たくさん同じ文章を繰り返して音読すればよいというものでもありません。以前ある研究会で、中学校で教えている英語の先生のお話をうかがいました。その方は「ある生徒は、同じ英語の文章を1000回音読したのです!」と大変うれしそうにお話をされていました。ん? それって意味あるの? と私は内心思ってしまいました。

 たとえば、100回も音読すれば、文章全体を暗唱できるようになると思うのです。それ以上同じ文章を音読することで、どのような効果が得られるのでしょうか。100回音読したら、残りの900回音読するのにかけた時間を、他のことに使った方が、もっと英語力が伸びたのではないでしょうか。

 言い方が適切かどうか、自信はありませんが・・・。1000回同じ英語の文章を音読して得られる満足感と根性よりも、100回とは言わず、50回程度音読して英文を暗唱できるくらいになったら、ワンランクアップした勉強法を教えてあげる方が、苦労が少なくて、効率的だと、私は思うのです。

 その1つが「表現のための音読」です。読む英文の内容を解釈し、ポーズ、アクセント、イントネーションに変化を持たせる。英文に込められた意味の解釈を変えた場合、どのように音読の仕方(表現)を変えるのかを考えるという活動です。

 これはスピーキングの際に重要になるスキルです。

 もう1つは、初めて見る英文を音読してもらうという活動もあります。初めて音読する英文に、適切にポーズを入れることができるかどうかで、どの程度文法を意識しているかがわかります。

 初めて音読する英文の中に、知っている単語があっても、かんでしまう(すぐに発音が出てこない間違って言い直す)ことがあります。その単語はまだ発音が十分に定着していません。初めての英文を音読することで、自分の弱点を知ることもできます。

 強く読むべきところを強く音読できない、どこを強く読んでいるのかよくわからないという場合は、英文の意味を十分理解していないことが予想できます。

音読の速度による効果の違い

 英語の音読は、ゆっくり読むことで得られる効果と、速く読むことで得られる効果に違いがあります。ですから、速く読む方がよい、ゆっくり読むのはだめ、ということではないのです。

ゆっくり音読することで得られる効果

  • 音とつづりの関係を理解することにつながる
  • 英単語の発音の正確さが増す
  • 英文の細かい内容について理解できる、理解しやすくなる

 難しい文章を読む時、指でなぞりながら読むことはありませんか? そういう場合は、声に出して読みながら、内容を理解することもあります。これは、指でなぞることで、意図的に頭の中で読む速度をゆっくりにしているのです。ゆっくり音読することは、細かい部分まで内容を理解するのに役立ちます。

速く音読すること(速音読)で得られる効果

  • 2つ以上の単語がつながって起こる、音変化を理解することで、リスニング能力が向上する
  • 知っている単語でも、かんでしまう(すぐに発音が出てこない、間違って言い直す)など、速度を上げることにより、弱点がわかりやすくなる
  • 速く読むためには、できるだけ先の単語を見ることが必要となる。そのため、リーディングの速度が向上する(アイ・ヴォイス・スパンが広がる)。

    関連リンク:アイ・ボイス・スパンの話(リンクはこの記事の最後にあります)
  • 英文の内容の細かい部分を気にすることができなくなるため、大まかな内容を把握することになり、リーディングの正答率が向上する。

 日本語を読む場合を考えてみましょう。私たちがある程度の長さの文章を読む場合、一言一句暗記しながら読むわけではありません。重要な単語を拾って、それを結びつけて全体のおおまかな内容を理解しているのです。

 音読の速度を上げることで、キーワードを拾ってつなげ、おおまかな内容を理解することができるようになる。するとと、リーディングの能力が向上するということになります。英語資格試験などで、リーディングに取り組む場合、速度と精度(正答率)の両立が必要です。

  • 速く読めるけれど、正答率が低い
  • 正答率は高いけれど、読む速度が遅い

ではなく、

  • 速く読めて、正答率が高い

が理想です。リーディングテストは、時間が余ればあとで見直しができます。ですから、まず読む速度を上げて、見直しの時間を多くする。こうして徐々に正答率を上げるようにするように取り組んでみるとよいでしょう。そのためには、速音読が不可欠になります。

自分にとって最適な音読速度を見つけること

 速音読の練習でまず最初にすべきことは、自分に合った音読速度を見つけることです。

 最近の英語教材には必ず音声教材が付いています。録音速度はどのようなデータをもとにしているのかはわかりません。が、少なくとも、皆さん一人ひとりの英語力に合う速度になっていないことは確かです。

 聞いていて「ちょっと速いな」とか、「ちょっと遅いかな」と思うことはありませんか? そういう場合は、自分が一番聞きやすい速度に調整をしなければなりません。「ちょっと遅いかな」という場合は、その速度で聴いていても害はありません。でも、「ちょっと速いかな」とか「速過ぎる」場合は、何度聴いていても得るものは少ないです。

 私は、速音読の練習として、オーバーラッピングシャドーイングをおススメしています(記事の最後に関連リンクがあります)。

 その際取り組みを長く続けるための重要なポイントが、音声の速度なのです。英語力によって、最適な音読の速さは異なります。自分にとって一番適切な音声の速度で練習をすることで、速音読の効果が大きくなります。速過ぎればいやになってしまい、遅すぎれば飽きてしまいます。

 音声の速度調整をするには、いくつかの方法があります。Windowsパソコンであれば、メディア・プレーヤー、マックをお使いの場合Quick Timeで音声速度の調整が可能です。MP3やWAVファイルに変換することが可能であれば、無料のソフトで速度調整ができます。

 市販の英語学習教材では、無料の専用アプリが用意されていて、速度調整が可能になっているものが増えました。こうしたツールを活用しましょう。

 音声と同じ速度で音読をしてみて、最後まで無理せず、速音読できる速度が、あなたに一番合う速度です。その速度から練習を始め、少しずつ速度を上げてみましょう。

関連リンク(リンク先は記事最後にあります)
◇ 英語速音読に適した書籍

音読速度を必要なレベルまで伸ばすこと

 自分に合う音声の速度で練習をし、少しずつ速度を上げるという提案をいたしました。では、どの程度まで速度を上げればよいのでしょう。オリジナル音声の速度と同じ速さで読めないとだめでしょうか。そんなことはありません。オリジナル音声の85%程度の速度で音読できれば、オリジナル音声の速度で聞き取れることが、過去のデータでわかっています。

 海外のニュース番組を取り上げた英語教材ですと、アナウンサーが原稿を読む速度は、1分間に180から200語程度と言われます。その85%ということは、1分間に150から170語程度の速度で音読ができえれば、オリジナル音声を聞き取ることが可能になるはずです。

 「ちょっと、自分には無理かな・・・」と思いますか? 決してそんなことはありません。

 私自身40年近く中学生、高校生、大学生と英語を学んで来て、速音読は短時間で自分の成長が一番実感できる活動の1つであることがわかっています。英語が苦手で、大学入学時英検4級程度のレベルの学生のほとんどが、半期の授業でCNNのシャドーイングができるようになります。

 練習を重ねると、私よりも音読速度が速い学生がいたりするのでびっくりするくらいです。

 リスニングテストの速度を遅くするとしたら、どのくらいまで遅くすると聞きやすくなると思いますか? ある研究では、一番聞きやすいリスニング音声の速度は、限りなくその人の音読速度に近いと言われます。言い換えれば、音読速度を上げることで、速めの英語音声も聞き取りやすくなるということです。そして、その速度は、オリジナル音声の85%程度の速度を目指せばよいのです。

 その程度であれば、必ずできるようになります!

関連リンク
 ◇ 音変化
 ◇ アイ・ボイス・スパンの話
 ◇ 英語速音読に適した書籍
 ◇ オーバーラッピング
 ◇ シャドーイング

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