車を運転する人なら、毎日「アクセル」を踏んでいます。パソコンを開けば「アクセス権」が要ります。カタカナにすると、どちらも「アク」で始まる。字面もよく似ている。
アクセルを踏めば、目的地にアクセスできる
そんなイメージが描けます。
ところがこの2つ、語源の家系図では赤の他人です。
似ているのには理由があります。ただしその理由は「同じ語根から出ている」ではなく、まったく別のところにあります。そこを押さえると、ac- で始まる英単語がまとめて読めるようになります。
アクセスとアクセルが「ac-」で揃っている理由
まず結論から並べます。
・access = ad(〜へ)+ cedere(行く・進む)→ ラテン語 accedere「近づく」
・accelerate = ad(〜へ)+ celer(速い)→ ラテン語 accelerare「速める」
共通しているのは ad- の部分だけです。ad- はラテン語で「〜へ」という方向を表す接頭辞で、英語の to にあたります。
この ad- には、うしろの音に合わせて自分の形を変えるクセがあります。k の音の前では、たいてい ac- に変わる。cedere の c も、celer の c も、ラテン語では k の音でした。だから ad+cedere は ac-cedere に、ad+celer は ac-celer- になった。
つまり、アクセスとアクセルが似ているのは、語根が同じだからではなく、同じ変身ルールを通ったからです。顔が似ている他人、というところでしょうか。
このルールが分かると、ac- で始まる語が一気に読めます。
・accept = ad + capere(取る)→ 自分のほうへ取る
・accuse = ad + causa(訴訟の原因)→ 原因を人に向ける
・accord = ad + cor(心)→ 心を寄せ合う
・accumulate = ad + cumulus(積み重なり)→ 積み上げていく
・acquire = ad + quaerere(求める)→ 求めて手に入れる
ac- を見たら、まず ad-(〜へ)を疑う。これだけで初見の単語の半分は見当がつきます。
ただし例外もあります。acoustic(音響の)、acrobat(曲芸師)、academy(学園)、acid(酸)などの ac- は ad- とは無関係で、ギリシャ語やラテン語の別の語から来ています。「ac- = ad- とは限らない」ことは頭の隅に置いておいてください。
access の語源・・・「〜へ行く」が「近づく」になる
access の中身に入ります。
cedere は「行く・進む・譲る」を意味するラテン語の動詞です。これに ad(〜へ)が付いて accedere「近づく、立ち入る」。その過去分詞が accessus「近づいたこと、接近、入口」で、これが古フランス語を経て英語の access になりました。
「アクセスする」という日本語は、もとの「近づく」とほとんどズレていません。ウェブサイトにアクセスする=そのページに近づく。アクセス権がある=近づくことを許されている。駅へのアクセスがいい=近づきやすい。
ここは素直に覚えて大丈夫な単語です。問題は、英語の access が最初に持っていた意味のほうです。
英語に入った最初の意味は「熱の発作」だった
14世紀初め、access が英語に現れたときの意味は「熱の発作」でした。
インターネットどころか、入口ですらありません。病気が人に「近づいてくる」、発作が襲ってくる、というイメージです。古フランス語の acces が「襲撃、発病」を意味していて、英語はその意味ごと受け取りました。Merriam-Webster も、access の初出を14世紀とし、その時の意味として発作の側を挙げています。中英語には「恋わずらい」の意味まで記録されています。
「入口」という意味が出てくるのは1600年ごろで、こちらは古フランス語経由ではなく、ラテン語から直接入り直したものです。「人やものに近づける立場・権限」の意味は14世紀終わりごろ。私たちが毎日使っているほうの access は、実は後から来た意味なのです。
おもしろいのは、発作の意味が完全には消えていないことです。現代の辞書にも an access of illness(発病)、an access of rage(怒りの激発)という用法が残っています。日常会話で使うことはまずありませんが、古い小説を読んでいて access が出てきたら、ネットの話ではないかもしれない、と疑えるだけで読み方が変わります。
accede ・・・「近づく」が「同意する」「即位する」になる兄弟語
access と同じ accedere から、もう一本の枝が伸びています。accede です。
access が古フランス語をくぐって入った名詞なのに対し、accede は15世紀初めにラテン語から直接入った動詞でした。意味は「ある状態・地位・役職に到達する」。
ここから2つの使い方が育ちます。
・accede to a request = 要求に応じる、同意する
相手の言い分の「そば」まで自分が歩み寄る、というイメージです。
・accede to the throne = 王位に就く
その地位まで「到達する」。即位です。
名詞形の accession も同じ流れで、1580年代には「加わるもの、加入」、1640年代には王位継承の意味が記録されています。EUへの accession(加盟)、王の accession(即位)は、どちらも「近づいて、そこに入る」という一本の線でつながっています。
英検やTOEICで accede を見かけたら「アクセスの兄弟、歩み寄る」と置き換えると、意味が転がり出しやすくなります。
500年以上、access はずっと名詞だった
もうひとつ、学習者の盲点になりやすい事実があります。
access が動詞として使われ出したのは、20世紀の半ばです。Merriam-Webster は1953年、Etymonline は1962年を挙げていて、辞書によって少し揺れますが、どちらにせよコンピュータ用語としての登場です。14世紀から数えて600年近く、access はひたすら名詞でした。
だから access は、動詞と名詞で使い方のクセが違います。
・動詞:access the database(他動詞。to は付けない)
・名詞:have access to the database(to とセット)
この to の有無は試験で狙われます。have access the file は誤りです。名詞のときだけ to が要る、と分けて覚えてください。
発音のアクセントは前(ÁC-cess)。よく似た excess は、ac- ではなく ex-(外へ)+ cedere で「行き過ぎる」。「近づく」のか「行き過ぎる」のかで正反対です。この対比は excessive の記事で詳しく扱っています。
accessible と accessory・・・同じ家の中の二人
access の家族で、リストにも載る重要語を2つ見ておきます。
accessible は1400年ごろに登場し、「近づける、到達できる」という意味でした。1640年代に「行きやすい」、そして1961年に「(芸術や文章が)理解しやすい」という意味が加わります。
日本語の「アクセシビリティ」はこの延長線上にあって、建物のバリアフリーも、ウェブの読みやすさも、文章のわかりやすさも、全部「近づける」の一語で説明がつきます。an accessible explanation は「近づける説明」、つまり噛み砕かれた説明です。
accessory は少し込み入っています。15世紀初めの登場時点で、すでに2つの顔を持っていました。ひとつは「主たるものに付随するもの」、もうひとつは法律用語で「犯罪の実行犯ではないが、助言や隠匿で手を貸した者」、いわゆる従犯です。
どちらも accedere の「近づく」から説明できます。本体ではないが、本体のそばに寄り添っているもの。それが装飾品なら小物、犯罪ならば共犯者になる、というわけです。1540年代には絵画で構図を整える添え物を指すようになり、服飾小物の意味が記録されるのは1896年。accessorize(小物で飾る)に至っては1939年で、意外に新しい言葉です。
an accessory to murder(殺人の従犯)という表現を見てぎょっとした経験のある人は、この一本の線を思い出してください。
アクセル側の家系・・・celer(速い)と、もう一人のアクセル
比較のために、別れたほうの枝も見ておきます。
accelerate は1520年代、ラテン語 accelerare から。中身は ad(〜へ)+ celer(速い)です。celer の仲間には celerity(迅速さ)、音楽の accelerando(だんだん速く)があります。
accelerator は1610年代に「急がせるもの」として登場し、自動車のペダルを指すようになるのは1900年。粒子加速器の意味は1931年です。ペダルのほうが加速器より30年早い、というのは覚えておくと少し楽しい順番です。
なお、日本語の「アクセル」は accelerator を縮めた言い方で、英語で accel とは言いません。英語では accelerator、アメリカ英語なら gas pedal が普通です。
ついでにもう一人の「アクセル」にも触れておきます。フィギュアスケートのアクセルジャンプです。こちらは速さとも接近とも無関係で、1882年のウィーンで初めてこの跳び方を見せたノルウェーの選手、アクセル・パウルゼンの名前がそのまま技名になったものです。同じカタカナで3つの別物、というのは日本語側の事情ですが、英語に戻せばきれいに分かれます。
cedere 一族・・・「行く・譲る」でつながる単語たち
cedere は英語の語彙にかなり深く食い込んでいます。access を入口にして、まとめて見ておきましょう。
・necessary = ne(〜でない)+ cedere = 「退くことができない」→ 必要な
・excessive = ex(外へ)+ cedere = 行き過ぎた
・process = pro(前へ)+ cedere = 前へ進んでいくこと
・procedure = 同じく pro + cedere = 手順
・abscess = abs(離れて)+ cedere = 離れていったもの → 膿瘍
・recede = re(後ろへ)+ cedere = 後退する
・concede = con(すっかり)+ cedere = 譲る、認める
・precede = pre(前に)+ cedere = 先行する
・succeed = sub(下から)+ cedere = 後を継ぐ、成功する
necessary が「必要な」になる理屈は、ちょっと感動的です。そこから退くことができない、逃げ場がない。だから必要なのです。
英文翻訳練習
access とその家族を使った10文です。声に出して読んでから訳してみてください。答え合わせは記事の最後にあります。
- You need a password to access the company network from home.
- The library gives students free access to hundreds of academic journals.
- Only three people in this office have access to the safe.
- If you move to that town, you will lose easy access to the station.
- The new building was designed to be accessible to wheelchair users.
- Her explanation made a difficult topic accessible to beginners.
- He was charged as an accessory to the crime.
- She bought a bag and matching accessories for the ceremony.
- The government finally acceded to the union’s demands.
- You can access your test results online after Friday.
まとめ
access の中身は ad(〜へ)+ cedere(行く)。「近づくこと」です。日本語の「アクセス」とほとんどズレていない、素直な単語でした。
ただし3つ、覚えて帰ってほしいことがあります。
ひとつ目。アクセルの ac- は ad- であって、cedere ではありません。ac- で始まる語を見たら ad-(〜へ)を疑う。ただしギリシャ語由来の ac- もあるので、決めつけない。
ふたつ目。access が英語に入ったときの意味は「熱の発作」でした。「近づいてくるもの」という一語から、入口も、権限も、発作も、全部出ている。
みっつ目。access が動詞になったのは1950〜60年代です。名詞のときは have access to、動詞のときは to を付けない。

・語源・中心:access = ad(〜へ)+ cedere(行く・進む)
・access の家族:accede/accession/accessible/accessibility/accessory/accessorize
・cedere 一族:necessary/excessive/process/procedure/abscess/recede/concede/precede/succeed
・ac- は ad- の変身形:accept/accuse/accord/accumulate/acquire
・似ているが別語源:accelerate/accelerator(celer=速い)/Axel(人名由来)
access が収録されている語彙リスト
access は NGSL(New General Service List)に収録されています。
NGSL は Browne, Culligan & Phillips が2013年に公開した一般英語の高頻度語リストで、現行版は2,809語。ケンブリッジ英語コーパスから選ばれたこの約2,800語だけで、一般的な英文のおよそ92%をカバーするとされています。access はその中で802位(頻度60.77)。つまり、避けて通れない基礎語ということです。
なお、派生語の accessible は TSL(TOEIC Service List)と BSL(Business Service List)に、accessory は TSL に収録されています。仕事の英語でも試験の英語でも顔を出す一族だと考えてください。
関連記事
・necessary の語源|「退けない」から生まれた必要 https://isseisuzuki.org/necessary/
・excessive の語源|アクセスと行き過ぎ、ac- と ex- の分かれ道 https://isseisuzuki.org/excessive/
・process の語源|プロセスチーズの「プロセス」は名詞ではない https://isseisuzuki.org/process/
・procedure の語源|医療の「処置」と surgery の違い https://isseisuzuki.org/proceduresurgical/
翻訳練習の解答例
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- このオフィスで金庫に近づけるのは3人だけだ。
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