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【語源で覚える】multiply|「マルチ」のまま、掛け算も「増える」もつながる

著者情報
【著者:鈴木一世(イッセー)】

現役大学教員・カウンセラー。
  専門の「第二言語習得理論」と「心理学」に基づき、氷河期世代・非正規雇用・転職に関わるリスキリング戦略をデータで解説。挫折しそうな人のための、脳と心の攻略ガイド。  

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「マルチタスク」「マルチプレイヤー」「マルチビタミン」・・・カタカナの「マルチ」は、もうすっかり日本語です。意味を聞かれたら、たいていの人が「たくさん、複数」と答えられると思います。

その「マルチ」が、そのまま頭に乗っているのが multiply。算数で習う「掛ける」です。

ここで少し不思議になりませんか。「多い」はわかる。でも、なぜ「掛け算」なんだろう、と。しかも multiply には「(生き物が)増える・繁殖する」という意味まであります。掛け算と繁殖が、同じ単語。

実はこの3つ、ぜんぶ「multi(多くする)」の一本道でつながっています。そして入り口は、あなたがもう知っている「マルチ」のままで大丈夫です。

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multiply を分解してイメージで覚える|意味の中心は multi

multiply をパーツで見ると、こうなります。

multi(多い)+ ply(重ねる)

前半の multi は、ラテン語 multus(多い・たくさんの)。カタカナの「マルチ」と、意味もイメージもそのままです。ここはズレがありません。

後半の ply は「折り重ねる」。紙を思い浮かべてください。一度折れば2枚、もう一度折れば4枚、また折れば8枚・・・折り重ねるたびに、層がどんどん倍になっていきます。

多く(multi)重ねる(ply)= 数が倍々に増えていく。

これが multiply の意味の中心です。この「倍々に増える」が、算数では「掛け算」になり、生き物の話では「繁殖する」になる。別々の意味に見えて、実は同じ一枚の絵なんです。

※ 後半の ply(折る)は、explicit・implicit・application にも共通する大きな一族です。そちらは別記事でまとめているので、記事末尾のリンクからどうぞ。この記事は multi(多い)側を主役にします。

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multiply の基本の意味と使い方

multiply は「増やす」「増える」「掛ける」を表す動詞です。どの意味も、根っこは「数が多くなる」です。

1. 掛ける(算数)

  • Multiply seven by eight.(7に8を掛けなさい。)
  • Multiply the price by three.(価格を3倍しなさい。)

2. 増やす・増える

  • The company multiplied its profits.(その会社は利益を何倍にも増やした。)
  • Problems multiply when we wait too long.(待ちすぎると、問題はどんどん増えていく。)

3. 繁殖する

  • Rabbits multiply quickly.(うさぎは早く繁殖する。)

日本語では「掛ける」「増やす」「繁殖する」とバラバラの動詞になりますが、英語ではぜんぶ multiply 一語。「数を多くする」という一点さえ押さえておけば、文脈で意味は勝手に決まります。

much・many は、実は multi の仲間ではない

ここで一つ、知っておくと得な話を。

「multi は多い。much も多い。many も多い。じゃあ全部同じ仲間だよね?」・・・形も意味も近いので、そう思いたくなります。でも、ここは外れます。

単語ルーツ系統
multi-ラテン語 multus(多い)ラテン系
much古英語 micel(大きい)ゲルマン系
manyゲルマン祖語 *managazゲルマン系

much は古英語の micel(大きい)から来ていて、さかのぼると mega(メガ)・magnitude(規模)・major(主要な)と同じ「大きい」の家系に入ります。many はさらに別で、ゲルマン語の「多い」。どちらも、ラテン語経由で入ってきた multi とは血がつながっていません。

英語には「同じような意味なのに、入ってきたルートが違う」単語がたくさんあります。much・many は家に昔からいた言葉、multi はあとからラテン語・フランス語経由で入ってきた言葉・・・そう整理しておくと、「なんで似た意味の単語がこんなにあるの?」という長年の疑問が、少しほどけます。

multi(多い)でつながる単語ネットワーク

multi は、日本語になっているものも含めて、驚くほど多くの単語に顔を出します。

単語意味イメージ
multiple複数の、倍数multi(多い)=いくつもある
multitude大勢、多数multus+-tude=「多い」という状態そのもの
multiplex複合映画館、多重のmulti+plex=何重にも重なった
multitask同時並行でこなすmulti+task=仕事が複数
multimediaマルチメディアmulti+media=媒体が複数
multinational多国籍のmulti+national=国が複数
multicultural多文化のmulti+cultural=文化が複数
multipurpose多目的のmulti+purpose=用途が複数

おもしろいのは、multitask・multimedia・multinational あたりは20世紀に作られた新しい単語だということ。2000年以上前のラテン語の multus が、いまも新語を生み続けています。「multi がついていたら、後ろのものが複数ある」・・・この一本さえ通しておけば、初めて見る multi 語でも意味を当てられます。

派生語|multiply まわり

単語品詞意味発音
multiply動詞掛ける、増やす、増えるマルティプライ /ˈmʌltɪplaɪ/
multiplication名詞掛け算、増加マルティプリケーション /ˌmʌltɪplɪˈkeɪʃn/
multiplier名詞乗数、増幅させるものマルティプライヤー /ˈmʌltɪplaɪər/
multiple形容詞・名詞複数の/倍数マルティプル /ˈmʌltɪpl/
multiplicity名詞多数、多様さマルティプリシティ /ˌmʌltɪˈplɪsəti/

TOEIC・英検での出題傾向

正直に言うと、TOEIC で multiply そのものが問われる場面は多くありません。圧倒的によく出るのは、同じ family の multiple のほうです。multiple locations(複数の拠点)、multiple options(複数の選択肢)、multiple-choice question(多肢選択問題)といった形で、Part 5・Part 7 に繰り返し顔を出します。

multinational company(多国籍企業)も、ビジネス文書で定番の組み合わせ。multiply は「multiple の動詞仲間」として一緒に覚えておくのが、いちばん効率のいい入れ方です。英検では準2級〜2級あたりで見かけます。

英文で確認|翻訳練習10問

英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。

  1. Multiply seven by eight.
  2. Small habits multiply over time.
  3. Kindness multiplies when you share it.
  4. The company multiplied its sales in two years.
  5. Rabbits multiply very quickly.
  6. Your efforts will multiply, even if you cannot see it yet.
  7. Problems multiply when we ignore them.
  8. Multiply your rest, not just your work.
  9. A good teacher multiplies what one person can do.
  10. Joy multiplies the moment you pass it on.

語源メモ|multus が英語に入るまで

multiply は、ラテン語 multiplicare(増やす)に由来します。元は multiplex(何重にも折り重なった、何倍もの)という形容詞で、分けると multus(多い)+ -plex(折り重なった)。

これが古フランス語 multiplier を経て、12世紀半ばに英語に入りました。最初の意味は「数や量を多くする」。そこから14世紀半ばに「(自分から)増える・子を産む」という自動詞の使い方が生まれ、14世紀後半に算数の「掛け算をする」が加わります。掛け算の意味は、実はいちばん後からついたというのが、ちょっと意外なところです。

後半の -plex/plicare(折る)は、さらにさかのぼると「編む・折る」を意味する印欧祖語 *plek- にたどり着きます。explicit(外に広げる)・implicit(中に折り込む)・application(当てはめる)と同じ核で、こちらは別記事でまとめています。

なお、multi- のさらに古いルーツについては「強い・大きい」を意味する印欧祖語の語根につながるという説がありますが、辞書でも断定は避けられています。ここは「ラテン語 multus=多い」まで押さえておけば十分です。

まとめ

multiply は、multi(多い)+ ply(重ねる)で「多く重ねて、数を倍々にしていく」=掛ける・増やす・増える。

  • multi(multus)・・・多い。multiple/multitude/multiplex/multitask/multinational の一族へ
  • 意味の中心・・・折り重ねるたびに層が倍になる、あのイメージ
  • much・many は別家系・・・似ているがゲルマン系で、multi とは血がつながっていない

掛け算も、増えることも、育っていくことも、英語ではぜんぶ multiply。少しずつ重ねたものは、いつのまにか倍になっています。

multiply の語源ワードマップ。中心は multiply(=多く重ねて倍々に増やす)で、multi(multus=多い)+ply(重ねる)に分解。語源・中心、multi(多い)一族(multiple/multitude/multiplex/multitask/multimedia/multinational/multicultural/multipurpose)、別家系に注意(much/many は multi とは血がつながっていない)、覚え方のヒント(マルチタスクの「マルチ」そのまま)の4クラスターに整理した図。
  • 語源・中心:multi(multus=多い)+ply(重ねる)=「多く重ねて倍々に増やす」
  • 覚え方のヒント:マルチタスクの「マルチ」そのまま。紙を折るたびに層が倍になる
  • multi(多い)一族:multiple/multitude/multiplex/multitask/multimedia/multinational/multicultural/multipurpose
  • 別家系に注意:much(古英語 micel=大きい)/many(ゲルマン系)は multi の仲間ではない

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翻訳練習の解答

  1. 7に8を掛けなさい。
  2. 小さな習慣は、時間が経つほど大きく増えていく。
  3. 優しさは、分け合うと増える。
  4. その会社は、2年で売上を何倍にも伸ばした。
  5. うさぎは、とても早く繁殖する。
  6. あなたの努力は、まだ見えなくても、これから増えていく。
  7. 見て見ぬふりをすると、問題はどんどん増えていく。
  8. 仕事だけでなく、休む時間も増やしていこう。
  9. いい先生は、一人にできることを何倍にもする。
  10. 喜びは、誰かに渡したその瞬間に増える。

集録語彙リスト

この単語は NAWL(学術) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。学術英語でもビジネスでも頻出する、汎用性の高い一語です。

NAWL(New Academic Word List)集録語

この単語は New Academic Word List(NAWL) に集録されています。NAWLは大規模な学術コーパスから抽出された960語のリストで、これらを覚えるだけで学術英語の約92%をカバーできます。論文や英字ニュースを読むとき、必ず出会う一語です。出典:New General Service List Project

BSL(Business Service List)集録語

この単語は Business Service List(BSL) に集録されています。BSLはビジネス英語のコーパスから抽出された1,700語のリストで、これらを覚えればビジネス文書・会議・メールで使われる語彙の約97%をカバーできます。仕事で英語を使う場面で効いてくる一語です。
出典:New General Service List Project