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英単語が覚えられないという話

 英単語が覚えられないという話は、日本全国共通のことではないでしょうか。覚えられないという場合、初級者(中学校の教科書レベルからやり直す場合)と中級者では取り組み方が異なります。

 初級者は「めんどくさいけど一番効果的な勉強法を避ける習慣」をご覧下さい。中級者の方の場合、このブログをこまめに見ていただけると、徐々に単語力が上がっていくはずです。「めんどくさいけど一番効果的な勉強法を避ける習慣」は読み飛ばして、「覚えにくいものも全部覚えようとする悪い習慣」「級別、難易度別に取り組むという悪い習慣」の方を先に読んでいただければと思います。

めんどくさいけど一番効果的な勉強法を避ける習慣

 中学校の教科書から英単語の勉強をやり直す場合の勉強法です。

 ちょっとめんどうですが、最も効果的なのは「発音しながら書き写す」です。学生に話を聞いてみると、この勉強法を知らないという意見が圧倒的でした。そのほとんどは英語が極端に苦手。

 この勉強法は、英語に限らずどの外国語でも同じように効果があることが脳科学の世界では明らかになっています。

 具体的な取り組み方は別の記事をご覧下さい。
発音しつつ つづりを書き写す(リンクはこの記事の最後にあります)

覚えにくい英単語も全部覚えようとする悪い習慣

 どうしても覚えられない英単語ってありませんか? 英単語には覚えやすいものと覚えにくいものがあるんです。 覚えやすい英単語というのは、

  • 自分がよく知っている分野に関わる英単語(日本語の知識があるもの)
  • つづりが短く、つづり通りに発音すればよくて、発音が覚えやすいもの
  • つづりが長くてもパーツに分けると知っている英単語が隠れているもの
  • 何度も出てくるもの

などです。この逆の単語は覚えにくいものです。

  • 日本語に訳してもよく意味がわからないもの
  • つづりが長く発音も覚えられないもの
  • 単語をどこで区切ったらいいのかわからないもの
  • 例外的な発音(chefは「チェフ」と発音したらわかりませんが、「シェフ」ならわかりますね)や複雑な発音をするもの
  • 一度出てきたら、その後めったにお目にかからないもの

 特に日本語の知識も人によって違いますから、覚えやすい単語と覚えにくい単語は人によって違いがあって当然なのです。ですから、どうしても覚えられない単語は、いったん保留にしておいて、覚えやすくなる時期を待つというのも1つの手です。無理に覚えようとせず、ひとまずあきらめる。これも英語の勉強では必要なスキルの1つです。

 詳しくは以下の記事も参考にして下さい。長い英単語をパーツに分けて覚える方法をご紹介しています。

関連リンク
「英単語の定着度とは:覚えやすさ×忘れにくさ×難易度 覚えられないのはあなたの勉強不足とは限らない!」
(リンクはこの記事の最後にあります)

覚えにくい英単語 実例

 もう少し具体的に説明をしてみます。

1)日本語に訳しても意味がわからないもの

 たとえば、kitchenを「厨房」と訳して覚えても、「厨房」の意味がわからなければ単語を覚えることはできません。「台所」という訳であれば覚えられるでしょう。その他にも、日本語の知識がない単語は、覚えることができないのです。日本語で意味を調べる習慣があればよいのですが、英単語を覚えることが苦手な人は、日本語の辞書もあまり調べることがないので、どんどん知らない単語が増えていきます。
 ここではわかりにくい感じを例にしましたが、自分が日本語に訳して意味がよくわからない英単語は、がんばっても定着しにくいことは明らかです。日本語の本などもたくさん読むことが、英語力を高めるためには必要であると言えます。

2)発音のむずかしさ

 発音がしっかりできない単語も意味を覚えるのが難しいです。

 長年英語の授業を担当して来て、実に不思議な現象があります。それは、教科書1ページ分を生徒・学生に音読してもらうと、つっかえたり、間違ったり、発音できない単語がかなりかぶっているということです。こうした単語は単語テストをやっても正答率がかなり低いことが多いです。

 長い単語は特にその傾向が強いです。一般的に人間は言葉を学ぶ際、発音をまず頭にたっくさん蓄積して、それを文字とつなげます。ですので、冒頭で書いた音読筆写は、子どもが言葉を学ぶ流れを時間を短縮してやっているのと同じことになるのです。

 発音がわからない単語は、文字を絵のようにして頭に入れるため、覚えるのに時間がかかります。

 ただ、例外もあります。私の高校の同級生に小林君という友人がいました。彼は、英語の成績は抜群で、ほぼテストは100点でした。しかし、彼にある日、英単語の発音を教えてほしいと頼んだところ「俺、発音がわからないんだよ」と言われ、驚いたのを覚えています。当時はリスニングテストがなく、筆記試験だけだったのでよかったのですが、大学受験でリスニングテストが出た時、得意科目の英語が不得意科目になってしまったのです。

 小林君のように、英単語の発音ではなく「形」だけで単語の意味を覚える特技のある人はいます。ですが、圧倒的少数ですし、リスニングテストがまったくだめということになると、スピーキングのスキルも伸びないということになるでしょう。

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(リンクはこの記事の最後にあります)

3)カタカナ語の発音、意味の違い

 もう1つつけ足しておきます。カタカナ語は英単語を覚えるのに強力な助けとなります。ただし、注意していただきたいことがあります。

1) 発音を日本語で覚えてしまう
2) 英語とカタカナ語で意味が違う

 カタカナ語の発音を一度身に付けてしまい、そのまま大学生になると、発音を直すのが大変になります。私は、某難関大学で教えていますが、Australiaの発音がカタカナ語のままで、音読指導をしてもなかなか直らない学生が少なくありません。「オーストレイリア」と発音するところを、何度音読練習をしても「オーストラーリア」のままなのです。

 受験英語を必死に勉強して来た大学生ほど、その傾向が強いようです。そうした学生の多くは、リスニングが苦手だと言います。自己流のカタカナ発音で覚えてしまうので、生の英語で聴いてもなかなか聞き取れないようです。

 もう1つカタカナ語で注意していただきたいのが、英語との意味の違いです。

 日本語で「ナイーブ」と言えば、「純真な」「素朴な」という意味です(『大辞林 第四版』より)。ところが、英語でnaiveと言うと、「世間知らず」「だまされやすい」と別の意味になってしまいます。
 カタカナ語で英単語を覚えるのは効率がよいのですが、日本語と英語で意味が微妙に違っている場合があるため、注意する必要があります。

予備知識:化石化(Fossilization)
 Australiaを「オーストラーリア」と発音し、なかなか正しい発音に修正できないことを「化石化」と言います。間違いが化石のように固まってしまい、もとに戻らないという意味です。皆さんも、化石化してしまった発音がないか、よく確認して下さいね。

級別、難易度別に取り組むという習慣

 英検やTOEICの勉強をしている方で、難易度別に英単語の勉強をしている方は多いと思います。しかし、低い難易度にランキングしてある英単語が覚えやすいとは限りません。

 また、「日本語の知識も人によって違いますから、覚えやすい単語と覚えにくい単語は人によって違いがあって当然」なのですから、高い難易度にランキングされた英単語でも、人によってはすぐ覚えてしまう場合だってあるわけです。

 さらに、読む英文によっても、難易度のランキングがあてになる場合とならない場合があります。

 実際、私が授業で取り上げた、比較的基礎的な英文に繰り返し出てくる単語がありました。難易度別ランキングで調べたところ、その単語はなんと高めの難易度にランキングされていたのです。

 難易度が高い単語を後回しにしたら、この英文の内容を理解することは難しいかもしれません。

 特にTOEICなどの勉強をする場合には、高い難易度にランキングされている単語でも、覚えやすいものから頭に入れていく方が自信が付きます。

 覚えにくいな、と思ったらさっさと飛ばし、覚えやすいものから頭に入れる習慣を付けましょう。

 

 英検は、級別にテストで使える単語と使えない単語がある程度決まっているようで、過去問の本を3回ほど繰り返してやれば、単語はほぼ覚えてしまうので、合格することが可能です。でも、TOEIC等ではそうはいきません。

 難易度別に教える場合、日本国内もしくは海外の難易度別英単語リストを参考にしたことがあります。ところが・・・英検の2級で出てくる単語が、英単語リストでは難易度が低いところにあったりしたのです。逆に英検3級で出てくる単語が、難易度の高いところにある場合もありました。

 英単語の難易度は、学問的な目安になりますが、英単語を覚えるという点で効率的かどうかはまた別の話のようです。

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