世界史で「アンシャン・レジーム」という言葉を見た覚えはありませんか。フランス革命前の旧体制を指す、あの regime です。
ニュースでも military regime(軍事政権)、regime change(体制転換)という形でよく出てきます。かたい政治の言葉、という印象かもしれません。
ところが、この regime・・・レギュラー(regular)と、同じ語源です。
野球のレギュラー、レギュラーコーヒー、レギュラー番組。あの「いつもの・決まった」の regular と、政権の regime が同じ家族だと言われると、ちょっと意外ですよね。
つなぎ目にあるのは、reg(まっすぐ導く・まっすぐにする) という意味の中心です。ここが見えると、regime も regular も regulation も、同じ一本の線の上に並びます。
regime を分解してイメージで覚える|意味の中心は “まっすぐ導く”
regime の意味の中心は、ラテン語の動詞 regere(まっすぐ導く・治める) です。
思い浮かべてほしいのは、定規(ものさし)です。
曲がったものに定規を当てて、まっすぐな線を引く。この「まっすぐにそろえる」動作が、regere の原風景です。
- 人の集団をまっすぐにそろえる → 統治する → regime(政権・体制)
- 線に沿ってきちんとそろっている → regular(規則正しい・いつもの)
- そろえるための決まり → regulation(規則・規制)
「国をまっすぐに導くやり方」が regime、「定規どおりにそろっている」が regular。入り口は同じ1本の線です。
ちなみに、綴りは reg なのに発音は「レジーム」。これは regime がフランス語を通って英語に入ったからです。regular(レギュラー)がラテン語から直接入ったのとは、通ってきた道が違います。同じ家族でも、育った国が違うと話し方が変わる・・・そんなイメージで捉えておくと忘れません。
regime の基本の意味と使い方
regime は「政権」「体制」「統治のしかた」を表す名詞です。
- the military regime(軍事政権)
- regime change(体制転換)
- the previous regime(前体制)
英語ニュースでの regime は、government(政府)よりも少し距離のある言い方で、批判的なニュアンスを帯びることが多い語です。「あの体制」「あのやり方」と、外から眺めている感じ。government が中立なのに対して、regime には書き手の目線が入りやすい、と覚えておくと読み違えません。
もうひとつ、政治以外にも使われます。
The company introduced a new management regime.
(その会社は、新しい管理体制を導入した)
会社や組織の「運営のしかた・体制」という意味です。こちらはビジネス文書でも見かけます。
使い分け|regime・regimen・regiment
ここが regime のいちばん紛らわしいところです。この3語は、すべて同じラテン語 regere から生まれた三つ子で、英語に入ってから役割が分かれました。
| 単語 | 意味 | 使う場面 |
|---|---|---|
| regime | 政権・体制 | 政治・組織の運営のしかた |
| regimen | 養生法・療法・決まった進め方 | 健康・トレーニング・治療 |
| regiment | 連隊 | 軍隊の部隊 |
迷いやすいのは regime と regimen です。
運動や食事、スキンケアの「決まったやり方」を指すときは、本来 regimen を使います。
Her doctor suggested a gentle exercise regimen.
(医師は、無理のない運動プログラムをすすめた)
実際には regime をこの意味で使う人もいて、英語圏でも「よくある混同」として話題になります。ただ、書くときは regimen が無難です。
三つ子がここまでこんがらがるのは、歴史的な事情があります。19世紀の終わりごろまで、英語ではこの3語がきちんと区別されずに使われていました。いま私たちが見ている「きれいな使い分け」は、わりと最近できたものなんです。
“reg(まっすぐ導く)” でつながる単語ネットワーク
reg が「まっすぐ導く」だと分かると、まったく別ジャンルに見える単語が一気につながります。
| 単語 | 意味 | イメージ |
|---|---|---|
| regular | 規則正しい・いつもの | regula(定規)=線に沿っている |
| regulation | 規則・規制 | 定規どおりにそろえる決まり |
| regulate | 調整する・規制する | 線に沿うように整える |
| region | 地域 | 線を引いて区切られた範囲 |
| reign | 治世・君臨する | regnum(王国)=王が導く範囲 |
| regal | 王の・堂々とした | rex(王)=まっすぐ導く人 |
| correct | 正しい・訂正する | com(すっかり)+reg=まっすぐに直す |
| direct | 直接の・指示する | di(離れて)+reg=まっすぐ向ける |
| erect | 直立した・建てる | e(上へ)+reg=まっすぐ立てる |
| rectangle | 長方形 | rectus(まっすぐ)+angulus(角) |
correct(正す)、direct(まっすぐ向ける)、erect(まっすぐ立てる)。この3つが並ぶと、reg が「まっすぐ」の意味だということが、理屈抜きで腑に落ちてきます。
「正しい」と「まっすぐ」が同じ語源というのは、考えてみると不思議ですよね。曲がっていないことが正しいこと・・・そういう感覚が、言葉の奥に残っているわけです。
派生語 Word Family
| 単語 | 品詞 | 意味 | 発音 |
|---|---|---|---|
| regime | 名詞 | 政権・体制 | レジーム |
| regimen | 名詞 | 養生法・療法 | レジメン |
| regiment | 名詞 | 連隊 | レジメント |
| regime change | 名詞句 | 体制転換 | レジーム・チェンジ |
| ancien régime | 名詞句 | 旧体制(フランス革命前) | アンシャン・レジーム |
| regular | 形容詞 | 規則正しい・いつもの | レギュラー |
| regulation | 名詞 | 規則・規制 | レギュレーション |
| regulate | 動詞 | 調整する・規制する | レギュレイト |
TOEIC・英検での出題傾向
正直に書くと、regime そのものは TOEIC での出題頻度は高くありません。政治色が強い語なので、ビジネス中心の TOEIC では出番が限られます。
むしろ TOEIC で繰り返し出るのは、同じ一族の regulation・regular・regulate のほうです。
- safety regulations(安全規則)
- government regulations(政府の規制)
- on a regular basis(定期的に)
- regularly scheduled maintenance(定期メンテナンス)
Part 5 の語彙問題・品詞問題で、regular(形容詞)と regularly(副詞)の選択を問われる形が定番です。
regime を読み物の中で見かけるのは、英字ニュースや英検準1級以上の長文。「政権・体制」の意味さえ押さえておけば、文脈で十分に読めます。あわせて、regimen との取り違えにだけ気をつけておけば大丈夫です。
英文で確認|翻訳練習10問
英文を見たら一度止めて、和訳を書いてみてください。答え合わせは記事の最後にまとめてあります。
- The old regime finally came to an end.
- Under the new regime, everyone has a voice.
- A regime is only a set of rules that someone once chose.
- The company moved to a flexible work regime.
- You are allowed to question the regime you live under.
- No regime lasts forever, and that is a kind of hope.
- Historians still debate why that regime fell.
- The new regime gave teachers more freedom in class.
- If the regime around you does not fit, you can look for another place.
- Every regime starts with a small decision someone made.
語源メモ|regimen から来た regime、regula から来た regular
regime は、1792年ごろにフランス語 régime から英語に入りました。さかのぼると古フランス語 regimen、さらにラテン語 regimen(統治・導くもの・舵)。その元が、動詞 regere(まっすぐ導く・治める)です。
いっぽう regular は、ラテン語 regularis(規則にかなった)から。その元は regula(定規・まっすぐな木の棒)で、これも regere から生まれた名詞です。
つまり2語の関係は、こう整理できます。
- regime ・・・ regere → regimen(統治)→ フランス語 régime → 英語
- regular ・・・ regere → regula(定規)→ regularis → 英語
通ってきた道は違うけれど、出発点は同じ regere。さらにさかのぼると、印欧祖語の *reg-(まっすぐ進む)にたどり着きます。この根から、rex(王)・rectus(まっすぐな)が生まれ、そこから regal・reign・correct・direct・erect・rectangle まで広がっていきました。英語でも屈指の大家族です。
なお、冒頭でふれた regime・regimen・regiment の三つ子も、すべてこの regere 由来です。ラテン語の1つの動詞が、フランス語経由・ラテン語直輸入・後期ラテン語経由と、別々のルートで英語に入り、それぞれ別の意味を引き受けた・・・そういう成り立ちです。
まとめ
regime は regere(まっすぐ導く)から生まれた「統治のしかた・体制」。おなじみの regular(レギュラー)と、根っこは同じです。
- 意味の中心・・・reg=まっすぐ導く、まっすぐにそろえる
- 覚え方のヒント・・・定規を当てて、まっすぐな線を引く
- 統治の一族・・・regime/regimen/regiment/reign/regal/region
- 規則の一族・・・regular/regulation/regulate
- まっすぐの一族(rectus=まっすぐな)・・・correct/direct/erect/rectangle

まっすぐにそろえること。それが、治めることの始まりでした。自分の毎日をどう導くかも、きっと同じところから始まります。
NAWL(New Academic Word List)・BSL(Business Service List)収録語
この単語は NAWL(学術) と BSL(ビジネス) の両方に集録されています。学術英語でもビジネスでも頻出する、汎用性の高い一語です。
出典:New General Service List Project
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翻訳練習の解答
- 古い体制は、ついに終わりを迎えた。
- 新しい体制のもとでは、だれもが声をあげられる。
- 体制とは、だれかがかつて選んだ決まりごとにすぎない。
- その会社は、柔軟な働き方の体制へ移行した。
- 自分が身を置く体制に、疑問を持っていい。
- どんな体制も永遠ではない。そのことが、ひとつの希望でもある。
- なぜその政権が倒れたのか、歴史家たちは今も議論している。
- 新しい体制は、教師たちに授業での自由をより多く与えた。
- まわりの体制が合わないなら、別の場所を探していい。
- どんな体制も、だれかの小さな決断から始まっている。


